究極のホラーズ過去レビュー作

●パラノーマル・アクティビティ
●うみねこのなく頃に
ワンピース the movie
  オマツリ男爵と秘密の島
●ヒルズ・ハブ・アイズ
●悪夢探偵
●妄想代理人
●シティ・オブ・ザ・リビングデッド
●魔人探偵 脳噛ネウロ
●DAGON―ダゴン
●デッドコースター
●神の左手 悪魔の右手
映画クレヨンしんちゃん
伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!
13ゴースト
●エミリー・ローズ
オープン・ウォーター
●ギミー・ヘブン
●蝋人形の館
●妖怪大戦争
●ノロイ
輪廻
●URAMI〜怨み〜
●マウス オブ マッドネス
バタフライ・エフェクト
●NOTHING
着信アリ
●コックリさん
●感染
●コントロール
エクソシスト
●クリムゾン・リバー
●signs(サイン)
●ZOO [ズー]
●アラクニッド
●28日後…
SAW―ソウ―
●オーメン
●フィアー・ドット・コム
●アザーズ
●テキサスチェーンソー
回路
●ドッペルゲンガー
アナザヘヴン
●呪怨
羊たちの沈黙
●学校の怪談〜もののけスペシャル
●箪笥(たんす)


「パラノーマル・アクティビティ」 
(2009年製作/本編86分)

 監督・脚本 オーレン・ペリ
 主演 ミカ、ケイティ

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★★

 (あらすじ: ケイティは幼い頃から、身の周りで不可思議な現象が起こるのを感じてきた。それは大学生になった今も続いていた。彼氏であるミカは、その現象を映像として収めようと、ハンディカメラで家の中を撮影し続ける。夜もベッドルームを一晩中撮影するという念の入りようだ。やがて超常現象はエスカレートしていき、ケイティは精神的にまいっていく…)

 (一言: 全編ほとんどがハンディカメラでの撮影映像。ドキュメンタリー風でリアリティがある。超常現象はあまり派手に起きないので、リアル。オチは、やや弱めか)

●いきさつ

 レンタル店のフリー誌で、結構大きめに紹介されていたこの映画。
 「製作費わずか135万円で、世界興行収入150億円!」「これ以上怖くは作れない、とハリウッドがリメイクをあきらめた映画」などというウリ文句に惹かれ、観ている事に。……騙されやすいんでしょうか?

 映画は、ハンディカメラを使っての撮影との事。「ブレアウィッチプロジェクト」などを思い出します。低予算で大ヒットというのも似てますね。映画業界って案外、夢のある世界なんですかね。
 (まぁ、たかがハンディカメラで撮影した映画に、3D技術やらを盛り込んで製作費数十数百億円かけた映画が収入で負けたら、かなりショックでしょうけどね……)

 で。ハナから勝手に「当たりだろう」と決め付けて、レンタル待ちをせずにDVDを購入。
 さぁ、どんなに怖いのか。気合いを入れて観てみました。

 ちなみに「パラノーマル・アクティビティ」を和訳すれば、「超常現象」となるみたいですね。素直なタイトルです。

●あらすじ&レビュー


左)ミカ 右)ケイティ


ケイティは幼い頃から、
身の周りで超常現象を体験
し続けている。


恐怖の映像が撮られる
ベッドルーム。

この映画、一番の見せ場。

日を追うごとに、怪異が
明らかになっていく。
 ミカ(男)とケイティは同棲生活を送る、カップル。
 ケイティは小さい頃から不可思議な現象に悩まされていた。家の中で不可解な音を聞いたり、時にはそばで名前をささやかれたり。その現象が大人になった今も、続いているのだった。何度か引っ越したにも関わらず、だ。

 映画は2つの色に塗り分けられています。……昼と、夜。
 昼間、2人は冷静になって、時に冗談を交えながら、ケイティの身の周りで起こる超常現象を分析しようと試みています。
 ミカは超常現象をビデオカメラに収めようと、昼夜問わず、撮影を熱心になって行います。
 なお、霊能者を家に招いて、話を聞いてみたりもします。

 そして夜。ダブルベッドで寄り添って眠る2人。
 ビデオカメラをパソコンにつなぎ、夜中もずっと、部屋の様子を撮影し続けます……。

 ●

 そうして撮影を重ねていく内に、徐々に怪奇現象はエスカレートしていく。
 ミカがいきがって、幽霊か何かを挑発し続けたのがいけなかったのか。時にそれは、ハッキリとした形で返ってきます。2人で写した写真の、ミカの顔だけ引き裂かれていたり。

 超常現象が起こるのは、主に夜。ベッドルームでの撮影が20日目を迎える頃には……。(20回繰り返すのではなく、飛び飛びなんですが)

 ●オチ (※ややネタバレぎみ)

 リアリティを重視するためにか、全編、ホラー的におとなしめ。本当にありそうだ、と思える程度に抑えられている気がします。派手に化け物が出て来たり、凄惨な事が起きたりはしない。

 期待していたオチは…その流れを大して崩す事もなく、ちょっと弱めだったかな、と。ネタバレぎみ: あの吠えの効果音も、よくある音ですし
 映画館で観れば、迫力などが違っていたでしょうし、ノレたのかもしれませんが。

 かと言って全く面白くなかったというワケでもなく。これはこれで面白かったです。変わった映画なので、魅力もありました。
 一番良かったのは、ネタバレ: ●●がベッドから引っ張られていくところはなかなか衝撃的でした

 ちなみに、DVD収録の別エンディングも観ましたが、オチが少し違っているだけ。オチの部分だけ収録すれば良かったのに。
 で、どっちかと言うと、こっちのラストの方が衝撃的かも。痛そうですし。(でもこれが本筋のオチでも、大して面白くはないかなぁと思ったり)

 何故か、稲川淳二さんの解説やらも聞けますね。特典映像入ってたり。

●総評など

 ホラーとして、なかなか面白い映画ではありました。リアリティがあるので、ノレました。
 でもそんなに騒ぐほど、スゲエ映画だったというワケでもなかった。残念ながら。

 (失礼ながら)個人的に考えたラストなんですが、ネタバレぎみ: ●●が、バラバラになった●●の手足なんかをベッドにばらまいて立ち去るとかいう感じだったら、もう少し冷えたかな、と。
 ラストはもっと、衝撃的な映像で良かったと思うんですよ。ラストただ一つで、強烈なパンチが欲しかった。

 個人的には、惜しいな、と。
 まぁいつも言ってますが、僕の感覚が正しい、という事は全くありませんので、あくまでも個人的な感想、という事にはなりますが……。

 でもこの映画はオチを楽しむばかりではなく、全編をそれとなく楽しむ映画という気もしますね。時に派手な物音などでびっくりもしますし。
 本当に、恐ろしい事が現実に起こっている。と錯覚させんばかりの見せ方は、非常に上手いと思います。
 絶賛はしませんが、これはこれで充分に面白怖い映画でした。


「うみねこのなく頃に(エピソード1)

 原作 竜騎士07
 監督 今 千秋

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★☆☆

 (あらすじ: 右代宮一族。彼らは離れ島の屋敷に、今年も続々と集まった。その島に伝わる魔女伝説。突如、館で惨劇が始まり、親族達は次々と殺されていく。殺したのは魔女なのか? それとも人間か…?)

 (一言: 絵や演出などについては文句ナシの出来。オープニング曲も良く、世界観を盛り上げてくれる。マイナス要素としては、感情移入できるキャラが少なく、おばさん連中を覚え切れなかったり、さらにエピソード2の出だしがたいくつで、極めつけは次回予告のセリフがあまりにもひどかった)


左)戦人(ばとら)
右)真理亞(まりあ)


左)朱志香(じぇしか)
●あらすじ

 1986年10月4日。
 右代宮(うしろみや)家の親族が続々と、「六軒島」という離れ島に集まった。

 主人公、右代宮 戦人(ばとら)。その両親、霧江(きりえ)と留弗夫(るどるふ)。

 いとこの譲治(じょうじ)、朱志香(じぇしか)。
 幼い少女の真理亞(まりあ)、その母、楼座(ろうざ)おばさん。
 その他、4人の使用人も合わせて、18人もの人間が島の館に集まったのだった。

 彼らは1年に1度ここに集まり、近況報告をしている。だが、大人達には他にも事情がある。
 ――右代宮 金蔵。親族の中心人物にあたる彼は、魔女ベアトリーチェに魂を売り渡し、10tの黄金を手にしたいわれている。親族達はその遺産分配の話をしたがっているのだ。

 だがその黄金は、実在するのかどうかわからない。だが、金があるのは確かだ。
 金蔵は金蔵で、素直に遺産を分配するのかどうか、定かではない。

 そして屋敷の広間の壁に掲げられた大きな絵。魔女ベアトリーチェが描かれたその絵の下には、呪わしき碑文(ひぶん)が刻まれているのだった……。

●感想

 まず第一に、皆の名前がかなりイカレ……と言うか、イカシてます。たまに霧江、とかフツーの名前も混じってはいますが。
 いや〜しかし、「戦人(ばとら)」はないよなぁと……。これだけでもう、すごすぎです。

 で。戦人は若い女を見ればすぐ「乳もませろ〜」とせまるんですが、その勢いはほんの序盤だけ、みたいですね。特に要らないかな、と。
 ロリキャラの真理亞の「う〜」は、聞いててこっちも腹立ってきそうに……。


真理亞のキモ顔。
いいホラー顔しているんです
が、何故か凶悪さばかりが
目立つ
 色々あって、真理亞は魔女ベアトリーチェから手紙をもらいます。
 親族を前にして、ベアトリーチェの手紙を読んでいる時の、真理亞の豹変(ひょうへん)ぶり……と言うか、意地の悪い笑い顔は、かなり凶悪です。
 その凶悪すぎる顔を見て、「何なのよ、その顔はぁっ!」とか、誰もそこには突っ込まないんですね……。

 手紙の内容によって、親族みんなで金塊探しをしよう、という話になる。

 そして翌日の朝……悲劇が起こった。
 これは、惨劇の始まりなのか……?

 1巻の後、次回予告を観てたまげました。
 まりあの凶悪な顔が、次巻ではさらにさらに、卑劣なほどにパワーアップしているようで……。ぐあー、すげえ顔です。
 

 オープニング、かなりいいですね。曲も良ければ見せ方もいい。感動的で、素晴らしい。ハマリます。
 エンディングテーマもかなり個性的でいいですね。あの笑い声とか。

 DVD1巻を見た限りでは、すげえなぁと。なかなか面白い。
 莫大な遺産、相続争い、館での惨劇……。
 ミステリーなどでよくある話かなぁと思ったんですが、どうなるかは今後に期待しておきます。

 でもあんまり好きになれるキャラがいません。誰に感情移入していいのかわからない。
 戦人はなんかエロゲーの主人公みたいだし、譲治はおとなしすぎるし、おじさんおばさん連中は誰も好きになれそうにないし……。真理亞は凶悪そうだし(元々、イジワルな性格だったら、まだノレた気が。根が素直でおとなしそうなのが、個人的にはノレない)。

 難しい。話を客観的に見るしかなさそうです。


屋敷の広間に飾られた、
魔女ベアトリーチェの画
 ●DVD2巻目

 1巻目のラストでいっきに6人も死んだのはショッキングでしたが、「誰がいなくなったのか、全然ピンと来ません」ね。おばさん連中もなんかかぶってるし。ジェシカの母が死んだ、と思ったけど、そうじゃない?? 戦人の両親?? 
 てかひそかに、真理亞の母親も死んでた? なのに真理亞はかなり平然としてますけどね……。まぁその辺も、魔女にとりつかれたとか、そういう感じなのかなぁと。

 何度か立て続けに起こった殺人。それらは密室殺人なので、人間には不可能。やったのは魔女だ。
 そう真理亞に何度もたきつけられますが、本当に密室なのかどうか、ハッキリしない。窓や天井などを一切調べない状態でそんな事を言われても、全く納得がいきません。

 2巻目のラスト(4話目)はなかなかに衝撃ですが、この後、どうするんだろう…? と。犯人はもう決まりですか?
 でもこれ、「ブレアウィッチ」を思い出しちゃったり……。(もしかして、魔女つながりでワザと?)

 ●くだらない次回予告

 ちょっとした事ですが……、3話目の終わりの次回予告でシャノンが長々としゃべっている事が、あまりにもつまらなさすぎ……。
 で、4話目終わりの次回予告のジョウジも、かなりつまらない事を言っています……。こりゃあひどい。キャラをも壊してしまってますが。
 せっかくの作品の質を20%ぐらい台無しにしちゃったんじゃないか、と。ここは残念すぎました。

 ●生きた脇役がいない……?

 それにしてもキャラが多すぎなのか、戦人(ばとら)ぐらいしか目立ってませんね。脇役の、譲治やジェシカが浮いてきません。
 どんどん人が殺されていく話だから、陽気にもふるまえないだろうし、キャラ達としても、活躍のしどころを見失い続けているような気が。

 アニメ1〜4話を観た現時点では、ヒロインキャラがまったく萌えません。
 作品のヒロインの位置付けにあると思われる朱志香(ジェシカ)も、ほとんど萌えるところがない……。
 キモ顔し続ける、真理亞は論外だし……。あれじゃあ、タダの異常なガキです。

 ●

 ところで碑文なんですが、第1の晩、第2の晩、とかいうのがイマイチぴんと来なかったですね。
 まだ2日ぐらいしか経ってないんじゃね、と思いきや、もう第4の晩あたりまで進んでいる……?? というか、日数は関係ないんですかね。
 碑文そのものは、かなり魅力的に仕上がっているなぁ、と思いましたけど。

 ●ひぐらしとの比較

 ひぐらしとは全く違う世界観で勝負に出た、竜騎士07さん。その創作力には賞賛したいです。

 レナをはじめとし、個性的な(萌え)キャラで埋め尽くされていた「ひぐらし」。その「キャラへの愛着」が、爆発的な人気へとつながったと思われます。
 しかし、うみねこは同じ作家が書いているとは思えないほど、キャラへの愛着というものが前面に出て来ない。
 萌えキャラかと思った真理亞も、かなり陰質で、萌えにはほど遠い。まぁ原作ではどうなっているのかはわかりませんけど。

 結構、キャラにおじさんおばさんが多いので、話も自然とシリアスなものになっている模様。ひぐらしとは比較すらできないほど、違った作品という印象を受けました。
 まぁキャラの名前だけはかなりキバツなものでしたけどね。主人公からして戦人(ばとら)ですから。フツーの人じゃ思いつかない名前なんじゃないか、と思います。

 ●DVD3巻

 気を取り直して、3巻目を観てみます。5〜6話目ですね。
 3巻目の出だし、真理亞の注意事項。何ですか、あれは。ムカつくんですけど……。

 で、5話目でエピソード1は終わりました。
 なるほど。ひぐらしみたいに謎だらけで終わる、というワケですね。ネタバレ: みんなが生き返って、自分達の死に方の感想などを言い合ってますけどね……。面白いのかどうかは微妙なところで
 (ネタバレ: 意気込んで、戦人が魔女を指さして「お前の存在を否定してやるぜ!」と言っているのが何だか変。会話している時点で、その存在を認めているような気が

 でも魔女達、スカしてますね……。

 で。エピソード2に続く、というワケですか。
 6話目、エピソード2の出だしはかなりおとなしめでしたね。シャノンと譲治の恋話と、カノンとジェシカの恋話。……ノレなかったですね、正直。
 どうでもいいけど、エピソ−ド1の謎には全くせまらんのか、と。

 次回予告で、カノンもまたすげえつまらない事を言っているし……つーか、キャラ壊してるし。誰なんだろ、ここのセリフを考えたのは……。ひどすぎる……。


「ワンピース the movie オマツリ男爵と秘密の島」
(情報提供: DDさん)

 原作 尾田 栄一郎
 監督 細田 守

 ホラー度:★★★☆☆
 面白さ :★★★★★(ホラー的には★3

 (あらすじ: 海賊一味ルフィ達が、リゾートを夢見てやって来たオマツリ島。その島の王、オマツリ男爵はしかし、彼らに「地獄の試練」を言い渡してくる。ルフィは面白半分に申し受けるが、いつしか仲間達が一人また一人と消えてゆく。消えた仲間達はどうなってしまったのか…? そしてオマツリ男爵の目的は何か)

●いきさつ

 ウチの掲示板にて、DDさんに紹介していただきました。

 [1811] 早速すいません依頼です。  投稿者:DD  投稿日:2009年12月20日

 (前略)
 劇場版ワンピース「オマツリ男爵と秘密の島」(ハリポタみたいだな・・・)、ケーブルネットワークの再放送でほんの30分ですが見ました。途中で家族が帰宅・・・無念。
 一番佳境に入る戦闘シーンですね。まあ色々あって、単身敵とのタイマンに出向くルフィ。
 一瞬勝ったか?と思わせておいて更なる難関が待ち受けるというのはまあジャンプ系列ではお馴染みですが、今回は・・・・・いや今回のラスボスは、一言で言うなら「うわきめぇ!!
」でした。
 ぶっちゃけ「ハリガネムシ」+「蓮コラ」+「細菌っぽい何か」とでもいいましょうか・・・・あんなのがCG合成で向かって来たら普通発狂します。しかも映画館のスクリーンで見ちゃたらショック死するんじゃないでしょうか?
 しかもゴゴゴゴゴとかドドドドドとかのエフェクトが必要以上に付かない=生きてるとは思えないような妙な静けさが作品内に溢れかえっているんですね。極端に言えば、死体と戦っているようなものです。しかし、死というのはその人の精神や歴史その物を指しているのかも知れない。・・・回りくどいのは、ネタバレ防止だからです。
 また、特徴的なのが色使い。
 とにかく、平和な時間や生還した時の溢れるような光とバトルシーンの極端な暗さ、そして仲間との不和状態の闇。
 (中略)
 見終わってから「怖かったねー」と言い合えないような気味の悪さ、訳の分からなさ、普通の戦いでバッタバッタとやられるのとはまったく違う、異常な雰囲気が全開でした。
 (後略)

 ……との事。貴重な情報、どうもありがとうございました。
 まさかかの「ワンピース」がホラーにつながっている、とは思いもしませんでしたので。

●あらすじ&レビュー

 海賊一味ルフィとその仲間達は、海原を渡り、彼らの船でオマツリ島にやって来た。

 オマツリ島――そこは、海賊の中の海賊の中の海賊の中の海賊ならば、信頼する仲間をつれてこの島に来るがいい…。そんな挑戦的な言い伝えのある島だった。
 そこにあるのは、リゾート、お祭り、豪華な食い物……。一行はそんなフレコミを信じて、やって来たのだった。

 そうして着いたオマツリ島。
 フレコミに恥じない、超豪華なリゾート地がそこに広がっていた。
 その島の王、オマツリ男爵(だんしゃく)。彼はリゾートをエンジョイする前に、「地獄の試練」を受けるように言ってくる。

 武者修行に来たんじゃないんだから、と言う仲間達の反対を押し切り、主人公のルフィは乗り気を示す。

 地獄の試練――「金魚すくい」。しかし出て来たのは、巨大な化け物魚だった。
 ムチゴロウ、という島の男と対戦する。ルフィ達は苦戦しながらも、おのおのの持つ特殊な力を出し合って、勝利する。

 次に待ち受けていたのは、「輪投げ」。
 しかし、普通の輪投げではない。4対4のバトル。島の街にはりめぐらされた水路を、高速ボートに乗って死闘を繰り広げる事になる。

 ……島に遊びに来たハズなのに、ルフィ達一行は戦いを強いられている。
 その勝利の果てに待っているハズの遊楽を夢見て、彼らは戦い続けるのだった。

 そのルフィ達の様子を、陰でうかがうチョビヒゲの男。
 そしてオマツリ男爵の真の目的は何か――。

 ワンピースのアニメは初めて観たんですが、画の塗りがずいぶん簡単で驚きました。
 ……顔、肌色1色。髪も単色。あまりにもダイタンすぎ。しかも映画なのに……。でもよく動くので、まぁいいのかな、と。

 で。主人公達、ルフィ、ナミ、チョッパー、ロビン、ウソップ……、
 までは名前がわかったんですが、金髪と緑の髪の男の名前がずうっとわからないままでした。最後の方、ルフィが彼らの名前を呼ぶところと、エンドロールでやっとわかったという……。サンジとゾロ、ですね。

 で、そのサンジら2人が険悪にケンカするのも、別に男爵の策略(さくりゃく)のせい、というワケではなく、勝手にケンカしたようですけどね……。ナミとウソップのケンカのきっかけも、かなりあいまいだった気が。(ナミの言う「裏切った」というのが、ウソップが羽を生やして飛んでいった事を示すのなら、そこはハッキリと言ってほしかった)

 その辺、男爵の「策略」が感じられれば、より良かったんじゃないかな、と思いました。そうすれば「男爵は仲間をバラバラにする」というチョビヒゲ男の言葉が生きてくると思うので。

 背景はさすがに綺麗。CGとかふんだんに使っているようで、よく動きますね。序盤で言えば、ジャングルの描き方とかかなり凝ってましたし、グリグリ動くのは気持ち良かったです。一昔前のアニメじゃ、こうはいきませんから(8割方が、一枚絵を動かす程度)。

 で。全体的になかなか面白かったんですが、「怖さ」に焦点を当ててみれば……、まぁ普通かな、と。
 長いクライマックスシーンの「暗さ」はかなりいいんですが……、ラストの化け物もまぁ、そこそこの怖さかな、と。

 ネタバレ: ラスト、無事だった仲間達が、実はニセモノでした、とか言うんなら(ルフィではなく、彼らがニヤリと笑ってエンド)、まだゾッとしたかなと思いましたが、まぁそれはないようなので

 他、細かい話ですが、輪投げバトル中、ホテル内でチョビヒゲのオジサンがルフィを呼ぶ所で、致命傷になりかねないほどのでかい石(岩)を投げつけようとしたりしたのが、やりすぎかな、と。
 あと、ネタバレ: デイジーが花に食われそうになったのをチョッパーに助けられて、地面に激しく落下する所。フツーの子なんで、あれは死ぬと思います……。少なくとも大ケガ

●総評など

 2回観たんですが、2度観てもほとんど色あせる事なく、楽しめました。かなり面白い作品でした。
 色々な見せ場があり、趣向をこらしてあり、話のテンポもかなりいい。キャラも生きてますし。
 笑いあり、涙あり、でした。

 ホラー的にはちょっと残念でしたが、やりすぎても娯楽作にはならなかったでしょうし、バランス的にはこのぐらいでちょうど良いのかなと思いました。
 ムチゴロウがひからびる顔とか、プップ言うカッパの辺りとか、ラストの暗い雰囲気とかは、なかなか光ってましたけどね。

 ご紹介して下さったDDさん、どうもです。映画としては、かなり面白かったです。


「ヒルズ・ハブ・アイズ」
(原題:THE HILLS HAVE EYES/2006年製作/アメリカ映画)

 監督 アレクサンドル・アジャ(「ハイテンション」)
 製作 ウェス・クレイヴン(「スクリーム」)
 主演 アローン・スタンフォード(ダグ)、ダン・バード(ボビー)

 ホラー度:★★★☆☆(後半のクライマックス部:★4
 面白さ :★★★☆☆

 (あらすじ: トレーラーで砂漠の道を渡っていく一家、6人。だがとある男のワナに落ちて、彼らのトレーラーは事故にあい、立ち往生してしまう。携帯電話も通じない。そんな彼らを、丘の上からじっと見ている者達がいた…)

 (一言: グロ度、怪人のキャラ度、エロ度、全てにおいて中途半端。ですが、ホラーを一貫して描いているのは良かったし、後半の死闘はなかなかの迫力でした)


●いきさつ

 レンタルDVDの予告編などで何度か目にしていた「ヒルズ・ハブ・アイズ」。かなり怖そう。そして最高級にグロそう。
 さらに、このDVDの背表紙を見てみると、「この映画を見ずしてホラーを語ることなかれ」とか、挑戦的な文句が書かれているではありませんか。……じゃあ観るしかありません。(あおりには一応ノッてみる)

 ネットで調べてみたら、この「ヒルズ〜」は、ウェス・クレイヴン監督の「サランドラ」をリメイクしたもの、という事ですね。
 なお、冒頭での核実験による映像がマズかったらしく(奇形児の映像なども入っている)、公開時には色々と問題があった模様。

●あらすじ

 元警官で初老を迎えたボブ。彼は女房と息子達、娘夫婦を連れて、トレーラー(大型車の後ろにもう一台、寝室やキッチンなどを供えた車をつなげてある)で長旅をしていた。
 荒野の広がるさなかにポツンと建っていたガソリンスタンド。そこに立ち寄った際、スタンドの男に近道を教わる。
 しかし、それはワナだった。
 その教わった道を行くや、事故に見舞われる。タイヤがパンクし、車を道脇の大きな岩にぶつけてしまい、走行不能となってしまった。
 ……彼らは知るハズもなかった。タイヤのパンクが、故意であった事を。

 携帯電話も通じない。ボブとダグは二手に分かれ、助けを呼びに出かける。ボブはさっきのガソリンスタンドまで歩いて戻り、ボブの娘リンの婿(むこ)であるダグは、丘の向こうに行き、助けを呼ぶ事に。
 女3人と息子1人は、トレーラー付近で彼らの帰りを待つ事になった。

 そんな彼らを、向こうの丘から見ている、複数の目があった……。

●感想など

 一言で言えば、「核汚染により怪物として生まれた人間達が、近くを通りかかった人間達を襲って殺す」という話。

 予告編を見た時は、血しぶきバンバンで「すげえグロそうだ」と思ったんですが……、いざ本編を見てみれば、そうでもない。
 でも混じりっ気なしで、ホラーを描こうとする姿勢が感じられました。

 なお、エロいシーンはありそうでナシ。最近のハリウッドホラーは、こんなんばっかで燃焼しません。
 「食人族」を描いているハズなのに、そういったシーンはおまけ程度。この辺を掘り下げれば、もっとグロくていいホラーになったんじゃないかなぁと思いました。
 残虐なものを描くのなら、徹底してやってほしい。この作品は色々と中途半端。

 核に汚染された村で生まれ、奇怪な形相の男達。目鼻がゆがみ、口が裂けたりしている。
 何故かそこに、妙な「キャラっぽさ(+変態っぽさ)」が混じっていて、ホラー度が半減。個性を交えても必ずしも面白くなるとは限らない、という事を教わったような気がします。

 何が悪いのかと言えば、彼らに愛称が付いているのが一番悪い。「ゴーグル」だの「ジュピター」だの「ルビー」だの。正体不明の化け物が、そこで「キャラ」に成り下がってしまったような気がしました。(ジェイソンなどの殺人鬼キャラと比べると、かなり見劣りしてしまう)
 キャラ度も中途半端なら、なかった方がまだ良かった。

 ●中盤 (ややネタバレあり)

 展開がノロイというか、ムダなシーン(のんびり)がやや多い。中盤はややダレますね。
 途中、トレーラー内で眠る娘達を怪人達が襲うシーンがあるんですが……、エロに突入しそうでしませんでしたねー。もったいぶりすぎ。ホラー的には、なかなかの見せ場になっているんですが。

 で。ここでなかなか重苦しく、家族らが殺されていくんですが……、みんな銃などで殺されるので、特にグロくもなく。冒頭のようにツルハシで残酷に殺したりすれば、もっとホラー度は高まったのに、と思いました。
 大体にして、銃殺シーンならマフィア映画などでも充分に見られる?ので。

 殺しもアッサリならば、エロも回避。何だか、遠慮しすぎの映画です。
 そもそも、怪人達がどうも怖くない。いかにも特殊メイクです、という顔をしているからでしょうか……?

 シメとして、強そうな怪人が一人、犬にかぶりつき殺されるというのも、いきなりのユーモアで首をかしげてしまいます。


ダグ


ボビー(左)、ブレンダ(右)
 ●物語後半 (結構ネタバレあり)

 謎の怪人達によって、家族らの大半を殺されてしまった。
 残されたのは、ダグ(ボブの娘リンの夫)とボビー(ボブの息子)、そしてブレンダ(ボブの娘)の3人。
 ダグは、怪人達に(何故か)奪われた自分の赤ん坊を救い出すため、生き残った犬を連れ、単身、敵地に乗り込んでいく……。犬にもビーストとかいう名前がついてたりするので、怪人達の愛称と混ざり合って何だかややこしい。犬も3匹いたようですし。

 ……で。怪人達は何故、赤ん坊をすぐに殺さずに奪ったのか。そしてボビーとブレンダは、どうしてダグを一人で行かせるのか。
 その辺の描き方が、しっかりしていません。そもそも、赤ん坊(もしくは恋人)を奪われて、「それを救いに行く」という展開は、個人的に超・好きじゃありませんし。
 僕は一生書きたくないですね。そんな展開だけは。

 ●

 敵の本拠地に乗り込んでいくというのは、ホラーというよりアクションもののノリのような気がしますが……、ちゃんと盛り上がってくれますね。クライマックスでの怪人の暴れようと、ダグの血まみれ度はなかなか良かったです。
 とは言え、ダグが殺されるべきところで殺されなかった、というのも、何だかワケわかりません。せっかく助けてくれた犬を、ダグが見捨てるとか。

 さらに大きなツッコミ所としては、ラスト付近での、ネタバレ: トレーラーを丸ごと使ったワナ。
 トレーラーをぶっ壊しちゃあ、最期の砦としての居場所がなくなっちゃうでしょうに……。絶対に、そんなワナは使わない気がします。あきらめての自爆、ならわからなくもないですが。
 しかもそんな大掛かりなワナを仕掛けておいて、殺したのがたった一人では浮かばれない……。

 キーキャラとしての、敵方のルビーの存在はいいです。ただ、奇怪さが不足してましたし、毒もなさすぎでした。



セルDVD版の表紙

レンタル版は別モノ
「悪夢探偵」
(2007年劇場公開)

 監督 塚本晋也(「鉄男」「6月の蛇」)
 主演 松田龍平、hitomi、安藤政信、大杉漣、塚本晋也

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★★

 (あらすじ: 自室のベッドの上で自らの身体を切り刻んで死ぬという、凄惨な自殺をとげた若い女と中年男。彼らは死の間際、同じ人物に電話をかけていた。彼らを死に追いやった犯人がいるのか? 奇怪さを増す事件の謎に迫る中、警察はとある男に協力を申し出た。人の夢の中に入る事ができるという男、「悪夢探偵」に)

 (一言: 奇怪な事件。迫力のホラーシーン。そして訪れる凄惨な死…。加えて、やや控えめな性格の悪夢探偵。と、なかなかツボに来る所が多かった。全編に漂う、暗さもいい。夢の見せ方も非常に魅力的。クライマックスも盛り上がります。特に悪い所が見当たらない)



●冒頭

 とある古びたアパートに帰宅する中年男。
 部屋の中で一息ついて、ふと壁の隅を見やる。そこには、長い髪の毛の束がぶら下がっていた。だがそれに驚くでもなく、男は買ってきた新聞などを見やる。
 そこに現れた謎の青年。彼は戸口からではなく、部屋の中にいきなり這い出るような現れ方をした。

 中年男はその男を知っていた。
 青年の話によれば、壁にぶら下がっている長い髪は、中年男の娘……しかして、生まれる事のなかった娘なのだという。
 話を受けて、中年男は青年にいきなり礼を言い出す。「ありがとう。アナタに頼んで良かった」と。
 中年男はこの青年に、「悪夢を見て困るから取り除いてほしい」と頼んでいたのだ。

 中年男はこの「夢の世界」に留まる事を告げる。娘と一緒に残りたい、と。しかし青年は困る。一緒に元の世界に帰ってもらわないと、自分も戻れなくなるのだ。
 しかし中年男はがんとして元の世界に戻ろうとはしない。家族の事を心底嫌っているらしい。
 やがて青年は苦しみ出した。

 青年が目覚めた先は、明るい病室内だった。夢の中の中年男は、ベッドの上で事切れていた。
 中年男の家族が周囲にいる。青年が中年男を連れ戻すのに失敗し、死なせてしまった事に当惑しているようだ。
 青年は部屋から追い出される。彼は中年男の家族らのみにくい心を見通して、「あぁ嫌だ、いやだ……」と呟く。

 その青年こそが――「悪夢探偵」なのだった。


悪夢探偵、影沼京一
(松田龍平)




霧島刑事(hitomi)
演技はやや固めか
●レビューなど

 悪夢探偵、影沼京一役は、松田龍平。ベテラン俳優ですね。
 ヒロインの女刑事、霧島を歌手で映画初主演のhitomiが演じています。全編ずっとキリッとしてますね。その脇ベテラン俳優の安藤政信と大杉 漣(れん)などが固めます。ベテランが出てると、やっぱり安心して観られますね。あと監督も出演してるみたいですね。

 世にも恐ろしい死に方で自殺する者達。
 ある女はハサミで自分の首を切り、ある男は妻と一緒のベッドの中で、カッターナイフで自らの首を何度となく切り刻んで自殺……。
 彼らが何モノかに殺されるシーンがまた凄い……。見えない何か。激しい金属音とめまぐるしく切り替わるカメラ視点。迫力のホラーシーンでした。
 あと、カッターナイフでの自殺のシーンなどは、見ているだけで寒気がします。血しぶきがびしゃびしゃ飛び散って……凄ぇコトに。

 彼らは死の間際、同じ人物に電話をかけていた。彼らは単なる自殺ではなく、彼らを死においやった犯人がいるのか……?

 ●わからん……

 でも不思議なのが、犯人の携帯電話の番号が警察にはわかっているのに、犯人を割り出せないというところ。
 電話番号がわかっていても、持ち主まではわからないもんなんですか? 携帯電話会社に、番号と氏名が一緒に登録されてるような気がするんですが……。何で電話会社に一応でも問い合わせてみないのか、そこがわからない。
 使い捨ての携帯電話というのなら、持ち主は特定できないかもしれません。でもそんな可能性についても、劇中で特に言及されていませんし。わかりませんね。

 ●

 その後、犯人の携帯電話に警察がかけてみます。犯人は電話を通じて、自殺した者達に何らかの暗示をかけていた可能性があるから。
 そこで悪夢探偵の登場。電話をかけた刑事の夢の中に入って、何が起きているのか、調べようというのです。
 ……この辺のリアリティは弱い気もしますが(そんな捜査方法が実際にとられるとは思えないし、警察が、悪夢探偵に頼るのが早すぎる)、でも物語としては面白いです。

 映画全体についても、素直に面白かったです。怖いシーンはしっかりと怖かったですし。
 クライマックスもなかなか盛り上がりました。

 ●余談の難点

 難点があるとすれば、タイトルの「悪夢探偵」がしっくりこない。どうも「探偵」というカンジがしなかったもので。
 それに、悪夢探偵のキャラがちょっと弱いかな、という気もします。「夢の中に入る事ができる」「死にたがり」という以外にも、何か鮮烈な魅力が欲しかった。


「妄想代理人」
(WOWOWオリジナルアニメ:DVD全6巻:2004年製作)

 ホラー度:★★★☆☆(各話により★2〜3)
 面白さ :★★★☆☆(同上)/最終話のみ :★★★★★

 (あらすじ: 月子はキャラクターデザイナー。ヒット作「マロミ」以降、アイディアが出ずにスランプに陥っていた。そんなある日、月子はバットを持った少年に襲われ、入院する。悲劇のヒロインとしてTVなどで注目される中、襲われたのは月子の狂言(妄想話)なのではないか、と疑う声も出てくる。しかし、犠牲者は次々と増えていく。「少年バット」と名づけられた、通り魔の正体は果たして?)

 (一言: いい感じで見れた1話。しかし2話から主人公が次々と変わっていき、話もイマイチ盛り上がらないまま進んでいく。以降、シリアスになったりやたらコミカルになったり、と各話毎のバランスも悪かった。何とかDVDの最終巻で盛り上がりを見せ、最終話は最高に良かった。……見終えて、救われました)




月子は、自分が生み出した
「マロミ」というキャラのぬい
ぐるみが、動いて見える妄想
にとりつかれている。
●第1話 あらすじ

 鷺(さぎ) 月子はキャラクターデザイナーの仕事をしている。大ヒットキャラ「マロミ」を生み出し、成功を収めたものの、次の新案が浮かばずに悩んでいた。
 そんな時、家路途中、月子はバットを持った少年に襲われ、ケガをして入院する。
 その犯人像がTVなどで流れ、ちまたに「少年バット」として名をはせる事になった。

 犯人は捕まらない。
 次第に、月子の狂言説がネットなどで浮き上がってきた。スランプに陥った月子が、逃げるための口実を作ったではないかと。元より月子には妄想癖があった。ぬいぐるみが動き、話しかけてさえくるのだ。
 果たして、月子が襲われたのは真実か。それとも妄想か、狂言か……?

●第2話 あらすじ

 学校のみならず、周囲の人気者である「イッチー」こと、優一。
 しかしとある日から、彼は「少年バット」ではないかと周囲から疑いの目を向けられ、人気者の座から一転して、イジメにあってしまう。
 優一は以前通りにふるまうが、なかなか誰もわかってはくれない。

 ウッシーと呼ばれる、ノロマな牛山という子に、人気者の座を奪われようとしていて、優一は焦りだす。
 しかし、座を奪い返す策などは失敗し、ドツボにハマッていく……。

 そんな時、少年バットが現れ……。

●感想など


オープニングはかなり奇抜。
クセになります。
 ホラーっぽいアニメを探して見つけたのがこの「妄想代理人」。以前「パーフェクトブルー」を観ましたが、その監督さんの作品なんですね。

 まず目を見張るのがオープニング。「アーイアー……!」で始まる「夢の島思念公園」というハイテンションな曲かなり意表を突いてますが、曲に合わせたアニメもまた、かなり意外。見ているとクセになりそうなオープニングです。実際、リピートして流し続けたりもしました。

 1、2話はなかなか面白かったんですが、3、4話で特に盛り上がるでもなく「そこそこ」という印象を受けました。登場キャラの紹介エピソード程度、であるのが残念でした。
 なお、3話はいきなり女の大きなあえぎ声で始まるので、気をつけましょう。……なお、これは三石琴乃さん(エヴァのミサトなどの声優さんね)のあえぎ声?だというのだから2度びっくり。

 そして迎える5話で思いっきり萎える展開に。「何コレ?」と言わんばかりの遊びっぷり。いきなりRPGゲーム世界の話になっちゃうんだから、ガックリです。妄想なのはいいんですが、もう少し何とかならなかったのかと。
 (まぁコレも実は、後半で帳消しにはなるんですが)

 そして6話。ここは最高にイイ。やはり主役の鷺 月子が話にからんでくると面白くなりますね。
 二人の登場人物をかなり複雑にラップさせたりもしていますし、ガツン!と来る場面の衝撃度もバツグンでした。

 7話で何だか小難しく暗い展開になったな〜と思いきや(5話での下らない展開を帳消しにしてくれたのは良かった)、8話ではいきなりコミカルに弾けすぎ。どうにもバランスが悪い。
 どうもアッチ行ったりコッチ行ったり、という感じがして、落ち着かない。もっと月子川津(第1話に出てくる、中年のフリーライター)を前面に出せば良かったのに、と思いました。川津のネチっこそうないやらしさが好きなので。
 ネットで知り合った三人が自殺する8話は、丸ごといらなかった気もします。ラストにちょっとした驚きはありますが、少年バットもムリにからめた感じですし、実際少年バットがいなくても成り立つ話だったようなので。

 ●アナザーストーリーめいた話ばかりが続く…

 全13話という事で、この先もう少し続きますが、面白くなってくれるのかなってくれないのか、ちょっと不安になりました。

 9話はおばさん達の下らない談話が続き(ひそかに、りんたろう氏が参加してるという…)、10話は何故か、アニメ製作現場の話。でも、アニメの製作現場を事細かに紹介されてもね……。

 本編とかけ離れてしまったような話ばかりが続いて、脱力ぎみ……。かけ離れていたとしても、もっと面白怖い話を作れたと思うんですけどね……。人々の追い詰められ方も、イマイチ劇的とは言えず。6話みたいな衝撃度のある話があと2〜3話あれば、もっと面白くなったと思うんですけどね。惜しいです。

 ●期待のかかる最終巻(DVD6巻)

 11話。今までとは何かが違う。
 とある暗ぁい女と少年バットが対峙する……! そこで意外な展開に。
 ……しかぁーし、ちょっと話がクドい。それに、作画がどうにも美しくない……。女のドアップが連続で来るのはいいんですが、その顔がもう少し何とかならなかったのか……。

 12話。5話のトンデモ話を引きずっていますが、これはこれで面白くはなっています。レーダーマン?のキャラセンスはガックリものなんですが、あんまりカッコ良すぎてもヒーローものになっちゃうし……バランスは難しそう。
 でもこの辺で少年バットの正体が大きく膨らんで、話も弾けてますね。


少年バットの正体は…?
 ●スゲエ最終話

 迎えた最終話。
 正直、呆気にとられてしまいました。やや放心してしまうほど。
 いきなり、こんなに劇的に盛り上がるとは!! すげぇ……!! 今までのは何だったの? というくらい、最終話は面白かった。泣けるシーンもありましたし。
 このテンションとこの破壊力を、劇中にもっともっと盛り込んでほしかった……。
 でも最終話は100点ですね。文句のつけようがないです。3〜12話はかなりグチばっかりのレビューになってしまいましたが、この最終話はかなりいい。
 終わり良ければ全て良し、という感じにすらなってしまいました。

 ただ残念なのは、個人的に、川津をもっと使えたハズだと思うんですけどね。あんなに面白そうなキャラなのに、ほとんど出番もなく何の役にも立たなかったのは残念すぎ。声優さんも有名な人使ってるのに。
 それを言えば、川津ばかりでなく、他のサブキャラも生かしきれていない感じは残るんですけどね。

 でもチカラのこもった最終話だったのは確かです。ムリヤリに?納得させられてしまいました。


「シティ・オブ・ザ・リビングデッド」
(原題 CITY OF RODD/2006年 アメリカ/本編 77分)

 スプラッター度:★★★★
 魅力    :★★★★(ストーリー的には★★★

 (あらすじ: 謎の寄生虫がはびこり、その街の人間は皆、ゾンビと化してしまっていた。そんな中、一人の老人がその街にやってくる。老人は新しいクツが欲しいのだ。相棒の歩行器を武器に、迫り来るゾンビどもを撃破して、老人は無事に目的を果たす事ができるのか…?)

 (一言: 絵がいい。おバカストーリーかと思いきや、実はそうでもない。常にゾンビに襲われ続け、気の休まるヒマもない。スプラッター度は高め。生きている人間達に出会ったりして、そこそこのストーリー展開も楽しめる)







●あらすじ

 突如、謎の寄生虫がはびこり、その街にはゾンビが蔓延(まんえん)していた……。
 フレッド老人は単身、その街にやってくる。老人は新しい靴を求めて、やってきたのだ。おバカなストーリーなのかと思いきや、そうではなく、その老人はボケはじめているのだ。自分の手にする歩行器(杖のようなもの)と会話している。

 あてもなく街をさまようが、なかなか靴屋は見つからない。行く先々で、老人はゾンビに襲われるが、歩行器でぶん殴って撃破していく。
 時折、生きている人間と出会うが、なかなか助け合えない。互いの言い分を聞いている内に、彼らはゾンビに食われたり、老人を見捨てて逃げる事になったりする。

 果たして、老人は無事に目的を果たす事ができるのか……?

