究極のホラーズ

もはや疑似体験に近い、この悪夢の数々は、
今もなお、広がりを増している……。
●全紹介リスト(赤字は特にオススメ(+は感服)。だいだはそこそこ)

>最新レビュー

★★ぬやしき

ドント・ブリーズ

●「エルム街の悪夢」シリー

ハンバーガー・ヒル
極黒のブリュンヒルデ
闇芝居
ハンニバ
ファニーゲーム

インシディアス
サプライ
伝説巨人イデオン
School Days
★★魔法少女まどか☆マギカ

THE MIDNIGHT MEAT TRAIN
●妖怪人間ベム
●serial experiments lain
★★沙粧妙子 ―最後の事件
>過去レビュー

究極のホラーズ過去レビュー作


●パラノーマル・アクティビティ
●うみねこのなく頃に
ワンピース the movie
  オマツリ男爵と秘密の島
●ヒルズ・ハブ・アイズ
●悪夢探偵

●妄想代理人
●シティ・オブ・ザ・リビングデッド
●魔人探偵 脳噛ネウロ
●DAGON―ダゴン
●デッドコースター

●神の左手 悪魔の右手
映画クレヨンしんちゃん
伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!
13ゴースト
●エミリー・ローズ
オープン・ウォーター

●ギー・ヘブ
●蝋人形の館
●妖怪大戦争
●ノロイ


●URAMI〜怨み〜
●マウス オブ マッドネ
タフイ・エフェク
●NOTHING
信ア

●コックリさ
●感
●コントロー
クソシス
●クリムン・リバ
●signs(サン)
●ZOO [ズー]
●アラクニッ
●28日後…


●オーメ
●フィアー・ドット・コム
●アザー
●テキサスチェーンソ


●ドッペルゲンガ

●呪

●学校の怪談〜もののけスペシャル

●箪(たす)
  


★★いぬやしき 
 (アニメDVD&BD 2018/1発売/原作(マンガ):イブニングコミックス 全10巻完結/映画化 2018/4劇場公開)

 ホラー度:★★★★★(突然、強大な力を得た若者の暴走。容赦なく、大量の人が殺される描写が多数
 面白さ :★★★★★★キャラ同士の関わり方の上手さ。殺人者でも「人間らしさがある」という描写。兵器として戦うだけでなく、未知の治癒能力(他人に及ぶ)がある事で物語に癒(いや)しを与えている。わかり易い善悪の対決。これ以上ないと思われるラスト
 意外さ :★★★★★老人が主人公。冒頭での異星人がその後、ネタバレ: 物語に全くからんでこない。機械にされた犬屋敷のが割れる、という大胆なビジュアル)

 原作  奥 浩哉(おく ひろや) (「GANTZ(ガンツ)」他)
 総監督 さとうけいいち (「TIGER&BUNNY」「THE ビッグオー」他)
 製作  MAPPA (「うしおととら」「神撃のバハムート GENESIS、VIRGIN SOUL」他)

 (あらすじ: 白髪の老人、犬屋敷は一家を支える父親だが、言いたい事も言えず、おどおどする毎日を送っていた。そんなある日、謎の巨大な物体の衝突事故に巻き込まれ、機械として生まれ変わる。銃で撃たれても死なない不死身の身体。そして生体兵器として、強力な武器を全身に埋め込まれていた。犬屋敷はその力を使い、人助けをはじめ、そこに生きがいを見出していく。しかし、犬屋敷と同時に機械の身体にされた少年、獅子神は、その力を使い、人を無差別に傷つけ、殺していく…)

 (一言: 冴えない老人(というか中年)が主人公というのが意外。悪に染まる獅子神の冷淡さ。獅子神の行動のほとんどが、ホラー描写にあふれている。犬屋敷と獅子神の衝突。そしてこれ以上ないと思われるラスト。全編通して、見所は多数)

 ※重要 ウィキペディアによる「いぬやしき」の記事はあまりにもネタバレしすぎなので(腹立つレベル)、全話見るまで、チラッとも見てはいけません。見たら面白さ激減必至です。

●いきさつ

 amazonのプライムビデオでたまたま目について、観てみました。目立つ位置に配置されてましたし。

 奥浩哉さんの「GANTZ(ガンツ)」。夢中になって読みました。その奥さん?の新作「いぬやしき」。気にはなっていましたが、GANTZでかなり満足していたので、特に手にとって見てみようとは思っていませんでした。「GANTZ以上のものは、そう簡単には生み出せないだろうな」と様子見していた感じですかね。
 まぁとにかく、GANTZでは圧倒されっぱなしでした。個人的には最初の方(千手観音と戦う辺り)が好きなんですけど。エロがちりばめられているのも、好きでした。でもレイカは脱がなかったような……。何故だ。

 で。マンガではなく、アニメで見てみる事にした「いぬやしき」。(きっかけはスマホでの視聴でした。手の平の中で、新作アニメをササッと観れちゃう今時の便利さに感服)
 思いがけない強烈なホラー描写にヤラれ、レビューしてみる事にしました。特にホラーを期待して観たワケじゃないんですが、やっぱり奥浩哉さんの作品はこうなっちゃうんですね……(「めーてるの気持ち」とか、日常っぽい作品もあるようですが)。