●感想

 とにかく、絵がいいです。キャラデザ、キャラや背景の描き込み具合。ゾンビ達のおどろおどろしさ。どれをとっても素晴らしい。
 しかし、動きは全体的にカクカクとしてます。アニメというより、PCで製作したフラッシュを見ている感じ。最初は気になりましたが、観ている内にそうでもなくなりました。

 ストーリーはあってなきがごとし(中盤あたりまでは)全編、ほとんどゾンビだらけ。頭や手足が飛び散り、そしてまた生きている人間は、ゾンビどもに襲われて食われてしまう……。
 まるで絵本の挿絵を思わせる絵柄なのに、スプラッター度はかなり高めですね。
 そして、老人は常に、危機一髪で乗り切っている。見ていて、なかなかハラハラさせられます。ストーリー的にはそんなに感心するほど面白くて巧妙、というワケではないのですが、アニメでB級ホラーを作ったというところがやはり魅力的です。同じストーリーを実写でやっても、たぶんつまらなかった。

 で。どうやらFrank Sudolという人が、ほとんど一人で製作した模様。映像ばかりかBGMまでも。スゴイとしか言い様がない。人間その気になれば、たった一人で映画を一本作れるモンなんですね……。

 ●日本語吹き替えはひどいデキ

 で、音声に日本語吹き替えも入っていますが、これがまた緊張感に欠けるデキになっています。字幕通りではなく、やたらくだらないセリフに替えられたり、せっかく盛り上がるシーンでのハードなBGMが削除されたりと、とてもオススメできません。老人が歩行器と話している、というのもわかりにくい。

 せっかくの真面目なストーリーを、「おバカストーリーに替えてしまっている」ところなどはもう…「ムゴイ」としか言い様がない。
 そういう事で、素直に「日本語字幕」で「音声は英語」で観て下さい。


「魔人探偵 脳噛ネウロ」

 ホラー度:★★★☆☆
 面白さ :★★★☆☆

 (あらすじ: 魔界からやってきたネウロは美味なる「謎」を食すため、現世に現れる。父親を亡くした弥子は、その死の謎を解くため、ネウロと行動を共にする。次々と巻き起こる事件。その謎を、ネウロと弥子は鮮やかに解いていく…)

 (一言: 謎はイマイチだけどキャラが面白い。悪魔ネウロの持つ「魔界777ツ能力(どうぐ)」。次に何が出てくるのか、という楽しみがあります。決めゼリフなども心地よい。ネウロにイジメられまくる弥子が笑えます…)

●いきさつなど

 ビデオレンタル店の棚を眺めていると、何だか怖そうなアニメを発見。
 「魔人探偵 脳噛(のうがみ)ネウロ」。一体何ものか。ずいぶんとイカレたタイトルですが……。内容も全く想像つきません。
 で、原作マンガは「週刊少年ジャンプ」連載との事で。キャラが立ってそうですね。ジャンプキャラは濃い、というイメージがあるもので(偏見)。……でも怖さはいかほどのものなのか? 期待と不安が入り混じります。

●観ての感想

 DVD1巻に、3話収録。とりあえず、1巻だけ観てみました。
 で、率直に言って、1話目はそこそこ面白かったんですが……、2〜3話が首をかしげるデキでした。
 まず1話目は、目新しさに目を奪われ、展開もまるで読めなかったので面白く観られました。でも2話目の謎が弱くて少し萎えてしまい、3話目は「満腹太郎」というキャラが……受け付けなかった(超・個人的?)。 


凄みをきかせたりイジメたり
 ●1話目「食」

 まずはキャラ紹介のエピソード、という感じですね。
 魔人探偵〜というタイトルからわかるように、ネウロは人間ではないらしい。魔界から来た悪魔なのだ。彼と、子高生探偵、桂木 弥子(やこ)との関係は何なのか?

 弥子はネウロの推理によって、女子高生探偵として祭り上げられている。雑誌などにも取材され、弥子は一躍有名人になっている。ネウロはあくまでも弥子の影に回っている。しかし、ひと目につかないところでは、ネウロは弥子をイジメぬいているのだが……(笑えるんですが)。

 とある料理店に脅迫文が送りつけられた。相談を受ける警察とネウロ達。しかし、その場で事件は起きた。その料理店のチーフシェフが何者かに殺されたのだ。
 犯人は誰なのか。殺人の動機は? そして殺しの際に使われたトリックは……?

 ネウロの使う「魔界777ツ能力(どうぐ)」や、「決めゼリフ」など、ジャンプらしさ?が光ってます。
 謎、そして探偵劇はそんなに感心するほどのものじゃない、という気もしましたが(ハナから犯人バレバレ)、キャラクターが面白いので、楽しく観れました。ラストの格闘などもいい感じ。

 そして物語の根底にある、弥子自身が抱えている謎――。それは父親の死に関する謎だった。
 その謎を解くために、弥子は魔界からやってきたというネウロと、行動を共にする事にしたのだ……。

 悪魔じみた驚異的スピードで謎を解き、その「謎」を食うネウロ。しかし謎というより、悪意を食っている、という感じもしましたが……。
 ラストの方でネウロと弥子の出会いのシーンが描かれていますが、あまりにも素直というか普通すぎですね……。「突然現れる」というヒネリの無さが、ストレートでいいのか……?

 ●2話目「集」

 交差点のど真ん中で突如、女子高校生が倒れ、死亡した。犯人の目撃者はいない。この事件の謎を解く鍵はどこにあるのか……?

 死んだ女子高生は、コミュニティーサイト「Links」に登録していた。そのフレンドつながりで、弥子の友人から探偵の依頼をされる。(金を払うのかどうなのかは、うやむやにされてますけど)
 現場に足を運ぶネウロと弥子達。そこに、複数の取り巻きを従えた少女が現れた。彼女はコミュニティーを主催し、「姫」の愛称で親しまれていた。
 とある情報網から、事件の瞬間の映像を入手したネウロ達。そこに映っていたものは……。

 確実な証拠を得るため、ネウロは「おとり捜査」を提案する。エサは当然のごとく、弥子。
 しかし、命を張ったおとり捜査も、決定的瞬間の撮影に失敗。事件解決へは至らなかった……。
 「この謎はもう我輩の舌の上だ……」
 ネウロは何の根拠があってか、そう呟く。その時、探偵事務所に現れた者は……。

 物語のオーソドックスな形がわかってしまうと、2話目から見る目がキツクなります。個人的に、物語の1話目というのはスイスイ書けると思うんです。キャラ紹介が大半になりますから。続きものは、2話目からが難しい。
 で。2話目は探偵劇としての「謎」があまりにも普通すぎました(加害者しか知り得ない謎)。
 ……最初から犯人があらかたわかっている、というこの物語の設定そのものに、疑問すら感じてしまいました。

 探偵モノとしては弱いんですが、物語としては普通に面白かったです。


人間がバケモノ化するのが
いい
 ●3話目「笑(どく)」

 ネウロが冒頭でいう「毒のない笑いなど味気ない」という見本みたいなのが、お笑い芸人「満腹太郎」。彼のライブ中に、突如死者が続出した。一体、何が起こったのか?! 配られた弁当に、毒物でも入っていたのか……?

●総評など

 ネウロが「魔界777ツ能力」を使い、謎を解いたり犯人にとどめを刺したりするのが見どころですね。
 個人的に探偵モノがあまり好きじゃないせいか、どうも素直に謎解きシーンを見られませんでした。謎とかって、複雑すぎたり、そこまでする理由などが理解できなかったりで、どうにもリアリティを感じない時が多いんですよね……。
 逆に言えば、この1〜3話の謎はけっこう簡素だったので、まだ面白く観られたのかもしれません。この先、より複雑になっていくのであれば、頭がこんがらがって素直に楽しめないのかも……。

 でも、新しい感覚が結構詰まっている気もします。バケモノ化する人間を、悪魔のネウロが倒す。その謎を食らう。
 ほどよい格闘シーンなどもあり、一風変わった探偵モノであるのは確か。
 僕としては、ネウロを見ているだけでも飽きなかった。いちいちイジメられる弥子も笑えます。



写真はDVD版
「DAGON―ダゴン」
 (2001年製作/スペイン/98分)

 監督 スチュアート・ゴードン
 原作 H.P.ラヴクラフト「インスマウスの影」
 出演 フランシスコ・ラバル/エズラ・ゴッデン/ラクエル・メロノ

 ホラー度:★★★★☆
 魅力  :★★★★☆

 (あらすじ: 海上でボートが座礁し、救援に降り立った古びた村は、どこか雰囲気がおかしかった。半身が怪物と化した村人達から襲われるポール。逃げ惑う先で出会った娘は、夢で出会った娘だった。彼女とのつながりは何なのか。村人達があがめる邪神「ダゴン」とは…?)

 (一言: 「クトゥルフ」もの。前半はただひたすら逃げ惑うパニックホラーに近いが、主人公のポールが村人達に捕まってからの展開がスゴイ。ラストもクトゥルフ好きならきっとたまらないハズ?)

●あらすじ

 ポールは友人のハワードの船で、スペインに船遊びに来ていた。同乗しているのは恋人のバーバラ、ハワードの妻ビッキー、そしてハワード。

 陸地に古い町並みが広がっていた。どことなく空気が沈んでいるように見える……。
 そんな時、急激に雲行きが怪しくなり、またたく間に嵐が来た。ボートは波風にあおられ、突き出た岩に船体をぶつけてしまう。
 ボートの階下で悲鳴がした。ビッキーだ。ビッキーは寝室でベッドの横で倒れていた。どうやら足をやられたらしい。(足がどうなったのか、いまいち状況がわからないんですが。挟まれたのか折れたのか…)

 無線で救援を頼もうとするが、どうもダメらしい。(ものの数秒で「無線もダメだ」の一言で片付けられる)
 見える古びた町並み――村に向けて信号弾を打つ。だが双眼鏡で村の様子を見るも、まるで人影が見えない。これでは救援を待っていても無理だろう。
 救命ボートを降ろし、村に助けを求めに行く、ポールとバーバラ。ハワードは、怪我を負って動けないビッキーと共に船に残った。

 上陸するも、やはり村には人がいない。
 しかし教会に駆け込むと、神父がいた。事情を説明し、救援をお願いする。海の様子を見に戻ると、ハワードの船はすっかり嵐に飲み込まれてしまっていた! 今すぐ救出に向かわねばならない。
 丁度その場に船が停留していた。救援を頼むと、船を出してくれるという。
 警察へ事情を説明するために、とバーバラを村に残し、ポールは船に乗せられ、ハワードの元に向かった。

 ハワードの船に戻るが、ハワードとビッキーの姿はなかった。一体どこへ消えたのか……?

 仕方がないので、また村に戻る。すると今度はバーバラの姿もない。すると神父から、バーバラは警察に向かったのでホテルで待っていてほしい、との伝言を受ける。
 ひと気のない古びたホテルに案内される。フロントの男もいやに無愛想だ。しかも首に三本の大きな傷跡が見える。まるで魚のエラのようだ……。
 無愛想極まりなく、部屋への案内もない。ポールはホテル内をうろつき、部屋らしき所を見つけるが、そこはバスもトイレもベッドですらも汚いまま放置されたありさまで、まるで廃墟を思わせる悲惨さだった。

 ……外の様子が何だか騒がしいのに気付く。窓から外を見ると、村人がホテルの周囲に群がってきているではないか。そして自分を見ているようだ……。
 そればかりではない。彼らは自分の姿を見つけると、ホテル内に侵入してきた。まさか、この自分を捕らえるつもりなのか?! 何故だ?!
 ポールは逃げ出す。ヤツらは普通じゃない。一体、何なのだ?! この村はおかしいのか?!

 その途中、浮浪者のような老人と出くわした。酒を飲んではいるが、彼はどうやらまともな人間であるようだ……。彼はエゼキルと名乗った。(「エゼキル、嘘つかない」とか何とか、妙な名乗り方ではありましたが)
 そしてポールはバーバラとビッキーの死を伝えられる。(…で、老人がここで何故そんなウソをついたのか、実ははっきりしない。ポールを逃がすためにワザとあきらめさせたのか?)

 そのエゼキル老人から、この村の真相を教わる。このインボッカの村は確かに普通ではない。それはダゴンという邪神を崇めているからだった。
 ダゴンは数十年前、この村が食料難に襲われた時、海から魚や黄金を村にもたらし、村を裕福にした。しかし邪神ゆえ、ダゴンはいけにえを求めた。そしてダゴンを崇拝していく中、村人達の様相も変わっていった。徐々に海洋生物のように変化していったのだ……。

 一刻も早く、この村から逃げ出す必要がある。エゼキル老人の助けもあって、ポールは村に一台しかない車を奪取しかける……が、失敗に終わる。
 逃げ込んだ屋敷内の一室にいた若い娘。彼女はウシアと名乗った。ポールは彼女に見覚えがあった。夢で出会った女性だったのだ……。
 それを彼女も承知していた。そして導かれるように求め合う二人……(いきなりおっぱいもんだりやなんやの……超・早すぎる展開)。しかし、即座にポールは身を引き剥がす。違和感を感じたウシアの下半身は、人のそれではなかった。大ダコのような触手ではないか……。

 さらなる逃亡。村人は怪物だ。どいつもこいつもみんな怪物なのだ……!
 そしてついに、ポールは村人達に捕らえられてしまう。ポールの運命はいかに……?

●感想

 いきつけ?のレンタル店でホラー映画を漁っていた時、ふと目についたのがこれ。クトゥルフもの(太古の邪神モノ)の映画はあるようであまりない。喜んで手にとってみました。
 しかもDVDではなくビデオ。かなり古い作品なんだろうなぁと思ったら、そうでもない。2002年モノなんですね。

 で。最初観た時は、ただひたすら逃げるパニックホラーかと思いました。しかし、ポールが捕まってからの展開に驚き。いきなりムゴいシーンがあったかと思いきや、そこからクライマックスへ向けて、なかなか目を見張る展開。凄かった……。ラストも素晴らしく、ホラーとしてもクトゥルフものとしても、大変満足しました。
 また見直してみると、前半の逃亡シーンもそんなに悪くない。結構テンポ良く、イベントが起きてますからね。もちろん、後半の盛り上がりがあっての話なんですが。逃亡劇がいつまでも続いて、ラストもそんな感じだったのなら、面白くはならなかったと思います。


ウシア
美しく、ときおり不気味。
 とにかく、ポールが捕まってからが凄い。そんな映画でした。
 ……ただ、「クトゥルフ神話」というものを多少でもかじっていないと、意味不明なラストかもしれません。少しでもかじっていると、ラストへのくだりが胸に迫ってくるのではないか、と思います。語られる「永遠」も心地よい。

 恐らくは低予算映画なのではないか、と思いますが、それでもダゴンの表現がうまい。全体像を出して圧倒させるのもアリだとは思いますが、ダゴンの「一角」を表現しただけでもなかなかリアルさを感じました。井戸の底の泡だけでも怖い。
 あと、物語の重要なキーを握るウシアが、妖しくも不気味な顔をしている(失礼)のが見事でした。ポールも後半では非常にいい顔してましたし、観ててノレました。

 余談として、胸チラ程度のエロシーンもそこそこあるのですが、もしあれが、いさぎよくないセミヌードどまりだったのなら、物語のムードをおとなしくしてしまったのではないか、と思われます。
 別にエロがあるから嬉しい、という単純な話ではなく、凄惨さを出すためにハダカにする、という戦略性のようなものを感じました。B級映画の裸も侮り難し、です。


「デッドコースター ファイナル・デスティネーション2
 (話題提供:すけあくろうさん)
 (2003年/アメリカ映画/本編 91分)

 監督 デヴィッド・エリス
 主演 A.J.クック、アリ・ラーター、マイケル・ランデス

 ホラー度:★★★★☆
 衝撃度 :★★★★☆

 (あらすじ: キンバリーが予知夢を見た事で、奇跡的にハイウェイの大惨事での死をまぬがれた者達。しかしその後、彼らは奇怪な死に方をしていく。死を逃れる事はできないのか?)

 (一言: 奇怪な事故死満載のスプラッターもの。予測不可能な展開がいい。冒頭の大惨事があまりにもリアル)

●いきさつ

 掲示板にてすけあくろうさんからファイナルデッドコースター(ファイナル・デスティネーション3)の話題をいただきました。

 こんばんわ〜  投稿者:すけあくろう  投稿日:2007年09月08日

 ファイナルデッドコースターという映画を知っていますか?
 ジェットコースターがクラッシュする予知夢を見て、ジェットコースターを主人公と友人数人が降りるんですが、予知夢通りにジェットコースターは大事故を起こし乗っていた全員が死亡。生き残った友人達が座席順に信じられないような事故で死んでいく。死の運命を回避するため写真に写った手がかりを元に、主人公が奔走するストーリーです。
 予告編を見ておもしろそうだなと思っていてようやく見たんですが、思った以上にグロくてけっこうつらかったです。
 映画としてはかなり良作で作りも丁寧だし、恐怖を盛り上げる演出も上手いので、グロが平気でしたら一度見てみてください。(後略)

 で。たまたま「ファイナル・デスティネーション2」のDVDを持っていたので、観てみる事に。「2」ですみませんけど……。


この迫力…




事故を予知するキンバリー
(右)
●あらすじ

 平穏なハイウェイで、突如、それは起こった。
 大型トレーラーが積んだ、巨大な数本の丸太。それが荷崩れを起こし、道路に転げ落ちたのだ。
 後続車に次々と襲い掛かる丸太。すぐ後ろを走っていたパトカーのフロントを突き破り、警官は即死。丸太を避けようとしたバイカーは転倒、丸太とバイクに挟まれて圧死。ハイウェイを塞ぐ丸太の数々。後続車は次々と壮絶な玉突き事故を起こしていく……。
 キンバリーが友人を乗せて運転していた車も、丸太にぶつかり、派手に横転する。
 何とか命ばかりは助かったと思った矢先、制御を失った大型トレーラーが突っ込んできて……。

 そこで我に返ったキンバリー。
 ――今のは、夢だったのか。
 しかし、あまりにも生々しい惨劇を見てしまい、これは「予知」なのだと感づく。キンバリーはその事故が起こるハイウェイを目前にし、侵入路を車で塞ぐ。ハイウェイに出てはいけない。きっと大惨事が起こる。しかし後続車は「早く車をどけろ」とヤジを飛ばしてくる。
 そこにいたパトカー。車を横付けし、侵入路を塞いだキンバリーに事情を聞きにくる。
 その刹那。目の前のハイウェイを、夢で見た通りの大型トレーラーが行き過ぎる。確かに丸太を積んでいる。それはほどなく、本当に事故を引き起こした。
 そして、別の車がキンバリーの運転する車に突っ込んできた。車の外に出ていたキンバリーは、警官に命を救われるものの、友人はみな、死んでしまった……。

 キンバリーが見た予知夢。
 それと似た事象が、過去にもあったらしい。それは飛行機事故だった。事故を予知した女が飛行機に乗らなかったため、事故を回避できたのだ。しかし予知夢で死ぬハズだった者達は、その後、奇怪な死に方をしたとの事だ。
 今回。キンバリーの見た夢で死ぬハズだった8人が、事情聴取もかねて、一堂に集められた。
 彼らもまた、キンバリーの予知夢のお蔭で、ハイウェイ事故を奇跡的に回避する事ができたようだが……、以前の飛行機事故のその後のように、奇怪な死が待ち受けているのではないか、とキンバリーは主張する。
 しかし集められた他の者達は、それは「たわごと」だとして、取り合わなかった。

 だが、事件は起こった。
 死をまぬがれた男が、その後数日も経たない内に、怪死したのだ。それは事故死ではあったが、普通ではない死に方だった。
 その事実を知らされ、他の7人にも緊張が走る。自分達もまた、以前の飛行機事故後の連続怪死事件のように、やはり死が襲ってくるのか……?


前作の飛行機事故での生き
残り、クレア。

「1」と「2」がつながっている
のが面白い。
●感想

 まず、「予知夢によって奇跡的に死をまぬがれたハズなのに、その後にやはり死が待っている」というプロット(筋書き)が、魅力的。これは「1」〜「3」を通して共通のプロットになっているようですけどね。
 で。何故死んでいくのか、説明がないのもいい。見ている方で何となく理屈はわかるものの、理由はわからない。「死神に魅入られた」だの何だのと、勝手に推測できる楽しさもあります。
 後、随所に起こる「予兆」。僕が一番気に入ったのは、鍵手が迫る予兆。影で表現したのは本当に感心しました。「予知夢」より、こういった不可解な表現の方が面白くて好きですね。

 そしてこの映画の大きな見どころは、2つ。
 冒頭のハイウェイでの大惨事。圧巻モノです。迫り来る丸太。潰されて即死する警官。丸太に突っ込んで派手にクラッシュする車の数々……。CGだけではなく、実際にスタントを使って撮影したとの事で、臨場感はバツグンですね。息を呑んでしまいます。

 もう一つの大きな見どころは、やはり次々と怪死していく者達。
 死に方が全然普通じゃない。ここでは詳しく書きませんが、どんな死に方をするのか、直前になるまで全然わからない。一見、死をまぬがれたかと思いきや……鋭く、キツク来る。コワイです。
 スプラッター度も高いですね。

 ●本当に怖いのは、「人が死ぬ瞬間」

 「人が死ぬ瞬間」というのは本当に怖い。無残な死体を見て怖い、じゃなく、無残に死ぬその「瞬間」が……やはり凄く怖い。この映画はCGやらダミー人形やらを駆使して(特典ディスク内に映像アリ)、それをリアルに表現しているワケなんですね。
 殺人鬼が人を殺す映画は多くあるものの、「事故死」を表現したホラー映画はそんなにないと思います。
 この映画では死に方もホント多彩。キレも良くて、ムダもない。そして過剰に怖がる演技も(あまり)ないので、空回りもしません。

 改めて、事故死って怖いなぁと思いました。まぁ、ここで表現されている事故は、ほんとありえないような事故ばっかりなんですけどね。中でも一番ハッとしたのは、エアバッグの……。

 ●上手くないかな、と思ったところ

 前作の飛行機事故とのからみはいいんですが、その時の生存者達に、実は今回の生存者達も何らかのからみがあった……というのは「余計」だと思いました。話が複雑になりすぎるし、大した意味もなかったようですし。死の順番をそれで予測する(順番が前回とは逆だの何だの……)、というのもどうかなぁと。前回の生き残りの「クレア」だけで良かったです。

 他、ラストの病院辺りは……ちょっと意味不明な箇所が多かったです。
 ネタバレ: 赤ちゃんが産まれるから死を回避できる?というのは希望的観測でしかない、と思う。そこでいきなり喜ぶのではなく、もう少し慎重になってほしかった。あと、湖にキンバリーが飛び込むのも意味不明。誰を助けるためにやったのか。警官?
 「キャンディマン」に出て来たあの謎の黒人も要らない気が。大して役に立ってないし、いかにも謎すぎるし

●余談

 この映画。1作目もかなりブレイクしたようですね。
 そういう映画の2作目って結構な割合でハズしたりするもの……という先入観があるのですが、この映画はハズしてなかったと言えそうです。すけあくろうさから戴いた情報では、3作目もかなりスゴイようなので期待が持てますね。
 久々にスプラッターものを観たワケですが、脇を固める魅力(プロット。予測できない事故死。そのキレ。冒頭の迫力の大惨事)が多かったお蔭で、感心しまくりでした。

 たまたま持っていたのが「初回限定版」だったのですが、それに付属の「特典映像」もかなり豊富でした。
 特に「ゴア・ムービーの系譜」として、事故死のシーンのメイキング映像を詳しく観られたのは面白かったですね。

 ●二度観てわかったラスト(ネタバレ)

 キンバリーが湖に車で飛び込む行為が何なのか、最初は全然わからなかったのですが、落ち着いて見直したところ、やっと理解できました。
 湖に車で飛び込む、という予知夢に加えて、同時に「水中から生還」の新聞記事が目に入ったのは、「助かる予兆」なのだとキンバリーは理解したワケですね……。
 でもコレ、一回観てすぐに理解できるかなぁ? 映画ってのは一回勝負な所もあると思うし、あまり細かな謎は気づいてもらえない、と思うんですけどね……。「ワケわからん」と思わせるのではなく、「ハッとさせる」ようなラストにしてほしかったんですけどね……。まぁ欲張りな意見ですけど。
 更に欲張れば、クレアの死に「恐怖」がなかったのは残念。彼女を「怖がらせてこわがらせて」死なせない事には、前作から生き延びた意味が薄くなるんじゃないかと……。せっかく精神病院に隔離までさせといて、最後は一瞬で死なせるんですから。もったいない。……とか欲張りすぎてすみません。


「神の左手 悪魔の右手」
 (2006年公開/日本映画/本編 95分/R15指定)

 監督 金子修介(「DEATH NOTE」、平成版「ガメラ1〜3」)
 原作 楳図かずお
 主演 渋谷飛鳥、小林翼、清水萌々子、田口トモロヲ、前田愛

 (あらすじ: 夢の中で殺された少女と感応し、瀕死の重傷を負った弟のソウ。病院に運ばれ、意識不明の重体になる。姉のイズミは、ソウが以前言っていた事を思い出す。ソウはこんな日を予言していた。そして自分を助けるには「赤い携帯電話」が必要なのだと言っていた。それを手にしたイズミ。するとそれは、昏睡状態にあるソウの意識とつながった。イズミはソウに導かれながら、ソウの夢とつながっている少女を悪いヤツから救出する旅に出る)

 (一言: 殺人鬼役の田口トモロヲさんの怪演が素晴らしい。タイトルがあまり生きていないのが残念。スプラッターシーンが何度もあり、見た目のホラー度はけっこう高め。しかし、生首の作り物っぽさと、ソウの棒読み演技に萎え)




イズミ役、渋谷 飛鳥
●あらすじ

 少年は自室のベッドで苦しんでいる。
 隣で寝ていた姉、イズミが起きだして、弟を気遣う。弟、ソウは、悪夢を見ているようだが……。

 ソウは、道端に捨てられた人形を拾った少女の夢を見ている。辺りは暗い。学校の制服姿の少女は人形を抱えながら、家路を急ぐ。
 少女は後をつけてくる気配を感じ、何度も振り返る。……だが、人影は見えない。
 そしてコンテナが立ち並ぶ所に来た時、少女を狙う鋭利なカギ爪が、頭上から姿を見せた。
 ソウは叫ぶ。「やめろーー!!」

 しかし、願いはむなしく、少女はノドにカギ爪を突き刺され、殺されてしまった……。
 同時に、ベッドの上のソウのノド元にも変化が起きた。奇妙に皮膚が突き出している。
 そして、ソウのノドが裂けた。イズミはその血をまともに浴びる。
 イズミの叫びを聞きつけ、両親が置きだしてくる。そしてソウは救急車で病院へと運ばれたのだった……。

 ●

 「ボク、もうすぐ死ぬんだ」
 ソウは以前、川原でそう姉に伝えていた。
 「でも、お姉ちゃんはボクを助ける事ができる」
 「赤い携帯電話だよ。赤い携帯電話が必要なんだ……」

 イズミはその時の事を思い出すのだった。

 とある屋敷。
 そこでは、足の悪い少女――モモがベッドの上で、父親の帰りを待っていた。
 父親が帰ってくる。父親は、モモのために絵本を描いていて遅くなったのだという。絵本は、モモがいつも心待ちにしていた。
 おみやげのケーキを食べた後、少女は早速、父親に絵本を読んでもらうのだった。

 それは、とある少女が道端で人形を拾う話だった。人形は誰かに拾われるのを待っていた。そしてついに、自分を拾ってくれる少女が現れる。人形は少女が大好きになったので、少女を殺した……。

 足の悪い少女は感想を窮(きゅう)するでもなく、「面白かった」と感想を言った。

 妙な夢を見たイズミ。病院内で殺人鬼に襲われ、逃げ込んだボイラー室で「赤い携帯電話」を見つける、という夢だった。

 イズミは早速、そこに行ってみる。ソウを助ける手がかりになるかもしれない、と思ったのだ。しかし警備員見つかって、連れ出される。
 その警備員はなんと、赤い携帯電話を持っていた。……偶然なのか。それとも、ソウを助ける手がかりとなるものなのか……?
 警備員は電話の相手と口論になり、イズミの目の前で携帯電話を壊してしまう。夫婦ゲンカであったようだ。(てか壊します?普通)

 壊れた携帯電話を拾うイズミ。確かにソウの言っていた赤い携帯電話なのだが……壊れてしまってはどうしようもない。
 試しに話しかけてみる。すると、ソウの声が聞こえた……。

 その壊れた携帯電話は、今、病室で意識不明の重体になっているソウの意識と、つながっているのだ……!
 そしてソウは、姉に伝える。自分を助けるには、「悪いヤツに捕まっている女の子」を助けなければならないのだ、と。
 ソウに言われた通り、電車に乗って、その町に行くが……。

 果たしてイズミはその女の子を助け出し、ソウの命を救えるのか……?

●感想

 原作マンガ内の1エピソードである、「黒い絵本」を主眼に於いた映画化。

 はじめの内は、子役の演技がいかにもな演技、という感じがして、ノレないかなと思っていました。特にひどいのが、姉弟での風呂場でのシーン。ソウの演技が棒読み。これはひどい。

 ……でも、ゆっくりゆっくりと面白くなってくる。
 「夢」と奇妙なつながりがある、ソウ。壊れた携帯電話で、意識不明の重体であるハズのソウと会話ができるなど、魅力的な不可解さを描いていますね。
 個人的に、こういう不可思議さが大好きなんですよ。楳図作品ではおなじみ(「漂流教室」など)の感覚ですね。まぁ僕も自分の小説内で、似たような事を書いてますけど。

 ……駄作なのか傑作なのか。面白いのか面白くないのか。危ういバランスで物語は進んでいきます。
 最終的にはそんなに悪くなかったかなぁという感じでした。

 イズミ役で、主演の渋谷飛鳥さんもなかなかの美形で、演技は特に問題なかったかと。
 一番印象的だったのは、悪夢の中で、ハサミで顔を切られるシーン。いいホラー顔してました。

 欲を言えば、イズミに感情移入できるようなシーンがなかったような気がします。ちょっと淡々と進んでたかなぁ……?というカンジが。
 それというのも、弟を助けるために単身で殺人鬼のところに向かうのですが、どうも「弟を救うために行動している」というのが伝わってこなかったんですよ。弟を守りながら、殺人鬼に立ち向かうワケでもない。弟を助けるには、まったく見知らぬ少女を救わなければならない、というのがイマイチつながらない。理屈ではわかるんですが、胸にグッと来ない「設定」だった気がしました。

 でも観ていてそんなに面白くないワケでもない。殺人鬼は素晴らしい演技でしたので。
 だから映画全体としては、「そんなに悪くない」という、中途半端な感想に留まってしまいそうです。

 ●かでなれおんと血まみれのケーキ達

 かでなれおん達のシーンは残酷すぎましたね。……というか「見知らぬ家に勝手に入って、置かれてあるケーキを食う」という行為が信じられなくて、ここはちょっとノレませんでした。

 ひと悶着あって、血まみれのケーキをむりやり食わされるところなども、見ていて吐き気がしそうでした。こういうホラーは、僕はダメなのかもしれない……。
 この辺が映画全体を通して、一番のスプラッター所なのですが、悪趣味極まりなかったです。もちろんホラーとしてがんばっている、と言えばそうなんでしょうけど……。

 あと、ここでの生首はあまりにも「作り物っぽ」すぎでした。こういうのも、萎える原因の一つになりますね。

 ●田口トモロヲさんの怪演

 モモの父親は、殺人鬼。父親役である田口トモロヲさんの演技は、全編を通してかなり良かったですね。田口さんの演技が素晴らしかったからこそ、この作品は「生きた」と言っても過言ではないかと。
 どのシーンも完璧と思えるほど、素晴らしいものでした。娘のモモに正体を現すところなども、圧倒させられました……。

 僕が田口さんを観たのは「鉄男」「弾丸ランナー」辺りからなのですが、ホントおじさんになっちゃったなぁと思いましたね。見事に父親っぽいですからねー。

 この映画。田口トモロヲさんの殺人鬼っぷりを観るだけでも、面白いかも。

 ●楳図かずお出演シーンについて

 劇中、原作者である楳図かずお本人が出て来るシーンがあるのですが、これは不要だったと思います。無意味なシーンでしたし。セリフも無駄に長かった。
 せっかくのホラーを、ここで壊してしまっているとすら思いました。大体、今まで笑えるシーンがないのに、そこでいきなり笑いをとろうとするのがおかしい。バランスの問題。
 どうしても楳図さんを出したかったのなら、もう少しまともな事(意味のあるセリフ)を喋らせれば良かったのにと思いました。

 ●モモちゃん

 殺人鬼の娘。物語の中でも実娘なのかどうか、ちょっとわからないんですけどね。
 足が悪い、という設定なんですが、階段を下りるシーンでは足のつま先がぴょこぴょこ動いて、全然、足が悪そうに見えませんでした。こういう細かいところをおろそかにすると、映画の完成度に響くと思うんですけどね。もっと説得力のある見せ方をしてほしかった。

 他、「ハイジ」でのクララのような「立った……!」みたいなシーンがあるのはベタすぎかと。うわーヤメテクレーという感じでした。

 ●ラストシーン

 まさか、というシーンが良かったですね。
 そして意外な所からソウが登場。なかなか盛り上がりました。

 ただ、そこでの見せ所(タイトルにまつわる)はちょっと唐突すぎた気がします。「アンタ、何の伏線もナシに何言ってんの?」というカンジでした。
 加えて、そこでのセリフは子役に喋らせるのではなく、別人の吹き替えにでもした方がそれらしく聞こえたんじゃないかなぁと思いました。重々しいセリフなので、子役が喋ると「いかにもな演技のセリフ」という感じがしたもので。

●特典映像など

 レンタルDVDを借りて観たのですが、特典映像が多目でした。メイキング他、インタビューや舞台挨拶など、多彩。
 興味深く、楳図さんのインタビューを観てみたのですが……、落ち着かな……いえ、なかなか楽しそうなお人柄でした。そう言えばギャグマンガ「まことちゃん」も描いているんだったなぁ、と。(昔は、気味悪い絵だとしか思えなかったのですが)

 氏は「子供を主にした作品を多く作っている」という指摘をネットなどで目にします。楳図さんは映画の中でも、やはり子役に一番、目がいっているご様子でした。本当に子供好きみたいですね。


右)前田 愛ちゃん
●余談:前田愛ちゃんは美人になりましたねー…

 「トイレの花子さん」「ガメラ3」などでおなじみ?の前田愛ちゃんも、主人公のサポート役で出演。すごい美人になってますね。(なんちゅう感想だ)
 渋谷飛鳥と並んで行動するところなど、まさに美少女の競い合い、という感じで良かったです。

 でも、ネタバレ: 彼女死んじゃうんですが、神の左手で生き返らせてはもらえなかったのでしょうか? ラストではすっかり忘れ去られてますし。なんでだ……。


「映画クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!」
 (情報提供:蜃気楼博士さん 2007年4月)
 (本編 92分/2006年公開)

 監督 ムトウユージ
 原作 臼井儀人
 声優 矢島晶子/ならはしみき/藤原啓治/こおろぎさとみ 

 (あらすじ: 日本中の人気者、「クレヨンしんちゃん」の映画第14作。春日部町に不審なウワサが流れ出していた。それは、自分の「そっくりさん」が現れるというもの。そっくりさんにのっとられた人はどこかに消えてしまうのだという…。しんちゃんの周りでも「そっくりさん」が現れ出す。野原一家の運命はいかに…?)

 (一言: 前半はホラー色が強く、目をみはる場面も多々。物語のテンポがよく、全編にギャグがちりばめられてますので、全体的な感想としては「楽しかった」です)


しんちゃんと仲間たち


しんちゃんの家族
●いきさつ

 当サイトの掲示板にて、いつもレトロ映画や特撮怪奇映画などの話題で楽しませてくれる蜃気楼博士さんより、こんな書き込みをいただきました。

 こんばんは、夢鳥様。
 ついこの間、『クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ! 踊れ! アミーゴ』という映画を見ました。めっちゃ、嵌りました!
 何故なら06年のクレしん映画は、本格ホラーコメディだったからです。
 夜な夜な何者かが現れ、夜道を歩く人を襲って入れ替わるという、春日部都市伝説。しんちゃんの幼稚園の先生や園児たちも『そっくりさん』と入れ替わっており、しんちゃん自身もみさえさん(しんちゃんのお母さん)のそっくりさんに襲われかけます。さらに、ひろしさん(しんちゃんのお父さん)も、会社の社員の殆どが『そっくりさん』だと知り、帰宅途中に自分の部下の『そっくりさん』に、こう言われます。
 『係長、今夜はうちに帰らなくていいですよ。代わりがもう行ってるから!!』
 果たして、『そっくりさん』とは何者なのか? 痛覚と感情を持たず、何故かサンバを踊りながら迫り狂う未知の敵に、野原一家はどう立ち向かうか! という、内容です。
 本作は侵略SF『ボディ・スナッチャー』が基になっており、各所に『エクソシスト』、『ゾンビ』、『バタリアン』、『キル・ビル』のパロディ・シーンがテンコ盛り! 後半からは坂を転がるようにコメディになりますが、ホラーファンにとっては、前半だけでも、思わず唸ってしまうこと間違いなしです。
 テレビ放映ではカット・シーンが多いと思いますので、dvdで観賞なさることをお勧めします。
 クレしん流ホラーをお楽しみ下さい。 

 とのお話でした。
 僕も早速、近所のレンタル店に行ってみるものの、新作期間を過ぎたにも関わらず、置いてあるDVDが全て借りられていたりして、その人気ぶりがうかがえました。


はじめて観た時はびっくり


ツンデレ?のお姉さん。
ジャッキー
●感想

 あらすじは蜃気楼博士さんが書いてくれているので割愛します。助かります。

 僕はTVをほとんど見ないので、「クレヨンしんちゃん」もほとんど知りません。でも、この映画単体でもわからないシーンはほとんどなかったです。わかりやすく作られている、という事でしょうか。
 初めて絵を見た時は、「なんだこのテキトウくさい絵は?」と思いました。顔のデッサンもやたら狂っているように見えましたし。でも見ていく内にすぐに慣れましたけどね。(ツンデレのお姉さんだけは、丁寧に描かれているような気がしましたが……)
 キャラはかなり簡素に描かれていますが、背景がしっかりとリアルに描かれているんですね。だから画面全体としてはキレイな印象を受けました。

 ……で、率直な感想、確かにホラーしてました。立派なホラー作でした。前半は、ですけどね。
 特にネタバレ: トオルのママが肉食うところは驚きました。いきなりリアルな絵になってましたからね〜。ここは怖いです。(ちなみにここでの「もえP」ツボでした。思い出すだけで笑えます。あのバカバカしい歌とか)
 他、よしなが先生がアレを踏むシーンなども良かったですねー。緊迫感があって。

 ギャグもかなりいいですね。ほとんどハズさずにウケました。
 ギャグを後押ししているのが、キャラ達の愛くるしい声。声優さんがスゴい。どのキャラも見事な、惚れ惚れするほど個性的な声でした。(まぁ僕がアニメ慣れしていないから、妙に感激しちゃっただけかもしれませんけど)

 個人ネタですが、しんちゃんの仲間にネネちゃんという子がいましたね。メメちゃんでなくて良かったなぁと思いました。僕がマネしたと思われるだけですので。はい。

 ●後半、多少ネタバレ

 ネタバレ: 後半の展開は「あぁ、こうなっちゃうのかぁ」と少し残念。まぁすっかりと子供向けギャグな展開になっちゃうんですね。シリアスで押し進めてきたツンデレのお姉さんも、ワケわからない対決をしちゃいますし。アミーゴ鈴木の正体……は、やりすぎなんじゃないの、と思いましたけど
 でもキャラをうまく活躍させていますね。あの液を、手やお尻につけて敵を撃破。いい見どころです。(え?)

 なんだかんだで面白かったです。蜃気楼博士さんが書いてくれたように、前半はほんとにいいホラーでした。
 でも「ホラー映画としての評価」となると、「そこそこ」という感じでしょうか。ネタバレ: 後半がくだけすぎてますからね。「そっくりさん」の正体もくだけすぎ

 狙ったホラー映画じゃなくても、「ホラー描写で物語に緊迫感をもたせる」事に成功していると思いました。ネットでの感想などを観ると、劇場で泣いちゃった子などもいたようですけどねー…。わかる気がします。

 もちろんホラーばかりでなく、ギャグも良かったです。さすが人気作だなぁと感心しました。 
 蜃気楼博士さん、ご紹介ありがとうございました。紹介していただけなければ、僕は多分、この映画を知る事もなかったでしょうし。感謝しています。

「13ゴースト」
 (原題 THIR13EN GHOSTS/本編 91分/2001年作品/リメイク作品)

 監督 スティーブ・ベック
 原案 ロブ・ホワイト
 主演 トニー・シャローブ、マシュー・リラード、シャノン・エリザベス、F・マーリー・エイブラハム

 (あらすじ: 叔父の死により、遺産を相続する事になったアーサー。その遺産とは、近未来風にデザインされた豪邸だった。しかし、その屋敷には恐るべき仕掛けがほどこされてあった)

 (一言: 面白怖く、屋敷や幽霊達も魅力的。テンポも展開も良かった。文句なしの傑作)

●あらすじ

 ●幽霊を捕らえるサイラスと、特殊能力を持つ男、デニス

 廃車の山々。そこに乗り込んでくる数台の車。大型トラックもある。男達は大掛かりな機材を運び出す。

 老紳士――サイラスは、連れのデニスに問う。「さあ ヤツはどこだ?」
 デニスはおそるおそる地面に手をつける。その途端、電撃を食らったようなショックに襲われる。「9人どころじゃなく40人も殺してる!」
 デニスには、特殊な能力があるようだ。

 そしてデニスはとある一点を指差す。そこに、目的のものがいるらしい。サイラスは部下に命令を下す。
 「キューブを用意しろ」

 そして儀式が始まる。――この場にいる、「破壊者」と恐れられた幽霊を呼び出す、儀式が。

 トラックで辺りに大量の血を撒き散らす。そして「音」を流す。幽霊を呼び出す音か。
 キューブを開く。そしてその場にいる者達は透明無色のメガネをかける。特殊なメガネなのか。

 前触れなく、廃車の山が一つ崩れた。それを境にし、何かが動き出す。
 部下の一人が突如、廃車の山に激しく引きずられていく。登りきったところで、男は血しぶきと化した。
 逃げ惑う部下達を、荒れ狂った廃車達が襲う。潰され、食われていく……。

 そんな中、デニスは「破壊者」の姿を見る。……大男だ。彼はサイラスの部下達を軽く跳ね飛ばしながら、ゆうゆうと歩いてくる。
 キューブの中に転がり込んだ部下。誘われるように破壊者はその中に入り込み、男を殺戮する。
 キューブの扉が閉じる。

 犠牲は大勢出したが、思惑通り、「破壊者」をキューブに捕らえる事ができた。
 しかし。あろう事か……、首謀者のサイラスも、巻き添えになって死んでしまった……。

 ●豪邸を手にしたアーサー一家


アーサー(トニー・シャローブ)
 とある一家。幸せを絵に描いたような家族だったが、半年前、家の火事で妻が焼死した。
 今はアパートの狭い一室に移り住んでいる。父親のアーサー、娘のキャシー、その弟ボビー、そして家政婦のマギー。だがマギーは家政婦としては三流だった。
 そこに弁護士が現れる。モス弁護士だ。

 アーサーの叔父が死んだ。アーサーは小さい頃に一度会ったきりの、縁のない叔父であったが、弁護士が言うには、「その叔父の財産を相続してほしい」という事だった。
 生前に録画された叔父のメッセージを、ノートパソコンで見せられる。
 画面に現れたのは、先の幽霊騒動で死んだ、サイラスだった。

 「これを見てるなら、私は死んでる。その場合 君たちが私の財産の相続人だ」
 そして画面に現れたのは、豪華な家の、内装の数々だった。
 弁護士に奇妙な形のカギを預かる。それが家のカギらしい。サイラスが残した財産とは、その豪邸の事だったのだ。

 側で見ていたキャシーが目を輝かせる。突然の話に、アーサーも実感が湧かないでいる。
 その日の夕方。早速、弁護士に案内を頼み、一家はその豪邸に向かう事になった。

 ●カリーナ

 一方、カリーナは魔術関係の著書などに囲まれる部屋の中、あわただしく支度をしていた。彼女は、サイラスに反発している。
 サイラスが死んでも、事はまだ終わっていないのか。呪文のテープ、魔術書、そして爆薬などをカバンに詰め込んでいく……。

 ●屋敷に到着



 アーサーの一行が屋敷に到着する頃には、もう辺りは暗くなっていた。
 そして目にする豪邸……。そこは並の造りではなかった。
 ――近未来的。そんな言葉が似合うような、キバツなデザインで作られた、巨大な豪邸だった……。

 そこに、電力会社の者がいた。……しかし、彼は先に登場したデニスだ。変装して、何か企んでいるらしい。

 早速、屋敷のカギを開けてみる。途端、屋敷の中にまばゆいばかりの明かりが灯った。周囲はガラス張りで、中が丸見えだった。
 湧き立ちながら、一行は中へ入る。

 ラテン語で彩られた、無数のガラスの壁が織り成す中、美術品とも思える貴金属類が数々展示されていた。
 まるで美術館だ……。「宝の山みたいな家」だと、キャシーは大喜びだ。

 書斎に向かうアーサーは、子供達に「場を離れるな」と釘を刺す。ただでさえ、この家は迷いそうな造りになっている。
 しかし、好奇心いっぱいの彼女達が、そんな言葉を聞き入れるハズもなかった……。

 一方、デニスは点検と称して、地下に一人向かう。
 デニスは、サイラスが残した金を、探していたのだ。

 途端、わからぬ激痛に襲われるデニス。
 もしや……ここに、幽霊がいるのでは? デニスは、霊能力者なのだ。霊が近くにいると、激しい反応が返ってくる。
 メガネをかける。霊が見える、特殊なメガネだ。 

 ――いた。
 怨霊と化した幽霊が、確かにそこにいた。しかも、一体だけではなかった。周囲を見回すと、無数の幽霊が、ガラスごしにこちらを見ている……!
 悲鳴を上げて逃げるデニス。

 ――なぜ、幽霊達が屋敷の地下に捕らえられている? サイラスは何をしようとしていたのか?


デニス(マシュー・リラード)
 アーサーの元へ行くデニス。自分がサイラスの下で働いていた事を明かし、ここを早く立ち去る事を告げる。

 しかし、キャシーらの姿がない。デニスの言う事はよくわからないが、まずは子供達を捜さなくてはならない。
 そんな中、この家に一緒に来た弁護士が、姿を消していた。彼は地下へ行ったのだ。しかも、幽霊達を見ても驚かない。むしろ知っているようだ。
 そして金の詰まったカバンを見つけ、それを手にする。
 途端、何かの仕掛けが動き出した……。

 屋敷内のガラスの壁がスライドしていく。玄関が閉まる。屋敷内のどこかにある、巨大な装置が動き出す。広間にある、幾重にも重なった同心円状の魔法円が、一枠ずつ回り出す……。
 一体、何が起ころうとしているのか……?

●感想

 ……ここから先が、本題なんですけどね。でもあんまり触れないでおきます。
 早い話、大当たりでした。最後まで集中して、楽しんで怖がって、観る事ができました。

 しかもムダもなく、テンポも良かった。物語の舞台となる屋敷もかなり魅力的でした。

 皆が幽霊に襲われる中盤辺りなども、まさに息をもつかせぬ、スピード感と迫力。危険な幽霊が一体ずつ解放されていく、という段階を踏んだ恐怖も心地良かった。

 で、登場する幽霊達も個性的なんですね。視覚的にも性格的にも。幽霊というより悪魔みたいな連中なんですが。
 で、13番目の幽霊というのが何なのか。ネタバレ: 見事に予想を裏切られましたこれもまた、物語の大きな柱になっているんでしょうね。うまいなぁ、と感心しまくりでした。

 またこの「13ゴースト」はリメイク作品なんですね。初期のものは1960年のものみたいですが。なにやら、特殊メガネをかけて、幽霊が見えるようなしかけを造ったらしいのですが。

 冷静に考えれば、ネタバレ: デニスはムダ死になんですが、それを差し引いても、やはりこの映画は面白かった。ネタバレ: 細かい話ですが、一人しか隠れられない、じゃなく、ガラスにヒビが入って絶対絶命、とかにした方が自然な流れだったのではないか、と
 序盤からイイんですね。何が起ころうとしているのかわからないまま、進んでいくのがいい。デニスも気に入りました。
 気持ち良いどんでん返しもあるし、ラストのクライマックスシーンも見事でした。しかも泣けましたし。……と言うか、泣きましたし。

 ●余談

 レンタル専用DVDを借りてきて観たのですが、本編がいきなり始まる造りになっていたのは、好感が持てました。いつもなら、他作品のCMが長々と収録されていたりするので。(しかもスキップできない造りになっていたり)
 とは言え、この「13ゴースト」はそうしたCMから情報を得たんですけどね。CMを観て、面白そうだと思ったんですが、その予想を大きく上回るデキに、満足しました。

 また、レンタル専用DVDなのに、「監督などによる音声(字幕)解説機能」が付いていたり、ちょっとした「メイキング映像(幽霊のメイクシーンが楽しい)付いていたり、とサービス精神も旺盛でした。

「エミリー・ローズ」
(情報提供:クロロさん 2006年11月)

(原題:THE EXORCISM OF EMILY ROSE/119分)

 監督 スコット・デリクソン
 主演 ローラ・リニー、トム・ウィルキンソン、キャンベル・スコット、ジェニファー・カーペンター

 (一言: ホラー+法廷モノ。女弁護士エリンは、ムーア神父の弁護をする事になった。ムーア神父はエミリーという少女を、悪魔祓いをした事で死なせてしまった、という過失致死罪の疑いがかけられているのだ。しかしエリンはその悪魔祓いが正当な行為であった事を主張する…。/感想: ホラーシーンは文句のない出来だが、裁判シーンがジャマをして、ホラー映画としては中途ハンパ。裁判もイマイチだった気が)

 ●公式サイト: http://www.sonypictures.jp/movies/theexorcismofemilyrose/site/
 ●エキサイトシネマ内公式ブログ: http://blog.excite.co.jp/emilyrose/

●いきさつ

 当サイトの掲示板で、クロロさんより、ご紹介がありました。

 お久しぶりになります、クロロです。
 映画の紹介にきました。タイトルは……、”エミリー・ローズ”。実話を元に、製作された映画です。
 被害者のエミリー役を演じる、ジェニファー・カーペンターの演技を、見て欲しいです。
 しかし映画全体を見た後、夢鳥さんが喜んでいるだろうかと、まごまごしていましたが……、思い切って、良作としてお薦めします。
 この映画は実話です。それだけの重みを持っていると、そう思います。 

 ……との事。情報提供、ありがとうございました。でも、感想は(いつものごとく)遠慮なく書かせていただきますので。笑

●あらすじ

 ――この映画は実話に基づいている。

 小雪が舞う中。郊外の原野にぽつんと佇む一軒家に、老人が訪れる。
 彼は検視(検死)を行うために来た医師だ。
 たった今、ローズ家の娘が死んだのだ。……エミリー・ローズが。

 そこ居合わせているのは、エミリーの両親、姉妹ら。エミリーの恋人、ジェイソン。そして、ムーア神父だった。
 検視の結果、エミリーの死に不審な点があった。
 エミリーの悪魔祓(ばら)いをしたとされるムーア神父は、過失致死罪で、裁判にかけられる事になってしまった……。


左)エリン(ローラ・リニー)
右)ムーア神父
(トム・ウィルキンソン)
 ムーア神父の弁護にあたる事になったのは、エリン・ブルナーという若き女弁護士だった。
 彼女は非常な野心家で、以前の裁判でも優秀な成績をあげ、エリンの上司も一目置いていた。今回、神父が裁判にかけられるという事で、教会側からエリンへの打診があったのだ。

 牢の中。ムーア神父とエリンは面会する。
 はじめは煙たがっていたが、ムーア神父はエリンの弁護を受け入れる事にした。そして「エミリーの真相を証言したい」と言い出した。
 その詳しい内容はわからないが、一応エリンは承諾(しょうだく)する。

 ●

 裁判をひかえ、エリンはエミリーの実家へおもむく。
 エミリーの母親に、エミリーの話を聞かされる。彼女は遠くの大学へ行ってから、おかしくなってしまったらしい。それまでは優しく明るい子だったのだという……。


イーサン・トマス検事
(キャンベル・スコット)
 とあるバーで、エリンは紳士的な男と談話する。
 彼の名は、イーサン・トマス。後の裁判で争う、相手側の検事だ。

 彼はカトリック信者だが、被告人であるムーア神父の罪について、甘い考えは一切いだいていない。「エミリーの死は、ムーア神父の過失致死によるものだ」という考えを崩さない。
 「悪魔祓い」という儀式そのものを、否定的に見ているのだ。

 だがトマス検事は、ムーア神父を断罪するには忍びないという考えもある。
 そしてエリンに取引を申し出る。ムーア神父を「禁固6ヶ月ほどの罪」で済ませられるように仕向ける、というものだ。
 しかし、エリンはそれに応じなかった。あくまでもムーア神父の「無罪」を勝ち取ろうとしているのだ。
 交渉は決裂し、トマス検事とエリンは、法廷の場で争う運びとなる……。

 そして裁判が始まった。
 ――エミリー・ローズは、19歳という若さで死んだ。
 原因不明の病気にかかり、エミリーは医師の診断を受け、薬を投与していた。精神的にひどく病んでいたのだ。
 しかし、その薬の投与をやめさせ、「悪魔祓い」の儀式を行ったのが、ムーア神父だった。ムーアはエミリーが精神的に病んでいたのではなく、悪魔に憑かれていたと判断したのだ。
 しかし。悪魔祓いは失敗し、結果的にエミリーは帰らぬ人となってしまった。拒食ぎみでやせこけ、しかも体じゅうが傷まみれの凄惨な姿で……。

 「その悪魔祓いの行為こそが傷害致死にあたるのだ」と主張するのが、検察側のトマス検事だった。
 エミリーは精神を病んでおり、精神医学的な治療の継続こそが必要だったのだ、と。

 対するエリン弁護士は「エミリーは悪魔に憑かれており、ムーア神父の悪魔祓いこそが、エミリーの助かる唯一の手段だった」と主張する。

 果たしてエリンは、エミリーが悪魔憑きであった、と裁判で立証する事ができるのか……?

●感想

 驚いた事に「ホラー+法廷モノ」なんですね。めずらしいです。
 「法廷での審議が進むにつれ、エミリーの死の真相が、徐々に明らかにされていく」という形になっています。つまり、回想シーンがホラーなワケですね。

 率直な感想としては、法廷部分にムリがあった気がするんですけどね。
 どう見ても、トマス検事の言い分が正しい。エリンは何とか覆(くつがえ)そうとするが、まるで現実的に話をもっていけない。後半になるにつれ、どんどん苦しくなっていく感じがしましたが。

 法廷モノなので、幼少の子には何がなんだかわからないシーンも多いと思います。わからないまま進んでいく映画ほどつまらないものもないと思いますので、どなたにでも楽しめる、とはとても言い難い。
 「何で裁判してるの?」というところさえ、わからない子もいそうな気が。

 裁判に主眼をおいたので、比較に挙げられるであろう、かの「エクソシスト」とはだいぶ違った映画に見えるんですけどね。その辺は、成功したと言えるかも。
 頭を悩ませつつ、エミリーの回想シーンで怖がる、というスタイルのホラー映画なんでしょうか。まぁ配給会社は?「これはホラーではない。実話である」とうたっていますけどね。

 実話を基にしたという事もあり、悪魔の活動もなんだかひかえめぎみ。バンバン人が死んだりはしないんですね。
 要は、「法廷で悪魔憑きに関する裁判が実際に行われたのだ」とする記録を、世に広く伝えたかった、とする映画なのでしょうか。
 加えて、エミリーの悲願ですね。彼女は死の間際、「悪魔が実際にいるのだ、という事を世に広く知ってもらいたい」とし、自らの運命を受け入れた……とされているようですので。

 ●ルシファー…?

 この映画の中で一番ダメだと思ったのは、エミリーに<ルシファー>が憑いたとされるところ。
 ルシファーはあまりにも大物すぎる、と思うんですよ。そんな地獄を支配するか否かのすごい悪魔がなんでエミリーという一人の少女に憑いたのか、その辺の説明もまるでない。

 しかもルシファーが憑いたというのに、死人がエミリー含めて2人ほどしか出ていない。
 この辺、実話を元にしたとしても、エミリーの妄想が入っている、と思わざるを得ません。だいたいにして、6つもの悪魔が入り込んだ、というのがスケールでかすぎ。
 もっとも、「下級悪魔がルシファーの名を名乗ってみただけ」という解釈もありますが……。

 ●エリンの弁護について

 さらに、エリンの弁護もあまり感心できるものではなかった。
 審議が進むにつれ、どんどん弁護がダメになっていく。理路整然としたトマス検事の方にばかり、僕は感心してしまったんですけどね……。
 もっとも、悪魔憑きを立証する、というのにムリがあったのか。悪魔の存在について耳をかたむけてもらうために、最終段階では「広い心を持ってお聞き下さい」などという苦しい弁護になっています。
 あまりにも苦しすぎ。

 だったら悪魔憑きの前例でも引っ張ってきて、「こういう例が過去にいくつもあったのです」などとした方が、まだ説得力があったのではないでしょうか?(と僕が弁護してもしょうがないんですが……)

 ●ラスト

 ラストもちょっとマンガ的。裁判の判決における重要な発言権を持っている(僕はよくわからないのですが)陪審員(ばいしんいん)らも、「神父には甘いなぁ」と思ったくらいで。
 まぁもちろん、ムーア神父が悪人じゃないのはわかるんですが。でもそんなアバウトな結果でいいのか、と……。


すげえ顔…。
驚いている顔なのに悪魔に
見えるんですけど。

しかして、公式ブログでの
来日した姿は、別人かと思う
ほどの美少女っぷり…。
 ●ホラーシーンについて

 エミリー役の、ジェニファー・カーペンターが元々怖い顔をしてるワケなんですよ。
 ちょっと顔をゆがめただけで、ほんとに悪魔みたいな顔になってしまう。あと、長身みたいですし。歩く姿を見てるだけで怖い。エミリーそのものに、迫力があるんですよ……。
 何度も何度も悪魔に憑かれたシーンが出て来るんですが、いちいち凄かった気がします。
 ホラー映画のクライマックスだけをつなげたような面白さはありました。

 でも、映画の半分以上が「法廷」なので、ホラー映画としての評価は難しい。その法廷部分もあざやかじゃないので、映画としてもやや中途半端な印象。
 終わりに近づくにつれ、エリンの弁護がダメになっていって、ネタバレ: 最後に陪審員に助けられたというのではちょっと弱いです。

 実話を基にしたとされるこの映画。
 さぁ、悪魔憑きは実際にある事なんでしょうか? 果たして……?

 公式サイトで挙げられてあった過去の例は、たった4つしかないみたいですが。もっとあってもよさそうですが……。

「オープン・ウォーター」

 監督 クリス・ケンティス
 主演 ブランチャード・ライアン 、ダニエル・トラヴィス

 (原題 open water/2004年製作 アメリカ映画/本編 79分)

(一言: 実話に基づいた(とされる)映画。ダイビングを楽しむ夫妻。しかし海面に戻ってみるとボートの姿は無かった。海のただ中に取り残されてしまった二人。果たして、助けは来るのか…? やがてサメの姿が周囲にただよいはじめてくる……。 い。息を呑んで見守りました。ムダが無いのもいい)

 公式サイト:なし
 解説●「CINEMA topics online」内: http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=5178
 感想●「Yahoo!映画」内: http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=320853




●あらすじ

 ダニエル、スーザン夫妻は休暇をとり、バカンスへ出かける。
 常夏の海でダイビングを楽しむのだ。

 ダニエル夫妻を乗せたボートが出港する。ボートには、同じようにダイビングを楽しもうとする乗客らが20名ほど乗っていた。
 海のただ中。格好のダイビング地点でボートは停まる。そして30分ほど、皆でダイビングを楽しむ。
 変わった形の魚たち。ウツボ、さんご礁……。

 時間が経ち、次々と船に戻るダイバーたち。
 しかしダニエル夫妻たちはそれに気づかず、まだ潜り続けていた。


 そして海面に戻ってみると……ボートが無かった。
 船員は、乗客の数を数え間違い、既に全員がそろったものとして、ボートを出してしまっていたのだ……。

 ●

 視界360度、海と空しか見えないただ中に取り残されてしまったダニエルとスーザン。
 きっと救助が来るものだろうと思って待っていても、一向に来ない……。

 時間が経つにつれ、どんどん潮に流されていく二人。
 やがて、サメの姿が視界に入ってくる……。

●感想

 ――海に伝わる最も怖い実話。
 そんなウリ文句に惹かれ、観てみる事に。

 まずこの映画、ムダがほとんど無い。ほとんど全編、「海のただ中に取り残された二人の行く末」を映し出しています。
 その他、ムダな説明もほとんどない。会話ではなく、「見せて」状況を説明するんですね。だからこそ、映画に集中できる、というのはあると思います。「見せる」映画は好きですね。感心する所も多々出てきますし。

 で途中、映像に水滴などがつくのが、映画らしくない。でも逆にドキュメンタリー映像っぽくも見えたので、特に悪い点とも言えないのですが。
 DVD特典内にあった、この映画のCMでは「ブレアウィッチ」×「ジョーズ」という説明があったのですが、ほんとそんな感じだったと思います。

 ●

 ――海のただ中に取り残されてしまった二人の恐怖。
 午前10時頃から遭難し、午後じゅうずっと、海に取り残されたまま。一向に救助が来ない。
 クラゲに刺されたり、スーザンが具合を悪くしたり、せっかく船を見かけても気づいてもらえなかったり……。
 そうしている内に、不穏なものが辺りにただよい始める……。
 ――サメだ。
 大型のサメが、近くに来ている……。

 「ほんとにこの先、どうなるんだろう?」とハラハラしながら観られたのが、最高に良かったですね。
 ストーリーはあって無いような映画なんですが、ここまで食い入るように観た映画は久しぶりかも。

 ●ジョーズとはまた違う

 「ジョーズ」とは違ったリアリティがあったと思います。
 うろ覚えですみませんが、ジョーズは人間が襲われて、食われたりするシーンをしっかり映していた、ような記憶があったのですが、この「open water」はちょっと違う。控えめになっているんですね。グロいシーンは無いので、そういうのが苦手な人も安心して?観られるかと。

 ……でも怖い。それは何故か?
 それはリアリティを感じたから、というのが大きかったと思います。作り物ではなく、実際にあった事なんだと思って、観られたんですね。過剰なホラー表現が無かったお蔭で。
 視覚的に怖がらせよう、と思えばもっと派手な事ができたハズ。でもあえてそうしなかったからこそ、映画としてもいい出来になったんじゃないでしょうか。
 ぎゃあぎゃあわめいて怖いこわい〜……じゃない。周囲に漂うサメの最中。静かな覚悟のようなものがあったり、お互いを気遣う優しいシーンがあったりと。見所も多かった。

 ラストまで、ずっと息を呑んで、見守らせていただきました。
 文句なく、怖い映画でした。79分という上映時間もお手ごろ。

●余談

 あとスゴイと思ったのが、俳優とサメを同一画面で映しているところ。ネタバレ: スーザンがダニエルとはぐれてしまった場面など
 サメはスーザンのすぐ真下を泳いでいる。CGにはとても見えないし、どうやって映したんだろう……と。(後でネットでの映画紹介記事などを読み、驚きましたけどね。他、撮影に3年かけた、というのも驚き)
 ちなみにネタバレ: そのシーンはダニエルがスーザンを置いて逃げたのか、とか、既にダニエルはサメの餌食となってしまったのか、とかなかなかハラハラさせるシーンでした

 さらに余談。ネットで他の人の感想などを見てみると、思わぬ酷評などがあったりして、驚いてしまいました。僕としては文句なしの絶賛なんですけどね。ホラー好きか否か、の違いもあるんでしょうけど。
 やっぱり映画の感想って、観る人によって全然違うものなんだなぁと改めて実感しました。

 なお、またもや画面サイズは16:9。もう言いたくなくなってしまいました。ここんトコほとんどだもんね……。

「ギミー・ヘブン」

 監督 松浦 徹(長編映画初監督)
 脚本 坂元 裕二(「東京ラブストーリー」「世界の中心で、愛をさけぶ」脚本)
 主演 江口洋介、安藤政信、宮崎あおい、石田ゆり子、松田龍平

 (2006年公開/邦画/121分)

(一言: ヒトとは違う感覚を持つ、共感覚者。共感覚者である葉山は、とある少女と出会った事で事件に巻き込まれていく。途中まではかなり面白かった。ラストは美しいのだが、衝撃をスカした感がある。怖さはあまりない)

 公式サイト:なし
 解説●「CINEMA topics online」内ページ: http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=6042
 感想●「映画生活」内ページ : http://www.eigaseikatu.com/title/14028/

 「eo映画・ドラマ」内、江口洋介インタビュー : http://eonet.jp/cinema/interview/060209_interview1.html


殺人現場には、ワインで奇怪
な模様が描かれていた。
●あらすじ

 とある邸宅で老人が殺された。
 第一発見者は、養女の路木(みちき) 麻里(宮崎あおい)。高校3年生にして、30億の遺産を受け継ぐ事となった。
 ――だがおかしな点がある。麻里を養子として受け入れた家族が、次々と死んでいるのだ。(マンガ「MONSTER」に設定が似てるんですが……)

 一方。葉山 新介(江口洋介)は、浜辺で相棒のタカシ(安藤政信)と戯れている。そんな葉山達を窓越しに眺める女。彼女は葉山の恋人だ。
 葉山は、常人とは違う感覚を持っている。彼女はそれが何なのか、知りたくて医師に診てもらったのだ。

 ――それは「共感覚」というものらしい。
 10万人に一人と言われるそれは、数字を見ては色を感知し、ニオイによっては手触りを感じたりする。そして絵から文字を読み取ったり、言葉に味を感じたりもする……。
 だが、共感覚者である葉山当人は、それを意にかいさず、自然体で生きているのだった。


葉山新介(江口洋介)
共感覚、というものをもつが、
本人はあまり気にしていない。


野原貴史(安藤政信)
排水溝で見つけた少女、
麻里にホレて、命をかけよう
とする。
 葉山は、ヤクザから仕事を下請けしている。相棒のタカシと2人で、盗撮サイトを運営しているのだ。
 ある日、ヤクザのコンちゃん(コンちゃん……)から、クレームを伝えられる。
 下川美紀という女の部屋にあるカメラが、どうやらおかしいらしい。この女とは金で契約して、カメラを置かせてもらっている。
 葉山らは、現場を確かめに行く。

 女の部屋に行くが、女はいなかった。そしてベッドのシーツをめくってみると……そこには大きな血痕があった。
 葉山はおかしな事を言う。「これは、ピカソのマーキングだ」と。

 すると、部屋のパソコンが勝手につき、とある映像を映し出した。
 それは葉山らがカメラを設置した、とある排水溝だった。そこに倒れている女の足が見える……。

 その排水溝へ向かう葉山ら。そこには映像にあったように、女が倒れていた。学校の制服を着ている。高校生らしい。
 その少女を事務所に連れて来た葉山ら。特にタカシが、彼女の事を気に入ってしまった。
 (葉山らは知らないが、彼女は冒頭で出て来た、麻里である)

 ●ピカソ

 ――ピカソは皆の事を知っている。しかし、誰もピカソの事を知らない……。

 「死の商人」の異名をもつピカソは「自殺」だの「事故」だの、人が死ぬシーンをどういうワケかいち早くかぎつけ、それをカメラで中継するすべをもっていた。大勢の人間がそれを大金を払って見たのだという。
 葉山はその中継をネットで見た事があるという。そこにはいつも、奇怪な形の「マーキング」が残されてあったらしい。
 そのマーキングが、下川美紀の部屋にも残されていたのだ……。

 ●

 夜の繁華街。下着姿でふらふらと歩く女がいた。それを見つけたヤクザのコンちゃん。女は何と、失踪した下川美紀だった。
 早速連絡を受け、葉山らがその街に駆けつける。下川美紀はテレクラに入ったっきり出て来ないという。
 すると、彼女はテレクラのビルの屋上に立っていた。そして……。

 その後のTVのニュースで、葉山らは麻里の事を知る。彼女は金持ちのお嬢さんで、現在失踪中、とされている。
 葉山はピカソが麻里の遺産を狙っているのか、と推測する。が、そこで麻里はおかしな事を言う。
 ――あれはアタシじゃない。あれはただの人形です……、と。


葉山の事務所内。

左)ヤクザのコンちゃん
 ●ピカソとのコンタクト

 事務所内。ヤクザのコンちゃんからCDを渡される。
 「マリオネット」という、PC用のオンラインゲームが入っているらしい。そのゲームをクリアーすると、「ピカソ」に会えるのだという。
 しかし、ピカソに会った者は皆、まともじゃなくなるのだという。何人かは自殺し、何人かはヒトを殺してしまったらしい。

 だが、葉山はピカソとコンタクトをとりたい。下川美紀の自殺にしろ、今事務所で抱えている麻里にしろ、ピカソがからんでいる事は間違いないのだ。
 葉山は、相棒のタカシにそのゲームをやらせてみる。それはダンジョン形式の、3Dアクションゲームだった。ゲームをタカシにまかせ、葉山は休息をとる事にした。

 それから数時間後。タカシはピカソの所に辿り着いた。だがだいぶ疲れ果てているようだ。そればかりか、おかしな独り言を呟いたりしている……。
 代わって葉山がピカソと会話を試みる。ピカソはモニター上、シカの姿で現れた。
 ピカソは、麻里を解放するように言ってくる。……やはり、麻里を知っているらしい。しかも、葉山らが麻里を預かっている事も。さらに「共感覚」の事までも、ピカソは知っていたのだ……。

 ピカソとの会話の後、気付くと傍でタカシが手首から血を流していた。
 ――リストカットしたのだ。タカシ自身も驚く。急いで応急手当を済ませ、事なきを得る。

 ●その後……

 コンちゃんとピカソとの意外な接点。
 そして葉山らの事務所に何者かが入り込み、盗撮サイトを破壊。そしてソファに残された「ピカソのマーキング」……。
 麻里を守ろうとしている葉山らまでもが、ピカソに狙われ始める……。
 そして麻里を守るべく、葉山とタカシがとった行動は……。

●感想

 またもや。TVの音量をバカ高くするハメに。どうして邦画っていつもこうなんだろう……。
 特に男刑事がごもごもしすぎ。音量40にしてやっと聞き取れるって、一体何……(普段は15〜20もあれば足りる)。クライマックス直前での松田龍平さんもごもごもしすぎで……音量40でも集中しないと聞こえないという。困ったもんです。
 さらにまたもや、画面サイズが16:9での収録。古い安物のTVでは、やや縦長の画像で観るハメに。困っているのは僕だけなのか……。(紹介写真はそれなりに加工)


 で。排水溝で見つけた謎の少女、麻里を事務所に置いてやる、という時点で何かがおかしい(ドラマすぎる)んですが、物語が進んでもイマイチ、麻里の危機感が伝わってこない。
 麻里がピカソに狙われている、というのはいいんですが、ピカソに捕まったところで麻里が殺されるのかどうなのか、ハッキリしない。
 だから、麻里をピカソから守ってやろうとする葉山らの行動に、必然性が感じられなかったんですよ。……少しキビシク観れば、なんですけどね。

 で、タカシが麻里を車で連れ出して、ピカソから逃げる事になるんですが、その決着がつく所まではかなり面白く観れました。
 ただ、行き着いた廃墟に監視カメラがある事が、どうしても理解できなかった。カメラがあるからこそ、ドラマにはなったんですけど……。でも都合良すぎなんじゃないかと。重要なシーンゆえ、納得がいかないですね。

 ネタバレ: 廃墟にコンちゃんがやってきて、タカシを殺そうとするシーン。絶体絶命から一転しての反撃。「死にたくねえって言ってんだろ、馬鹿野郎ッ!」と言い放ち、銃をぶっ放すところは最高にカッコ良かった。その後のひきつり笑いもいい
 さらにネタバレ: で、その直後、タカシも銃で撃たれて死んじゃうんですが、犯人がどう見ても麻里としか思えない。だからラストシーンでの衝撃がスカすハメに。……それ以前に、ラストは衝撃というより「狙いすぎ」という感があり

 ●ラストシーンについて

 ラストシーンもなかなか独特でいいんですけどね。
 共感覚を交えたアレは、グッときました。何故か2度目の観賞の方が、いい感じで観れたんですが。1度目はノレないなぁと思ったのに……。不思議なもんです。
 ラストからスタッフロールへ、の受け渡しの曲も、美しくはかない。いいムードです。……というか、ソッコウでCD買ってしまいましたので。えぇ。(竹仲絵里「gerbera」)

 まぁ衝撃であるハズのどんでん返しは……残念ながらスカした(読める)ので、「惜しい」という印象が強いんですけどね。
 ネタバレ: 麻里がタカシを撃ったというのも必然性が弱スギだし、せっかくの松田龍平さんもネタバレ: 妹が好き、という情けない役だったし。せっかく臨死体験をして、味覚などを失ったという意味ありげな役なのに、もったいない使い方ですごにょごにょ。
 更に細かな批評めいた話になってすみませんが、重要なシーンでの「まばたき」が多かった気が。まばたきは、場の集中力を欠く、との事なので。シーンによっては何十秒もまばたきしない、という役者魂の話なども聞いた事がありますし。

●まとめなど


路木麻里(宮崎あおい)

見事な美少女っぷりなんで
すが、セリフも少なく不機嫌
そうな顔ばかりだった気が。
 とまぁ色々書きましたが……全体的にそんなに悪くない映画だとは思います。

 共感覚と恋愛を結びつけた辺りなども感心ものですし。ネタバレ: でも恋愛するに年の差がありすぎるように見えたんですが。江口洋介さんと宮崎あおいさんって、20くらい離れてるような……?

 いい点としては、特にタカシのキャラが良かった。活き活きしてましたし。演技もすごく自然で。
 ヤクザのコンちゃんも面白かったんですけどね。会話中に表情をせわしなく動かしたりと、キャラ作りも上手かったと思います。
 江口洋介さんはセリフの喋り方が時折、少し不自然かなと思ったりもしましたが(妙に丁寧)、かっこ良さはバツグン。個人的には「アナザヘヴン」でファンになったので、本作もいい感じで観れました。
 宮崎あおいさんはラスト付近までほとんどセリフのない、つまらない役だった(失礼)のですが、ネタバレ: ラストでせきを切ったように葉山に問い掛けるシーンが、逆に生きたのかなと思ったり。
 タカシとの愛の逃避行でも、全然ノラない顔してましたけどね……。

 この映画、「衝撃」のシーンでもっとうまくノセられれば、かなり絶賛できたかもしれません。惜しい。

「蝋人形の館」

 監督 ジャウム・コレット=セラ(長編映画監督初デビュー)
 主演 エリシャ・カスバート(「24」)、チャド・マイケル・マーレイ、ブライアン・バン・ホルト

 (原題 HOUSE OF WAX/2005年製作/113分)

(一言: 寂れたとある田舎町。そこには閉鎖された蝋(ろう)人形館があった。図らずもその町へ足を踏み込んでしまったカーリーと兄のニック、そして友人らは、そこに潜む殺人鬼の魔の手に落ちてしまうのか……? ホラー度はそこそこ良好。生きた人間が蝋人形にされていく過程など、なかなか恐ろしい。ただ一点、演技がやたら下手くそな場面があり、そこは大きなマイナス


 ●「蝋人形の館」公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/houseofwax/


カーリー(エリシャ・カスバート)
とある田舎町に連れて来られ
た事で惨劇に巻き込まれる。


ニック(チャド・M・マーレイ)
カーリーの兄。仲間達を静観
しているかと思いきや、案外
妹思い。
●あらすじ

 若者達6人は2台の車で遠出していた。
 カーリー、恋人のウェイド、カーリーの兄ニック、ニックの子分のドールトン、そして恋人同士であるブレイクペイ。彼らは翌日のアメフトの試合を観るため、夜中、車を飛ばしていた。
 その途中、キャンプをして夜を明かす事にした。途中にあったキャンプ場に車を停め、そこにテントを張ると6人は騒ぎ始めた。

 そうしていると、周囲に悪臭が漂ってきた。何のニオイかはわからないが、強烈なニオイだ。
 気を取り直してまた騒ぎ始めた時、そこにトラックが来た。

 ヘッドライトで6人を照らし続け、運転手は降りて来ない。
 ……眩しい。ライトを消してくれ、と頼んでも反応はなかった。6人は気味悪がる。
 頭に来たニックが、トラック目がけてビンを投げつけた。それはヘッドライトに命中し、ライトを割った。するとようやく、トラックは退散したのだった。

 ●

 一晩明け、朝になる。すると、ウェイドの車のファンベルトが何故か切れていた。このままでは走れない。

 カーリーは昨夜のニオイの元が気になり、森の奥へと歩き出す。
 途中で足場を失い、坂を転げ落ちる。するとそこは、……無数の動物の、死体の海になっていた。ニオイの元はこれだったのだ。

 わめくカーリーをみんなが助けに来る。
 その死体の海の向こうに、トラックが現れた。昨晩の気味悪いトラックに似ているが、ライトは割れていない。
 トラックから中年男が降りてくる。そして動物の死体の海に、さらなる死体を投げ入れるのだった。

 車のファンベルトが切れていて、困っている話をしていると、トラックの中年男は、近くの町まで連れていってやる、と言ってきた。
 その中年男は多少薄気味悪いが、せっかくの申し出なので受け入れる。そしてカーリーとウェイドは中年男の車に乗り込み、他の皆は一足先に試合会場へと向かうのだった。

 ●寂れた田舎町、アンブローズ

 中年男に乗せられて来た所は、静かな田舎町だった。アンブローズという町らしい。キャンプ場から北へ24キロほどの所だ。
 とにかく、ファンベルトを購入したい。そしてガソリンスタンドへ行ってみるが、無人だった。
 ……教会には人がいるかもしれない。そしてカーリーとウェイドは教会へ行ってみる。

 すると、そこは葬式の真っ最中だった。
 葬儀をジャマしちゃ悪いので、2人はそこから出る。すると礼服を着た男がそこから出て来た。葬儀をジャマされたのがやはり不愉快であったらしい。たらたらと文句を言われてしまう。
 だが、やや話をしていくと許してくれたようだ。その男はガソリンスタンドの店員だった。ファンベルトが欲しい旨を告げると、30分後にスタンドで待ち合わせよう、という話になる。今は葬儀の最中であるようだから仕方ない。
 カーリーとウェイドは持て余した時間を、近くにあった蝋人形館で潰す事にした……。



 ●蝋人形の館

 ――その館の中。
 ラジオから静かな調べが流れている。無数の蝋燭の灯りの中、無心に蝋人形の制作に取り掛かっている男がいた……。
 その時、館の中に入ってきた者(カーリーとウェイド)に気づき、男は姿を隠す。
 
 館の扉には「CLOSE(閉館中)」のフダが掛かっていたが、扉は開いているようだ。なお、館の壁や扉まで蝋で作られているのに感心したウェイドは、興奮して中に入ってしまう。カーリーもそれに続く。
 
 ……館の中にはたくさんの蝋人形が飾られてあった。
 人形ばかりではなく、壁や床、テーブルなどの調度品に至るまですべてが、蝋で作られているらしかった。

 だがそこにある蝋人形は、有名人を象(かたど)ったものではなかった。ごく普通の人達のようだ。
 部屋の中にピアノが置いてあった。それは普通のピアノだった。ウェイドはふざけて弾いてみたりする。
 カーリーは蝋人形の中でも、奇形なものを見つける。小さな恐竜を思わせる蝋細工だ。そこには制作者らしき名前が彫られてあった。――ビンセント、と。
 そうして館内をものめずらしげに探索していると、カーリーは外から覗いている人影を見つけ、驚愕(きょうがく)する。

 外に出て捜してみるが、結局、人影は見つからなかった。
 そうしている内に、カーリーは蝋人形が不気味に思えてきた。突如、不気味な顔の蝋人形を目の当たりにし、ヒステリックになって館を飛び出した。
 そして2人はその場を後にした。時間潰しのつもりが、なかなか恐ろしい思いをしてしまったようだ。

 一方。ニック、ドールトン、ブレイク、ペイジらは、ひどい渋滞に巻き込まれ、アメフトの試合を観るのをあきらめ、キャンプ場に戻って来た。
 ブレイクは、ニックとドールトンに、カーリーらの出迎えを頼んだ。それはペイジと二人っきりで楽しいひと時を過ごしたいがための、やっかい払いだった。
 ニックらも了解して、車で出かける。携帯電話でカーリーと話を付けてあり、アンブローズの町へ向かうのだった。


スタンドの店員、ボー
(ブライアン・バン・ホルト)
 ●ガソリンスタンドの男の家

 約束の30分を過ぎても、礼服の男はガソリンスタンドに現れない。
 カーリーとウェイドは勝手にスタンドの中に入り、ファンベルトをあさっていた。しかし、肝心の15インチのファンベルトだけ、そこにはなかった。
 そこに礼服の男が現れる。勝手に中に入っているのを見られ、また気分を悪くさせてしまったようだ。

 礼服の男――スタンドの店員は、15インチのファンベルトは自宅にあるのだと言う。
 仕方なく、カーリーらは彼の自宅へ行くハメになった。


 そして男の家に着く。スタンドから歩いて数分の所にあった。
 ウェイドはトイレを借りる。だがちょっとした好奇心が湧いてきて、男の家の中を勝手に探索し始める。
 そして家の奥に、手術室のようなものを見つける。……何故、こんなものがあるのだろう?

 すると部屋の電気を消され、ウェイドはそこに閉じ込められてしまった!
 襲い来る影。そしてウェイドは……。

 ●豹変(ひょうへん)
 
 家の前。男のトラックの中で、ウェイドを待つカーリー。
 もう辺りは暗くなってしまっている。あまりにも遅いので、クラクションを鳴らしてみたりする。
 しかし、一向に来ない。代わりにスタンドの男がファンベルトを持って家から出て来る。

 ……ウェイドはどうしたんだろう?
 男に不審なものを感じ、カーリーは車をロックして、中に閉じこもった。そして今になって思う。この男はもしや、ゆうべテントを張った所に現れた、謎のトラック野郎なのではないだろうか……?
 車の中に閉じこもったカーリーの態度が、男を激しく怒らせてしまった。
 男は車のガラスを割り、中に侵入しようとして来た! カーリーは必死の抵抗をし、車をムリヤリ走らせる。男を振り切ってそのまま逃げようとしたが、タイヤが溝(みぞ)か何かにハマッて、動かなくなってしまった!

 車の中に携帯電話を落としてしまうが、あわてていて見つからない。そうしている内に、男がトラックの正面に立つ。カーリーは電話をあきらめ、車の後部から逃げた。そのまま町の道を一人、逃げ去るのだった……。

 ●ウェイドの危機

 一方、何者かに襲われたウェイドは、どこかに連れ去られていた。
 長髪で長身の男だ。顔はよく見えない。
 連れて来られた所は、まるで地下牢(ろう)を思わせた。麻酔か何かを打たれ、ウェイドはなすすべもないまま、長髪の男に手術のようなものをほどこされていく……。
 だがそれは治療ではない。男は一体、何をしようというのだ……?

 よく見るとそこは地下牢ですらない。まるで製鉄所のようだ。大きな釜の中で熱い液体があぶくを上げている。ウェイドは金属製の拷問(ごうもん)具のようなもので、全身を固定されてしまっていた。もはや逃げる事はできそうにない……。
 そして哀れウェイドは、全身に蝋のシャワーを浴びせ掛けられていくのだった……。

 ●カーリーも捕らえられる……

 一方、暗い町中に逃げたカーリーは、突如付いた町の明かりに驚いていた。
 まるで監視されているかのようだ。だが、人は出て来ない……。
 思いついて教会へ。だが、そこにいた者達は……人ではなかった。


 驚く間もなく、表に人の気配を感じる。……あのスタンドの男が追って来たのか?!
 教会の中。カーリーは身をひそめる。現れたのはやはり、あの男だ。
 隠れているのが見つかり一度は逃げるものの、カーリーは男に捕らえられてしまった。そしてガソリンスタンドに連れて行かれ、地下室の車椅子に縛り付けられてしまった……。

 しかしその時、この町にカーリーらを迎えに、ニックとドールトンがやって来ていた。

 ●血まみれになった妹の救出

 明かりの煌々(こうこう)と付いた町中を探索するニック達。……だが、どこにも人影はない。
 ニックドールトンは二手に分かれ、カーリーらを捜す事にした。

 ガソリンスタンドから出て来た男を見つけ、ニックが問い掛ける。しかし、男は知らないフリをする。
 だが、その店の地下に、ニックの妹であるカーリーはいるのだ。車椅子に縛り付けられ、口を瞬間接着剤で閉じられて……。

 ニックは男に不審なものを覚える。車のファンベルトを捜しに来たカーリーらが、このスタンドに寄らないワケがない。しかもスタンドはこの町に一軒しかなさそうだ。
 一方、地下に閉じ込められたカーリーは、すぐ上にいるニックの声が聞こえていた。だが、口を閉じられているので声を上げられない。
 必死で車椅子を動かしていると、腕の部分が外れる。そして天井の金網に手を伸ばす。兄に見つけてもらうためだ……。

 しかし、金網から伸びてきた指に気づいたのは、スタンドの男の方だった。
 ニックに気づかれないようにその金網に忍び寄り、ニッパーを取り出すと……。(このシーンはなかなかキツい)

 血まみれになったカーリー。しかし今度は、閉じられた口を必死でこじ開けようとする。兄がこの真上に来ているのだから! 助けを求めるのは、今をおいて他にはない!
 そしてムリヤリ唇を裂き、カーリーは叫んだ。
 「ニック! 助けて!」


 事態に気づくやいなや、スタンドの男が隠し持っていた鉄パイプでニックに襲い掛かった。 
 ニックは寸でのところで避け、男にパンチを浴びせる。

 「助けて! 地下にいるわ!」
 妹、カーリーの叫び。ニックは急いでスタンドへ入る。正面ドアのカギをかけ、スタンドの男を遮る。男は別の下ろし扉から中に入ろうとしたが、一足先にニックは遮断する。
 そしてスタンドの地下室で無事、妹のカーリーを救出したのだった……。



 ●蝋人形にされたウェイド。殺人鬼に襲われるドールトン

 一方、ニックと分かれて、当てもなく町をうろついていたドールトン。
 何も知らない彼は、蝋人形館の中に入り込んだ。

 数々の蝋人形がある。……するとその中に、ウェイドを見つけた。彼は大人しく座っているではないか。
 「こんな所で一体何してんだ? みんなキャンプ場で待ってるぞ?」
 そう声をかけるが、反応がない。
 そして異常に気づいた。そのウェイドは……、人形だったのだ。
 しかし、目が動く。涙も流れる。……もしや、その人形の中に、ウェイドは閉じ込められているのか……?!

 ドールトンは人形の表皮をはがそうとするが、ダメだった。皮をはがそうものなら、ウェイドの生皮まではがれてしまう。剥き出しの血肉に怯えながらも、何とか助けようとする……。
 「何でこんな目にあったんだ……!」

 その時、ドールトンを襲う影があった。間一髪で交わすものの、何者かが振り下ろしたものがウェイドの顔面に当たり、ウェイドは顔半分の皮を無くしてしまった。目を剥くウェイド……。その生死を確かめる事もできない……。

 殺人鬼か……? その男は長髪を振り乱しながら、ドールトンに襲い来る。
 地下への階段前で突き飛ばされ、転げ落ちる。

 そして逃げる間もなく、ドールトンは男のナイフのえじきとなった……。

 ●町全体が蝋人形の館なのか……?

 スタンド内。あきらめたのか、男がトラックでその場を去ったのを確認すると、ニックとカーリーは店の外に出た。
 今すぐこんな所を逃げ去りたいが、そうも行かない。町外れに停めた車のキーは、ドールトンが持っている。警察に連絡しようにも、電話がつながらない。カーリーの携帯電話も男のトラックの中なのだ。
 ウェイドとドールトンの安否も気がかりだ。

 また町に出るが、やはり人は一人としていない。とあるテラスに見つけた老婆ですら、蝋細工の人形だった。
 教会で見たものなどを考えてみて、カーリーは確信する。この町の住民は全員、蝋人形にされてしまったのだ、と……。


 そして遠く離れた、キャンプ場の地にも魔の手が伸びていた。
 テントで甘い夜を過ごそうとしたブレイクペイジ。彼らもまた、殺人鬼のえじきとなろうとしているのだった……。

●全体的な感想

 映像、キャストらの美しさは一級品。近年のハリウッドホラーは、その洗練度が高いですね。面白いかどうかは別として。
 ただ「エロティック・ホラー」と銘打たれながら、そういったシーンが下着止まりなのは不満。「エロティック」なんて付けたのは、日本の配給会社なのかもしれませんが。ウソつきはホント、やめてほしいですね。全然エロくはなかったです。期待してはいけません。

 でも、数々のホラーシーンもなかなか良く出来ていたし、そんなに悪くはないという印象でした。全体的に散りばめられたホラーシーンの、配置バランスも良かった。
 中でも、ウェイドが長髪の男に蝋細工をほどこされる一連のシーンなどはなかなか残酷で、息を呑んでしまいました。
 カーリーがスタンドの男に、ニッパーで指を切断されるシーンなども、ひどく痛々しい。美しいばかりであんまり怖くない?近年のハリウッドホラーにしては、結構、容赦なかったですね。

 ラストの大掛かりな見せ場も良かった。蝋で作られた蝋人形館、というものを上手く料理してくれたと思います。


左)ブレイク
右)ペイジ
 ●非常に残念なシーン

 中盤、ブレイクとペイジが殺人鬼に襲われるシーン。
 テントを張った所と、蝋人形館のある寂れた田舎町の距離感がつかみにくく、殺人鬼が何故そこに現れたのか、疑問でした。24キロほど離れているようなんですが、殺人鬼がわざわざその場に現れた必要性などが、いまいちわかりませんでした。

 で。ブレイクが先に殺され、ペイジは半裸姿で殺人鬼から逃げるんですが……、そのシーン、緊迫感があまり感じられませんでした。ペイジの必死さがまるでなく、淡々と演技しているようにしか見えなかったんですね。

 足をナイフで刺されて、少し恐怖が増したかと思いきや、今度はその辺に停まっている車の中に逃げ込むという、どうしようもなさ。演技ばかりでなく、脚本も悪い。

 ……殺人鬼に襲われたら、全速力で少しでも遠くへ逃げませんか? 助けてー!と叫ぶとか。殺人鬼に見つからないように声を上げないとしても、その辺をゆっくりぶらぶらしてるのは絶対に間違い。
 殺されるシーンはなかなかスゴイんですけどね……。まぁ逃げるシーンの緊迫感のなさ、その演技の大根ぶりは……あまりにも残念でした。悲鳴あげてただひたすら逃げた方が、まだ良かった。

「妖怪大戦争」

 監督 三池崇史(「着信アリ」「漂流街」)
 主演 神木 隆之介、豊川悦司、近藤正臣、阿部サダヲ、高橋真唯、栗山千明

 (2005年製作/邦画/124分/同名映画のリメイク作品)

(一言: ホラー度は低め。低年齢の子でも楽しめるようにとの配慮でしょうか。凶悪な機械の化け物<よもつもの>とタダシの死闘が見所。スピード感、爽快感に溢れています。多数の妖怪が観られるのは楽しい。可愛らしい妖怪との友情話もあり。河童の川太郎がかなり面白い。幅広い年齢層で楽しめる映画かと)


  ●「妖怪大戦争」オフィシャルサイト: http://yokai-movie.com/index.html


タダシ(神木隆之介)
地元のお祭りで「麒麟送子」
に選ばれてしまった事から、
冒険がはじまる

すねこすり
すねをこすってあいきょうを
振りまくだけかと思いきや、
勇気ある姿も

河童の川太郎(阿部サダヲ)
お笑い度満点のおいしい
キャラ。
妖怪のクセに関西弁をしゃ
べり、やることなすこと、全部
笑える

川姫
タダシを見守っていく妖怪。
加藤を知っているようだが…

小豆洗い(岡村隆史)
役にたたない妖怪かと思い
きや…
●あらすじ

 魔人、「加藤 保憲(かとう やすのり)が不穏な動きを見せていた。
 彼は<よもつもの>と呼ばれるものをよみがえらせ、世を闇に葬り去ろうとしていたのだ。<よもつもの>とは、人間に捨てられた、ありとあらゆる物だった。それらの怨念を利用し、そしてさらに妖怪たちを捕らえて<よもつもの>と掛け合わせ、より凶悪な化け物を生み出そうとしているのだった。
 アギという女は妖怪たちを裏切って加藤の下僕となり、妖怪たちを捕らえて続けていた。

 時同じくして、小学生の稲生タダシは、地元のお祭りで麒麟(きりん)のししまいに頭を噛まれ、「麒麟送子(きりんそうし)に選ばれてしまった。麒麟送子とは、世界を守る正義の味方らしい。
 そして麒麟送子に選ばれた子は、大天狗の山に登り、聖剣を抜いて来なければならないらしかった。

 「弱虫タダシにはムリだ」といじめっこらにバカにされたので悔しくなり、タダシはその山に意気込んで登った。……しかし、結局怖くなって退散してしまう。
 その時丁度通りかかったバスに乗り、無事に逃れたかと思いきや、バスの周囲にはたくさんの妖怪の姿があった!

 そこで子猫のような不思議な生き物が足元にすりよってきた。……それはケガをして血を流していた。
 タダシはその小さな妖怪を家に持ち帰り、手当てをしてあげた。その子猫のようなものは、「すねこすり」という妖怪であるようだった。

 そんなある日。じいちゃんの置手紙があった。
 ――「大天狗の山で待つ」。心配になったタダシは、日も暮れかけたその山に、自転車を走らせる……。

 そして山に登り、じいちゃんを捜す。時折、じいちゃんが自分を呼ぶ声が聞こえる。タダシは恐怖を振り切って、じいちゃんを捜し続ける。
 しかし。そこはすっかり妖怪の巣であった。
 ろくろ首やら化け猫、はたまた大入道のようなものまで現れ、すっかりパニックになってしまう。
 でもタダシはじいちゃんを捜すため、足を踏ん張って突き進んでいく……。

 そんなタダシを優しく抱く影があった。
 「……合格」。その真っ赤な姿の妖怪は、タダシにそんな事を言ってきた。

 ●

 全身が真っ赤なその妖怪は「猩猩(しょうじょう)といった。口マネでじいちゃんのマネをして、タダシが本当に聖剣を抜くにふさわしい子かどうか、試したのだという。
 妖怪たちに囲まれ、最初は驚くばかりだったが、次第に慣れてきた。悪いヤツらじゃないのがよくわかってきたのだ。
 猩猩、川姫、河童の川太郎たちに連れられ、タダシは大天狗の元に連れて行かれる事になった。

 大天狗は、洞窟(どうくつ)の奥地に住んでいた。そして与えられた聖剣をサヤから抜くやいなや、そこに妖怪たちを裏切った、アギが現れた。
 アギは、<よもつもの>を複数従えていた。それは魔人、加藤保憲が、捕らえた妖怪たちと<よもつもの>を掛け合わせて作り出した、凶悪な化け物だった。

 聖剣を手にしたタダシと<よもつもの>の壮絶な死闘。聖剣に引っ張られながらも、タダシは善戦する。
 ――しかし。アギの一太刀で、聖剣は真っ二つに折られてしまった……。

 頼りの大天狗も戦いに敗れ、アギに連れ去られてしまった。タダシが大事にしていた「すねこすり」までもが……。
 洞窟が崩れる。そして気が付くと、タダシは妖怪たちの集まった座敷に寝かされていた。



魔人、加藤保憲(豊川悦司)
<よもつもの>を蘇らせ、妖怪とかけ
あわせる事で、凶悪な化け物を生み
出して、世を闇の世界に葬り去ろう
とする

アギ(栗山千明)
元は妖怪だったが、加藤にホレて
下僕となる

よもつもの
加藤によって作られた凶悪な化け物。
タダシは聖剣のチカラでそれらをなぎ
倒していく

 ●

 ……この先、どうなってしまうのか。
 加藤が蘇らせた<よもつもの>に、世は支配されていくだけなのか……?

 妖怪たちは奮起して、加藤を倒そうとする。……しかし、戦いに参戦しようとするものはあまりにも少なかった。猩猩、河童の川太郎、川姫。そして新たに加わったのが、役にたちそうもない「小豆(あずき)洗い」。他、「一反もめん」は、河童の川太郎が強引に仲間にしてしまった。

 そんな中、わずかな希望はあった。「一本だたら」という刀鍛冶(かたなかじ)の妖怪なら、折れた聖剣を打ち直せるかもしれない。それに賭けた妖怪たちは、加藤に捕らえられた一本だたらを助けに行く事にした。
 タダシは、同じく捕らえられた「すねこすり」を助けに行くため、意思を固めるのだった。
 (ひそかに「ぬらりひょん」が総大将と呼ばれている(確かアニメの「ゲゲゲの鬼太郎」でもそんな設定だった気が)のが笑えます。総大将のクセに戦いには参戦しないようなんですが。しかも、歌手の忌野清志郎(いまわの きよしろう)さんが演じている、というのだから面白い)
 (なお、ここでは色々な妖怪が出て来るのですが、「油すまし」に竹中直人さん、「小豆洗い」に、ナインティナインの岡村隆史さんが扮しているご様子。特に岡村さんは、DVDの特典映像を観るまで気づきませんでした)

 魔人、加藤保憲が率いる<よもつもの>の軍団を乗せた超巨大怪獣が、東京へ飛んだ。

 (加藤保憲とは、荒俣 宏(あらまた ひろし)さん原作の「帝都物語」の悪役なんですね。その加藤を、この「妖怪大戦争」の悪役にもってきたというワケなんですね。
 この映画のプロデューサーとして、荒俣宏さんや水木しげるさんなどの名前が挙がっているので、お互いの世界観を共有した(加藤保憲VS妖怪たち)んでしょうね。面白い試みだと思います)

 なお、この映画では笑えるシーンが多いですね。かなりギャグにチカラを入れているのがうかがえます。ネタバレ: クライマックスのオチも……。突如流れる、忌野清志郎さんのあの歌も、すごい呆気にとられました……

 超巨大怪獣は東京都庁のビルを飲み込み、そこを拠点にし、東京じゅうのエネルギーと怨念を奪いとろうとしていた。

 その中で今まさに、「一本だたら」がアギにより、<よもつもの>と合体させられようとしていた。しかし、「すねこすり」の捨て身のお蔭で、一本だたらはそこから脱出する事に成功した。
 すねこすりは、タダシが手にした聖剣が折られたのを目にしていた。そして刀鍛冶である一本だたらに、折られた聖剣を打ち直してもらうよう、願いをかけたのだ……。

 そこに丁度やってきた、猩猩やタダシたち。一本だたらを救出し、一旦その場を離れた。
 一本だたらの手により、聖剣が見事、打ち直される。

 そして「加藤を倒す」と決意を新たにしたタダシは、猩猩たちからもらった「麒麟送子」としての着衣をまとい、戦いに身を投じるのだった……。

●ほか、大まかな感想など




 その後も思わぬ展開になったり、すねこすりとの悲しい再会があったりと、なかなか見どころも多いです。特に映像面に言える事なんですが、最近の邦画は、驚くほどよく出来ているなぁと感心しまくりでした。文句ナシに楽しめました。

 でも妖怪がやや人間臭すぎたかなぁとも思いました。妖怪というより、「人の変装丸出し」のような妖怪もいたような気が(豆腐持ったヤツとか特に……)。着ぐるみも結構バレバレですし。作り物かCGかわかりませんが、一反もめんやからかさ、火車とかは上手いなぁと思いましたけど。
 でも多数の妖怪が出てますので、見てるだけでも面白かったんですけどね。

 話も(やたら)単純ですし、いいエンターテイメント作品だったと思います。……特にホラー度は追求しません。そういう作品じゃないような気もしますので。強いて言えば、タダシと<よもつもの>との死闘が、なかなかの迫力だったなぁと。三池監督らしい?容赦のない、鋭いバイオレンス表現だったと思います。

 以前から観たかった作品だったんですが、結構長いレンタル待ちが続いてたんですね、僕の行きつけ?の店では。観て納得の、面白さでした。邦画の未来は明るいですね。
 でもレンタルDVDに、16:9のTVサイズしか収録されていなかったのは痛い。また縦長の映像で観るハメに……(例により、紹介画像はそれなりに修正)。てか今時は、横長のTVが主流なんですか? みなさんのお家ではどうなんでしょうね……?

 主人公の子役、神木隆之介くんといえば、以前ここで紹介した「ZOO」の「SO・far そ・ふぁー」にも出ていたんですね。両親の不仲を前にして、白目をむいてぶっ倒れるシーンが印象的でしたが、今回は大作の主演を見事に演じきってくれたと思います。天才子役といわれるのも納得です。

 あ、豊川悦司さんの加藤保憲もなかなか良かったです。凶悪な魔人(加藤と言えば「みんな壊してやる……」ですから)というより、落ち着いた感じになってましたけどね。
 加藤保憲がいかなる魔人なのか、そういった説明のシーンが無かったのはちょっと残念。「帝都物語」のシーンなどをかいつまんで豊川さんが演じたら面白かったのになー、と思ったり。


やりすぎのシーン…
 ●投げ出された伏線?とすねこすり

 両親が離婚し、タダシと別れ別れになってしまった「姉」の存在。それが冒頭の雰囲気のみに使われたようなのは残念。物語に全然からんでこなかった。
 そして、死んだ「あきら」の存在。全然無意味。何これ、という感じ。
 あと、アギに捕らえられた「大天狗」がどうなってしまったのかも描かれていない。あれだけのデカブツなんで、助かったヒトコマとか、無くてはおかしい。忘れ去られてます。
 ……その辺3つが、消化不良でしたね。もしかすると、続編も考えての伏線……なのかもしれませんけど??

 ●

 他、すねこすりとの再会のシーンで「足にまかれた包帯」というのが、あまりにもムリがある気がしました。んなモノわざわざ付いている方がおかしい。いかにもな「記号」という感じがしました。……まぁ子供にもわかりやすく、の配慮だとは思いますが。でも、もう少し何とかならなかったんでしょうか。ワザとらしすぎです。
 ちなみにこういうシーンネタバレ: 味方が敵となって現れ、それを倒して泣くはどこでも見かけますね。言っちゃなんですが。
 でも、誰かさんはここでひそかに涙ぐんでいたんですよ。何故なんですかね……。上手くやられたんでしょうか。

 あ、そうだ。ここでネタバレ: 元の姿に戻るのはやりすぎ。あまりにもマンガです。まぁ天下の角川映画ということで、あんまり後味の悪いものも作れなかったんでしょうけどね……?(と偏見などを言ってみる)

「ノロイ」

 プロデューサー 一瀬隆重(「リング」「呪怨」)
 監督 白石晃士

 (2005年製作/邦画/115分)

(一言:数々のドキュメンタリー風映像をつなげて、一本の映画が作られている。実話怪奇作家、小林雅文氏は謎の失踪を遂げた。彼が残したフィルム「ノロイ」とは、どんなものなのか……? 前半は登場人物の紹介、後半「かぐたば」という言葉が出て来てから、話は急展開を迎える……。話にノレないとつらい。実話だと思わず、映画なんだと思ってみれば面白いかも。石井潤子と掘光男が笑えます)

 ●「ノロイ」公式サイト: http://www.no-ro-i.jp/

 小林雅文 公式ホームページ: http://koba1964.hp.infoseek.co.jp/
 小林雅文 公認ファンサイト: http://blog.livedoor.jp/kaikifan/


 Yahoo!内「ノロイ」レビュー: http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=322818 (酷評)
 cinema内「ノロイ」レビュー: http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/cinema/no-ro-i.html (絶賛)

●いきさつ

 当サイトの掲示板で、トオリスガリさんからこの作品の紹介があり、レビューしてみる事にしました。

 こんにちは。突然ですが、夢鳥さんは「ノロイ」という映画をご存知でしょうか。
 内容としては
 「怪奇実話作家が1本のドキュメンタリー作品を残して失踪した。『ノロイ』と名付けられたその作品は、あまりに衝撃的な内容ゆえに発売が見送られていたが、プロデューサー・一瀬隆重の手によりついに公開されることが決定。果たしてその禁断の内容とは」
 という”設定”のオカルト・ホラーです。(レビューサイトより引用)
 つまりはフィクション(当然といえば当然ですが)なのですが、なかなか雰囲気が出ており、萎えてしまう演出などもあまり無い(少しだけありましたが^^;)のでオススメです。
 お暇があれば、ぜひレビューをお願いいたします。

 ……との事でした。聞いた感じではなかなか面白そうですが、果たして……。 

●あらすじ

 ●怪奇実話作家、小林雅文

 主人公、小林 雅文(まさふみ)氏はとある主婦から、相談を受ける。隣家から赤ちゃんのような泣き声が聞こえてくる、という。
 しかし、燐家には赤ちゃんはいないらしい。40代くらいの女性と小学生ぐらいの男の子が住んでいるとの事だ。
 事情を確かめに、小林は燐家に向かう。
 出て来た女性は険悪な表情で出迎えた。

 「何でそんな言い方ができんだよ?! ……何でそんな言い方ができるかって聞いてんだ!!」
 取材を申し入れようとしたが、そんなワケのわからない罵倒(ばとう)を浴びせられるばかりだった。
 
 後日、その時のフィルムを確認してみたら、奇妙な音が入っていた。
 音を調べてもらったら、それは確かに、複数の人間の赤ちゃんの泣き声だという。(だから何なんだ、とは思いましたが)

 ●奇怪な女の名は、石井潤子……

 取材後、その燐家の女は引っ越したという。
 空けられた家を調べてみたら、女の名は「石井 潤子(じゅんこ)」である事がわかった。家の庭には黒鳩(ハト)の死骸などが散乱していた。

 それから数日後。取材をした主婦とその娘が事故で死んだ、との知らせを受けた……。

 ●超能力少女、矢野加奈ちゃん

 とある超能力番組。そこで矢野加奈ちゃんという子が、驚くべき能力を発揮する。(子供たちにいきなり「では、透視をやってもらいます」に笑いましたが)
 で、加奈ちゃんは透視を数々的中させる。(最後の一つだけは失敗)
 次に「物質化現象」という実験で、密閉されたフラスコの中に、水を噴き出させるという離れ業を成功させる。
 その水の中には、髪の毛のようなものが入っていた。それを調べて見ると、動物の体毛か新生児の髪の毛である可能性が高いという。

 小林雅文は、その矢野加奈ちゃんに取材を申し入れる。母親に聞いてみると、TV番組での実験の日から微熱が下がらないという。

 ●女優、松本まりか

 心霊スポットに向かう、という未収録の映像が流される。
 お笑いタレントと、女優の松本まりかがそこへ向かう。しかし心霊スポットで、松本まりかが突然悲鳴を上げて倒れるというハプニングが起きる。

 その時の映像を元に、怪奇トークライブが行われる。
 松本まりか、小林雅文などが出演。そこで掘光男という霊能者がまりかを霊視する事になる。
 掘光男は全身をアルミ箔で覆ったいでたちで現れる。そして舞台の上で掘は突然、まりかに襲いかかる。ワケのわからない叫びを上げながら……。
 松本まりかが心霊スポットで叫びを上げた映像の中に、奇妙なものが映っている、という話を番組のディレクターから受けた。
 そこには確かに、白い人影が映っていた……(しかし、あまりにも作り物っぽすぎ)。

 ●霊能者?掘光男

 高樹マリアAV女優……)が、霊能者、掘光男に取材したVTRが流れる。
 彼は自分ばかりでなく、部屋の隅々まで、アルミ箔で覆っていた。そして宇宙から受けるメッセージとやらの怪文書を、そこかしこに貼り付けていた。

 ●(この辺まで全然、話の内容が見えていません……。後で考えれば、登場人物の紹介、という感じなんですが)

 超能力少女、矢野加奈ちゃんが行方不明になった。
 いなくなる数日前から、不審な男が「加奈に会わせろ」と言って来ていたらしい。風貌を聞くと、それはどうやら霊能者の掘光男のようだ。
 加奈ちゃんの部屋にはチラシが残されていた。それもまた掘の自宅にあった怪文書のようだ。

 小林雅文は掘光男の自宅に取材に出かけた。
 彼は加奈の事を少なくとも知っていたようだ。そして突然、地図を描き始める。そこに加奈ちゃんはいるのか……?
 (ここで映像に奇怪なものが映るんですが、これもまた、あまりにも作り物っぽすぎ……

 ●

 (ここでまた話が飛び)女優の松本まりかのアパートへ。
 彼女は気づかない内に、奇怪なモノが部屋にあるのだという。見せられた毛糸は、複雑怪奇な結ばれ方で放置されてあった。自分は知らない、と言う。
 了承を得て、まりかの寝室にビデオカメラを設置。まりかは夜中突然置きだして、ベランダに行くが……。

 ●

 小林は、掘光男が描いた地図にあったアパートを見つける。
 その近くで張り込みを続けると、部屋のベランダに若い男が姿を見せる。彼は、ベランダにとまった黒鳩を素手でわし掴みにするという奇怪な行動をとった……。
 (冒頭での石井潤子もそうなんですが、奇怪な人物にモザイク目線なしで公開している時点で、ノンフィクションとしてはやはり不自然)

 ●かぐたば

 まりかの寝室の様子を映したビデオには、奇怪な音声が収録されていた。
 「かぐたば」という声が聞き取れるようだ。小林は「かぐたば」という言葉が何なのか、調べてみる事に。

 (ここで話がどこかにスッ飛んだ……かと思いきや、実はこの作品ではここからがメインとなるんですね……。「かぐたば」が重要なキーワードなのはいいんですが、話のもっていき方がおかしいのでは?

 で、とある民俗学博士がそのかぐたばという言葉を知っているとの事で、早速取材に出かける。
 「長野県 下鹿毛(しもかげ)村の鬼祭(きまつり)というものを教えられる。それは鬼を鎮めるため、そこで行われていた古来の儀式で、「かぐたば」とは「鬼」の事をさすらしい。
 そこは呪術師の集団が住み着いた村だったという。今はダムの底に沈んでいるらしい。

 ●思わぬ再会……

 長野県の郷土史家、谷村という人物を紹介される。
 彼は実際の鬼祭りを映したフィルムを持っていた。そこには鬼を退治する神官、という儀式が映されていた。しかし、鬼の役をした者は突如狂い、暴れ出した。そこでフィルムは終わっている……。

 かぐたば役の人の娘が、現在も生きているという。早速、小林は取材にでかける事に。
 しかして出て来たのが……

 「なんでそんな言い方ができるかって聞いてんだーー!!」
 冒頭のあの方ああーーーっ!! ……石井潤子さんでありました……。ひええ……。

 ●

 そして石井潤子という女性が何なのか知ろうと、小林は取材を重ねる。
 そこで看護学校の同期という女性に色々教えられる。石井潤子は鬼祭りの後、おかしくなったらしい。それは「かぐたば」の呪いなのか……?

 ●それから……

 松本まりかの近くに住んでいた後輩が自殺。矢野加奈ちゃんの家でもおかしな事に。加奈の父が、妻を刺殺したのだ。
 この辺から、まりかが周囲で起こっている異変に恐れを抱き、「次は自分だ」と思い込みはじめる。
 霊能者の掘光男に、石井潤子を映した映像を見てもらうシーンがあるんですが、ここは爆笑モノでした。

 まりかが変な事を言い出す。長野の、下鹿毛村があったダムに連れて行ってほしいのだという。

 「そこで鬼祭りの儀式と同じ事をして、何か効果があるか、試してみたいんです……」
 何か効果があるか、試してみたい……。
 何という、あいまいな動機でしょうか。まして、まりかがそこまでする必要性が全然感じられないんですよ。まりかがいかに追い詰められているのか、そういった映像もかなり不足ぎみ。

 そして霊能者、掘に同行してもらい、小林はまりかと共に長野のダムに向かう……。
 果たして、まりかのノロイは解けるのか……?(てか、全然ノロわれてそうじゃないんですが)

●感想

 話があちこち飛ぶので、感想をおりまぜてのあらすじ紹介になりました。しかも長くてすみません。(まとめる能力ナシ……)
 細かな事はあらかた書いたので、ここではおおまかな感想を。

 この「ノロイ」。いかにも「ノンフィクション」であるかのような作りになっているのが面白いんですが、ちょっと調べてみると、ノンフィクションじゃないのがわかってしまいます。
 小林雅文さんの著作やビデオ作品などが、ネットで調べても1本も出て来ないんですよ。著作は1作出てきますが、俳句か何かの本で無関係(同姓同名の作家かと)。
 映画でノンフィクションの手法を取ったら、それがウソだと簡単にバレてはいけない、と思うんですけどね……。
 だから、僕も見方を変えました。「ノンフィクション風の映画」なんだと。そうすれば、なかなか面白いです。

 でも「ノロイ」は、まず出だしから悪い。
 隣の家から、赤ちゃんのような気持ち悪い泣き声が聞こえてくる、という相談を受けるが、それが何だというのか。隣の家に対するクレームを、怪奇実話作家に相談する主婦って何? ……いきなり不自然すぎです。

 ●

 話が全然見えないまま、映画は進んでいきます。数々のドキュメンタリー風のショートフィルムをつなげた感じになっているので、テンポはそんなに悪くなかったかと思います。
 で、「かぐたば」という単語がでてきた辺りから、話がどこかにスッ飛んでしまって、眠くなってしまった。……何でそうなるの?と。
 でもラストまで見ると、それこそが、ここで語りたかったものだったようで。

 ●

 全体的に笑えるシーンが多いです。掘光男がまず笑えますし、小林雅文が取材を拒否されたりで、カメラを見て憮然(ぶぜん)とするのも笑えます。
 でも一番笑えたのがやっぱり石井さんですね。「なんでそんな言い方ができるかって聞いてんだーー!!」がツボです。

 あと、松本まりかさん。不思議ちゃんとして、「輪廻」にも出てますね。輪廻の方がかなり若々しい感じですが。
 で、呪いを解こうとするシーン。まりかちゃん、ノロイ解けるの速すぎです。「早」じゃなく、「速ッ」!

 クライマックス。掘はなんでヤバイところにわざわざ突っ走って行くのか……。まぁ加奈を見つけるため、と思えばそうなんでしょうが……。
 しかもそこで見た、少女にすがる餓鬼の群れのような映像は、いかにもいかにも……、作り物丸出しだったという……。
 それ以前にもいかにも作られた映像、というのがやたら多かったんですが。この辺が萎えますね、やはり。

 で。ラストシーンの謎の映像は、ホント「ブレアウィッチ〜」ぽいですねー。
 でも何でそんなひどいシーンを、「いいアングルで映している」のかわかりませんが。この辺もリアリティが無い。
 「映さないで怖がらせる工夫」がちょっと足りなかったのでは? 何でもかんでも、いいアングルで映してしまっているから、やっぱり作り物なんだと思ってしまう。

 どの道、怖いシーンというのがラスト以外、全然無かったのはつまらない(ラストは立て続けに3段階ほどで来ますが)。途中で飽きて、投げ出してしまう視聴者も多くいそうな気がします。
 ノンフィクションなのか、そうではないのか。それが本当にわからなくなるほど凝っていれば、もう少しノレた気もします。まず第一に、怪奇映像が貧弱すぎました。

●まとめ

 最後まで観て、「ノロイ」がどんな話だったのか、やっとわかったんですが、途中まではホント、話がどんどん変な方向に流れていくなぁと思ってました。「かぐたば」の単語が出て来るまでの前半〜中盤にかけては、ちょっとつまらなかったですね。

 総評としまして、松本まりかのノロイをとくためにダムへ行き、つまんない儀式を終えてからが、やはり見所なんでしょうね。そこからラストシーンまで、そこそこ怖いですねネタバレ: 動物の死体並べてグロいだけです

 ドキュメンタリー風はいいんですが、この映画、話があちこち行き過ぎて、無駄も多かったと思うんですよね……。
 ドキュメンタリー風なら「ブレアウイッチプロジェクト」に全然かないません。映像だけを見て、ドキュメントかどうなのか、「ブレア〜」ではわからないですから。

 対して「ノロイ」はドキュメンタリーじゃない、と途中でわかってしまうんですよ。
 石井潤子などの映像が「再現したものです」とでも断りがあれば、まだノレたかもしれませんが……。取材許可を取れないであろう人物を目線ナシで映しているのがまず、ドキュメント風じゃないなぁと。
 いくつかの怪奇映像もいかにもな作り物じゃあ……ノレません。全体的に、音の効果もあまり無かったように思えます。ドキュメンタリーに凝ろうと思ったから、かはわかりませんが。
 とにかく、せっかくのドキュメンタリー風なのに、ホラーシーンでのリアリティが全然感じられなかった。(ラスト付近はいいんですが)

 松本まりかのノロイ、も弱すぎた。もっと真にせまったホラーシーンで、彼女が非常に追い詰められているとわかれば、鬼祭りの儀式のマネも必然性が感じられたんでしょうけどね……。
 てか、怪奇作家に相談する前に、お寺にでも行ってお祓いしてもらいなさい、と説教したくなります。

●余談

 レンタル版のDVDを観たのですが、本編に入るまで、メニューへ行くボタンなどが使えないんですね。「次へ」のスキップボタンも効かないし、他の映画CMなどを早送りで送るしかない。不便な作りになってます。メニューへ飛ぶボタンくらい、使えるようにしてほしかったんですが(映画本編に入ると使える)。要は、レンタルビデオと同じ作りになってるんですね、DVDなのに……。

 で、Yahoo!での「ノロイ」レビューをずっと見ていったんですが、劇場で観た方は、カメラの動きに酔ったみたいですね。
 酷評がとにかく多い! 途中で席を立ったりとか。そしてほとんどの方が、作り物だとわかったみたいですね。

 行方不明になった超能力少女の加奈ちゃんは「菅野莉央」という子で、「仄暗い水の底から」や「いぬのえいが」にも出演しているとの事ですし。
 失踪したハズの小林さんも、どこかで出演しているようですし。加えて、監督もいる事ですし……やっぱりただの映画なんですね……。

 でも面白い作りにはなってますね。ドキュメンタリー風ホラー映画。も少し、恐怖シーンがしっかりと怖ければ(チカラがこもっているのが、後半ばかりなので)、いいホラー映画になったのではないでしょうか?
 加えて、掘光男と石井潤子が笑わせなければ。(気の利いた笑いとはちょっと違うので)

「輪廻(りんね)

 監督 清水 崇(「呪怨」「呪怨2」)
 主演 優香、香里奈、椎名桔平

 (2006年 公開/邦画/本編 96分)

(一言: 渚は、35年前に起きた実際の無差別大量殺人事件をモチーフとしたホラー映画、「記憶」の主演に抜擢された。しかし撮影をしていく内に、渚は人形を抱えた少女をいつどことなく、見るようになる。それはもしや前世の記憶なのか…? 文句なく、怖くて面白い映画でした)



35年前、無差別大量殺人
事件が起きた三角屋根の
ホテル。
●あらすじ

 杉浦 渚(優香)は女優の卵。今回、「記憶」というホラー映画のオーディションを受け、見事主役に抜擢(ばってき)された。
 「記憶」は今から35年前の1970年に、実際に起きた大量無差別殺人事件を映画化しようとしたもの。その撮影を進めていく内に、渚は時折、見知らぬ不可解な少女を見るようになる。

 時同じくして木下弥生(香里奈)も、不可思議な現象に襲われていた。彼女は同じ夢を何度も見るのだ。それは、三角屋根のホテル。そこに行った記憶はないし、両親もそんな所は知らないと言う。
 そんなある時、友人に「不思議ちゃん(変な子)」を紹介してもらう。彼女も前世などの話が好きで、自分の前世を少し知っているという。その子と前世について調べてみる。そして弥生は、自分の前世と関係があると思われる家をたずねてみる事にした……。

 映画「記憶」の撮影が順調に進んでいく中、実際に殺人事件のあったホテルに一向は向かう。そこで撮影が行われるワケではないが、松村監督(映画内の監督)の意向で、出演者全員に実際の現場を体感してもらいたい、という事だった。

 そこで渚は不可解な現象に襲われる。35年前の幻想に呑まれたのだ。皆がどうやって殺されていくかその目で見、自分の前世が何なのか、そこで知る事になる……。


杉浦 渚(優香)
映画「記憶」の主役に抜擢
される。
しかしそれから、不可思議
な現象に襲われ出す。


木下弥生(香里奈)
度々見る同じ夢が何なのか
気になりはじめた大学生。


松村監督(椎名桔平)
映画「記憶」の監督。映画に
対する熱意にあふれ、渚に
は特別な才能を感じている
●感想

 ……食い入るように観てしまいました。前半はホラーと言うよりサスペンスぽかった気がします。後半はやはりホラーとして弾けてくれましたね。
 「うわあっ!やられたあ!」というシーンもありましたし、だいぶ満足させていただきました。

 まず「輪廻」という題材からして魅力的。
 前世、生まれ変わり。それに無差別大量殺人事件がからむ、というのだからスゴイ。しかも、それを「映画の中で映画化」しようとする、アイディア。映画の中に演技指導のシーンなどがあり、見ている方は何が演技なのか演技じゃないのかわからなくなりそう。妙な面白さがありました。

 ホラー的解釈としての「輪廻転生」というものを、かなり描ききった映画だと思います。「輪廻転生」が、ただの飾りじゃなく、そのテーマにちゃんと沿って描いた映画だった、という事ですね。だから満足度も高かったです。

 ●

 「輪廻」を一言で説明すれば、「ホラー映画を撮っていく内に、主演女優が、前世がらみの怪奇現象に襲われていく」という映画なんですね。

 怖さで言えば、「呪怨」と同等かと。決して引けをとっていません。
 で、「呪怨」では不条理な怖がらせ方でも何でもアリ(布団の中から出てきたり仏壇から出てきたりとか)な感じがしましたが、「輪廻」はちょっと違う。
 なぜそのショックシーンがあるのか、ある程度説明されている気がしたんですね。いきなり、ワケのわからない事は起きない(……起きるけど、それなりの解釈ができる)。前世での事件があり、それをなぞっての恐怖シーンがあるんですね。「呪怨」みたいにテキトウに?怖がらせるワケじゃない。

 ただ、ネタバレ:ラストシーンは、評価に窮しますね。良かったのか悪かったのか、微妙

 ●僕的に一番の見所

 ネタバレ:35年前の事件の被害者の転生者が、ホテルに集まってぶっ倒れていくシーンが、僕は特に好きですね。何でそうなるの?という小さな疑問もありますが。でも多分、説明はつきそうな感じ。
 「輪廻転生」というものを、「ホラー的解釈で魅力的に表現」したのが、そのシーンなんじゃないか、と。
 それに加えて、ネタバレ:弥生が前世に目覚めるシーンも良かったですねー。まさに劇的な輪廻シーンですよ、はい。やや悲しげな表情も最高です。

 ただ、ネタバレ:それらがゾンビ化して渚を襲うのはどうかなぁ……と。あれが無ければ、静かなラストを迎えられたんじゃないかなぁ、と。ネタバレ:逃げる場所も何かテキトウですし……トチ狂ってる、と言いたいんでしょうけ
 さらにネタバレ:ついでに、人形の怖さ、というのもちょっとありがちな気がするんですよね〜……。僕は、人形なんか要らないんじゃないか、と思いましたが。35年前とつながる生き?証人と思えば、確かに重要なのかもしれませんが……。でもラストのCGか何かで作った表情はわざとらしすぎですね

 ●音について

 「呪怨」での恐怖シーンについてきたのが、ギリギリギリギリ……という効果音。かなりの好印象でしたが、今回の「輪廻」でも音の効果は高かったですね。先の一番の見所に挙げたシーンでも、音が弱かったらそんなに怖いシーンにならなかったのではないか、と思えるほど。
 ホント、ホラー映画に「音」は重要ですねー。ゲームでもそうなんですが。

●DVD特典など

 「DVDプレミアムパック版」には特典映像として、メイキング映像(58分)やインタビュー映像(31分)などが収録されています。清水 崇(たかし)監督をたっぷりと堪能できましたし?やはりメイキング映像は楽しかったですね。監督は普通におとなしそうな方かな、という印象を受けました。全然エラそうでもなく。椎名桔平さんの方がよっぽどエラそうでしたが。笑
 ちなみに「呪怨」での伽椰子(かやこ)役の藤 貴子さんも、ちょっと怖い役で出演してたんですね。

 他、DVDでは画面サイズが16:9というサイズしかなく、普通サイズのTVで観たもんですから、「画面が縦長」での観賞となりました。普通のTVサイズでの収録も欲しかったんですが……。痛いですね、これは。(記事内写真はそれなりに修正)

 ちなみにDVDのメインメニューは、見ているだけで怖いです。恐怖シーンてんこもり……。

●余談

 主演、優香さん。……特に悪くはなかったですね。清水監督も最初は、彼女の演技がどうなのか、不安だったようですので、優香主演、というのはおエライさんが決めたのかなぁなどと勝手に推測。
 優香さんも映画の中ではごく平凡に見えましたね(変に場違いじゃない、というホメ言葉?)。演技もすごく自然で、(顔を崩すほどの)絶叫シーンも文句なかったです。

 香里奈さんもある意味主役かな、という気がしますが、ネタバレ:前世に目覚めちゃってお終いという扱いがちょっと悲しいかな、と。優香さんとからまなかったですもんね。(と思ったら、ちょっとからんでたか……)

 あとですね、「DVD特典」の中のもう一つのラストシーン。もしアレにしていたら、僕としては最悪でした。うわぁやめてくれー、という感じです。今のラストでもそんなに好きじゃないので。(アレにしていたら映画「こっくりさん」とかぶるんですよ……。「らせん」などともかぶりそう)
 僕的なネタバレ?:僕なら、古いホテルで渚が発狂死して終わり、とかにしますが。前世に目覚めたところでほぼ終わり。あれが一番の衝撃だと思いますので。で、ゾンビシーンも無し

 他、全くの余談ですが、エンドクレジットで流れた歌は、(個人的には)映画のイメージに全然合わない気がしたんですけどねー……。最初聴いた瞬間に、すごい違和感がありました。




事件を起こした大森教授は、
事の全てを8mmカメラに収
めていた…。
 ●映画パンフより

 この「輪廻」は、実は映画館で観ようと楽しみにしてたんですね。でもたった2週間で上映が打ち切られてしまったんですよ、僕の行っている映画館では。観ようと意気込んだ前日に終了、とかいうすれ違いでした。
 そういう事で映画のパンフだけはあるんですね。
 今ちょっと読み直してみましたが、監督の一言を抜粋してご紹介したいと思います。DVD特典でも語られていた事なんですが。

 (質問)――”生まれ変わり”というものに興味があったのですか?
 「『呪怨』を振り返って考えてみてもそうなんですが、僕のやりたい世界、見たいもの、好きな小説、映画などを思うと”人と人とのすれ違い”や時間と場所が交差して時空がねじれて翻弄されてしまうという世界観に惹かれている自分というものがいたわけです。……(略)」

 ……人と人とのすれ違い。これが渚と弥生の関係だとしたら、監督は最初から2人を会わせるつもりはなかった? ともとれるんですけどね。真意はわかりませんが、全く同じ事をDVDでも語っているので、これは監督が重みをもって語っている事なんだなぁと受け止めました。ネタバレ:渚と弥生は一瞬だけ「会う」んですが、その時点で事は終了しているんですねー……
 「時間と場所が交差して時空がねじれて翻弄」というのはまさに「輪廻」で表現されていますね。……ただ、ヘタをすると安直なSFになりかねない。……やや危なかったんじゃないでしょうか? 渚がトイレを出たらいきなり……という所はかなり安直に見えましたが。やや妄想や幻覚なども入り混じって、何が本当に起きたのかは、うやむやにされているようですけどね。

 他、アレは良かった。ネタバレ:布団から8mmカメラが出て来るところ。夢からモノを持ってきたみたいで。「先にやられたー」とか思いました。……エラそうですみませんが

●まとめ

 ……色々と余計な事まで、好き勝手に言ってしまいましたが、この「輪廻」は僕にとってツボを突かれるシーンが非常に多かった。「あぁ魅力的だー」と事ある毎に感じました。
 ホラーシーンも「呪怨」に引けをとらないし、文句ないです。……ラストはちょっと文句ありますが。ネタバレ:ちょっと優しいんじゃないかなぁと。目新しくもないですし

 映画を観て興奮しましたし、レビュー書いてても興奮ぎみでした。「輪廻転生」をホラーにしたらどうなるか、というのを色々な角度から、魅力的に描いてくれた映画だと思いました。かなり良かったです。

「URAMI〜怨み〜」

 監督 ジョージ・A・ロメロ(「ゾンビ」「死霊のえじき」「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」)
 主演 ジェイソン・フレミング、ピーター・ストーメア、レスリー・ホープ、ニナ・ガービラス

 (原題 BRUISER/2000年 アメリカ映画/本編 100分)

(一言: 家のローン。妻の浮気。そんなストレスに苦しむヘンリー。妻に「カス男」とハッキリ告げられた翌朝、目覚めてみると、自分の顔には真っ白な仮面が張り付いていた……。何事か驚く間もなく、家政婦が鼻歌を歌うように、スペイン語で自分をののしっているのを聞く。更には盗みまで働いていたのだ。そんな家政婦を殺してしまい、ヘンリーは次々と憎む相手を殺していく……。怖さ面白さはそこそこ。でも悪い部分は見当たらない)


●映画レビュー:「URAMI」ページ
 http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=2328
 http://www.unzip.jp/review/0110/urami.html


ヘンリー(ジェイソン・フレミング)。
お人よしで周囲からカモ扱いされて
いる。
その内情には激しいストレスを抱え
ていた。




ミロ。
ヘンリーの妻ジャニーンと浮気。
何モノをも恐れぬ、自由ほんぽうで
わがままなボス。
●あらすじ

 ヘンリーは家のローンに苦しんでいた。
 家の内装もままならないまま。親友にあずけた株の売上もうだつが上がらない。なのに妻は浪費家で、毎月の利用限度額のないプラチナカードを欲していた。
 ヘンリーは雑誌社に勤めている。一部の者をのぞき、ヘンリーは周囲から軽んじられていた。
 そしてヘンリーのボス(編集長)であるミロは、大胆で女好きで傲慢(ごうまん)な男だった。

 とあるパーティの席で、ヘンリーは、妻のジャニーンがミロと浮気しているのを見る。後になって妻に問いただそうとしたが、逆に妻になじられてしまう。浮気の現場を見ておいて、その場で自分やミロを殴る勇気もなかったのか、と。
 元々ヘンリーに愛想が尽きていたジャニーンは、「カス男」とののしり、そのままミロの元へと外泊に出かける。ヘンリーは失意のまま一人、朝を迎えるのだった。

 ……翌朝目覚めると、顔に真っ白な仮面が張り付いていた!
 それは同僚のロージーが趣味で創作した仮面だ。パーティで見せられたものだ。……何が起こったのかわからないが、その仮面が取れない! いや、自分の顔そのものになってしまっている……。ヘンリーは夢だと思う他なく、卑屈に笑う。
 そんな時、家政婦が家で盗みを働いていたのを目撃する。しかも家政婦はスペイン語でヘンリーの事をひどく侮辱していたのだ。聞かれてもわからない、と思っていたらしい。
 その態度に逆上し、家政婦のバッグをつかんでその顔を殴る。しかし勢いあまって、家政婦を殺してしまった……。

 死体を片付けようとしたところ、妻のジャニーンが帰宅する。ヘンリーに気づかず、ミロと電話するジャニーン。ヘンリーを夫とも思わず、ただの「金ヅル」だと言い切り、またすぐミロの元へ出かける話をつけていた。
 ……そうなのだ。自分は周囲からバカにされていたのだ。ヘンリーは今、それにやっと気付き、受け入れるのだった。

 家政婦を殺した勢いで、今度は妻の車を追う。
 社のオフィスで愛し合っていた二人。丁度その時ミロの妻が現れ、浮気の現場をカメラに収める。その妻を追い、ミロはその場からいなくなる。
 代わってヘンリーがその場に姿を見せる。そしてジャニーンの首に長いコードを巻きつけ、窓から投げ落とし、首を吊らせて殺害した。

 だがそれは明白な殺人事件として、警察が動き出す。
 容疑者の中にヘンリーの名も上がる。ジャニーンの夫だからだ。しかし仮面の顔のままでは、警察に顔も見せられない。
 捕まる前に、ヘンリーにはまだやる事があった。殺すべき人間はまだいるのだ。
 株の売上をごまかして、着服していた親友。そして妻の浮気相手である、ミロだった……。

●感想

 ジョージ・A・ロメロと言えば「ゾンビ」。
 「ゾンビ」や「ナイト・オブ〜」と言えば、「大したストーリーもなく、ただただゾンビが怖いばかり」という映画だった気がしますが、この「URAMI」はそういう感じじゃないんですね。
 普通に日常のストーリーがあり、そこに怨みがあり、そしてあるきっかけにより復讐(ふくしゅう)する……、というわかりやすい映画なんですね。
 だから、どの辺が「ジョージ・A・ロメロ」テイストなんだろう?という感じでした。ごく普通のそこそこ面白いホラー映画、という印象。決して悪口ではないんですが。

 ●真っ白な仮面

 「仮面」という小道具が効いていますね。
 時に芸術的であり、時に象徴的であり、時に無機質的で恐ろしい。殺人鬼ジェイソンのホッケーマスクのように、人間の顔を隠しているからこそ、何を考えているのかわからなくて恐ろしいんですね、きっと。ヘンリーの人間味を無くす事にも成功していると思います。

 真っ白なその仮面に、ヘンリーが恐ろしげな文様を塗りたくっていくのもいい感じ。以前のパーティーの席でロージーに、創作した仮面に色を付けるように言われたんですが、ヘンリーはその場では何を描いていいかわからなかった。自分自身が見えていなかったんですね。
 しかし今度は、自らの顔になった仮面に、色塗りを実行していく。
 ヘンリーは人を殺していき、恐ろしく歪んでしまった。だからこそ、仮面(自分の顔)も恐ろしい色合いで塗りたくられていくんですね……。

 ●サービスうれしい

 途中、ちょっとしたお色気がさりげなくあったりするのもいいですね。別に脱がなくてもいいのではないか、と思われるちょっとしたシーンでもちゃんと脱いでいるのがウレシイところ。2〜3箇所ありますね。
 邦画や今時のハリウッド映画は、こういったサービス精神が足りない気がするんですけどね。
 タチが悪いのは、脱ぎそうで脱がないという映画。いらぬ不満を感じてしまいます。(え?僕だけ?)

 ●BRUISER

 原題のBRUISER(ブルーザー)というのは、ならず者、タフガイ、という意味。ヘンリーが編集にたずさわる雑誌名も「BRUISER」。
 ならず者であれば、ヘンリーを悩ませる妻、親友、ボスの三人の事をさすのか。それとも自分を失って、怨みを晴らしていくヘンリーの事をさすのか。ちょっとわかりませんが、「あまりしっくり来ない題だなぁ」とは思いました。
 まぁそういう時、日本側で勝手な題を付けちゃうんでしょうね。「URAMI(ウラミ)」と改題されてますので。でもなんか「TATARI(タタリ)」なんて映画もあったハズなので、安直すぎないかなぁと思ったり。

 ●ラストシーン(ネタバレにならない程度に)

 仮装パーティーの派手な舞台で、ヘンリーの殺しのフィナーレが行われる。ハリウッド映画などでも、パーティーのシーンをよく見ますねー……。パーティーのシーンのない映画の方がめずらしかったりして……?

 で、そこで殺すための道具がちょっと……マンガっぽいんですけどねー……。でも殺され方が彼に似合っている、という感じもしました。派手ですし。この辺はユーモアも交えてありますが、暗くならない殺しのシーンは、やはり風変わりに感じました。ホラーというより、アクション映画などでの、悪人を討伐するイメージに近い。

 ラストショットのヒトコマも、ハッとさせてくれますね。軽快でいいです。
 ただそういった軽さがあるゆえ、ホラー映画としての出来はそこそこ、という感じ。凄惨で息を呑む、すごいラストがあるワケでもなし。観たあとに覚えているのは、真っ白な仮面だけ……とか。その程度かも。

「マウス オブ マッドネス」

 監督 ジョン・カーペンター(「ハロウィン」「遊星からの物体X」)
 主演 サム・ニール、チャールトン・ヘストン、ユルゲン・プロホノフ、ジュリー・カーメン

 (原題 in the MOUTH of MADNESS/1995年製作/アメリカ映画/本編96分)

 (一言:作家サター・ケーンの著作が現実になる…? 保険調査員のジョンは、彼の編集担当者リンダと、失踪したケーンを追う。辿り着いたその町で彼らが見たものは……? エンターテイメント性に凝った、B級に限りなく近い映画。しかし魅力も多く、面白い)

●あらすじ

 とある精神病院に、一人の男が運ばれてきた。彼の名は、ジョン・トレント。抵抗むなしく、早速独房に放り込まれた。
 独房内。異変を感じて振り向くと、そこに人影が立っていた。
 「こんな終わりがあるか?」ジョンは人影に問う。
 「まだ終わりじゃない。本を読め」

 途端、独房の窓ガラスを突き破る謎の手。雷鳴。
 狂っている……。これは現実なのか、そうではないのか……?

 そんな彼の元に、一人の男が尋ねてきた。彼はウレン博士といった。
 囚人衣姿のジョンは、クレヨンで壁に何かを一生懸命、描いている。
 ……それは無数の十字架だった。四方の壁ばかりか、彼の衣服や顔、手足にまでそれは及んでいた。

 ウレン博士はジョンをここから出してやろうと言ってくる。しかしジョンは断る。十字架を思う様描いたので、ここに居る、という。彼は何かにひどくおびえているようだ。
 タバコをもらい、ジョンは自分の事を語り始める。
 「……私の”彼ら”の話を?」


 ジョンはフリーの保険調査員をしていた。保険金のサギや不正を調べるのだ。
 ――作家サター・ケーンが失踪した。それが事の始まりだったらしい。

 ある日。喫茶店でジョンが仕事の打ち合わせをしていると、そこにオノを持った不審者が現れ、窓ガラスを叩き割って、中に侵入して来た!
 男はジョンに言った。「ケーンは読むか?」
 そしてオノを振りかぶってジョンに襲い掛かったその時、警官の銃が火を吹き、男は絶命した。
 ジョンは無傷で済んだが、男の奇行に驚く他なかった。


 自宅のリビングのTVでニュースが流れる。「サター・ケーンは単なる流行ホラー作家か? 恐ろしい狂気の預言者か?」
 ジョンは最近よく耳にするその名にひかれ、ニュースを見る。

 各街の書店での光景が映し出されている。そこでは暴動が起きていた。暴動の原因は、「ケーンの新刊書の予約に本が間に合わず、暴動が起こった」との事だった。
 「ここまでファンが危険になるでしょうか?」
 アナウンサーの言葉に、ジョンも不審に思う他なかった。

 ●

 ジョンは保険の調査で、アーケイン社を訪れる。そこは出版社だ。
 社長室にいたのは社長と、編集者リンダ・スタイルズ。彼女は作家サター・ケーンの担当だった。彼の本の売れ行きは、かのスティーヴィン・キングをしのぐらしい。
 保険の調査で明らかにしなければいけないのが、「サター・ケーンの失踪」についてだった。彼は2ヶ月前から、行方がわからなくなっているらしい。
 ただ、2週間前、ケーンの代理人が彼の原稿を出版社に持ってきた、という事実がある。サター・ケーンは死んではいないのか?
 その代理人というのが、ジョンが先日喫茶店で襲われた、オノの男だ、という事だった。その男が何故狂ったのか、までは誰もわからない……。

 リンダの話によると、サター・ケーンの作品は、時に読者に影響を与えるらしい。精神錯乱、健忘症、分裂症状など……。
 ケーンは行方不明になる1年ほど前から、常軌を逸し始めていた。……自分の作品は現実なのだ、と主張するようになったというのだ。


 その晩。ジョンは帰宅途中、暗い路地で書店のポスターに目を止める。ウインドウを埋め尽くすほど何枚も貼られたそれは、「THE HOBB'S END HORROR(ホブの町の恐怖)」。サター・ケーンの作品だ。
 その角を曲がった路地裏。警官が手ひどく、誰かを殴っていた。
 ジョンが立ち去ろうとした時、警官は言った。「お前もやるか?」

ジョンは狂気におちいっている。
彼はなぜ、狂ってしまったのか?
そこから物語が始まる。




リンダ。
ジョンとともにケーンを捜しに、ニュ
ー・ハンプシャーへ行く。
ケーンの著作を知り尽くす彼女は、
ホブの町にたどり着くや、そこが
彼の創作の世界と同一であるのに
気づく。

 そんなある日、ジョンはサター・ケーンの本を読んでみる事にした。
 それは、暗闇に怪物が出て来る、といったような安物のホラーだった。……しかし、やはり奇妙ではあった。やけに出来がいいのだ。まるで文章に引きずり込まれるようだと感じる。
 早速見る悪夢。サター・ケーンの作品はやはり、人に悪影響を与えるものなのか……?
 
 彼の著作はともかく、サター・ケーンは現在行方不明だ。だが、彼はどこかにいる、と確信する。ケーンにかけられた保険。その保険金を素直に支払う前に、ジョンは彼を探し出す必要がある。保険の調査員はサギを見逃すわけにはいかない。
 そして彼の著作本をテーブルに並べてみると、ジョンはある事に気づいた。

 ハサミを取り出す。彼の本を破って、その表紙を思う様に切り始める。……ジョンは狂ったのか?
 しかし、数冊の表紙を切り抜いた形をつなぎあわせると……なんと地図ができあがった。
 これはサター・ケーンの謎かけだったらしい。本の表紙を、彼自身がデザインしていた事にも通じるのだろう……。

 アーケイン社にその地図を持っていき、ケーンのいる場所がニュー・ハンプシャーだと推定する。
 社長の話では、「彼が死んでれば保険金を。生きてれば原稿が欲しい」という事だ。
 ジョンはケーンを捜しに行く、と告げる。ケーンを見つければ、保険金の話は無論ナシになる。保険の調査員としての仕事も完了だ。ジョンはアーケイン社とサター・ケーンがサギのグルだと疑っているのだ。
 社長はケーンの担当編集者のリンダ・スタイルズを同行させてほしい、と言う。ジョンはそれを受け入れる。

 そしてジョンとリンダはニュー・ハンプシャーへ向けて車を走らせた。
 果たしてそこに、サター・ケーンはいるのだろうか……?

●感想

 ……で、ここからが本当の見所なんですけどね。ホラーとしての。

 この映画。巧妙で高級な仕掛けがあるワケでもなく、見た目のエンターテイメント性にこだわった映画、という印象。要は、安っぽいと言えばそれまで、という映画。
 でも面白く観れました。そんなにB級丸出し、という感じでも無かった気がしますし。もちろんB級であるかどうかは、人それぞれの解釈によるとは思いますが。
 (僕は、「くだらないな」と何度も感じたらB級映画と決めつけ)

 この映画は観れば観るほど、B級に近づいていくように思えてくるんですが……、でもホラーとしてがんばっているし、スジも悪くない。飽きずに最後まで観れましたし。
 一番の見所はやはり、「サター・ケーンの著作が現実になる」というところでしょうか。そこがこの映画最大の魅力なんだと思います。安直と言えばそれまでなんですが。でも面白い。
 ……もちろん、こんな古い映画(1995年製)を引っ張り出してきて、今更何だかんだと問う事自体が、無意味なんですけど。

 で。まず、出だしが最高にいいんですね。
 精神病院に入れられたジョン。彼は独房の中に入り込んだ謎の人影に一言。
 「こんな終わりがあるか?」
 人影は答える。
 「まだ終わりじゃない。本を読め」

 ……と、いきなりのアップテンポ。謎だらけで始まるんですね。彼は視聴者がまだ知るハズもない、何かを知っている。それは何なのか?
 物語にいきなり引きずり込む手法は大好きですね。歌で言えば、サビから始まるような感じで。

 で、ホブの町に着いてからのストーリーは、あって無きがごとし。思う様、恐怖世界を堪能できるかと思います。この辺はワザと触れないでおきます。観て楽しんで下さい。
 ケーンの本を読みながらホブの町を歩き、すっかり書かれてある通りに実在している、という感覚がやはり楽しいですね。
 逆に言えば、ケーンがその町をモチーフにして本を描いた、とも思えるのですが、その辺のツッコミは作中、あまり見られなかった気が。

●余談

 「マウス オブ マッドネス」で検索すれば、この映画の感想などをたくさん読む事ができますが、その中で興味深かったのが、作家「ラヴクラフト」との関連性。クトゥルフ神話を書いた作家ですね。
 この映画のタイトル「in the MOUTH of MADNESS」は「インスマウスの狂気」をもじったものなのだ、とか、カーペンターの映画には何度もラヴクラフト関連の語句が出てくるとか。
 なるほど、と思いました。確かにクトゥルフ神話に出てきそうな怪物がちらほら、この映画でも見え隠れしてますからね。(ネタバレ: ラストではどーんと出てきますが
 でもみなさんの評価も結構高めで安心?しました。

 決して高級感あふれた映画 (謎がちみつにからみあうとか、伏線がすばらしいとか) ではないのですが、面白かったですね。

「バタフライ・エフェクト」
(情報提供: おっくん 2006年2月)

 監督・脚本 エリック・ブレス&J・マッキー・グラバー
 主演 アシュトン・カッチャー、エイミー・スマート

 (原題 THE BUTTERFLY EFFECT/2003年製作(日本公開 2005年)/本編114分)

 (一言説明: エヴァンは幼少の頃からよく記憶を無くしてしまう子だった。二十歳になり、エヴァンは過去の地とは離れた場所で大学生活を送っていた。ふとした弾みで過去の「日記」を目にする。読んでみると、思わぬ凄惨な言葉が連なっていた……。そして無くしていた過去の断片への思いはつのる。古い友人達に再会し、過去の真相をたずねるが、答えは返ってこない。友人達は不遇の人生を送っているかのようだ。そして引き起こしてしまう悲劇――。更に、過去への思いがつのる中、奇跡が起こった……)

 ●公式サイト: http://www.butterflyeffect.jp/

●冒頭〜あらすじ

 その男は乱暴にドアを蹴り開け、室内に滑り込む。何かに追われているようだ。机の上にあったバインダーを取り、紙に書きなぐる。

 ”もし誰かがこれを見つけたら それは僕の計画が失敗した証拠 その時 僕は死んでいる”
 ”でも もし僕が最初に戻れたら その時はきっと 彼女を救えるだろう”

 ●

 ――時さかのぼる事、13年前。
 7歳の少年、エヴァンは母親と二人暮らしをしていた。父親は病院に長期入院していた。エヴァンは父親の事をあまり聞かされないで育ってきた。エヴァン時折、記憶を無くしてしまう子だった。
 その日。母は車でエヴァンを学校に送り届けると、担任の先生が車のドアをノックしてきた。見せたいものがあると言う。エヴァンの母は教室まで案内される。そして見せられたものは、だった。
 子供達に「将来の夢」を描かせたのだという。親の職業を描く子がほとんどだという中、エヴァンが描いたものは……明らかに異質なものだった。人殺しの絵を描いていたのだ。
 動揺する母。しかも先生の話では、エヴァンはこの絵を描いた記憶がないという……。

 母に連れられ、エヴァンは病院で脳の検査を受ける。母は医師に「父親の病気は遺伝していませんね?」と聞く。医師は大丈夫だと言う。
 そして医師はエヴァンに「日記」をつけるように薦める。記憶力を高めるためだ。

 ●

 日記をつけ始めるエヴァン。しかし時折、記憶が飛ぶのは避けられなかった。
 そんなある日。エヴァンはいつものように、トミーの家に預けられる。トミーはクラスの友人だ。その妹のケイリーとも仲は良かった。
 ――しかし。トミーの父は性格異常者だったのだ。
 エヴァンは記憶を無くし、今地下室でビデオカメラの前で裸になっている、自分とケイリーの状況がわからなかった。そして、トミーは隅で悔しそうに、人形の首をひねり回している……。
 
 ●

 病院での脳検査の結果、異常はない、と診断された。
 医師は、エヴァンの記憶が度々なくなるのは、ストレスのせいではないか、と言う。父親不在のコンプレックスがあるようだから、父親に面会させてはどうか、と言ってくる。
 だが。エヴァンの父親は、実は精神に問題があり、入院していたのだ。医師は鎮静剤を投与する、と言う。

 そしてその日が来る。エヴァンは嬉しそうに日記にその事をつづり、まだ見ぬ父に思いをはせる。
 病院の別練。通された簡素な部屋で、エヴァンは胸をときめかせる。現れた父親は……厚い皮の手錠をされていた。

 記憶が戻ると、エヴァンはなんと、父親に首を締められていた! 気づいた母、警備員らが、エヴァンの父を取り押さえる。
 「この子は死ぬしかない!」。エヴァンの父はそう叫ぶ。警備員がエヴァンの父の後頭部を警棒で殴る。だがそれが思わぬ重傷となり、父は呆気なくそのまま死んでしまったのだった……。

 ●

 それから6年後――。
 エヴァン、トミー、その妹ケイリー、そしてレニーは、隠れてタバコを吸うような仲が続いていた。相変わらず、トミーの父親はトミーとケイリーにとって、恐れの対象であるようだった。
 そんな中、トミーは父親が隠していたダイナマイトを見つける。そして提案する。……「吹っ飛ばそうぜ」と。

 4人が向かった先は、見知らぬ邸宅前。そこの郵便受けにダイナマイトをしかけた。郵便受けを爆発させるという、イタズラを思いついたのだ。嫌がるレニーに、ダイナマイトを置いて来させる。

 だが……そこでまたエヴァンの記憶が飛んだ。気が付くと、森の中。レニーが倒れていた。ショック症状を引き起こしたようだ。
 そして3人で運び、森を出て救急車を呼んだ……。

 大人達が不安がる中、子供達はただ、レニーが急に倒れたと言う。エヴァンはその時の記憶が無いので、本当にわからない。
 エヴァンの母は、エヴァンを病院へ連れて行き、催眠療法で記憶をたどらせようとした。
 だが、エヴァンは強い拒否反応を示し、苦しみだしてしまう。結局、記憶をたどらせる事はムリだった。

左から、
エヴァン、ケイリー、レニー、トミー。

 ●

 ダイナマイトの件を知ろうと、エヴァンはトミーらに尋ねるが、トミーは乱暴に拒絶してきた。「その事は二度と口に出すな」と。……郵便受けを壊すだけのつもりが、何かとんでもない事になってしまっていたらしい。ケイリーも、意気消沈としているようだった。

 映画館内。ケイリーを元気づけようと、思わず告白してしまうエヴァン。そして二人は惹かれあうように、キスをする……。そんな二人を見て、トミーは激怒する。からんできた不良を相手に、館内でもめ事を起こすトミー。その頃からトミーは粗暴になっていく……。
 一方。エヴァンの母は、自分の息子達が何をしでかしてしまったのか、感づいていた。そして突然、引っ越しを決める。

 引越しを前に、トミーとの仲は完全に壊れてしまう。トミーは、エヴァンの飼い犬を焼き殺したのだ。エヴァン達の目の前で……。
 その報復は、何のためなのか。トミーは、妹のケイリーとキスをしたエヴァンに嫉妬(しっと)したのか……?

 ●

 それからまた7年……。
 少年の頃過ごした思い出の地とは離れた土地で、立派な青年に育ったエヴァン。今は大学生活をエンジョイしている。

 女友達を部屋に連れ込んで楽しいひと時を過ごそうとした折、女はエヴァンのベッドの下からノートを見つけ出す。気恥ずかしそうにエヴァンは、それが「日記」である事を明かす。7歳の頃から毎日欠かさずにつけているのだ、と。
 そして何気なく昔の日記のページをめくり、読んでみる。

 ――犬のクロケットの悲鳴が聞こえる。
 そんな思いもよらない重苦しい言葉がつづられてあり、エヴァンは躊躇(ちゅうちょ)する。
 女は続きを急かしてくる。そして苦しげながらも読み進めていくと、エヴァンに異変が起きた……。

●その後の展開を軽く交え、感想など


エヴァン(アシュトン・カッチャー)
 この映画のタイトル「バタフライ・エフェクト(効果)」とは、「カオス理論」として映画の冒頭で説明されている、「小さな蝶の羽ばたきが、地球の裏側で台風を巻き起こす事もある」というもので、エヴァンを蝶と見たてているんですね。
 エヴァンが日記を読み、過去に戻って失われた記憶をたどる。その時にエヴァンは過去を書き換えるんですね。そして目覚めた時には……、世界が変わっている。世界を「変えて」しまっている……。

 エヴァンはそれを何度も繰り返さなくてはならなくなる。
 過去を正常なものに書き換えようとしても、その度になんらかの不具合が生じてしまい、「現実」に戻った時、必ず、誰かがひどい不幸におちいってしまうのだ……。それはレニーであったり、エヴァンの母であったり、好きだったケイリーであったり……。
 本当は、一回過去を書き換えるだけで良かったハズなんですけどね。世界は輝かしいものに変わり、ケイリーと愛し合う仲になれたのに……、エヴァンが少しやりすぎてしまったから……。でも刑務所でのシーンもなかなか好きですけどね。
 そう言えば、ケイリーとのバラ色の学園生活が始まった直後、エヴァンが後輩達?を並べてしかるシーンがあるのですが、そこは意味不明でした。何をしているのかも、サッパリ理解できませんでしたが……。

 で。過去を書き換えて現実に戻る度に、後半ではケイリーが非常に目まぐるしく様変わりするものだから、半分以上ギャグになっているような気もしました。ケイリー七変化ー、てな具合で。
 そして終盤。エヴァンが最後にとった行動とは……? それによって、「現在」は納得のいくものになったのか……?

●「衝撃」の別エンディング収録

 と、レンタルのDVDパッケージに記されてはいましたが、観た感想としては、「単なるNG集」にしか見えなかったという程度で。非常につまんなかったです。
 2つの別エンドがあるんですが、やはりそのどちらも正規エンドと比べると見劣りしますね。監督のコメント通りに。
 もし「衝撃」という言葉を日本の配給会社などが勝手に付けたのであれば、「いらぬ落胆をさせた」というだけの、罪ある言葉です。

●総評

 ……大変面白かった。ホラーとしての出来も良かったし、映画としての出来もすばらしいものがあった。
 ウチの掲示板によく顔を出してくれる、おっくんオススメの一本でしたが、大当たりでしたよ。紹介してくれて、本当にありがとう。この映画と出会えて、僕は幸せです。

 ただせっかく観ても、ちょっと「難しい」と思う人がいるかもしれません。展開も目まぐるしく変わるものだから、「ついていけない」と思う人もいるかも。
 で、平たく言えばSFモノなのに、そうとは思わせない手腕が見事です。一見「日記を読んで過去に行く」という描き方なんですが、ちょっと違うんですね。

 難しい事を言わせていただきますと……、
 エヴァンの「失われていた過去の記憶」が新しく書き換わって、その脳に刻まれてしまった事により、世界はその整合性を求め、作り変えを余儀なくされてしまう。だからこその「バタフライ効果」。
 もっとも、エヴァンの父もたどりついた、その「過去を書き換える方法」というのが、超能力的なものだったのか、という説明はされていないようですけど。まだまだ推測の域はありそうですけどね。「SF」「超能力」とか言ってしまうとちょっと勿体無い。
 やはり「カオス理論に基づいた、バタフライ効果」プラス、ミソはやはり「エヴァンの記憶喪失」。認識のないその欠如部分を、大人の知識で都合よく埋め込んでしまい、未来をも書き換えてしまう……。う〜む、やはりまだ上手く説明できません……。けど、すごい魅力的。

「NOTHING(ナッシング)」

 監督 ヴィンチェンゾ・ナタリ(「CUBE」)
 脚本 ザ・ドリューズ(アンドリュー・ロワリー&アンドリュー・ミラー)
 主演 デビッド・ヒューレット、アンドリュー・ミラー

 (2003年製作(日本公開 2005年)/本編109分)

 (一言: 世間嫌いの親友の二人は、自分達の家以外何もない、真っ白な世界で二人きりになった。その広大な世界を探検するが、どこまで行っても、やはり何もない……。コメディー色が強く、ホラー度は低い。何もない所で話を弾ませる手腕には脱帽)



高速道路の狭間に建てられた、アン
ドリューの家。
中は、車が通るたびに揺れる……。
●あらすじ

 デビッドアンドリュー世の中が嫌いだった。昔からイジメられ続けていた。
 アンドリューは2本の高速道路の狭間に家を建て、住んでいた。いつしか出会った二人は、その家に同居していた。
 そんなある日、デビッドが家を出て行く、と言い出した。恋人のサラと一緒に暮らすのだと言う。アンドリューは、今や親友であるデビッドを突然失ってしまい、呆然となる。
 自分一人では生きていけない。そう悲観し、首吊り自殺しようとするが、そこでまたデビッドが舞い戻ってくる。

 デビッドは恋人だと思っていたサラに、だまされていたらしい。サラはデビッドに近づき、デビッドの勤めている会社の金を、2万ドルも横領したのだ。
 そんな時、デビッドたちは家の立ち退き通告を受ける。その家はどうやら、不法な土地に作られたものであるようだ。
 立ち退きは本日の午後3時。もはや時間がない。
 取り壊し業者が時間前から家の前を陣取り、挙句の果てにはデビッドの横領の罪で警察までやってくる始末。
 二人は逃げ場を失いパニックにおちいる。

 時間が刻々とせまり、残りあと5分……という時に、とんでもない奇跡が起きた……。

アンドリュー。
気弱な彼は、人付き合いが苦手。
唯一の親友であるデビッドにだけ、
心をゆだねている。



デビッド。
アンドリューの家に住み着き、彼の
世話をする。
会社に行ってもイジメられ、人にも
だまされやすい。



家以外の世界が、真っ白になってし
まった…!

●感想

 やはり「CUBEの監督作だから」ということで観ることに。
 DVDのパッケージも「CUBE」をほうふつとさせるデザイン。期待も高まるというものです。

 ……で、率直に言ってこの映画は、「コメディー」色がかなり濃かった。
 確かに怖い部分もありますが、それはごく一部。9割方は「不思議な世界を探索する二人のコメディー劇」というカンジでした。

 「NOTHING(ナッシング:何もない)」というタイトルそのまんま、なんですね。
 本当に何もない世界に行ってしまう。自分達の家以外の世界は、ただ真っ白。地面に弾力性がある、ということが、物語の方向性を決めてしまった気がします。(ボヨンボヨンと弾みっぱなし。さすがにシリアスにはしにくい?)

 で。物語の大半は、何もない真っ白な世界を二人が歩き回る、というものになっています。
 ……何もない所を舞台にする。そんなんで面白くなるのでしょうか?
 例えば、僕が書こうとしたら、すぐ手詰まりになってしまう。何もないんじゃ話が進まないし、ふくらまない。だから恐らく、ハナから書こうとは思わないでしょう。(書いたとしても、すぐに何かを見つける展開になってしまいそう)

 でもこの監督は違った。……いえ、脚本家は違った。
 まず地面の弾力性で主人公達にコミカルな動きをつける。
 そして二人は、世界で唯一残っている家を飛び出し、真っ白で広大な世界がどうなっているのか、探検に出かけるんですね。
 大人になり切れない、世間ズレした二人だからこそ、こういった展開になったのかもしれません。いい大人が、弾力性のある地面をボヨンボヨン飛び回ってはしゃぎあいます……。

 で、目印として、クレヨンやら何やらの小物を地面に置きつつ、何もない真っ白な所をどんどん進んでいく……。しかしやはり果てはなさそうだ。二人は30時間以上歩き続け、もうへとへとになっていた。
 そしてお互いを見失ったりしつつも、奇跡的に、元の家に戻ることができた……。

 ……そう。本当に何もない世界を描いたんですね。裏表なく。
 何もない所をこれだけ飽きさせないで見せるということは、やはり至難のワザなんじゃないかと思います。

 ●

 家に帰ってからも話は弾む。
 何と、二人は物を消せる能力が身についたようなのだ。時計を消したり、請求書を消したり、二人は騒ぎあう。自分達は、神になったのだ! と。
 そしてさらに、自分達の嫌な記憶すらも消せることに気づいた。

 そしてお互いにスッキリしたかに思ったが、アンドリューの様子がだんだんおかしくなり始める。
 明らかにデビッドに敵意を抱いている。アンドリューは、自分を置いて家を出て行こうとしたデビッドの薄情さを、許せないでいるのだった……。

●ホラーとしてのNOTHING

 全編コメディーだとしたら、僕はすっかり裏切られた(パッケージ絵に)気持ちになっていたでしょうが、時折見せる緊迫感が心地よかった。お互い、神になって、何でも消せるのだ。だからいつ、互いのことを消してしまわないとも限らない……。
 でもホラーを期待してみるとかなり肩すかしを食らうと思うので、期待しないくらいが丁度いいかも。

●DVD特典

 特典としてはそこそこ、といったカンジでしょうか。ちょっとしたメイキング風景。ちょっとした映画祭の風景などをかいま見ることができます。インタビューなどはないですね。僕は今回レンタル版を観たので、セル版に関してはわからないのですが。
 でもこの映画は一回観たらもうたくさん、という気がします。特に複雑な謎があるワケでもないし。ストーリーもわりとシンプルな気がしますので。

 何もない(NOTHING)のに面白い……。なかなか不思議な映画でした。
 そう言えば、「マトリックス」でも真っ白な背景の場面が出てきましたね。「NOTHING」のイメージとしては、そんな感じが延々と続くんです。唯一、自分達の家が残されているからこそ、物語の面白味がふくらむんですが。

 この映画。僕にとっては「発明品」や「コロンブスの卵」を見せられたような気すらします。何もない所をこれだけ面白く描かれて、「まいった」というカンジです。
 映画としては面白いんですが、ホラーとしての評価は低め、ということで。

二人は真っ白で広大な世界の探検
に出かけるが…。

「着信アリ」

 監督 三池 崇史(みいけ たかし)
 原作 秋元 康(あきもと やすし)
 主演 柴咲コウ、堤 真一、吹石一恵

 (2004年公開/本編 117分)

 (一言説明: 自分の携帯番号からかかってくる「死の予告電話」。それを受けた者は、伝言が送信された時刻(近い未来)に死ぬ。それを受けた友人達が次々と死んでいき、やがて自分にも届けられる……。その不可解な呪いから逃れるすべはないのか……?) 

 (一言感想: いい意味で「大衆向け」に作られたなぁと感じました。かなり面白かったし、怖いところもしっかりと。厳しい意見を言えば、後半が「怨念の根源を探す」という展開パターンにはまっているのが残念。セルDVD版の「特典映像」は見所満載)

 ●オフィシャルサイト: http://www.chakuari.jp
●あらすじ

 中村由美(柴咲コウ)は大学生。その夜は居酒屋で、男女6人での合コンで盛り上がっていた。
 その合間。トイレで、友達の陽子の携帯電話が鳴る。
 着信したのは……、彼女自身の携帯番号からだった。しかも伝言メッセージが入っていて、その日付が3日後になっていた……。
 不審に思ったが、2人で聞いてみる。
 すると……、陽子本人の声だろうか。雨に気づいたさりげない言葉。
 ――その直後。電話は甲高い悲鳴を上げた……。

 当初はイタズラか何かだろうと思い、気にしないようにする事にした。
 3日後の夜。由美は陽子から電話を受ける。水着のセールに付き合ってほしい、という他愛のないものだった。

 電話の途中。歩道橋の上で、陽子は雨に気づいた。
 その言葉を、由美は以前、耳にしていた。……そうだ。3日前の、陽子の携帯に残された伝言メッセージと同じ言葉だ……。
 そして、陽子は甲高い悲鳴を上げた。

 由美の言葉はもう届かない。
 陽子は歩道橋から転落し、下を通る電車の上に落ちた挙句、車輪にひかれて無残に死んだのだ……。

切断された右腕が、自分に電話をか
けている……。

どうやって過去の自分にかけてるの
?などとツッコんではいけない。
こういう不可解さも、ホラー独特の
だいごみ。

柴咲コウ。
平凡な女子大生、中村由美役。
友人の陽子が「死の予告電話」を受
けた事から、次々と友人達が怪死し
ていく。
そしてついに自分も、その電話を受
けてしまう……。


堤 真一。
「死の予告電話」を受けた妹をなくし
、その謎を追い続ける山下 弘役。
由美と出会い、由美を守る存在に
なっていく。
 ●

 陽子の葬式の帰りぎわ。由美は、女子高生の集団が「殺されたんだ」と言っているのを聞いて、何の話か、たずねる。
 すると、「死の予告電話」というウワサの事を聞かされる。
 この世に恨みをもって死んだ女の話で、携帯を通じて来てしまうのだという。さらに、殺した子の携帯電話のメモリーから次の犠牲者を選んで、次々と殺し続けていくらしい……。

 ●

 大学の構内。先の合コンで知り合ったケンジに、由美は陽子の死を伝える。その死の不可解なところも打ち明ける。
 それを聞いたケンジは、由美に自分の携帯電話を差し出してきた。
 「……これ、俺の声じゃねぇよな?」

 伝言メッセージ。それは確かに、ケンジ自身の声だと思った。そして、悲鳴……。
 しかも。メッセージの届いた日付が、今日の、しかも2分後なのだ!
 軽いパニックにおちいる2人。何が起こる……? 本当にこれも、死の予告電話なのか……?!

 そして来た2分後。
 ケンジはそこで誰かに声をかけられる。何かの約束があったらしい。
 「やっべ、完全忘れてた」
 思わず出たそれは、伝言メッセージで聞いたものと、全く同じだった。
 言葉を失う、ケンジと由美。
 その直後。ケンジは箱のないエレベーターに引っ張られ、墜落死するのだった……。

 ●

 そして由美の友人、なつみ(吹石一恵)も、死の予告電話を受けてしまう……。
 なつみも、陽子やケンジのように死んでしまうのか?

 そんな中。由美は「死の予告電話」の事情を知っていそうな男、山下(堤 真一)と出会う。
 ……彼は何者なのか? なつみが助かるすべはないのか?
 そしてまた、自分自身も……。
●感想

 率直に言って、非常に楽しめました。
 面白かっただけではなく、しっかりと、魅力的に怖かった。しかも「大衆向け」という感じすらします。柴咲コウさんが主演、というのがその大きな要因なのかもしれません。公開当時は話題性もかなりあったことでしょう。
 それに「携帯電話が鳴る」というささいな事に恐怖を感じさせる、その演出力には恐れ入ります。あの不思議なメロディも魅力的。

 時代の流れにあった「携帯電話の爆発的な普及」「リング以降の邦画ホラーの盛り上がり」「柴咲コウさんの役者+歌手としてのブレイク」。それら3大要素?が詰め込まれたこの「着信アリ」。まさに売れるべくして売れた、映画なのではないでしょうか?

 でもまた音量の調整に苦労しましたねぇ。邦画ホラーは聴き取りにくいのが多くて困ります……。ぶつぶつ言う人、多すぎ。

「死の予告電話」を受けた女子大生
として、なつみがTVに取り上げられ
る。

この辺の弾けた強引な展開は、もは
や笑うしかない……。
妙なリアリティがあって、どうなってし
まうのか、ホント目が離せませんでし
た。
 そして劇中での3人目のターゲットとなる、なつみ。そこで展開を大きく崩してしまっているのがスゴイ。
 2人目までは、個人的な事故死で片付くものだったのに、なつみが「死の予告電話」を受けた、という情報をどこからか入手したTV局スタッフが乗り込んできて、大騒動に変化してしまうんですね。
 この辺、恐怖とギャグが入り乱れて……、どうなってしまうのかわからずに、引き込まれてしまいました。
 物語をぶち壊しかねないほどのおかしな展開だったのに、見事に締めくくった辺りはさすがです。

 死の後に残される「アメ」もまたいいですね。そんな事よく思いついたなぁ、と感心するばかりです。しかも効果的に使ってますからね……。
 更に、そこで間髪入れずに、今度は由美に「死の予告電話」がかかってくるんですから。……もはやテンポもスキなしです。

 と、いい事ずくめで言いましたが……、夜中の廃病院へ一人で行く展開は強引すぎますね。何で一人で行かなきゃならんの?と。しかも思いっきり怖がりまくって、何しに行ってるのかもうわかりません。こういうお約束みたいなのは、どうにかならなかったのかなぁと。
 ついでのお約束と言えば、「怨念の根源を探る」という展開。「リング」以降、よく見かけるパターンだと思うのですが?

 だいたいにして「その死体を見つければ呪いが解ける」と、一体誰が言ってるんですか……? 希望的憶測で話を進めている、という事にはなりませんか?
 ……と。僕が言ったところで何にもならないんですが。

 あれは良かったんですけどね。ウジ虫携帯電話を見つける直前。カーテンを開くのをためらうところ。扉の向こうにある未知を怖がらせる。さすがツボを押さえてある、という感じです。

 その先にあるクライマックス。感動をねらったような?あのシーンは……どうかと思いました。
 僕には自然な流れには見えないんですけどね。あの腐乱死体を抱きしめるシーンは。どうしてそうなっちゃうの?という感じです。と言うか、由美が謝っては解決にならないと思うんですよ。悪いのは由美ではないんですから。虐待した彼女の母が悪いのに……。
 でもそこからの流れはいいですね。終わったかと思いきや……。しかもまた、扉の向こうの恐怖がありますし……。ここもすごく楽しい(笑)。

 (注:見にくい部分はネタバレを含むので、わざと隠してあります。マウスで反転して、読んでください)
 他には、時折出て来る刑事の軽さが良かったですね。物語にアクセントを加えているように思えました。異常な出来事を目にした後、ふっと現実に戻して、軽い笑いを与えてくれます。

 そして今や名優となった、堤 真一さんの存在感。
 数々の映画やTVドラマに出演していますね。僕が見て来た堤さんは、SABU監督の映画での主役、というイメージが強いんですけどね(「弾丸ランナー」「ポストマンブルース」「MONDAY」など)。
 この「着信アリ」では、妹を怨霊に殺された兄として、事件の謎を追っています。そして由美と出会い、彼女を守る存在へとなっていきます。

 主演の柴咲コウさんについては、僕よりみなさんの方がよくご存知だと思います。
 「バトルロワイヤル」で劇的なスクリーンデビューを果たし、しかも歌手としても劇的な急成長を果たした彼女。その柴咲さんを主演においたこの「着信アリ」がまた、彼女のブレイクを大きく後押ししたことは言うまでもないでしょう。
 この映画では、普通の女子大生役という事で、怖がる演技が多かったように思えます。
 でもそれだけではなく、ラストに秘められた謎がまた、彼女の演技に奥深さを与えているように思えました。
●DVD特典

 セル版には、レンタル版にはない、特典映像の入った「DISK2」が付いてくるんですね。
 メイキングをはじめ、ショートストーリーの「着信アリ ver1.2」、インタビュー、劇場公開時の舞台挨拶などを観ることができます。約2時間分、入ってます。

 中でもメインはやはり「メイキング」。柴咲コウさん、堤 真一さん、そして三池監督をメインにすえてのメイキング映像は、彼らの舞台裏の姿をたっぷりと楽しむことができます。非常に満足のいく内容でした。……もっとも、一回観たらもう充分、というような気もしますけどね。
 特に三池監督の茶目っ気ぶりが印象的でした。もっと怖い人だと勝手に想像してましたので。(でもなんか美々子ちゃんだけ、怒られてたような……)
 美々子ちゃんと言えば、冒頭の居酒屋での白い手やら、なつみの携帯着信画像など、ちゃんと彼女が演じていたのが面白かったですね。
 そうそう。堤 真一さんも面白い方のようですね。すごく生真面目な方なのかな〜と思っていただけに、意外でした。

 「着信アリ ver1.2」は……けっこうツボにきてます。僕はつい何度も観てしまいます……。

 ●ヒットメーカー「秋元 康」印

 この「着信アリ」は、秋元康さんが原作。……という事で、秋元さんが映画の製作にかなり関わっていたんだろう、と勝手に想像していたのですが、それはほとんど無かったようなのが意外でした。
 秋元康さんと言えば、作詞家。多くのミュージシャンの作詞をてがけ、中でも美空ひばりさんが歌った、かの名曲「川の流れのように」を作詞した方なんですね……。
 他、TV番組の企画なども多くされているとの事。だからこの「着信アリ」にも深くたずさわっていたんだろう、と想像していたんですけどね。メイキングを観ると、全然そうじゃないみたいでした。
 「着信アリ」という子を生み出し、その成長(映画化)を見守る親のような心境でいたご様子。

 なお、柴咲コウさんが歌うこの映画の主題歌「いくつかの空」を、秋元さんが作詞しています。
 どこかのインタビュー記事で言われていた通り、重苦しいところのない、驚くほど簡単な言葉で作り上げられています。……歌詞の全てに力を込めると重苦しい歌になる。だからサビだけに力を入れるのだ、と秋元さんは語っていました。プロ中のプロは言う事も違います……。

 ●キレてる? 三池 崇史監督

 過去の三池監督作「殺し屋 1」、「牛頭(ゴズ)」などの影響で、氏はかなりキレた感じの方だと思っていました。特に「牛頭」はホラーでギャグで変態怪奇映画で……ホントにワケわからん映画でしたので。
 「不夜城」の続編「漂流街」(三池監督作)もずいぶんブッ飛んだ映画みたいですし。ニワトリがマトリックス飛びするとかしないとか……?

 でもこの「着信アリ」はかなりまとも(普通)に撮られていた印象。特に理解しがたいキレ方もしてませんでしたし。だからこそ、「大衆向けだなぁ」と感じました。(要は、誰が観ても内容を理解できるという事)
 ……と思いきや。まともじゃない所がありました。
 DVDに封入されている「チャプターリスト名」。監督が命名した(らしい)それらはみな、「何それ?」とツッコミたくなるものばかり。
 例をあげれば「1.鳳凰降臨! そして、着信アリ」「3.爪切れば、陽子が電車の屋根で踊る」「12.やっぱ予告編のナレーションは遠藤憲一でしょ」……などなど。全然まともじゃありません。さすがです(笑)。
●まとめ

 一言で言えば「大衆向けホラー」だった、と思う。
 それに加えて、ちょっとしたギャグが効いてましたね。特に刑事が出てくるシーンや、TV特番のシーンは面白い。ホラーを重苦しく撮るだけではなく、観る者を飽きさせないような工夫が、随所になされていたと思います。
 こういうのが、質の高いホラーなんじゃないかなぁと僕は思います。
 ただ怖いだけ、というのは観る人を選ぶと思うんですよ。やっぱり映画にはドラマがあった方がいいし、「魅力」というものも欲しい。
 もちろん「ホラー」を冠しているのならば、しっかりと怖がらせてくれなきゃ困るんですけどね。面白いだけではなく。

 「着信アリ2」も既に公開済み(2005年)。しかもハリウッドリメイクの話も来ている、というじゃありませんか。……まったく最近のハリウッドはリメイクが好きですねぇ。オリジナルが出たばっかりなんだから、リメイクしなくてもいいんじゃないの?と思うんですけどね。別のものを作りなさい、と説教したくなります。

 とにかく。この「着信アリ」がまた、邦画ホラーの可能性を大きく見出してくれたように思います。
 「リング」「呪怨」だけでは、とても大衆ウケは狙えなかったと思うんですよ。「呪怨」はホントにマニア向けって感じもしますし。ただひたすらに怖いだけで。それももちろん、ホラーとして大切だとは思うんですが……。
 反して「着信アリ」はなかなか明るいイメージがあると思います。
 邦画ホラーに突然のさわやかさを吹き込んだ、柴咲コウさんのあの笑顔……。実にすばらしいです。(どの笑顔だ?)

柴咲コウ絶対絶命…!!

日本の美人系女優は、恐怖シーンも
美しい顔で怖がるのがうまいです。
…半分、嫌味が入ってますが。

なおオバケは長髪だと決まっていま
す。

「コックリさん ―Bunshinsaba―」

 監督 アン・ビョンギ(「友引忌」「ボイス」)
 原案 イ・ジョンホ
 主演 イ・セウン、キム・ギュリ、イ・ユリ

 (2004年韓国/92分)

 (内容説明: イジメられっ子のユジンが、復讐のために「コックリさん」で呼び出した霊は、悪霊だった。次々と死んでいく生徒たち。それを止める事は、誰にもできそうにない……)

 (一言感想: 1回観た時は、「イマイチ」。ラストがかなり消化不良に見えた。しかし2度観て、物語が完成されているのに気づいた。にらみと叫びのシーンが多い。焼き殺された親子については、「やりすぎ」感が。でも「特典映像」付きのDVDを観ると、かなり面白い)

 ●「コックリさん」映画情報サイト: http://www.movies.co.jp/kokkurisan/

●あらすじ

 イ・ユジン(イ・セウン)は学校でイジメにあっていた。
 自分を含めた仲間3人とで、イジメっ子達に呪いをかける事にする。
 ――「コックリさん」。その交霊術を行い、霊を呼び出す。
 使った机は、その学校で呪いの席といわれる『29番目の席』。その机をわざわざ倉庫から見つけて、使用した。
 しかし。呼び出した霊は、ユジン達の想像を越えた、凄まじい怨念を抱いた悪霊だったのだ……。

 後日。イジメっ子の一人、ヘジが無残な死に方をした。頭にビニール袋を被り、自ら火をつけて自殺したのだという。教室の、29番目の席で……。
 それからもイジメッ子達は立て続けに変死していく。

 そんな惨劇とほぼ同時に赴任してきた、美貌の新任教師イ・ウンジュ。
 霊に魅入られた彼女もまた、この惨劇に呑み込まれていくのだった……。
●感想

 「コックリさん」とはもちろん、日本の映画会社(配給会社?)が付けたタイトルで、原題は違うようです。「Bunshinsaba(ブンシンサバ?)」というのがそれなんでしょうか。

 コックリさんを呼び出す呪文である「ブンシンサバ、ブンシンサバ、オイデクダサイ」との、片言の日本語のセリフが笑えます。(ちなみに「エクソシスト」にも謎の「TASUKETE!」の張り紙が……(カラス神父が悪魔の声を録音し、それを聴くシーン))

 映画雑誌でも使われていた「コックリさん」を代表するかのようなスチール(右写真)が、劇中に一度も出てこなかったのは、なんだかだまされたような感じがしました。……このシーンを観たかったのに、と。

 それにしても、警察の描写があまりにも弱いですね。重要参考人のユジンが一回、ちょっと尋問(じんもん)されるだけ。
 ユジン達が、実際にイジメにあっているシーンもほとんどない。不要だと思ったのでしょうか。

 そしてユジンの担任。自分のクラスで、突然の死亡者をあれだけ(自殺含め4人以上)出しておいて、あんまり悩んでる姿を見せないのもなんだか変な気がしました……。どうしてそんな事になるのか、かなり悩み苦しむのが自然だと思うんですけど……?

 その先生の友人である、占い師(?)の女性。彼女がユジンの謎を探ろうと、催眠をかけてその記憶を辿ります。
 そのシーンは同じ韓国映画の「オールド・ボーイ」で使われた手法に似てましたね。回想の中に、自分(ここでは占い師)が第3者となって入り込み、その場を見ていくんですね。個人的にこの見せ方は面白いと思います。マネと言えば聞こえは悪いんですが。

 4人目の被害者、ソジョン。真夜中。彼女は自宅前で、怨霊につかれたユジンに挑発されます。
 そこでソジョンは相手にしないフリをしておいて、突然村を逃げ出そうとするんですね。真夜中にですよ? そこが不自然に見えました。行動するのはせめて、朝が来てからにしてほしかった。

●回想シーンについて

 30年前。その村にやってきた、母と娘。チュニとインスク。
 その村はよそ者を嫌い、その母子をすぐさま追い出そうとしたが……、チュニの美貌に捕らわれた村の権力者達が、その態度を変える。
 だが。その母子は普通とは違っていた。
 娘は盲目で、母がその目となる、という不思議な能力を持っていた。そればかりでなく娘のインスクには、人を操って殺す、という能力も持っていた。
 インスクをイジメていた少女が劇的な死に方をする。それからインスクは「悪魔だ」と周囲に恐れられるようになる……。
 そして終いには、頭にビニール袋を被せられ、それに火をつけられて殺される。

 娘の目となり、娘が殺された事を知った母親、チュニ。チュニもまた、家に火をつけられ、焼き殺されようとしていた。
 村の権力者達は、チュニと関係をもっていたのだが、それが周囲に明らかになりつつあった。だからチュニを殺そうとした。恐らくは村人達を先導し、「悪魔の女だ」とでも吹き込んだのだろう。

 そんな大勢の村人を前に、チュニは呪いの言葉を叫ぶ。
 「この村に宿った命は抹殺(まっさつ)する。死にたくなければこの村を出るな!」

 この呪いの言葉が、あまりにも不自然だとは思うんですけどね。なぜそんな事を言うのか……。意味がわからん。
 そんな事言われたら逆に、そんな村なんかに残りたくないような気がするんですけど……。どっか遠くに逃げたいですよねぇ?
 「お前らみんな、呪い殺してやる!」とでも言った方が、より自然な気はします。芸はないですが。

 それに、家に火をつけるのがそもそも、やりすぎ……、のような気もするんですけどね。

●ホラーシーンについて

 怨霊がにらむのと、叫ぶシーンが多かった気がします。叫ばれても、あんまり怖くはならないんですけどね。
 でも冒頭での、出席をとるシーンは良かった。誰もいないハズの、29番目の席の子の名前を先生が呼ぶ。の返事が小さいと叱る。耐え切れなくなった生徒らが悲鳴をあげて、逃げ出していく……。そこはやはり、空席だったのだ……。

 中盤からのホラーシーンも、なかなか個性的なシーンがありました。
 ユジンの母親目玉が、両方に開いていくシーン。女教師イ・ウンジュ校長を惨殺するシーンなどもなかなかの迫力。しつこく突き刺すし……。
 その他のホラーシーンは、全編に渡って怨霊がちらちら顔を出すし、それにとりつかれたユジンが叫んだり……といった感じでしょうか。あとはイジメっ子達4人も、なかなか個性的に死んでいきますね。

 ただ物語の根底にあるものが「リング」に似ているので、もうちょっと何とかならなかったものか、と思いました。
 「数十年前に無残に殺された、超能力を持った女の呪い」というもの。別の切り口でいってほしかったんですが。

●ちょっとネタバレ。ラスト

 ラストがかなり弱いなぁと思いました。何もかもが投げ出された感じで。全然スッキリしなかった。
 映画「ボイス」で怪演を見せた(らしい)子役のウン・ソウが出てきて、コッチをにらむんですが、怖いというより、「ボイスもよろしく」と言っているようで、感心に至るラストではありませんでした。……と、いうのが1回観た時の感想。

 2回観てわかったんですが、ユジンは、小屋に集まって密談している郡長らを火で焼き殺した時、同時に死んでるんですね。
 そしてラストの子供のシーン。回想シーンかと思ったんですが、これはイ・ウンジュ(チュニの生まれ変わり)が宿した子供、という意味だったんでしょうか。子のインスクを「生き返らせる」という答えが、これだったんですね。きっと。

 ……なるほど。
 そうして観ると、ラストは投げ出されてはいませんでした。完成してます……。気づかなかった。
 どっちにしろ、あの子役の目つきの悪さは何とかならんのか……と一人ツッコミです……。

イ・ユジン。
イジメを苦に、「コックリさん」で復讐
をはかる。
しかし呼び出したのは想像を越える
怨霊だった…。



イ・ウンジュ先生。
事件が始まるのとほぼ同時に、その
高校に赴任してきた美術教諭。
彼女もまた、何らかの謎を秘めてい
る…。



30年前に焼き殺された、チュニ。
キム・インスクの母親。
インスクを殺された恨みをいだき、
村人達を呪って死ぬ。



占い師(?)の女。
ユジンの担任の友人。
ユジンの苦しみの元が何なのかを、
催眠によって明らかにしようとする。

……う、美しい……!(笑)

●DVD特典

 僕はDVD2枚組の「SPECIAL EDITION」を買った(例により中古で)のですが、特典内容はかなり濃かったです。
 メイキング、監督や主演女優たちへのインタビューなどもかなりのボリューム。特典映像だけで約2時間も収録されています。

 まず驚いたのが、30年前の怨念の少女キム・インスクを演じた、イ・ユリ。
 映画劇中と、全然!イメージが違うんですよ。かなりの美少女っぷりにびっくりです。(右写真で比較)

キム・インスク

インスクを演じた、イ・ユリ

 他。特には監督の話が興味深かったですね。
 アン・ビョンギ監督。彼は根っからのホラー好きなようで、今後もホラー専門でいく事を告げているのが何とも好ましい(笑)。様々なホラー映画を敬愛している雰囲気もよく伝わってきました。
 それにかなり真面目に、映画に取り組む方のようです。役者への演技指導を熱心にしている風景を、かい間見る事ができます。主演女優を何度も泣かせたらしい、妥協を許さない態度も感心モノ。
 本編を1回観た時、映画自体はさほど好きだとは言えなかったんですが……、この特典映像を観終えて、かなりの好印象を持ちました。
 2回観て、やっと理解した部分も多く(特にラスト)、改めて思えば、かなりいいホラー映画だった気がします。

 他。メイキングを観ると明らかにされるんですが、ほとんどのホラーシーンにお金がかかっていない感じなんですね。
 ――役者の演技に、大半がまかせられている。
 そして特殊メイク。これも女優達を苦しめたようです。今時ならCGでサラッとやってしまいそうですが、この映画は違う。女優達に直接メイクをほどこし、難しい演技をさせる古風な形がとられている模様。
 だからこその迫力、というものは、きっと出ていると思います。

●余談追記

 「コックリさん」の映画パンフレットを見つけたのでちょっと読んでみたんですが……、驚きの裏話が。
 主役のイ・セウンは、監督になんと、「撮影中の3ヶ月は誰とも話すな」と命令されていたそうです。イジメられっこの役とはいえ……悲しすぎる……。
 スタッフがわきあいあい、としているのを監督が注意した、という記述も。そこまで徹底した気苦しさ。映画に反映されていると思いたいです……。

「感染」

 監督 落合正幸
 主演 佐藤浩市、高嶋政伸、南 果歩、佐野史郎

 (邦画/2004年製作/98分)

 (一言: 「予言」と同時上映された、ウイルス映画。古びた怪しい病院と、怪しい佐野史郎を満喫できる。全編、声が聴き取りにくい。「わざとらしい」演技が萎えさせるし、緑でどろどろのウイルスが、いかにも古くさい怪奇映画を思わせる。でもホラーとして、がんばっている)

●あらすじ

 その病院はやや古びている。
 患者への応対や配慮も、あまり行き届いていない。しかも勉強不足の新米看護婦などが、患者の生命すらおびやかそうとしている。
 おまけに医師たちへの給料支払いも遅れがちで、医療器具も満足に補充できないような病院だった。

 そんな中、薬品の投与ミスで、重傷患者を死亡させてしまう。
 その医療ミスを隠そうと、秋葉医師(佐藤浩市)と魚住医師(高嶋政伸)、そして看護婦らは共謀し、患者に細工をほどこす事にした……。

 事が収まりかけたかと思いきや、別の問題が生じていた。設備不足から、緊急受け入れを断ったハズの患者が、緊急搬送(はんそう)口に置き去りにされていたのだ。
 その患者は、何らかのウイルスに侵されていた。放置されていた間に、その進行度合いも高まっていた。

 そこに現れた赤井医師(佐野史郎)は、その患者のウイルスを調べてみよう、と言い出した。明らかに、異常なウイルスだ。それは患者の肉体を溶かしている……。

 未知のウイルスの研究を行うとなれば、莫大な研究費用などが転がり込んでくるだろう。そう赤井医師は言う。
 研究する価値があると認めてもらえれば、この病院の経営も、立て直せるかもしれないのだ……。
●感想

 落合正幸監督は、「パラサイト・イヴ」「催眠」の他、他の監督達と「世にも奇妙な物語」「NIGHT HEAD」などを手がけた方のようです。「NIGHT〜」と言えば、飯田譲二監督が思い浮かびますが、落合監督が手がけた話もあったんですね。

 この映画。……まず、音が低い。テレビを普通の音量にしていたら、ごもごもで全然聴き取れない。
 テレビの音量を5つほどあげて、やっと聞こえるように。いやいやそれでもまだ、ところどころ聴き取りにくい。
 途中、佐藤浩市の声を聞くために、音量を10もあげる事に……。あ〜あ、というカンジです。
 劇中の会話がよく聞き取れない、だなんてどうかしてます。

 で、冒頭から異常な病院の雰囲気を作り出そうとしているのはいいんですが……、あまりにもマンガ的な表現があり、気持ちをなえさせました。
 ちょっとした事なんですが、非常にダメなシーン。
 それは、注射を失敗し続ける新米看護婦。最後に注射器を「突き刺そうとした」あの演技がひどい。リアリティぶち壊し。
 加えて、鏡に話しかける老婆も……シーンとしては嫌いな部類に入ります。演技が「わざとらしく」感じてしまうんです。
 ……この映画の「つかみ」の印象は、かなり悪かった。

 そんな中でも良かった部分は、放置されていた若者の患者。実は頭を打っていて、みんなが見てる中、耳から血がドバーッと流れ出す……。これだけは、ホラーとして良かった。

 ●

 で、医療ミスが起こる。患者を薬品の投与ミスで死亡させてしまう。
 このシーンがやたら長く感じました。あくどい思考が「感染」するのが、この作品のテーマだったのか?と思うほどでした。
 まぁ違っていたんですが。やっぱりウイルスが出てくるんですね、期待通りに。だからこそ、この「感染」を観ようと思ったんですから。……僕はなぜかウイルス映画が好き?なもので。

 で、ウイルス登場シーンで出て来る、佐野史郎の声がまた小さい。
 ここでとうとう、音量を20近くあげることに。もう音量35です……。(普段は17程度で済むのに)
 これ、映画館で見たら、どうだったんだろう……?

 佐野史郎は、いかにも佐野史郎っぽい役……。登場シーンで直立不動で立ってるし……。「羊たちの沈黙」のレクター博士みたいです。
 それ以後も佐野史郎……いえ赤井医師が淡々とした感じで物語を引っ張っていきます。

 ●

 ヘドロのようなウイルスが逃げ出し、医師らはそれを追います。
 で、ウイルスが猛威をふるっていく。院内の看護婦たちが次々と、感染していきます。
 感染すると、異常な行動をとるようになる。……こういうウイルスは、全然リアリティを感じないんですけどね。
 なんか、レトロな怪奇映画を観ている感じ。……要は、安直なアイディアに見えるんですよ。もっとも、監督がそういうものを作りたかったのかもしれませんけど。今風の映像で、昔の怪奇映画を作りたかった、と?

 終盤(最後の最後)はまた、方向性がガラリと変わります。ウイルスの感染方法が明確にされるんですね。
 でもまたそれが……安直なカンジ。ウソくさく聞こえてしまうんですよ。……そんなウイルスがあるかぁ?と。


 結論として。特にオススメはしませんが、ホラーとしてはがんばっている映画だと思いました。かなりホラーシーンを詰め込んでいるカンジがしますので。ホラー度はさまざまでしたが。
 「映画としては面白いけど、ホラーとしては全然ダメ」というより、マシな気がします。ホラーを冠する映画ならば。

 そうだ。思い出せば、作りが、落合監督作の「催眠」に似てたかも。
 あの映画は原作とは路線を変え、「徹底的にエンターテイメント性に凝った」とどこかで目にした覚えがありますが、この「感染」にしてみても、そんな感じがします。
 ストーリーもわかりやすかったし、ウイルスも視覚的におどろおどろしかった。
 ラストはちょっと、ひねられましたけどね。最近流行り?の……「精神的な」方向で。

 あ、そうだ。主人公の秋葉(佐藤浩市)と魚住(高嶋政伸)については、それなりの(上手い)演技をしていたなぁ、という印象。特筆すべき箇所が、見つからなかった。

佐藤 浩市(こういち)。
医師役もサマになってます。

ホラーでは映画「らせん」で主役を
演じましたね。




高嶋 政伸。
TVをあんまり見ない僕には、
ドラマ「ホテル」での主役、というイメ
ージしか……。
今作もまた、すぐ感情的になる役割
ですね。




佐野 史郎。
ドラマ「ずっとあなたが好きだった」
でブレイクした役者さん…ですよね?

それ以来、似たようなキャラクターで
色んな所に登場しているような気が。

口論に強そうです。あの仏長面(ぶっ
ちょうづら)がいい。

●ネタバレ:ラストの解釈

 ラストの解釈は、いくつかあるのかもしれません。
 今まで挙げた「緑のどろどろウイルス」は、もしかすると無かったのかも。最後、TVに映る救急隊員の証言からすれば。
 罪の意識からくる、集団催眠のようなものだったのか。それとも単独犯が看護婦らを殺し回ったのか。 

 いやいや。やっぱりウイルスはあったのか。その辺、何度もどんでん返ししてますね。答えはないのかもしれません。

●DVD特典

 DVD特典として、予告編などを収めた他、「コメンタリー」というのがあります。本編全て、順を追いながら、監督とプロデューサーが解説してくれるんですね。

 でもこの2人。だらだら会話していて、「観客に説明しよう」という心意気がまるで感じられない。確かに裏話を色々語ってくれてはいますが、2人で会話しているのを観客は「聞かされている」カンジになっていて……、正直、つまんなかったです。
 どうせなら監督一人で、僕らに話をしてほしかった。その方がまだ、聞けた感じがします。

「コントロール」

 監督 ティム・ハンター
 主演 レイ・リオッタ、ウィレム・デフォー

 (原題 CONTROL/105分/2004年製作)

 (一言: 強盗殺人をおかした死刑囚リー・レイは、まやかしの死刑執行の後、凶暴性を抑えるという新薬の被験者にさせられる。彼の凶暴性は、収まっていくのだろうか? ホラー度は低い。人間ドラマ)

●あらすじ

 リー・レイ(レイ・リオッタ)は薬物注射による死刑執行を受けた。彼は麻薬の強盗殺人をおかし、数人の人間を射殺していた。
 だが、その死刑執行はまやかしだった。リーが死体安置所で目覚めると、数人の男達に囲まれていた。

 そして、ある実験の被験者になってほしい、という話をされる。新薬の開発で、その薬を飲む人間が必要らしい。副作用を調べるためだ。……いわゆる、人体実験に近い。だから死刑囚だった、リーが選ばれたのだ。
 断れば、死刑のやり直し。ほぼ選択の余地はなく、リーは受け入れざるをえなかった。

 そのクスリは「アナグレス」といった。
 人間の凶暴性を抑え、脳の働きを改善し、犯罪者に後悔すらおぼえさせるという、画期的な新薬だった。
 リーの実験に直接関わるのは、マイケル・コープランド博士(ウィレム・デフォー)。
 リーの凶暴性は凄まじく、当初は研究施設からの脱走騒ぎなどを起こして手をやくが、薬を投与し続けていると、彼の狂暴性もかなり収まってきた。

 実験の第2段階とし、リーを研究施設から、一般のホテルに移す。
 リーの足首にGPS(衛星による、位置把握)の発信機を付け、部屋にカメラを設置し、尾行をつけての監視が続く。
 リーは自力で就職先を見つけ、普通に働き始めた。
 凶悪犯罪者だった彼だが、アナグレスの投与により、別人に生まれ変わったかに見えた。

 しかし、彼は元死刑囚であり、知人などに生きている事を悟られてはならない。死刑が仮のものであった事は、あくまで極秘なのだから。
 だがしかし。その情報はすぐに、マフィアなどに知られてしまう。
 リーが以前殺した者の中に、ロシアマフィアの一員がいて、リーは命を狙われる事になる。

 そんな中。リーは後悔の念により、薬が無くては眠れない状態が続いていた。
 彼が一番後悔しているのは、強盗の際、無関係だった男の頭を撃ち、彼を知的障害者にしてしまった事だった……。

レイ・リオッタ。
強盗殺人をおかした死刑囚役。
彼はアナグレスによって、変わる事
ができるのか?



ウィレム・デフォー。
アナグレスを開発した博士役。
当初は手を焼いたリーだが、次第に
好調のきざしを見せてきて、実験の
成功を信じて疑わない。
●感想

 「レイ・リオッタ」にひかれて、観てみる事に。
 レイ・リオッタと言えば、「乱気流〜タービュランス」の悪役。近年では「ハンニバル」にも出ている模様。
 今作でも、冒頭から見事な悪役っぷり。何せ死刑囚ですから。銃を乱射しての強盗劇。研究所でも脱走騒ぎなど起こして、暴れまくります。
 でも中盤以降は、やたらおとなしくなってしまいます。僕的には残念……。

 そしてウィレム・デフォー。彼も「スピード2」などでの悪役っぷりが素晴らしい。「スパイダーマン」でもグリーンゴブリンとして、見事に暴れてくれました。
 今回は(まさかの)博士役。でも結構、似合ってますね。
 まぁ死刑囚に非合法な人体実験をする役ですから、このくらいハクのついた役者がふさわしいのかもしれません。

 ……で、期待に反して、後半はまともな人間ドラマになっていました。
 ホラーサスペンスを期待していたので、肩すかしを食らった感はありますが、これはこれで面白かったかな、というカンジ。ちょっとしたどんでん返しも気持ちがいい。驚かされるのは大好きです。

 ホラーとして観ればかなり弱いんですが、一本の映画として観れば、なかなか面白かったと思います。テンポも良かったですし。印象に残るシーンも多かった。
 ……でもやっぱり、ホラー的な衝撃がほしかった。この題材(凶暴性を抑える新薬。副作用を調べる)ならば、かなり壊れた物語も作れたと思いますので。
 ホラーにするのならば、研究所内での殺戮、という事にはなりそうですが。リーが街に出てしまうと、やっぱりシナリオ的にホラーを保つのは難しそう。

 でもホラーと思わせておいて、人間ドラマになってしまうんですから見事なもんです。テーマは「死刑囚に人生をやり直すチャンスを与えたらどうなるか?」といったものみたいですので。
 たまにはこんな映画もいいもんです。こんな(感動系の)ホラー映画ばっかりだったら、イヤですけど。

●DVD特典

 無難な特典として、メイキングがついてますね。結構短め。
 内容も無難。「スパイダーマン」のメイキングなどで、ウィレム・デフォーのコミカルな人間性がうかがえるんですが、本作のメイキングでもそんな感じ。

新薬の研究施設。
リーの他、新薬を投与されている被
験者が多数、監視されている。



夜の遊園地でのデート。
車関係の仕事についたリーは、
テレサという女性とつきあい始める。

彼は、幸せになれるのだろうか…?

「エクソシスト」

 監督 ウィリアム・フリードキン/原作・脚本 ウィリアム・ピーター・ブラッティ
 主演 エレン・バースティン、リンダ・ブレア、ジェーソン・ミラー

 (原題:THE EXORCIST/122分(ディレクターズカット版132分)/製作 1973年(2000年))

 (一言: 「悪魔祓い」を描いた古典的名作。悪魔に憑依された少女リーガンを演じる、リンダ・ブレアの演技がとにかく素晴らしい)

●あらすじ

 イエズス会派の神父であり考古学者でもある、メリン神父。彼はイラクの遺跡発掘現場で、不吉なものを発掘する。悪魔の顔をかたどった石だ。
 不吉な思いはすぐに確信に変わる。発掘が進むにつれ、もっとすさまじいものが出土したからだ。

 それは……、悪魔パズズの全身像だった。彼が以前、エクソシスト(悪魔祓い師)として対峙した悪魔だ。この出土は、彼に戦いの再来を告げているのか……?


 場はアメリカ、ジョージタウン。そこで映画の撮影が行われていた。
 学園紛争を描いたこの映画に、クリス・マクニール(エレン・バースティン)は女教師役として出演していた。
 借家に一緒に住むのは、一人娘のリーガン(リンダ・ブレア)と助手のシャロン、執事のカール、家政婦のウィリー。夫とは別居していた。

 そんなある日。クリスは、娘のリーガンに精密検査を受けさせるため、病院へ行った。娘は軽い睡眠障害におちいっている。
 しかし。そこで思いもかけない事を医師に言われる。「娘さんは、ひわいな言葉を普段つかったりしますか?」と。クリスは否定するが、医師は確かに言われたらしい。口にするのも恥ずかしい、ひわいな言葉を。

 それから。リーガンの症状がどんどん悪化していった。見えない何かに跳ね飛ばされたり、暴れたり、荒々しい口調でののしってきたりする……。クリスは複数の医師に頼るが、誰もリーガンの症状を的確に理解できる者はいない。
 リーガンはもはや別人となってしまっていた。人ですらない。……悪魔だ。悪魔にとりつかれてしまったのだ……。

リーガンの母、クリス。
 その頃。同じ街に、神への信仰を失いかけている一人の神父がいた。彼の名は、カラス神父。
 街の片隅には貧困がはびこり、神の救いは得られない。そしてまた己自身も貧困のため、病におかされている母をまともな病院へ入れてやる事ができずに悩んでいた。
 そんな折、母が死んだ。
 信仰も、母も。何もかもを失い、絶望の中に突き落とされるカラス神父。しかし、そんな神父の精神科医としてのウワサを聞きつけた一人の女が、救いを求めに来る。それは、悪魔にとりつかれた少女の母親、クリスだった……。

●感想

 以前紹介した「オーメン」に並び、ホラーの古典的名作として名高い、「エクソシスト」。
 僕はDVD版の「プレミアムツインパック」を買い、「ディレクターズカット版」を観ました。オリジナル版より10分ほど追加シーンがあるんですね。改めて劇場公開もされた模様。

左)キンダーマン警部
右)カラス神父

 この映画の感想を一言で言えば、「悪魔に憑依(ひょうい)された少女リーガン役の、リンダ・ブレアの演技が素晴らしい」。
 メイクやシナリオ、演技指導などもからんで、最高の表現ができたんでしょうけど、とにかく表情の一つひとつが素晴らしかった。見事な悪魔っぷりでした。

 そしてまた、後半の悪魔祓いのシーンが凄まじい。
 監修に実際の悪魔祓いをした神父がついた、という事もあり、リアリティも抜群、といったところでしょうか。
 悪魔祓いの儀式が、十字架と聖水を用いて「ラテン典礼書を詠唱(えいしょう)する」という、一見控えめな儀式であるように思われますが、これがまた、息を呑む迫力に満ちているんですね。
 しかも、実際に行われている悪魔祓いの形式をなぞっての映画化、という事で、重みも違います。安易なマンガ的じゃないんですね。

 今から30年以上前に製作されたこの映画。
 子供の頃に観た時は、「ただ怖い」という感想しか得られませんでした。加えて、「ラストの階段でのアレ」だけが、鮮烈に記憶に残り続けたんですね。
 で、大人になって改めて観たワケですが、まるで稚拙(ちせつ)な部分が感じられなかったのは驚きです。30年も前の映画ならば、近年のものと比べて、多少はダメな部分が出てきてもよさそうなんですが……、それはなかった。
 要は、完成度の高い映画だった、というワケですね。怖い、という以外にも。ストーリー上、ムダもスキも感じられなかった。

●「解説」について

 DVDの特典として、監督自身が、映画の全編を事細かに解説してくれる機能があるんですね〜。
 で、どんな裏話が聞けるんだろう、とわくわくして観たはいいものの、ほとんど裏話はしてくれませんでした。冒頭のイラクのシーンだけ。途中で力尽きたのかもしれません……。
 解説のほとんどは、「この場面はどういう場面なのか」という、本当の意味での「解説」に留まっていました。ジョークもほとんどない。監督があまりにも生真面目すぎたせいか、エンターテイメント性はまるでありませんでした……。

 解説を読まないとわからなかったシーンも確かにあります。
 大きくは冒頭、メリン神父の発掘作業について。僕は、彼が悪魔の封印を解いて世に放ってしまった、と思っていたのですが、解説を聞くとそうじゃないらしい。これは物語の後半に於ける、戦いを予言するシーンだった、と。神父がおろおろしていたのは、悪魔を世に放ってしまった、という罪悪感ではなかったんですね〜……。これはわからなかった。

 あと、シャロンがクリスの助手というのは気づかなかった。リーガンの姉かとばかり思ってました。
 住んでいる家が映画撮影のための借家だとか。ラストシーンでの、リーガンのキスが何だったのか。あのメダルは何だったのか。解説を見るまではわからなかった。

 その他。何気ないシーンに見えた、中盤に於けるキンダーマン警部(キンタマンとかいうマンガがあったなぁ……笑)とクリスの会話。それが実は、監督のお気に入りのシーンであり、しかも高等な話術テクニックが使われていた……だなんて、一体誰が気づいたでしょうか?
 言われてみれば、クリスがキッチンに立った時、(警部を邪険に思って)嫌な顔をしていたり、と芸が細かいシーンだったんですね……。
 (ちなみに「キンダーマン」って、Kinderman? もしかして、日本語で言う「良男」とかそういう感じの名前なのかなぁとちょっと思ったり)

 あと、場所の解説があいまいじゃない、んですね。
 自宅、病院、教会、とかで済ませてしまいそうなところを、自宅の位置がジョージタウンの36番街とプロスペクト通りの角に位置し、それが映画撮影のための借家である事、しかもイエズス会派の大学から歩いて数分のところにある、など……。教会や大学に於ける位置関係も、素通りしてしまいそうなんですが、しっかりと解説されてある。監督、すげえ完璧主義者なのかも……。

 他に、「悪魔祓い」がいかにして行われるかの解説もまた、リアリティを感じます。もっとも、現実のものに即している、という事から説得力があるんですけどね。
 これは「解説」を見なくても、本編で語られてはいますけどね。悪魔祓いには、教会の承認が必要であり、被害者が「悪魔にとりつかれている証拠」が、申請に必要になる、など。事実を知らずしては、描けませんね。


 ……それにしても、頭から最後まで、場面の状況を的確に解説してくれる監督もすごい。作品の隅々まで、頭の中に入っているんですね。そして解説を加えながらのその場面のすべてに、一切のごまかしもムダも感じられない。加えて、不自然な流れもない。
 改めてこの作品の凄さが伝わってきます。ジョークや裏話を交えての解説(「SAW―ソウ―」などはそればっかり)も楽しいんですが、こういった真面目な解説に出会うのも、感心に至ります。

 そんな中、監督が何度も強調して言っているのは、「この映画のショッキングシーンは決して過剰表現ではない」というような事ですね。事あるごとに「これは典型的な憑依現象です」と言っているのが笑えます。

 「ディレクターズカット版」として追加されたシーンの説明もありました。やっぱり追加されたものを観た方がわかりやすいんでしょうね。別にショッキングなシーンばかり増えたワケではなく、作品をより理解するために追加されたようなシーンが多いようですので。
 伝説と化した?「スパイダー・ウォーク」も一瞬で終わる一発芸のようなものですが、なかなかドキッとくるシーンです。

●この作品中、わずかながら笑えたシーン

 リーガンの腹に「help me」という文字が浮かぶシーン。
 ボタンのような、そのまん丸いヘソがすごく気になって、help meどころではありませんでした。「その丸いヘソは何だ?!」と。
 このシーンはカットしても良かった気が……。文字が腹に浮かぶだなんて、リアリティもなさそうですし。

●余談

 凄まじく素晴らしい憑依っぷりを見せたリーガンこと、リンダ・ブレア。
 後に、この映画のパロディである、レスリー・ニールセン主演の「裸の十字架を持つ男」にも同じ役で出演してるんですね。一時期、「裸の〜」シリーズが作られ続けましたね(というか日本の映画会社がシリーズ化したんでしょうけど)。「裸の銃を持つ男」の1作目だけが特に笑えた気がしますが。「スパイ・ハード」とかね。

 「エクソシスト」は「2」「3」と続きますが、どうなんでしょうか。いずれ観るかもしれませんので、感想はその時にでも。
 「エクソシスト・ビギニング」という映画も近年公開されましたね。メリン神父と悪魔パズズの戦いを描いた模様。気になりますね。

「クリムゾン・リバー」 ―― 監督 マチュー・カソヴィッツ/主演 ジャン・レノ、ヴァンサン・カッセル
 (原題 LES RIVIERES POURPRES/本編106分/2000年 フランス映画)

 (一言:連続猟奇殺人事件。その事件の周辺には、数々の謎と陰謀が。事件を追う2人の刑事。ホラー度はさほどでもないが、充分に見所のある映画)

 公式サイト: http://www.gaga.ne.jp/crimsonriver/

●あらすじ

 アルプスの麓(ふもと)。ゲルノンという地で猟奇殺人事件が起きた。
 遺体は崖の中腹に吊るされており、その遺体には拷問(ごうもん)の跡があった。体中の無数の傷跡に加え、両手首が切断されており、両眼がくりぬかれていた。眼窩(がんか)には、雨水が溜まっていた。
 殺された男は、レミー・ケロワ。ゲルノン大学の図書館司書をしていた。

 事件を追うのは、ニーマンス警視(ジャン・レノ)。はるばるパリから派遣されて来た。
 犯人像もその意図も、何も推測できない。ニーマンスは、ケロワの身辺をあたってみる事にした。

ゲルノン大学。ここで何が行われて
いるのか…?

あまりにもリアルな死体…。
 ケロワの眼窩にあった雨水は、酸性雨だった。それはこの地では1970年代に起こった現象であり、近年は見られないという。犯人はそれをどこで入手したのか。また、その雨水を遺体に詰めた理由は……?

 一方、その地から200キロほど離れた地で、2件の不可解な事件を追う警部補がいた。
 彼はマックス警部補(ヴァンサン・カッセル)。イキのいい、ケンカにめっぽう強い男だ。

 2人の捜査線上に、セルティスという者の名が上がり、2人は思わぬ形で出会う事になる。
 セルティスはニーマンスにとっては第2の遺体であり、マックスにとっては、犯行の容疑者であった。

 それらの事件は、つながりがあるのか……?
 事件を追っていく毎に、不穏な空気を露(あらわ)にしていくゲルノン大学……。第3の遺体が発見された時、犯人の意図がおぼろげながら見えてくる。
 犯人は、大学関係者を殺している。大学を憎む者なのか。

 そしてまた、犯人像にも不可解な点があった。
 ニーマンスらがその目で見た、パーカーを被った者。その者が乱射した銃の指紋が、考えられない者と一致したのだ……。
 マックスが追っていた事件の一つ、墓荒し。その荒らされた墓に眠る少女の指紋の記録と、一致したのだ……。
 少女は20年も前に、非業の死をとげていた。

 今。一体、何が起こっているのか。
 事件の発端は、20年前の少女の死にあるのか……?
 そしてまた、犯人は本当に、20年前の少女なのか……?
●感想

 オープニングからいきなり、青白い死体の長映し。もうこの辺からホラー度を期待してしまっていました。

 全体的にテンポよく進んで、ストレスはほとんど感じませんでした。
 主演はあのジャン・レノ。「レオン」でブレイクした役者さんですね。ここでまた改めてジャン・レノを観て、惚れ直し(?)ました。
 頭の切れる、クールな名警視。そのお蔭なのか、場面の移り変わりにほとんど説明がなく、「今、どうしてここに向かっているのか」を推理しながら観るような形になっているように思えました。そういうのが序盤から後半にかけて、何度かありましたね。

 一方、若い警部補役を務めるのが、「ドーベルマン」で名をはせた、ヴァンサン・カッセル。「ドーベルマン」はあいにく観ていないのですが、どうも弾けた映画である模様。銃を乱射しまくるような?

 いかにも正反対の性格の2人が、つながりを持つ大きな流れの事件に挑んでいく様は、観ていて面白かったです。
 推理とアクションが上手い具合に交差していて、映画そのものも、あきさせないような出来になっていると思います。犯人もとんでもないところで出て来ましたね。あれは意表を突いてます。(「セブン」でも意表突かれたなぁ……)

 ただ、期待したホラー度はそれほどでもなかった気がします。ラストは結構、普通のサスペンス物っぽくなってましたし。
 この映画のうたい文句である、「ラストの衝撃! 隠された驚愕の事実!」(日本の映画会社が勝手に付加した?)は、くだらないあおり文句でしかありませんでしたね。そこは残念。ラストも「あぁ、そうなんだぁ?」程度で。

 これがホラーをウリにした映画なら、ラストはもっと凄惨で暗く、恐ろしいものになっていたんでしょうけど……、監督のねらいはそうじゃなかったのかもしれません。あくまでもサスペンスにこだわった?
 最初の死体が、一番ホラーしてましたね。死体のメイキングなどを見ると(DVD特典)、手品のタネを明かされたようで多少気持ちは下向くんですけど。……メイキング、観ない方がいいかも。

ニーマンス警視役、ジャン・レノ。


マックス警部補役、ヴァンサン・
カッセル。

大学の背後に位置するアルプスの
山々。どう事件と関わるのか…?
 ラストに驚けるかどうかは人それぞれでしょうけど、衝撃をヌキにしても、なかなか楽しめた一作でした。娯楽映画として。
 マックスのケンカのシーンと、中後半のカーチェイス?はなかなか興奮モノでした。
 ホラー映画として観れば、中途半端でしたけどね。犯人も全然怖くないし……。


 余談ですが、「VINCENT CASSEL」をなんで「ヴァンサン・カッセル」と訳したんでしょうか。フランス語だとそうなっちゃうんでしょうか?
 ヴィンセントじゃあダメなんでしょうか? でもヴィンセントって結構、聞く名前ですよね……?

 さらなる余談として、DVDのトップメニューの、CGのクオリティが低いです。センスを疑います。
 まるでアダルトビデオのオープニング(社名ロゴなど)を見ているかのよう。無理して3DCDにしなくとも、静止画のメニューで良かったんじゃないかと。まぁこんな所を気にする僕も変なんですが……。

「signs(サイン)」 ―― 監督 M・ナイト・シャマラン/主演 メル・ギブソン、ホアキン・フェニックス
 (107分)

 (一言:宇宙人モノ。1回観た時は、凄くつまらないと感じた。2度目で少し、隠されているものを理解した。でもエンターテイメント性は低いし、名作でもないと思う)

●あらすじ

 元牧師であるグラハム・ヘス(メル・ギブソン)は、子供2人と弟のメリルと暮らしていた。妻のコリーンは半年前、事故でなくしていた。
 ある日。自宅前の広大なとうもろこし畑に、ミステリーサークルが刻まれていた。
 それは各地で起こっていた。イタズラにしては人手がかかりすぎる、という疑問も持ち上がってくる。

 それにつれ、犬などの動物が苛立ち、奇怪な行動をとるようになってきた。
 グラハムの子供たちは宇宙人の存在を感じ取り、とまどい続けている。

 グラハムと弟のメリルはそんな子供たちをいさめ、宇宙人の特集を組んでいるTVを見ることを禁止したりする。
 だがある晩、ついにグラハムは畑でそれらしき存在を目にしてしまう。
 一転して、TVを見ようと言い出す。
 すると、そこには街の上空で光輝くUFOの群れが映し出されていた……。

●M・ナイト・シャマラン監督 印

 「あのM・ナイト・シャマラン監督作(「シックス・センス」「アンブレイカブル」)だから、きっと面白かろう!」
 まずはそんな先入観から。
 近くのレンタルビデオ屋でもサスペンス部門で堂々の1位。見たところ、それが結構長く続いている。期待もふくらむ、というものです。ハズレるワケもなかろう、と思い、DVDを(中古で)購入。
 一通り見終えた感想。……「つまらん」。

●なぜ、つまらなかったのか

 まず、どんでん返しをかなり期待していたので、それが無かった事への不満が大きかった。変に期待した僕が悪いんだけど。
 エンターテイメント性はほとんど感じられず、派手さは全くと言っていいほど抑えられている。笑えるシーンも皆無。シナリオにもあまりひねりが感じられなかった。宇宙人が来て、襲われて、助かって、終わり。
 ……一体、世の中のみんなは、この作品の何が面白かったんだろう? 何であのレンタルビデオ屋では1位が続いているんだろう? そんな疑問しか残りませんでした。

●「宇宙人」モノ

 この映画を一言で言ってしまえば、「宇宙人モノ」。そんなキバツなものを題材にしているにも関わらず、全体的にスケールが小さい。
 それに宇宙人があまりにも簡単に撤退(てったい)しすぎ。もっとも撤退しなきゃ、別の話になってしまっていたんでしょうけど。

 リアリティさは確かにあります。でも映画として見れば、あまりにもおとなしすぎた。
 同じ宇宙人モノとして、あの「インディペンデンスデイ」と比べたら、かわいそうになるほど。

 さっきも書きましたが、話のスジも素直すぎ。
 ――宇宙人来襲のサインがあり、世界は混乱し大騒ぎ(TVでのみ)。そして主人公らも宇宙人に襲われる。一晩経ったら宇宙人は撤退しているという。でも一匹残っていた。うまくやっつける。
 「こんなくだらない映画がどこにあるんだろう」と思いました。見せ場もどこだったんだろう、という感じです。……バットで殴るとこ?

 もしかすると、すごく深いところに何かが隠されているのかもしれない。僕はそれを読み取れていないだけかもしれない。
 でも素直に見て、素直に得た感想としては、「くだらなくてつまらない」という、ヒサンなものになってしまいました。
 こんなの見るんなら、昔の米TVシリーズの「V」でも見た方がよっぽど面白いと思いました。

 妻コリーンの死の間際の不可解な言葉が、うまく宇宙人撃退のヒントになった、というのが見せ場なんでしょうけど……、なんかこじつけみたいなものを感じただけでした。
 この監督はこの映画で、何を描きたかったんだろう?という疑問ばかりが残りました。

グラハムとメリルは次第に子供たち
の話に耳をかたむけはじめる。



グラハムはついに宇宙人らしきものを
目撃してしまい、今まで禁じていた
TVで、情勢を見てみる事に。

●その数日後。もう一度観てみた(この辺からネタバレ多数につき、注意)

 1回目見た時は「つまらん」の一言で済み、それ以上ではなかろう、という感想に至ったんですが、2度目はまた少し違った感想を得る事ができました。

 娘のボーの奇怪な行動や言動。それらは母親ゆずりであった、というのに(やっと?)気付きました。
 ――水をどうして室内にあんなに置いたのか。
 ――兄が地下室でぜんそくの発作を起こした時、その場面を夢で見た、と言った事。(つまり、ボーには予知夢の能力がある)
 他にもまだあるかもしれません。

 宇宙人に一家が襲われるあのクライマックス時に、母コリーンの死の間際をオーバーラップさせたのは、その場面をコリーンが予知していた事を現していたのと同時に、ボーがその能力を受け継いでいた、というのを現していたのか。
 さらに、「水が宇宙人の弱点である」とTVでは言わなかったのが大きな反動になる。
 その事実は全くの予知。誰も知りえない情報だったのだ。(そう、息子も言っている。「奴らは水が嫌いらしい」とグラハムが言ったのに対し、「そんなのデタラメだ」と返したシーンがある)

 加えて、レイ・レディ(監督が出演)が「宇宙人は水が嫌いらしい」という前に、ボーは室内に水を用意していた。更に、生まれた時からボーは、水に対して妙な執着を持っていたというのも面白い。それらは全て、母親ゆずりの予知、もしくは母親の胎内で与えられた情報から、とっていた行動なのかもしれない。
 ボーと母親の予知により、一家はこの危機を乗り越える事ができたのだ……。
 そこで、宇宙人襲来の「兆候」としての「signs」の他、もう一つの意味、「予知」「予兆」が浮き彫りになってくるいうワケなんですね……。
 監督が描きたかったのは、そういった「奇跡」じみたものが大きかったのかもしれません。だからせっかくの宇宙人モノなのに、映画自体を派手にしなかった?

 しかし。だからと言ってこの映画が「凄く面白くなった!」とは言いません。エンターティメント性があまりにも欠けていますから。
 だったらラスト、もの凄い雨を降らせて、宇宙人達が全滅するとか。描けたかもしれません。でもそうなると、かの「宇宙戦争」(昔の)をほうふつとさせてしまい、避けたかったのかもしれませんけど。
 でも監督は「予知」というものをいかにして裏にすえて映画を描くか、に気をとられすぎて、映画を素直に見て面白いかどうか、までは気が回らなかったのではないか、と勝手な推測をしてしまいます……。ホント勝手ですが。

 序盤から中盤にかけても、もったいぶりすぎた。もったいぶったからこそ、リアリティが生まれたんでしょうけど、
 後半、地球人を食料にした、というのも言葉一つで済まされ、全然映像もないから胸に来ない。まぁその辺を掘り下げても、しょうがない映画になってしまいそうですけど。

●余談。吹き替え時の驚き

 変なところで驚いてしまったんですが。
 今回僕は、「日本語字幕の日本語吹き替え」で見てみました。DVDならそういったパターンも試せるので。
 映画の感想を書こうとする時、字幕は必須。ないとわかりにくいし、書きにくい。

 で。そうして見ると、日本語字幕と吹き替えの言葉が結構違うんですね。
 吹き替えは字幕を読んでいるだけじゃない。よりくだけた言葉になっている。たまに全くのオリジナルの話を盛り込んでいたりする(クスリ屋の娘のシーンは、やたらセリフが違っていたけど?)。ずいぶんややこしい事をしてるんだなぁ、と思いました。わざわざ和訳を2回もしているんじゃ大変だろうなぁ、と。

 で、見ていく内に、とある事に気付きました。
 ……配役の口の動きと、吹き替えの言葉がやたら自然なのです。
 まるで配役達が日本語を話しているかのような絶妙さ。つまり、口の動きと吹き替えが……うまく合っているんですよ。

 特に凄いと思ったのは、グラハムの妻を事故で死なせてしまったレイ・レディとグラハムが会話するシーン。英語を話しているとはとても思えないくらい、口の動きと吹き替えの言葉が合っている……。まぁ口を大きく動かしていないから、そう見えるだけかもしれませんけど。

 で。もしや吹き替えの言葉は、そういうところまで重ね合わせて、試行錯誤で作られているものなのではないでしょうか……?
 こういうセリフなら、口パクに合ってるなぁとか。声優さんもそのタイミングに合わせているんでしょうか……。

 昔の映画とか見ると、口パクと言葉が全然合っていない、という印象が強かったので、なんだかこの映画ではそんな新鮮な驚きを得る事ができました。
 他の映画ではどうなのか、少し気になってきました……。
 もしかすると、吹き替え翻訳者の手腕(凄さ)などが、浮き彫りになってきたりして……? え〜?
 でもコメディとか口を大きく動かしそうな映画だと、多分難しそうですね。

●もっとすげえ余談

 メリルおじさん役のホアキン・フェニックス。変な名前だなぁと思ってたら「JOAQUIN PHOENIX」というつづりなんですね。「ホア〜」じゃなくって「ジョアクィン・フェニックス」「ジャクイン・フェニックス」なぁんてのでも良かったんじゃないか、なんて思ったり。でもそれじゃキザすぎ?
 あと終始、ホアキンの鼻の下の傷みたいのが気になってしまいました。昔、そこを大怪我でもしたのかなぁ、と余計な事を考えてしまいます。

 てか、話は違いますが僕の好きな女優「シャリーズ・セロン」。彼女の名前が、映画雑誌によってたまに違うんですよ。一番許せない?のが「チャーリーズ・セロン」。
 チャ……チャーリーはやめろぉお! と声を大にして叫びたい……。今後、もしそんなのが定着してしまったらガックリです。「シャ〜」の方が絶対に美しいですから。
 かのシャロン・ストーンだって、もし間違って「チャロン・ストーン」だったら……。なんか変ですよ、絶対……。
 だから「ホアッ」てのも気になって……。気の抜けた感じがするので。まぁいいんですけどね。余談ですから。

「ZOO [ズー]」
 (2005年劇場公開:119分 / 邦画)

 原作:乙一 (おついち)

 (一言:5編の短編からなる、オムニバス形式の映画。ホラー映画と呼ぶには中途半端だけど、どの話もよく練られていて感心させられる。乙一ファンは必見でしょう)

●広告を見た瞬間に惚れた

 映画雑誌に載っていた「ZOO」の広告を見た瞬間、「これはハズれるワケがなかろう!」と勝手に決めつけ、劇場で見る事を楽しみにしていました。
 ――原作、乙一。そして映画は5編の短編からなるオムニバス形式。その5編のどれもが面白そう。

 でも出張やら何やらで、気づけば店頭にDVDが売られている始末。旬を逃してしまった模様。
 とりあえず即買い。絶対当たりだ、と思ったらレンタルを待たずに買うので。

 で、乙一さんという作家は、短編を多く書いているみたいですね。以前「この世の、怖いもの」で紹介した際の「GOTH―リストカット事件」も短編集みたいな感じでしたし。
 「GOTH」は短編をつなげて長編のような形にしていますが、この「ZOO」は全く内容が異なる短編を集めたもの。原作本は10編、納められているみたいですね。映画ではその中から5編、取り上げているとの事。
 映画を観てしまった後でも、原作本を楽しめる(映像化されていないのが5編、残っている)のはうまい形です。

 映画の5編の中でも特に「SEVEN ROOMS」「ZOO」が気になっていたので、それらから見ようと思いました。
 でもメシ食いながら観てたら、第1話がさらっと始まってしまい、とりあえず観る事に。飽きたら、興味ある話から先に観るつもりでいました。
 ……でも結局、5編を順番通りに観てしまっていました。
 要は、どの話も全く飽きさせなかったんですね。

 中でも一番気に入ったのは、「SEVEN ROOMS」。5編の中でも、ラストの衝撃が一番強い作品だったのではないでしょうか。詳しくは下の紹介の中で。

●作品紹介&ネタバレ感想

 順に、軽く紹介していきます。感想を交えて。
 ネタバレ部分は暗めの文字で書いてありますので、反転(マウスでクリックし、そのままドラッグ)してお読み下さい。映画を観終えた人に共感してもらうために書いたもので、映画を観ていない人が読むと、凄くつまらなくなりますので、読まない方が絶対にいいです。

●「カザリとヨーコ」(監督:金田 龍/主演:小林 涼子)
 カザリとヨーコは顔は似ていても性格の違う姉妹。母はカザリを溺愛し、ヨーコを虐待していた。ヨーコはいつか母に殺される、と恐れていた……。

 まずカザリとヨーコが一人二役、というのが驚き。全く違う顔に見えたもので。
 話としてもうまくまとまっていて、これだけで充分、一本の映画を堪能できた気がしました。
 ラスト。ヨーコが急に頭が良くなった展開に「?」とは思いました。頭良くなきゃ、「CDの順番うんぬん」で、姉を不安にさせる事までは思いつかないハズ。作者の都合(思わぬヨーコのセリフで、読者に衝撃を与えたかった)なのか、ヨーコは初めから馬鹿なフリをしていただけなのか……?
 僕としては、ヨーコがしたたかだったとしたら、ちょっと不自然かな、という気が。あの優しいおばさんとのやりとりも、演技という事になってしまいますから。それはそれで残念な気が。
 それとも、姉を不安に追い込むあのセリフは、ヨーコの「精一杯の」知恵だったのか……? それもまたいいかなぁ?




●「SEVEN ROOMS」(監督:安達 正軌/主演:市川 由衣、須賀 健太)
 その姉弟が目覚めると、狭いコンクリートの部屋に監禁されていた。
 奥には排水溝があり、汚水が流れている。これからどうなるのか。ここから逃げ出せるのか……?

 予想以上に素晴らしかった。ラストも「まさか!」という感じで。
 あの「CUBE(キューブ)」「SAW(ソウ)」を彷彿(ほうふつ)とさせる「ソリッドシチュエーション・スリラー」と言ったところでしょうか。……ある日突然、奇怪な場所で目覚め、命がけで脱出を試みるという形ですね。

 観ていて「これは逃げ出すのは無理だろう?」と思いました。場があまりにもシンプルで、スキがあったものじゃない。どう切り返すのか、じっと集中して観ました。

 そしたら最後の最後で……。
 う〜む。こんな終わり方は、ホラー好きじゃなければきっと納得いかないでしょうね。
 はっきり言ってしまえば……、僕は超好きです、こういうやるせない終わり方が。

 超ネタバレになりますが、姉はやっぱり殺されてしまったのか。生かされているだろうか。悲鳴もなく、そこはわからない。だからこそあれこれ想像してしまって、やるせない気持ちになる。
 ラストに姉の悲鳴があったとしたら、それはそれでやたら怖い終わり方だとは思いますけど……、あの言いようのない静けさはぶち壊しになったでしょうね。その辺は監督の手腕を見せられた、という感じ。原作では、姉が奇声をあげるらしいので。

 でも観た感じ、もう少し何とかなったんじゃないかなぁと思ったんですけどね。
 姉が自己犠牲するまでもなく、犯人に蹴りでも食らわせて閉じ込める、とかね。争う事をまるで考えていなかったのが、少し疑問かなぁと。……まぁそうなったら、あのエンドもなく、馬鹿げた話(バタバタ劇)に成り下がってしまうんですけど。

 やっぱり、ハッピーエンドだったらこの作品はつまらなくなると思うんですよ。
 弟をこき使ってばかりの傲慢な姉が、「思わぬ自己犠牲」を見せてみんなを助けるからこそ……、この作品には価値があり、衝撃を残してくれたんだと思います。
 そういう事で、この作品が一番気に入りました。5編の中でも一番怖い感じですし。
 微妙なバランスで成り立った素晴らしいエンディング。ホラー好きなら観るしかないです。

●「SO・far そ・ふぁー」(監督:小宮 雅哲/主演:神木 隆之介、杉本 哲太、鈴木 杏樹)
 ある日、お父さんにはお母さんが見えなくなった。そしてお母さんにはお父さんが見えなくなった。両方見えているのは、僕だけ。
 二人の乗った車が事故を起こした日から、突然そうなってしまった。僕は二人の間に入り、お互いの話を聞いては伝えてあげる事にした……。

 一番印象的なのは、両親の暴言の嵐を前にして「僕」が白目をむいて気絶するところですね。あの辺がやっぱりクライマックスなんでしょうね。演技も見せ方もうまいなぁと感心。
 あの辺、両親の会話が聞こえなくなるのが、怖さを引き出していたんでしょうか。衝撃の言葉を隠したのか?と思いきや、そうじゃなかったのが、不思議で新鮮だったかなぁと。
 ラストも「あれ?」という感じでうまいなぁ、と思いました。これが乙一流、というところでしょうか。氏は読者をうまく裏切ってくれるのが得意みたいですね。「GOTH」もほとんどの話に、衝撃のオチがあったようですし。

 話は戻り……、二重にも三重にも裏切ってくれるところが凄い。
 まず始めに「両親のどちらか、もしくは両方が死んだんだろう」と思わせておいて、あれだけ奇妙な日常を描いておきながら、ラストでうまく日常に返ってくるところが凄い。終わり方もなかなかさわやかで。
 これはこれでホラーじゃなくても、充分に楽しめた作品でした。

●「陽だまりの詩」(監督:水ア 淳平、神風動画)
 その少女はロボット。とある男に創られた。その男は自分の死を悟っていて、自分を埋葬させるために、少女を創ったという。
 その世界にはもう、男と少女しかいない。男は少女に「死」というものを悟ってほしいと願っていた。

 いきなりのアニメ作品でしかもファンタジー。
 思いっきりこの5編の中でも浮いていますが、そこそこ面白かったかな、という印象でした。絵がただのアニメではなく、3DCGを用いて作られたアニメらしく、不思議な感覚で観る事ができました。
 短編だから良かったのであって、これが長編だったら……つまらなかった気がします。
 短編であっても、僕は大して面白い話だとは思わなかったんですけど。アニメじゃなかったら、たぶんヒサンな出来になっていた作品だったんじゃないでしょうか?
 ちょっと息抜き、みたいな感じですか? 僕はもともとファンタジーがあまり好きじゃないので。そんな感想に。
 そんなにつまらなくはないのですが、この5編の中ではあまりにも素直な作品だったんじゃないか、と。どこにでもありそうな話ですし。

 ……でも、このアニメ作品が5編の中にあったからこそ、「ZOO」そのものが目をひいた、というのはあると思います。みんな映像化作品ばかりだったら、結構普通のオムニバスもの、になっていたと思うんですね。
 3本濃い映像を見終えた後、軽くアニメが流され、少し疲れがとれた気もしましたので。
 単体としては弱いと思いますが、このアニメを4つ目に持ってきたのはかなりの計算がなされているんじゃないか、と思います。
 この5編を劇場で見た場合。全部衝撃があり、重苦しい話ばかりだったら、すごく疲れるような気もしますので。


●「ZOO」(監督:安藤 尋/主演:村上 淳、浜崎 茜)
 その男は、美貌の女とつきあっていた。が、女の性格はどこかまともではなかった。
 ある日。二人は廃園となった動物園内で言い争いになる。カッとなった男は女を殺してしまった。
 男は、女の写真を撮りたかった。死体となった女はもう、拒否できない。
 そして男は、死体となった女の顔写真を毎日撮り続けた。だが、そんな事を半年以上も続けていると、だんだん奇妙な事が起こり始めてきた……。

 出だしもいいし、雰囲気もいいし、設定もいい。
 なのに! 何だかラストがやたら弱かった……。途中で投げ出されてしまったような印象を受けました。キッチリとした衝撃もないまま、流されて終わるんですね。
 「自分が撮ってもいない写真が、その後も毎日送られてくる」という発想をホラーオチにしたかったのなら、それはあまりにも弱いと言わざるをえない。エラそうですみませんけど、もうちょっと何とかなったんじゃないかと思ったんですよ。オリから逃げ出した動物と女を結びつけるのかと思いきや、そうでもなかったし。

 ラストに期待しただけ、肩透かしを食らったような気がしました。
 表題作としても、これは弱いんじゃないでしょうか……? それともまた、僕が気づかない凄い「裏」でも隠されているんでしょうか……? (「また」というのは「GOTH」の紹介を読んでもらえばわかります)
 とにかく、もっとひねれたと思います。何か少し、足りなかった。

 原作がどうなのか、気になるところです。原作はラストが違うようなので。
 この監督はうるさい衝撃、というものがそんなに好きではなく、静かに、退廃的に(気力なげに)終わらせたかった、という事かもしれません。それとも「ドグラ・マグラ」(夢野久作 著)のように、全てを妄想という事にしたかったのかどうか。
 ……趣味の問題ですね。僕はごまかされたようで、納得いかないんですけど。わかりにくいのはあんまり好きじゃないので。

●全体的に

 映像美は完璧で、言う事はないですね。配役もうまいと思いました。どれもしっくりきましたし。
 セットにしても作り物っぽさは感じませんでしたし。特に「SEVEN〜」はそれが弱いと台無しになる恐れがあったかもしれませんが、やたらリアリティがありました。文句ありません。
 観ての満足度は高かったし、また観てもいいなと思う作品ばかりでした。

 でもホラー度は低めですね。「SEVEN〜」のラストを想像すれば、凄い怖いんですけど。それ以外の作品はホラーとは呼べないものばかりだったので。
 サスペンスとも言い難い。ドラマとしては映像が暗い。だったら、残酷な人間ドラマ、と言った感じでしょうか。
 ホラーとして観れば弱いんですが、映画として観れば、かなり面白かったです。一つ一つ、よくまとまっていましたからね。

●セルDVD特典、プレミアムブックレットについて

 DVD初回生産特典として、そういう冊子がついてきたんです。
 レンタルされた方は読めないハズなので、軽く紹介してみようかなと思います。

 大きくは、原作者の乙一さんのロングインタビューが載っているんですね。
 乙一さんは、1978年生まれ。若手作家ですね。オシャレっぽさが出ています。
 今回の映画の5編について、乙一さんの感想を読めるのが面白い。「SEVEN〜」は乙一さんにとっても特別な作品だ、という事で何だか嬉しくなりました。やっぱりこの方は根底として、ホラーが好きなんだなぁと。

 そして5編を映像化した、5人の監督の一言も読めます。作品に対する姿勢や狙いなどがうかがえて、楽しく読めました。
 ちなみに「SEVEN ROOMS」の監督は、あの「呪怨」シリーズの助監督を務めた方との事。主演に市川由衣(「呪怨」に出演)を迎えたのも、その関連があるのかもしれません。

 とにかく。DVDを買って良かったなぁ、と満足に至りました。
 この5編の物語を観て、乙一さんは怖さを狙った作家ではなく、「物語の可能性」というもの探っている作家なのではないか、と思いました。読者の裏をかくのがうまい。それに驚くほど、物語が完成されている気がするんですね。伏線などを投げ出したりはしない。きっと。だからこそ短編作家、なのでしょうか。

 そしてどの話も、オリジナリティに溢れていて、楽しめました。ワケあり(息抜き)なのか、「陽だまり〜」は弱かったんですが。

「アラクニッド」
 (原題:ARACHNID / 2001年製作:91分 / スペイン映画)

 監督 ジャック・ショルダー/主演  アレックス・リード、クリス・ポッター、ホセ・サンチョ 他

 (一言:モンスターパニックホラー。その島は、巨大グモの巣窟となっていた。島民の治療や研究のために訪れた者達は、果たして生きて帰れるのだろうか? 巨大グモがやや作り物っぽかったんですが、結構面白かったです)

●冒頭

 海。海面が渦を巻いて上昇し、空に奇怪な形の何かを描き出す。おそらくはUFO。しかし、それが「いかにもCG」というカンジで、ちょっと萎えます。
 テスト飛行中のステルス戦闘機が、偶然それを発見。近づくと、計器に異常が発生した。どうにもならず、パイロットは脱出。戦闘機は奇怪なソレと衝突し、爆破してしまった。

 パイロットは無事だった。パラシュートで降りた所は、ジャングルだった。
 近くに焼け跡がある。
 近づいてみると……そこに、異生物がいた。宇宙人か……?
 何やら、それは苦しんでいた。その背後に、何か奇妙な物体が覆い被さっている。複数の触手が見える。
 そしてその何かが、パイロットにも襲いかかった……!

 ●

 タンクトップ姿の美女が、グアム病院へ到着する。
 ローレン・マーサーと名乗った彼女は、レオン博士の元に訪れる。
 マーサーはパイロットとして、彼に雇われたのだ。
 
 ――行き先はスラウェシ島。
 島で謎の死者が出ているという。レオン博士は医者として、島民の治療とその調査に乗り出そうとしているのだ。

 博士の助手のスサーナ。ボディガードとして、軍人のレブ・バレンタイン。その部下、ベアーレイズ。
 クモの研究者、ヘンリー・カプリ。病院に運ばれてきた患者には、「クモ」にやられたような噛み傷があったから、彼が必要だったのだろう。彼が同行を希望したのかもしれない。
 そして島民である、案内人のトボイ。他数人。

 彼ら一行は、飛行機で島へと向かう。
 一体、何が待ち受けているのだろうか……?

●映画を観ての感想

 全体的にテンポは非常にいい、と思いました。展開も畳み掛けるように次々と起こり、退屈しません。
 特に怖かったのが、序盤にあるシーン。
 軍人のレイズが、謎のダニに襲われるのですが、それが体内に侵入してしまい、どうにもならなくなる。
 一行と共に島内の村に辿り着いた時にはもう彼の体はむしばまれていて……凄い事になってしまいます。
 この辺、最高級に怖いと思いました。
 いかにもB級ホラー、というカンジなんですが、これはこれでストレートに怖かった、と思います。

 登場人物達は皆個性的で、特に脇役達にも魅力があって、濃かったですね。
 ちなみにサービスシーンは下着どまりですが、何も無いよりは嬉しいですね。サービスシーンがありそうでないのは、やっぱり不満につながりますから?

 ただ、疑問も残る。
 まず前半に出た宇宙人。これが結局何だったのか、サッパリわからない。
 この島に生息した巨大グモ。それがUFOから逃げ出した危険生物という事だったのか。
 それとも元々危険生物がこの島には生息していて、たまたまUFOの事故でジャングルに落ちた宇宙人を取り込んで、より異様に変異してしまったものなのか、よくわからない。
 その辺は「想像におまかせする」と言いたかったのかもしれません。
 でも宇宙人のシーンがその一回きりなので、あまりにも浮いてます。伏線にもなってませんし。

 また、後半でマーサー達が巨大グモに襲われる辺りも、疑問が出てくる。
 仲間を簡単に見捨ててしまうんですよ。2度も3度も。「アイツを見捨てて、どうしてそんな建物に入るんだよぉ?」とか首をかしげたりする展開がちらほら。
 あと、簡単に巨大グモの巣窟を見つけてしまう辺りも、ややご都合主義とも思えました。なんであのトンネルがそんな所につながっているんだよぉ? と。
 で、オチもちょっとありがちすぎ、でした。これはこれで監督が「B級ぽさ」を楽しんだ、という事なのかもしれませんけど。

 で、肝心の巨大グモについて。
 造形は見事だと思いますが、動きがややぎこちないし、緩慢(かんまん)ぎみ。それに雄たけびがいちいちワザとらしい。まるで効果音です。
 なんか、生きてるってカンジがしなかったです。あんまり大胆に飛び回らなかったから、でしょうか。
 おそらくCGじゃなくって、ぬいぐるみを作って動かしたんだと思います。
 CGを用いる予算が無かったのでしょうか。

 ネットで読んだ感想の中に、「ウルトラマンの怪獣みたいだ」というものがありました。
 確かにどうも、クモの造形が生々しくないんですね。「怪獣」と言われてしまうと、妙に納得してしまい、怖さもだいぶ薄れてしまう気がします……。

●総評

 展開はそこそこ想像が及ぶものの、僕的には結構面白かったと思います。
 見所も多かったですし。ツボはちゃんと押さえてあった、という感じですね。 
 ただ、ネットでこの映画の感想などを見てみると、酷評だらけ。僕はそんなに悪くなかった、と思うんですけどね〜?

主人公、ローレン・マーサー。
パイロットとして、博士らに雇われる。
はじめ、彼女はみんなに冷たい態度
をとる。



一行は島に到着し、島民の住む村へ
と向かう。
先頭にいるのは、レブ・バレンタイン。



ヘンリー・カプリはクモの研究家。
島に生息するクモが何らかの変異を
おびている事に興味を示す。



謎の巨大グモ。
怪獣、と言われてしまえばおしまい
……?
日本が昔から特撮技術に優れていた
のが災いか……。


ちなみに今回は写真の映りがやたら
良かった気がします。
DVDはやっぱり違うみたいですね。
さらに、デジカメでの撮り方もちょっと
変えたもので。

「28日後…」
 (原題:28 DAYS LATER… / 2003年度劇場公開:114分)

 監督 ダニー・ボイル/主演  キリアン・マーフィ、ナオミ・ハリス 他

 (一言:病院で目覚めてみると、辺りに人はいなかった。ここロンドンは謎のウイルスの感染者で溢れ、みんな国外脱出していたのだ。ジムはごく少数の生き残りの人間達と出会い、行動をともにして行く。ウイルスもの。……あんまり面白くありませんでした)

●「28日後…」公式サイト
 http://www.foxjapan.com/movies/28dayslater/main.html

●「28日後…」を詳細に紹介しているページ+視聴者の感想
 http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=241372

●はじめに

 「トレインスポッティング」「ザ・ビーチ」のダニーボイル監督作。
 ウイルスもの。ゾンビ映画に近いですね。

 一言であんまり面白くありませんでした、と言っていますが、何が悪かったのかと言えば、
 ●主人公らに魅力を感じなかった。外面、内面とも。会話も特に面白くない。
 ●展開がただ、「流されている」ように感じた。特に前半から中盤にかけては、アマチュアでも書ける展開なんじゃないだろうか、とすら思えてしまう。

 とにかく、感覚として「面白くない」映画だったんですよ。
 無理して最後まで観ましたが、記事など書かないのであれば、たぶん観てませんでした。

●冒頭

 主人公ジムは交通事故にあい、病院で目覚めてみると、一人ぼっちになっていた。
 その辺を探し回ってみるが、人の気配がまるでない。

 ジムはとにかく歩き回り、叫び続ける。誰かを求めて。
 街のさなかに、紙がたくさん貼られているのを見つける。それは家族らにあてた無数の手紙だった。
 ――今、確かに何かが起こっている。

 とある教会に足を運ぶと、そこには折り重なるようにして横たえた人間達の姿があった。
 そこに声をかけてみる。すると、むっくりと起き上がる影がいくつかあった。
 生き残りがいたのだ。
 そう思って駆け寄ってみるが……その人間は何を思ってか、襲い掛かってきた……!

●映画を観ての感想

 まずウイルスに感染すると、その人間は狂暴になってしまう。そして理性を失い、他の人間を襲う。
 この辺があまりにも安直に見えました。
 ましてゾンビのように風貌も変わるワケでもなく、感染した者はただ狂暴になる、というだけ。感染したか否か、役者の演技にまかせられているところが、あまりにも低予算映画じみていて……萎(な)えました。
 しかも、その血を浴びてからほんの数分数秒で凶暴化してしまうのがまるでマンガ的。即効すぎてリアリティが感じられませんでした。

 そしてヒロインが黒人女性、というのが個人的に抵抗ありました。
 決して美人でもなく、魅力的かどうか悩むところ。
 主人公も魅力的とはとても言い難い。さらにユーモアセンスのかけらもなく、一度たりとも笑わせてはくれない。

 映像に関しても、ぎこちないシーンが満載。
 映像の流れが度々、コマ落とししたように飛ぶんですよ。どうやら戦闘シーンは編集段階で多少早送りしたらしいのですが、それが災いしたんじゃないかと思いました。これをもし劇場などで観たら、やたらガッカリしたでしょうね。この映像はなんなんだ、と。もう少し何とかならなかったのか、と。
 それに、なんか炎とかいかにもCG?という場面もあったりで。あ〜あ、という感じです。

 それでもラストは少し、盛り上がるんですけどね。
 主人公らは生き残りの軍隊と出会い、屋敷に迎え入れられるんですが、軍隊の目当ては、主人公と行動を共にしている女二人にあるとわかって、逃げ出そうとするんですが……失敗。
 で、主人公ジムはヒロインらを奪還すべく、一人で軍隊に立ち向かう、という展開になるんですね。
 欲望を前面に押し出したような展開で、何だか娯楽大衆向けではないな、という気はしますが。

 それにしても終盤のジムの殺し方もエグイです。
 ヒロインを助けるシーンで、兵隊の両目に指をかけて、目を潰すんですよ。……鬼、です。そんな事する必要があったのかどうか……。足でも撃って、足止めさせるだけでも良かったんじゃないかと思ったりするんですけどね。でもまぁ僕の映画じゃないし。

 あと、中盤でフランクという男が感染するさまはなかなか良かったですね。
 カラスを死体がつついている。そんななにげない?シーンの直後。感染した死体から流れ落ちた一滴の血が目に入り、フランクは感染して暴れ出す。そして周囲にいた兵隊達に銃撃を受けて死亡。
 そのシーンだけは印象的でした。こういうのが無かったら、この映画の価値はなんなんだろう、と考えてしまいます。


 エンドクレジットの後のおまけ映像なども意味不明。
 もしも、と仮定してちょっと違ったエンディングを披露しているんですが、これがまた全然つまらない。こんな追加は全く要らないだろう?と余計萎えてしまいます。
 だめだこりゃ……。信じられないほど、つまらないおまけです。

 総評として、全くオススメができません。
 映画じゃなくてちょっとしたTVドラマとして作られた、と言われれば、「あぁそうなのか。じゃあ仕方ないなぁ」と納得するんですが、そうでもないみたいなので。
 要は「魅力」というものに欠ける映画だったんじゃないか、と思いました。
 主人公らの風貌にしても、会話にしても、展開にしても。
 感染そのもののリアリティさが全く無いのに、妙なところ(展開)でリアリティに凝ってしまっていた、と思いました。

誰もいなくなった街をさまよう、ジム。



ジム。普通の青年、という感じ。
少数の生き残り達と出会い、行動を
共にしていく。



中盤まで行動を共にする4人。
彼らに未来はあるのか……?


「SAW(ソウ)」
 (原題:SAW / 2004年度劇場公開:103分)

 監督 ジェームズ・ワン/脚本 リー・ワネル/主演  リー・ワネル、ケイリー・エルウェス 他

 (一言:目覚めてみると、何者かによって、死のワナにかけられていた。主人公らはそこから脱出する事ができるのか? 文句なしに面白怖かった作品。物語の背景描写もしっかりしていて、なお無駄もない)

●冒頭

 ――気がつくと、そこは水の中。
 アダムは必死でもがく。一体、何が起こっている?!
 水しぶきを上げながら、何とかそこから脱出した。息も絶え絶えに、その暗闇の中、目をこらす。

 すると突如、その場は眩く照らしだされた。
 ……そこは、見知らぬ、老朽化したバスルームだった。

 向こうの壁を見ると、中年の男がいた。
 自分とその男はそれぞれ、壁に固定されているパイプに、鎖で足がつながれていた。
 そしてバスルームの中央には、自殺したらしい死体があった。

 ……これは何なのだ? どうして俺はこんな所にいる……?

●映画を観ての感想

 「ソリッド・シチュエーション・スリラー」と銘打たれたこの映画。過酷な状況を与えられた主人公達が、どう切り抜けるかを描いたもの、という事みたいです。
 映画雑誌の広告を見て、これは面白そうだと思い、いきなりDVDを買ってしまいました。レンタル開始されてもなかなか借りられないんじゃないか、と思いまして。
 ……早い話、当たりでした。大当たりです。
 雑誌の広告には、「セブンより怖いらしい」「CUBEより凄いらしい」との、いかにもウソくさいキャッチコピーがありましたが……、この場合、決して誇大広告ではなかった、と思いました。本当に面白かったし、怖かった。
 以前までは「CUBE」が一番好きな映画かなぁと思っていましたが、ここでこの「SAW」に乗り換えてもいいかな、と思うほどです。
 やたらツボを突かれましたね。大満足です。

 この映画で一番感心したのは、物語の背景も練りこまれている、というところでした。
 同じソリッド〜と言えるであろう「CUBE」のように、何の説明もなく終わりにはならない。CUBEには、今置かれている現状以外の描写が無かったんですね。でもこの「SAW」には、今置かれている現状(バスルーム)以外の背景描写にも力が入っているんです。それがゴードン達の回想シーンとして劇中に何度か挿入されるワケです。
 ……回想シーン。
 ヘタすれば、不要でつまらなく、退屈な水増しイベントになりそうなものが、この映画ではそうではなかった。背景描写こそが、魅力的で素晴らしいものだったんですね。
 この映画での背景描写というのは、「主人公はどうしてこんな目にあっているのか」という事と、「こういった事件が過去に何度も繰り返されていた」という事。それに加えて、この事件の犯人を追う刑事らの死闘劇も見事なものでした。

 で、罪あるものを裁こうとする犯人、ジグソウ。
 その象徴として、妙な姿の操り人形が出てくるのですが、それもまたいい感じ。犯人が直接出てくるより愛嬌があるし、「奇怪さ」という違った面をこの映画に付加していると思います。

 他に特に僕が感心したのは、「こういった死のゲームが、過去にも何度か繰り返されてきた」という描写。
 それが物語に厚みを加えています。しかも、その死のゲームは毎回違うものが設定されている、というのがまた凄い。よくそんな事を思いついたなぁ、と。
 更に、過去そのゲームに勝った人間がいる、というエピソードまであるのにはもはや脱帽モノです。
 そこでアマンダという女性が出てくるんですが、そのエピソードがやたら怖かったですね。この辺、僕としては満点以上です。

 それに、ジグソウがターゲットとして狙ったのは、五体満足でありながら、生への執着を見せない者。ふざけた生き方に腹を立てて犯行を企てた、というのが、かの「セブン」をちょっとだけ彷彿(ほうふつ)とさせますね。
 ジグソウが死のゲームに強制参加させた人間はすべて、それなりの罪を負った人間達なんですね。罪の強弱はあるみたいですけど。

 ・・・…そういった細かな気配りやアイディアが、この作品をより魅力的にしていると思いました。
 男二人による、バスルームからの脱出劇だけでは、この作品はそれほど名作にはなりえなかったと思います。少なくとも、パスル要素をもっと複雑にしないと、CUBEをこせなかったのは目に見えています。
 背景描写が魅力的だったからこそ、僕の中ではCUBEを超えたんです。

 ……ただ、思ったよりは小道具を複雑には使っていないな、と思いました。
 雑誌広告などを見た感じとはまた、印象の違った映画でしたね。複雑なワナをしかけられていて、それを様々な小道具を使って進展を図る、といった感じでもないので。
 もっとパズル的要素のある映画かと思ったんですよ。そういう点で見ると、ちょっとひねりが弱かったかも? まぁそこまで望むのは酷な話かもしれませんけど。
 でも、ジグソウが与えた小道具は、劇中で全て、うまく使い切っているんですね。さすがです。
 まぁアイテムの使い方で悩む箇所が無いのは、残念なんですけど。

 そして何度か起こるどんでん返しも気持ちいい。
 さぁ、この映画の結末はいかに……?

●ちょっと裏話

 「DVD&ビデオVISION 2005年3月号」に「SAW」の広告と記事が載っています。
 興味深い裏話を、抜粋でお伝えします。

 監督のジェームズ・ワンと、脚本&主演のリー・ワネルは、オーストラリアの映画学校の同級生。
 そして2人はこの映画の原案が浮かぶと、ハリウッドの映画プロデューサーに送った。そして即契約となり、3ヶ月後には撮影が開始されたとの話。
 この映画は「サンダンス映画祭2004」に出品され、大きな話題を呼んだ模様。同ジャンルに置かれた「π(パイ)」、「メメント」などもこの映画祭で脚光を浴びたらしいですね。
 「π」は観てませんが、「メメント」は面白かった。「タイムマシン」のガイ・ピアーズが主演ですね。
 妻を目の前で殺された男。男はその事件後、記憶を数分と保てなくなってしまった。記憶を保つために、文字を、自分の体にタトゥーで入れるんですね。そうしながら、憎き犯人を追うという話。

●その他

 DVDのメニュー、えらく雰囲気あります。動きのあるメニューです。
 そして面白いのがジェームズ・ワンとリー・ワネルによる、「音声解説」。映画本編をすべて、解説つきで楽しめるんですよ。その場面場面での裏話なども満載で、マニア?にはたまらなく面白いです。
 この場面では代役として監督が変装しただの、このセットは壊れやすいだのなんだの、と笑える話も満載。俳優が実際に演技した日数とか、そんな事まで知る事ができます。

 そんな中、繰り返し語られているのは、「撮影日数は18日」「低予算」「映像素材が足りずに編集で苦労した」と言った事ですね。18日で映画一本撮れるもんなんだなぁと驚きました。(でもハリウッドから、嫌がらせ?として難題をふっかけられた感じがするんですけど……)

 ジェームズらのジョークも飛び交い、スタッフや俳優に一目置きながらの解説は、非常に楽しめました。
 それにしてもこれだけのホラー映画(監督らに言わせればダーク・スリラー)を楽しんで制作している、という姿に驚かされました。そういうもんなんですねぇ……?

目覚めると、アダムは老朽化した
バスルームの中にいた。



向こうの壁にも男がいる。
そして間には死体らしきものが……。



アダム。
カメラマンだが、人々の生活をのぞく
ようなマネをしていた。
それがジグソウに狙われた理由と
なった。
ジグソウは罪あるものを裁こうとして
いるのだ。



医師であるゴードン。
今の現状に心当たりがある。それを
アダムに話してきかせる。
犯人がどういった者であるのか、ゴー
ドンにはある程度わかっている。



ジグソウに勝った唯一の人間、
アマンダ。
彼女がジグソウにしかけられた恐怖
のワナのエピソードは恐怖度満点。

「オーメン」 ―― 監督 リチャード・ドナー/主演  グレゴリー・ペック、ハーヴェイ・スティーヴンス、リー・レミック 他
 (原題:THE OMEN / 1976年度作品:111分)

 (一言:666は悪魔の数字――。古くからの名作。妻に隠して受け入れてしまった子は、実は悪魔の子だった。周囲の人間が次々と死んでいく。悪魔の子ダミアンの出生の秘密とは……?)

●公開当時の貴重な資料などを公開しているサイト
 「CINEMA-TIME」:http://www.cinema-time.com/index.html / 同サイト内「オーメン」記事

●冒頭

 6月6日午前6時。ローマのとある病院。そこで生まれたばかりの命が、一瞬で終わった。
 悲しみにくれる初老の男、ロバート・ソーン(グレゴリー・ペック)。彼は妻が悲しむ顔は見たくなかった。妻のキャシーは子をひどく欲しがっていて、それが今やっと叶おうとしていたのだ……。

 そんな時、神父が現れる。そして養子をとってはどうか、ともちかけてくる。
 かたわらには、生まれたばかりの子を抱いたシスターがいた。
 
 あまりにもタイミングが良すぎる。しかし男は妻を悲しませたくないばかりに、神父の言いなりになって、その子を迎え入れる事にした。
 我が子として……。


 その数年後。
 ソーンはロンドンのイギリス駐在大使に任命される。家族三人で、ロンドンの豪邸に移り住む。一家は輝かしい未来を約束されたかに見えた。

 大勢の客を招いてのパーティ。
 息子ダミアン(ハーヴェイ・スティーヴンス)も成長し、可愛らしく育っている。
 そんな中、子守りのホリーは、林の方に黒い犬を見つける。
 その犬はホリーを見つめてきた。ホリーも吸い込まれるように見つめ返してしまう……。
 その時。異変が起こった。

 ダミアンを呼ぶ声。みんながそちらに目を向ける。
 そこには、ホリーがいた。彼女は何を思ったのか、屋敷の屋根の、梁(はり)に立っていた。
 「ダミアン あなたの為にやるのよ!」
 そして身を投げた。
 首に巻かれたロープ。彼女は首を吊って死んだ。

 騒然する最中。ダミアンは黒い犬に、人知れず、合図を送った。

 ●

 悲劇が覚めやらない中。ソーンは駐在大使館に出勤する。
 記者達に質問攻めにあうソーン。自宅のパーティでの、子守りの突然死が浮き彫りになってしまった。とんだスキャンダルだ。
 そこに神父が現れる。一応話を聞こうと部屋に通す。
 神父の表情は、ひどく険しかった。

 「差し迫ってます。よく聞いて下さい。キリストを救い主となさい」
 何の事かわからないソーン。神父は表情を崩さずに続ける。
 「すぐに聖体拝領式をしなさい。悪魔の子を倒すのです……!」

 そして彼はダミアンの母親を見たという。追い返そうとしたソーンだが、話を聞いてみる。
 神父はわめいた。
 「母親は……山犬だ!」

 言い切らない内に守衛に連れて行かれる神父。
 ソーンは不穏なものに飲まれるが、まだ何もわかるハズがない……。

 その後。母親のキャシーは息子のダミアンに、言い知れぬ何かを感じ始める。
 この思いは、もしや「恐れ」なのか……?

●映画を観ての感想 (ネタバレ多少アリ)

 ――666は悪魔の数字。
 そんなキャッチを流行らせたのがこの映画。かの「エクソシスト」と並ぶオカルト・ホラーの名作として、語り告がれているようですね。

 監督はリチャード・ドナー。
 「リーサル・ウェポン」シリーズや「タイムライン」の監督、という事みたいですね。「スーパーマン」や「グーニーズ」も監督。すごいですね。
 主演のグレゴリー・ペック。
 「ローマの休日」「ナバロンの要塞」「アラバマ物語」でも主演を務めた名優、との事。……やべぇ「ローマの休日」観てませんよ、僕ぁ……。
 で、ダミアン役のハーヴェイ・スティーヴンスは、調べてみたところ、映画に出ているのはこの一作だけ、みたいですね。意外です。可愛い子役ですので、もっと色々出ていても不思議じゃないなぁ、と。

 で、ダミアンの純真そうな可愛さが、この映画に大きな意外性を生んでいると思います。いかに神父などに「悪魔の子だ!」と言われても、父親はおろか、視聴者もピンと来ない。
 でも確実に、周囲の主要な人間達は、奇怪な死に方をしていく……。

 父親がダミアンを悪魔の子だと確信するのは、本当にラストになってから。
 その最後の最後でも、やはりソーンは躊躇(ちゅうちょ)してしまう……。

ロバート・ソーン。
5年前。病院で、謎の神父から子を
譲り受けた事が、全てのはじまり
となってしまった。



カメラマン、ジェニングス。
彼が撮った写真には、予兆めいた
ものが映っていた。



ソーンはジェニングスと共に、ダミアン
の出生の秘密を探りはじめる。



悪魔の子、ダミアン。
意外にも、彼が直接手を下した描写
はほとんど劇中にない。

 この映画はテンポもいいですね。
 話もそんなに複雑じゃない。黙示録の一節が出てきたりしますが、やたら難解というワケでもないので。
 そして、恐怖シーン。一つ一つ、非常に印象的な殺し方をしています。そして、丁寧に作られていると思います。
 まず、子守りのホリーの死に様。
 謎の黒犬の登場、が印象づけられていますし、パーティでの高揚した幸せな雰囲気を、いっぺんに破壊するその首吊り。あまりにもショッキングです……。
 次に、神父。
 ソーンに、悪魔の子を養子として与えた張本人なのですが、数年の歳月が経ち、彼は悔いていた。そしてソーンに悪魔の子を倒すべく、道を示唆(しさ)するが……。
 ソーンと別れてから、突然の暴風に呑まれる。近くの教会に逃げ込もうとする。しかし、その屋根のてっぺんにある避雷針が突然折れて……。

 そんな感じで、ソーンの周りの人物達が次々と死んでいくんですね。
 ――だがその死には、予兆(オーメン)があった。
 ソーンが出会ったカメラマン、ジェニングスは、ホリーと神父の死について、不審な点を見出した。彼が、ホリー達の死の直前に撮った写真。それには、彼らの死を予感させるものが映っていたのだ。
 そしてまた、ジェニングス自身を撮った写真にも……。


 この映画には、不要な会話が無いのもすごいです。
 ソーンの妻の病室に、にたりと笑って現れるアレ。物語終盤、突然起こるあの惨事(ガラスで……)。セリフが無い事で、観ているこちらも黙って息を呑んでしまう。その辺り、有無を言わせぬ迫力があります。
 それにこの映画は、今何が起こっているのか、観客にいちいち説明しないんですね。その辺のさじ加減というのが、すばらしくいいです。

●余談

 僕が幼少の頃。
 この映画のタイトルを聞いただけで怖かった。そして大人になった今、この映画を改めて観てみたワケですが、なるほど凄いなぁと思いました。
 ムダなく恐怖を盛り込んでいて、観ていて飽きさせない。まさに傑作。文句のつけようがない。
 なおこの「オーメン」は、TVでも何度か放映されているようですが、カットシーンもあるみたいですからね。できればビデオなどでご覧になった方がいいでしょう。

 ……名作と呼ばれるからにはワケがある。そう感じさせられた一作でした。

 なお、この「オーメン」には続編がけっこう出ているみたいですね。
 「オーメン2〜4」、「オーメン18エンジェル」、「オーメン ミレニアム」。ただ、後ろの二作は原題がオーメンを冠していないので、日本の映画会社が勝手にシリーズに加えたんじゃなかろうか、という気がするんですが……?
 まぁいずれは気になって観てしまいそうです。2くらいは。

 なお、ネットで得た話では、3は興行的に失敗し、4は続編ではなく、TVドラマとして作られたもので、つまらない、との事でした……。あ〜らら。

「フィアー・ドット・コム」 ―― 監督 ウィリアム・マローン/主演 スティーヴン・ドーフ、ナターシャ・マケルホーン 他
 (2002年製作:101分)

 (一言:あの「リング」に作りがよく似ている。だがオリジナルの要素も多く、充分に楽しめる。スナッフサイトの恐怖。殺された者の呪い。禁忌(きんき)を犯していく主人公達……。なかなかスリリングです。恐怖描写も非常に多い)

●「フィアー・ドット・コム」オフィシャルサイト(外国)
 http://feardotcom.warnerbros.com/

●この映画を詳細に紹介しているサイト
 「映画の森てんこ森」:http://www.coda21.net/index.htm / 同サイト内「フィアー・ドット・コム」紹介ページ

●あらすじ

 その男は怯えながら、寂れた夜の地下鉄へと降りていく。
 ――現れる白い少女。
 男は不吉なものを感じる。

 少女は手にしたボールを追い、線路へと降りる。男も誘われるように、線路へ足を踏み入れる。
 そこに電車が来る。
 「やめろーーー! やめてくれーーー!!」
 そう叫ぶと、男は電車の前に身を乗り出した。
 一瞬後、男は跳ね飛ばされる。即死だった。

 事故現場に群がる刑事達。
 その中に主人公のマイク刑事(スティーヴン・ドーフ)もいる。
 電車に跳ねられて死んだ男は、目から血を流し、とある本を手にしていた。
 タイトルは――「インターネットの秘密の霊魂」。

 マイクは以前、「ドクター」の事件を追っていた。しかし捜査は行き詰まり、FBIにゆだねられる。
 だがマイクは「ドクター」から送られてきた挑戦状の事もあり、その捜査から離れられないでいる。

 署に暴れながら連行されてきた若い男がいた。
 男は「彼女が死んだ」とわめく。そしてその目からは何故か血を流していた。

 マイクは相棒と共に、男の自宅に行く。
 そのバスタブに、女の死体が沈んでいた。男の言っていた、彼女だろう。
 その場に、保健省から来たという女、テリー(ナターシャ・マケルホーン)が現れる。彼女が言うには、死体は出血性のウイルスに感染している可能性があるという。
 その自宅からビデオカメラを押収し、一行は引き上げる。

 先の男は牢の中で死んでいた。「人殺し」「48」というダイイングメッセージを残して。
 検死の結果、ウイルスの可能性はないという。


 とある不審な男。その中年男はビデオカメラを手に、見知らぬ女を映していた。
 女は嫌がる風でもなく、話を聞く。男は映画の主演女優を捜している、という。女は名刺を受け取った。

 先の男の自宅にあったビデオカメラ。
 その中には、男とその彼女が映っていた。日常を映したものかと思いきや、それは徐々に崩壊へと向かっていく。
 二人はパソコンで何かを見る。パソコンから悲鳴が上がる。
 一転して、目鼻から血を流し、苦しむ彼女が映し出される。ビデオカメラは、彼女の死の間際をとらえていた。
 二人の死につながるものが、この中に収められているようだが……?

●感想

 冒頭十数分を描いただけで、上の文章量。いかにテンポよく話が進むか、お分かりいただけるかと。 
 その先は殺人鬼が正体を現し、ワナにかかった女を拷問にかけて殺そうとする。それは、インターネット上に於けるスナッフサイト「フィアー・ドット・コム」にて、流されていた。視聴者は数十、数百人にのぼる。

 この作品に於ける怖さ、というのは「フィアー・ドット・コム」を現す映像がまず一つ。
 たたみかけるように、凄惨な描写が次々とカットインで流されるんですね。女の叫びであったり、内臓のようなもの、死体の数々、奇怪な格好をした女、無機質なナイフなどの拷問用具……。
 そしてフィアー・ドット・コムを覗いてしまった者が死の間際に見る恐怖。それは自らが恐れるもの。それらに襲われて、殺される。(映画の中で、どうも一貫はしていないようですが)
 また、登場人物がどんどん、フィアーサイトを覗き、とり憑かれていく様が描かれていたのが良かったですね。物語に集中できました。これがおろそかにされて、犯人を追い詰めるだけの話になっていたら、どうなっていたかはわかりません。怖くはならなかったでしょうね。

 ただ「インターネットの秘密の霊魂」の著作者ブライアンがちょっと出てお終い、というのは惜しかったかなぁと。なかなか面白いキャラだったと思ったんですが。ポリドリ?(吹き替えにて、そう聞こえた)とかいう男も何だか不明。
 で、このブライアンがあまりにちょい役だったから、殺人鬼のアリスターと被ってしまい、一回見た時はコイツが殺人鬼なんだと勘違いしてました。
 
 で。この作品の一番の見所は、マイク達がフィアーサイトを覗いてしまうところでしょうか。大した策もないまま、覗いてみる。しかし、覗かなければ何も進展しない。
 見た者は48時間で死ぬ。マイク達がどうなってしまうのか、わからない。こういった大胆な賭け、というのはやはり、見ていて盛り上がりますね。

 ちなみに僕は日本語吹き替え版で観たのですが、殺人鬼アリスターの声がずいぶんすっとぼけた感じに聞こえました。実際はどんな声だったんでしょうね。
 ラストはちょっと難解かと。
 フィアーサイトに出てくる女の正体。そして白い少女。何度か観て、やっと理解できました。

 総評としまして、なかなか面白かったです。充分に恐怖描写もありましたし。
 それに物語が一貫して、フィアーサイトの呪いを描いていたのが良かった。

マイク。
未解決の「ドクター事件」が今回の
事件にからんでいる事を知っていく。


テリー。
冒頭の事件をきっかけにマイクと
行動を共にするようになる。
フィアーサイトに知人を殺されていく
……。


「フィアー・ドット・コム」
やたら動きの活発なサイト。
右の数字は、視聴者の数を表す。
このサイトは、人を殺す場面をリアル
タイムで映し出すというスナッフサイト
なのだ。


「私とプレイしましょう?」
フィアーサイトに現れる、謎の女。
彼女が、人々を呪いで殺していく。

●あとがき&ネタバレ(ラストシーンを語っているので、映画を観る前に読むとつまらなくなります)

 ネットでちょっと調べてみたら、「日本映画のマネ」とか「面白くなかった」とか、結構な酷評をされていて驚きました。
 僕としてはやたら面白かったんですけどね。(なぜこうも、あまのじゃく気味になってしまうのかはわからんのですが……)まぁ感想は人それぞれ、ですね。

 マネと言える部分は、「リング」と「らせん」でしょうか。
 「リング」に於ける、「そのビデオを観た者は死ぬ」というのがそのまま「そのサイトを見たものは死ぬ」と置き換えられています。確かにマネかもしれません。しかもその呪いをとくために、呪いの元である女の死体を捜しにいくところまでもが同じ作り……。
 「らせん」と似ている、と思ったのは、死体の胃の中からメモを見つけるところですね。らせん、よりは生きた使い方をされていましたが。この映画では、そのメモが直接、犯人の居所を語っていたワケですから。
 でも、この作品はマネだけでは語れない。観ていて面白いかどうか。その点では充分にのめり込めましたので。ニセモノではなかったと僕は思いますね。映像面でも感心する部分が多かったので。

 (↓ 以下は読みにくくしています。反転してお読み下さい)

 ラストはちょっと難解かなぁ、と。白い少女と、フィアーサイトの謎の美女は何なのか?
 答えとしては、二人とも、アリスターに殺されたジニーという女なんですね。ジニーは48時間、アリスターから拷問を受けた。ジニーはサイトにとり憑き?、視聴者に48時間以内に自分を見つけてほしいという難題を出す。それが彼女の言う、「プレイ」なんですね。
 白い少女もまた彼女の一面。母親が愛するジニーの面影。ジニーの良心、でしょうか。

 また、ラストシーン。テリーが受話器を持ち上げ、ちょっと聞いてみてからそれを置く。
 それが何なのか、始めはちょっとわからなかった。でも、冒頭のシーンと照らし合わせてみて、なんとなくわかりました。それはテリーがマイクと出会い、マイクを失った寂しさを表していたんだなぁ、と。
 そう思うと、うまいシーンだなぁと感心しました。冒頭では聞きもせずに電話を切るワケですから。自分には、捜査以外の電話などかかってくるハズもない。
 だからこそ、一応聞いてみようとするラストシーンが余計寂しく感じられる、というワケですね。上質のドラマなんじゃないでしょうか?

「アザーズ」 ―― 製作総指揮 トム・クルーズ/監督 アレハンドロ・アメナーバル/主演 ニコール・キッドマン 他
 (2001年製作:2002年日本公開)

 (一言:雰囲気はいいけど、怖くはない映画。オチが「とある有名な映画」に似ているので、衝撃が半減)

●「アザーズ」紹介ページ
 http://www.tdx.co.jp/movie/djvie01/vie00760.asp

●あらすじ

 グレース(ニコール・キッドマン)は子供達二人と、大きな屋敷に住んでいた。
 戦地へ行ったまま帰って来ない夫を待ちわびている。
 ある時、屋敷に三人の家政婦を招き入れる。初老の男、老婆、そして口がきけない女。中でも老婆のミルズを、グレースは頼りにする。

 グレースの子供達、アンニコラスは、強い光に浴びると皮膚が変質してしまう、という特異な病気にかかっていた。それは命に関わるものでもあり、子供達に日光を浴びせる事がないよう、グレースは気を使い、家政婦達にもそう言いつける。

 そんな中、家の中では怪奇現象に悩まされていた。
 ある日とうとう、グレースもそれを目のあたりにしてしまい、町の神父に除霊を頼みに出かける。
 濃い霧に包まれ、行き先を失ってしまうグレース。
 しかしそこに突如、夫のチャールズが現れた……。

●ポイント

 何と言っても、トム・クルーズ製作総指揮というのが面白い。(と言うか、「何で?」と思う)
 それにはいきさつがあり、トム・クルーズはアレハンドロ監督の「オープン・ユア・アイズ」を観てひどく気にいり、自らリメイクを行ったんですね。それが自身主演の「バニラ・スカイ」。出来に関しては、観ていないので何とも言えませんが。
 原作の「オープン〜」の方はなかなか良かったです。ただ、夢や妄想などが入り乱れ、何がなんだかわからない、というところはあります。その不思議な感覚を好きになれる人でないと、つまらない映画に思えるかもしれません。
 ちなみに「オープン〜」はペネロペ・クルスの出世作、だと思います。(トム・クルーズと三年ほど交際後、破局したとの事)

 そして主演のニコール・キッドマン。トム・クルーズの元奥さんですね。どういう経緯で、この映画の主役を務める事になったのかはわかりませんが、演技も良く、その美貌も充分に生きていますので、悪くはないですね。

●感想(前半)

 「アザーズ(the Others:他の者達)」。タイトルから安易に、「幽霊話か化け物話」と推測できてしまうのが惜しい。
 推測できれば、興味もだいぶ失せてしまう。「こんなものだろう」とわかった気になってしまうんですね。
 もしうまく裏切られたとしても、幽霊と大して違わないものが正体なんだろう、と僕も決め込んでしまってました。他に何かあるとも思えませんし。幽霊、怪物、宇宙人、そんなものがアザーズなんだろう、と。

 屋敷に潜む幽霊化け物の話など、今更、何の魅力もない。どこにでもある話ですから。
 でも「オープン・ユア・アイズ」の監督。きっと想像以上の作品だろう、と期待して観る事に。そうじゃなかったら多分観てません。

 なかなかおごそかな雰囲気で始まります。
 聖書の言いつけを重んじるグレース。気品高く、清潔な母親。
 その前半は何と言っても、グレースと娘のアンのやりとりがいいですね。
 アンはなんだか、ドリュー・バリモアに似てる気が。そのアンが気丈な演技で母と対等にやりあうのが面白い。アンは聖書の中身など、まるで信じてはいない。

 家の中にいるという子供の霊。それが家を騒がせます。
 アンはその他にも、その子の両親と恐ろしい老婆を見た、と語る。特に老婆は魔女だと言い、何度も以前から目にしている事を母に告げる。
 グレースも屋敷内の不穏な空気を感じ取り、実際の怪奇現象を目にし、神父に相談に出かける。

 出かける途中霧に巻かれ、そこで突如、戦地に行ったままの夫に出会う。
 余りにも突然なので、「何かあるのではないか」とやはり思ってしまう。家政婦のミルズも、意味ありげな事を言ったりするし。ここで想像できるのは、「グレースも死んでいるのではないか」という事。

●感想(後半)
 
 さすがに僕の安易な想像は裏切ってくれました。
 まず夫のチャールズがやけに普通ぎみだった事。こりゃ本当に戦地から戻って来たんだなぁ、と思い直す事に。
 でもまたすぐ、いなくなる。何しに出て来たんだか、よくわかりません。

 神父への相談はほっとかれたまま。
 今度はアンが老婆に見えたりして、グレースは取り乱す。物語的にどんな意味があったのか、結局はよくわからないシーンでしたが。

 ……そして事件が起こる。あってはならない事が起きてしまう。
 取り乱すグレース。うってかわって、平然としている家政婦達。何が起こったのか。何が起こっているのか……?
 物語はクライマックスへ……。
 もちろん、詳しくは言わないでおきます。

 そのクライマックスから、終局へと。そしてこの物語のオチ、というものが披露されるワケです。一応、二段階にわけて。一段階目は「庭の隅にあるのは一体誰の墓なんだ?」という事への答え。二段階目は全ての答え。

 でも残念な事に、この映画のオチは「とある有名な映画」とそっくりなのです。
 それがこの映画を不幸にしています。監督はその映画を知らなかったのだろうか……?
 だから衝撃も激減。「あぁ、そういう事か。なるほどなぁ」で終わってしまう。
 「あの映画」さえなければ、この映画は非常に評価できたんじゃないか、と思われます。

 それに、この映画に底深い仕掛けのようなものは感じないんですね。伏線のようなもの(子供達が強い光を浴びると死ぬ、とか)は、最後に結びつかない。投げ出されて終わり、と感じたんですけどね。その辺はどうでしょう。
 最初はドラキュラ映画かと思いました。全然違ってましたが。

グレースは信心深く、気品高い。


ニコラスとアン。
アンは屋敷の中で起きている事が
何なのか、すでに知っている。


雇われた家政婦たち。


ミセス・ミルズは何かを隠している。

 総評としまして、作りとしてはいい映画なのですが、オチが不運だったとしか言い様がありません。
 この映画のオチを観て、「スゴイ!」と感動するより、「あれと同じじゃん!」と思う人の方が多いと思うんですよね……。


 ちなみにネットで得た情報では、「ある映画」の他、過去の名作「回転」という映画に似ているらしい。小松左京の短編の一つとそっくり、という話も。
 そしてアレハンドロ監督は「21世紀のヒッチコック」と呼ばれている、とか。僕は全然、気付きもしませんでしたが。
 僕としては特にオススメでもない映画です。観たらみたでそこそこ面白いけど、怖さなんかまるで皆無だし、オチはどっかに出てるし、でオススメする部分が見つかりません。残念ながら。
 唯一感心したのは、オチが明かされるシーンでの、アンの行動。あれは良かった。

 ……あぁ、どうなんだろう。
 この監督は「回転」や既成作のリメイクとしてこの映画を作った、というのなら、また話は違ってきますけどね。
 ただ不幸なのは「あの有名作」があった事。「オチはひねったんだ」と言っても通じません。「同じだ」と言われればそれまでですので。
 
 でもまぁ……どの道、全然怖くない映画です。

「テキサスチェーンソー」 ―― 監督 マーカス・ニスペル/主演 ジェシカ・ビール、エリック・バルフォー、ジョナサン・タッカー
 (2003年製作)

 (一言:悪名高き?カルトホラー「悪魔のいけにえ」のリメイク。出演者の顔がやたら整っているので、映像そのものも美しく、高級感がただよう。ただ、「本当に怖いのか?」と問われれば疑問)

●「テキサスチェーンソー」オフィシャルサイト
 http://www.herald.co.jp/official/texas_chainsaw/

 ●あらすじ

 ヒッチハイカーの女を乗せて、若者達はワゴン車を飛ばす。男達は女達にナイショで、マリファナ(麻薬)の密輸を図っている。
 その途中、道の真ん中で呆然自失している少女がいた。彼らは車に乗せ、とにかく人のいる所まで送って行こうとする。
 見えた精肉場。少女は激しく暴れ出した。
 そして何を思ったか、少女は隠し持っていた拳銃を取り出し、口中にくわえると、引き金を引いた……。

 突然の惨劇。ワゴンは血まみれになる。
 警察に電話を入れるべく、若者達はドライブインに車を停めた。電話で受けた指示によれば、近くの製粉場まで来てほしい、という事だった。
 荒れ果てたその場に着き、保安官の訪れを待つ。
 しかし知らぬ間に、彼らはワナにかけられていたのだ。彼らは「悪魔のいけにえ」にされてしまうのか…・・・?

●感想など

 1973年8月18日。テキサスにて、実際に起きた事件を元にしている模様。しかも未解決事件らしいですね。怖い怖い。
 どこまで史実に基づいているのかはわかりませんか、当時を再現した映像がまさか本物だとしたら……、やばいです。んなワケないと思いたいですが。この辺は「ブレア・ウィッチ〜」を思わせますね。

 製作に、かのマイケル・ベイ(「アルマゲドン」「パールハーバー」)の名が。ここが一番大きなポイントでしょうか。
 よって?作品そのものが非常に高級感に満ち溢れているんですね。B級(ただ人が殺されるだけのホラー)ぽさなど感じない。シナリオはB級ぽいんですが。

 主役のエリン(ジェシカ・ビール)も超美形。しかも全編通しての挑発的な格好にくらくら。胸、強調しすぎです。
 で、B級ホラーと言えば女のヌード、と言いたいところですが、この作品には残念ながらそういったものはありません。まぁマイケル・ベイですから(?)。仕方ありません。ヌードもB級ホラーの楽しみの一つ、だったのではないか、と思うんですけどね。女性にとってはどうでもいい話なんでしょうけど。男にとってはそうはいきません。

 僕がこの映画から受けた感想としては、B級ホラーテイスト(ただ襲われる)をそのままに、映像美に力を入れた。そしてそこから不要な?エロを引き抜いた、といったところでしょうか。出演者の造形(顔)が皆見事なので(脇役までいい顔してます)、やたら高級感を感じました。もちろん、映像の撮り方、というのもかなり洗練されているんでしょうけど。廃墟、廃屋までもがやたら美しい。

 ただ、シナリオがどうか、と言われれば首をひねってしまう。
 まず、殺人鬼からあまりにも謎を奪ってしまったのがまずかったのではないか、と。ソイツがどんな奴で、何故人を襲うのか、もう中盤で説明しきってしまってるんですね。だからなのか、奴がチェーンソーを振り回して暴れても、あんまり怖さを感じなかった。
 そして一人ひとりの殺し方があまりにもアッサリしてるんですね。ヒッチハイカーの女なんか、本当に殺されたのかどうかわからないくらいの小さい扱い。そして実際にチェーンソーで切断した場面というのが、足だけ、しか印象に残っていない。よって、チェーンソーの怖さがひしひしとは伝わってこなかったんですね。
 その辺をうまく表現すれば、チェーンソーが出てきただけで僕らは怖がれた、と思うんですが。
 でもマイケル・ベイですから(?)。不要なスプラッターを嫌ったのかもしれません。でもB級からスプラッターを抜いたら、何が残るんだろう……? 追いかけっこ?
 あれは痛そうでしたが。天井から吊るされたカギ爪に、背中を刺されて吊るされるシーン……。ぐわあ……。

 で。その殺人鬼より、途中出て来る異常な保安官(ニセ保安官?)の方がよっぽど怖かった。あの車中でのシーンなんか、緊張感バツグンでした……。あのシーンはホラーファンなら必見なのではないか、と。やたら怖かった……。凄い、いいです。
 冒頭で、エリンが本物の保安官に連絡をとったのはいいんですが、彼は来たんでしょうかね……? 伏線、投げ出されたような気が……。


 後半はひたすらに追いかけっこ。静と動を入り交えて起伏を作っているようですが、逃げ込む場所に必要性が感じられず、こちらとしては疑問。「どうしてんなトコに逃げ込むんだ?」とばかり思ってました。お約束の行動なのかもしれませんが。
 そして、逃げ込んだ家にいた奇怪な女達が盗んだのだ、と決め付けた赤ん坊。主人公がそれを助ける事に意義を見出したのはいいんですが、ありがちと言えばばありがち。不要かと思いました。
 後、瀕死の仲間のとどめをさすシーンも。ありがちだなぁ、と。「許して……」というセリフもあまりにも作りものっぽくて。全然ノレませんでした。


 総評としまして、あの保安官のシーンだけは凄いと思いました。後は殺人鬼との追いかけっこにノレるかどうか、ですね。
 あぁ、そう。ラストシーンは本物、だと思ってみた方が怖いです。

ワゴン車内にて。左がエリン。


製粉所から森を抜けた先、奇妙な
老人が住む屋敷があった……。


「女の死体は、触れるから好きだ」
と言う、謎の保安官。


殺人鬼、レザーフェイス。
その通り名は、殺した人間の顔の
皮を被っているからだ。

「回路」 ―― 監督 黒沢 清/主演 加藤 晴彦、麻生 久美子、小雪
 (2001年度作品)

 (一言:全編暗い雰囲気。ホラーの巨匠、黒沢監督の渾身の力作だと思う。1回観ただけでは内容がわからないかもしれない。後半より、前半の方が怖い気がした)

●(e-movie)「回路」オフィシャルサイト
 http://www.emovie.ne.jp/movie/kairo/

●あらすじ

 工藤 ミチ(麻生久美子)は、熱帯観葉植物の通信販売をしている会社に、アルバイトとして務めていた。
 そんなある日、仕事仲間の田口が仕事を抱えたまま、連絡が取れなくなっていた。携帯はつながらず、自宅も留守電になったままだ。そうして1週間が過ぎ、ミチは田口のアパートをたずねてみた。
 ドアは閉ざされたままだ。うまくカギを見つけ、ミチは中に入ってみる。パソコンが置かれた机から、会社で使う資料が保存されたと思われるフロッピーディスクが見つかった。田口には悪いが、無断で会社に持って行こうと考える。会社でも田口に作成をまかせた資料を早急に欲していたからだ。
 すると、その部屋の奥に田口がいた。
 驚くミチ。でも、田口が普通そうにしていたので、安心する。ちょっとばかり疲れていただけであったようだ。
 しかし、田口はその直後……。

 もう一方の主人公、川島 亮介(加藤 晴彦)は大して興味もないのに、パソコンでネットを始めていた。
 つながったはいいものの、肝心のネットはできず、変なサイトにつながってしまい、困っていた。
 個人の部屋を映したような、妙なサイト。亮介には理解できないでいた。
 そんな時、語りかけるように、ディスプレイに文字が表示される。
 ――幽霊に、会いたいですか?
 ……と。
 通っている大学のパソコンゼミに顔を出し、受講者に自分のパソコンの症状を尋ねてみる。でも、話が通じないようだった。
 そこで唐沢 春江という女性に声をかけられる。亮介の話を聞いていて、興味を持たれたのだ。
 そして亮介はそのサイトがまたつながったら連絡を入れてほしい、と頼まれる。

 ミチと亮介の話が刻々と進んでいく中、この世界も徐々に変貌(へんぼう)をとげていく。
 ……「回路」とは何か。
 それに気付いた時、物語の全貌も見えてくる……。

●感想など

 僕がひいきにしている映画監督、黒沢 清さんが果敢に「ホラーを描くべく」創り上げた作品だと感じました。
 全編通して暗いイメージの中、何が起こっているのかわからないまま、物語は静かに、時に荒々しく進行していく。でも1回観た時はどんな話なのかすら、理解できませんでした。改めてまた観て、「こういう話だったのか」とやっと理解できた次第です。
 黒沢監督はかの「呪怨」の監修を務めているようなのですが、この作品でも幽霊の見せ方が素晴らしく怖い出来になっています。

「ドッペルゲンガー」 ―― 監督: 黒沢 清/主演: 役所広司、永作 博美、ユースケ・サンタマリア

 (一言:僕が日本で一番敬愛する映画監督、黒沢 清さんの作品。役所広司さんの怪演も見ていて楽しい。文句なく、楽しめました)

 主人公、早崎(役所広司)は、人工人体の研究を行っていた。それは手足の不自由な人に、車椅子のようなロボットに座ってもらい、首から送られる意思反応により、自在に活動を行ってもらえるという、夢のようなものだった。
 早崎は以前、大きな発明を重ねてきており、会社からの信頼と期待は厚かった。だが、早崎はスランプに陥っており、その研究に行き詰まってひどいストレスぎみだった。
 そんな時、突然それは現れた。……もう一人の自分、ドッペルゲンガーが……。


 黒沢 清監督とドッペルゲンガーという、僕にとってはまさに夢の共演(笑)。もちろん、役所広司 主演というのも、作品の大きな魅力でしょう。
 で、監督のインタビュー記事などを読むと、これはホラーではなく、コメディとして作られたとの事。確かに、おどろおどろしい恐怖はほとんど感じられない。そしてドッペルゲンガーのハチャメチャぶりに、確かに笑える作品となっております。
 でも、早崎が初めて、自分のドッペルゲンガーを目の当たりにした時の恐怖の演技は印象深い。すごくいいです。

 ドッペルゲンガーというものを、これだけ身近な存在として描いた作品は、他にあまり例を見ない気がします。ただ単に、恐怖の対象として描いた作品であれば、これほどの深みは無かったと思います。見所満載の映画でした。
 そしてまた、ラストの盛り上がりもスゴイ。観ていてどうなるのか、全然わからない。

 僕のサイトに来るぐらいのオカルト好きのみなさんには、ぜひ観てもらいたい一作ですね。

「アナザヘヴン」 ―― 監督:飯田譲二/主演:江口洋介、原田芳雄、市川実和子 他

 (一言:スプラッター系。テンポが良く、観る者を飽きさせない。主要登場人物達が全て、魅力的に描かれている)

 超能力兄弟の悲哀を描いた人気カルトドラマ「NIGHT HEAD」(ナイトヘッド)などを手がけた、飯田譲二 監督作。

 連続猟奇殺人事件。刑事である早瀬マナブと飛鷹(とびたか)健一郎が事件を追う。
 殺された死体は首の骨を折られていたり、また脳みそが無かった。そして現場に残された料理には、被害者の脳みそが使われていた……。
 犯人像がつかめないまま、事件は次々と起こっていく。早瀬と飛鷹は次第に、人間ではないものが犯人なのではないか、と思わざるを得なくなっていく。
 エスカレートしていく猟奇殺人。次第にそのほこ先は、早瀬の大事な人達へと向かっていく……。

 見所の多い映画ですね。
 謎の美女、柏木千鶴。マナブをほんろうする、木村 敦。殺人犯は次々とその器を替えていく。
 そしてラストシーンも見事にまとまっていると思います。


 で、このアナザヘヴンにはTVドラマ版(「アナザヘヴン〜eclipse〜」)もあるのですが……、こちらはオススメしません。
 非常にテンポがのろく、物語にも魅力をあまり感じませんでした。緊迫感がかなり欠如したシーンの連続に萎えました。主題歌の「gravity」(LUNA SEA)は良かったんですが。

「呪怨(じゅおん)」 ―― 監督:清水 崇(しみず たかし)/主演:奥菜 恵

 (一言:霊の見せ方が素晴らしい。物語そのものが素晴らしいのかはよくわからない(印象が薄い))

 ビデオ「呪怨」「呪怨2」の劇場版リメイク。
 主人公がボランティアで派遣された家は、霊の住む呪われた家だった。

 詳細を忘れてしまいましたが、ただひたすらに、霊の見せ方が怖くていいなぁ、という感想だけ得ました。
 登場人物もストーリーも、良かったような記憶はないです。ラストも謎すぎ。

「羊たちの沈黙」 ―― 監督:ジョナサン・デミ/主演:アンソニー・ホプキンス、ジョディ・フォスター

 (一言:全編にわたっての暗い描写。レクター博士の恐ろしい魅力。クラリスとレクターのやりとりから目が離せない……)

 言わずと知れた、サスペンスホラーの名作。いい映画は、タイトルもどこか違いますね。

 ハンニバル・レクター博士。彼は精神科医でありながら、9人もの患者を惨殺し、なおその肉を食したという、とんでもない凶悪犯。
 そう聞いてしまうとただの異常者。しかし、その者を前にしてみると、そんなそぶりは全く感じられない。物腰は温厚で、会話も普通にできる。
 若きFBI訓練生、クラリスはそのレクター博士の協力を得て、心理的な面から、現在ちまたを騒がせている「皮はぎバッファロー」の人物像にせまれ、と要請を受けていた。

 獄中。鉄格子を境にし、レクターとクラリスは何度となく向き合う。
 事件の資料などを与えられ、レクターは精神科医と凶悪殺人犯の両面から的確な推測を働かせ、クラリスに情報を与える。しかしその代わり、レクターの個人的な興味によるものなのか、クラリスは自分への質問に答えねばならなかった。
 クラリスはレクターのヒントにより、確実に犯人像に迫っていく……。

 しかし。この映画はそれだけでは終わらない。

「学校の怪談〜もののけスペシャル」より「花子さん」 ―― 監督:黒沢 清/主演:加藤晴彦 他

 (一言:短編集なのですが、その中で一番「花子さん」がオススメ。恐ろしく、魅力的な花子さんがここにいます)

 黒沢 清監督。どの作品を観ても、上質なホラーというものを堪能(たんのう)できますね。
 「CURE―キュア」に始まり、「カリスマ」「回路」「ドッペルゲンガー」と、その全てが個性的で、オリジナリティあふれる作品であると思います。

 で、黒沢監督は、TV怪談モノもいくつか手がけていて、この「花子さん」もそんな中の一つ。(他に有名なのは「降霊」
 この作品の何がいいのか、と言えば、花子さんの見せ方がやたらいいんです。

 ちょっと昔に観たビデオなので詳細は忘れてしまいましたが、とある廃校で若者が集まっている。そんな中、花子さんが現れ、一人ひとり殺していく。
 その殺しの描き方もちょっと普通じゃない。花子さんに覆い被され、押しつぶされるようにして、その者は消えてしまう。こんな表現の仕方もあるのか、と妙に感心してしまいました。

 「呪怨」「回路」などに引き継がれたと思われる描写(霊を大胆に映す)が、この作品内で楽しめます。
 ホラー映画での「見せない恐怖」というものをくつがえした、記念碑的作品なのではないかと思うのですが……それは言いすぎでしょうか。
 特に、「霊」に関してですね。これだけ霊をはっきりと描写して、なおも恐ろしい映像にしあげたという作品は、これ以前、あまり目にしてこなかった気がするのです。

「箪笥(たんす)」 ―― 監督:キム・ジウン/主演:イム・スジョン、ムン・グニョン

 (一言:韓国ホラー。おそらく、一度観ただけでは全貌がわからない。呪われた家。姉妹と継母の対立。何もかもがどんどん崩れていく……)

 (「箪笥」公式web: http://www.tan-su.jp/home.html )

●冒頭

 父の運転する車に揺られ、郊外の一軒家に、美しい姉妹が帰ってきた。
 姉妹は病院(精神病院か)に入院していたらしい。
 家では継母が暖かく出迎えてくれた。しかし、その出迎えはやや過剰な演技を含んでいた。姉妹は継母を恐れているようだ。
 その晩。妹は寝室に何者かが入り込んできた気配におびえる。
 姉はそんな妹をなだめる。
 気分変えにと、姉は水を飲みにキッチンへ行く。その冷蔵庫の中には奇妙な物体が……。

 姉も妹にすがる。二人は不安に怯え、抱き合いながら朝を迎えようとする。
 だが。安らかには朝を迎えられなかった。
 姉はひどい悪夢を見た。血に染まった手。寂しくたたずむ少女の影。何かに挟まれ、激しく痙攣する手……。
 それは過去の記憶を、断片的に映し出しているのかもしれなかった。

 それに加え、家の中には不穏なものが潜んでいるようだ。それが何なのか、姉妹にはわからない。
 そしてその後も更に、姉妹と継母との溝はどんどん深まっていく……。 
 姉の嘆きは、父には届かない……。

●「箪笥」キャンペーンソングについて

 妙な興味を持って、いきなりDVDを買ってしまいました。
 それというのも、CM力にやられたんじゃないかと思います。セルタブが歌う「Here I am」。あの印象的なメロディ(「箪笥」公式webサイトにて聴けます)に乗せて流れる予告などを目にして、興味が湧いたんですね。
 ちなみにセルタブの「ノー・バウンダリーズ」というアルバムも買ってしまいました。
 それというのも、その曲をDVDで聴けるかと思いきや、聴けなかったからです。あれはぜひとも入れてほしかったんですが。
 しかも劇中で一度も流れなかったので、「この曲って何よ?」と思ったら、CDに「キャンペーンソング」と書かれてあったんですね。つまりは、映画のキャンペーンのためにタイアップされただけのものだったワケです。全然、映画本編とは関係なかったんですね。

 よく考えると、映画とのイメージも全然あわないんですよ。なのに、あの曲を乗せて流れる予告などは妙に魅力的で説得力がある。不思議なものだと思いました。
 「この曲とこの映画を結びつけて売ろう」と言い出した関係者に、感心せずにはいられません。「箪笥」そのもののイメージを大きく変えて、売り出したワケですから。

 加えて、この映画の韓国でのタイトルも、「箪笥」じゃないような気がします。おそらくは「紅蓮(ぐれん)、薔薇(ばら)」。韓国語がわからないので何とも言えませんが、予告などとあわせて推理すれば、多分そうなんじゃないか、と。でもそのタイトルじゃやはり、日本では売れなかったでしょうね。
 関係者の商魂にまた感心せずにはいられません。でもまぁ映画そのものが、箪笥と関係なくもないので、そのタイトルでも一応はしっくり来ますけどね。(いやいや、原題も本当に「箪笥」だったら真にすみません)
 救いは、この映画そのものが結構面白怖かった事でしょうか。

 (※ この記事を書いた後、原題をネットで調べてみたら、「薔花、紅蓮 A Tale of Two Sisters」との事でした。ちょっと惜しかった……。でもやっぱり原題は「箪笥」ではなかったようです)

●感想

 恐怖描写は全編通して何度も何度も描かれていて、ホラーマニア?の僕もかなり満足しました。
 始めは、音で驚かす、米的(古典)ホラーが目立っていました。その後はちょっと日本的な描写が見受けられました。「呪怨」などであった、霊などを大胆に、直接見せる方法ですね。
 これはもしかすると、既成ホラー映画へのオマージュ(敬意の表れ)なんじゃないか、と思ったりもしました。要は、観客にわかりやすい恐怖を冒頭付近に持ってきた。そこで一旦、満足?させるワケですね。

 その後は、姉妹と継母との激しい対立が続きます。姉妹はどんどん継母を嫌悪していき、継母もどんどん狂暴になっていく……。
 なぜかそれを静観しているような父親……。

 詳しくは言いませんが、中盤以降の衝撃(何度かある)は素晴らしいものがあります。お蔭で、今まで観たものが何だったのか、かなり混乱するんですけどね。

 二回、三回の観賞に充分耐えうる、完成度の高い、しかも密の濃い作品だったと思います。
 姉妹、スミとスヨンの可愛さも映画に華を添え、そして継母の気品高い美しさもまた、この映画の魅力と言えるでしょう。

 この映画を解説なしで全て理解するのは至難の業でしょう。DVDでの特典映像及び解説は、おそらく必見かと。
 理解せずとも、流れだけでも充分に楽しめる作りになっているようですけどね。その辺の手腕がまた見事です。



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