犬屋敷 壱郎
一家を支える父親だが、いささか頼りない。


何故、獅子神はそこにいたのか?
明確な答えはありません。


機械の身体にされてしまい、驚きとまどう
犬屋敷
 ●冒頭

 気弱で、周囲に言いたい事も言えない白髪の老人。彼は小さなガマンをし続ける、現役の会社員。一家を支える父親ですね。見た目より年齢は若そう。
 で、彼の名は犬屋敷 壱郎(いぬやしき いちろう)。小さいが念願のマイホームを手に入れ、家族揃って移り住む。家族との仲もあまり良さそうではない。
 犬を拾い、自分の部屋で飼ったりする。
 そんな中、犬屋敷は医者にガンで余命3ヶ月と宣告される。それを家族に言えないまま、犬のはなこと夜の逃避行をしているさなか、公園の広場で何かの墜落事故に巻き込まれる。

 それは未知の生命体の乗るUFOらしい。そして犬屋敷と、その場にいた若者1人が犠牲となる。
 しかし未知の生命体は彼らを素早く修復した。だが素材は兵器。修復した彼らを残し、UFOはあわただしく彼方へと消え去る。

 このシーンの謎(あの若者は何故そこにいたのか。UFOは何のためにそこに来たのか、など)がほとんど明らかにされないまま、物語は進んで行きます。
 機械にされた犬屋敷は自身の異様な姿にとまどいつつも、人助けに生きがいを見い出していくんですね。

 ●

 それにしても、未知との遭遇(そうぐう)の後、ネタバレ: ほとんどその未知が出てこない。これは不思議でした。そういうのが全くからまず、未知の生体兵器になってしまった2人の人間が、物語をつむいでいくんですね。
 GANTZでもそうでしたが、残虐性と突発性(いきなり何かしでかす)、そして意外性にとんだ作品だと思います。

 ●スタッフロールの中に、なつかしいお名前が

 よく見ると、OPのスタッフロールに、見覚えのあるお名前が。恩田尚之(おんだ なおゆき)さん。キャラデザインをしてますね。
 恩田さんはかなり昔から(レトロアニメの部類から)、アニメの作画にたずさわってきた人ですね。氏の名前を見るだけで、洗練された繊細な画が目に浮かびます。

 ●まさかの老人主人公

 老人が主人公というのがまず、意外すぎですね。もはや誰得?(誰がこれを見て喜ぶの?)と聞きたくなるほど、意外すぎ。(さすがに老人の方が、このアニメを喜んで観るワケでもないでしょうし……。もし観れば、自分と重ねてスカッとするような気もしますが)
 物語が進んで行く内に、少年と老人がからむ辺りで、「現代の子供達に、老人を敬う心を説いているのかな」と思ったりしました。そう真面目に考えなくてもいいとは思いますが。

 別に老人を主人公としなくても(例えば、若い男であっても)、物語はきっと成り立っていたし、失敗もしなかったと思います。……でもあえて、老人にしてしまった。
 しかしてその意外性がかなりでかい。マンガとして、大きく飛び出ているんですね。若者のみを主人公にした、他のあまたの作品より。

 若い男達が特殊能力を得て敵味方に分かれて戦う、などという話は今さら書かなくても、どこにでもありますし。そこを奥浩哉さんはあえて避けたかったのかな、なんて思ったりします。GANTZとの大きな差別化としても、老人が主人公というのはでかい。
 ただ、それが読者に受け入れられるかどうかは、大きな賭けだった気もしますが。

 でも老人(というかまだ中年)が自らに備わった治癒能力を使って人助けをするところなど、老人であるからこそ、嫌味を感じない気もします。これが若者だったらどうだったかな、と考えてしまいます。


獅子神は犬屋敷より先に自らの力の使い方
を心得ていて、その力を気の向くままに使う。
 ●突如さずかってしまった強い殺傷能力を、気ままに自由に使ってしまう、もう一方の存在

 特にひどい憎しみもないのに、どんどん人を殺していってしまう若者、獅子神 皓(ししがみ ひろ)。彼は犬屋敷と同時に事故にあい、兵器で修復されてしまった若者なんですね。
 2話で獅子神のなりゆきが描かれていますが、彼が殺人者になる下りは、ほんのちょっとした間違いから、という感じですね。「あ、殺しちゃった」みたいな。
 サディスト(人を傷つけるのが楽しい)さをかいま見せたりもしていますね。

 その裏で、母親を大事に思う。この二面性は意外でもなく、ありえるな、と思わされます。どんな凶悪犯も、母親の前では大人しくなってしまうのが、人間かな、と。
 そして獅子神の行為はエスカレートしていき、やがて……。

 獅子神が好き勝手に殺戮を繰り広げ、ホラー的な見所は満載なんですが……喜んでもいられません。重大犯罪ですしね。人道的にも許される事ではありません。
 じゃあホラーって何が楽しいの?と聞かれたら、どう答えればいいのか、答えに詰まってしまう気がします。

 言えるのは、「破壊された未知の日常を目にする事ができる」という感じでしょうか。普段の日常ではありえないものを目にし(大規模な事故や災害、襲い来る殺人者など)、そこで主人公らはどう行動するのか。その未知はどう終結するのか。観ずにはいられない、と。
 その未知はもちろん、架空の物語であるから楽しめるのであって、現実でそんなものを目にしたら、怖くて逃げるだけ、だとは思いますけど。


ヒロインを抱えて空を飛ぶシーンはまぁよくあり
ますけどね。

ここでのしおんのセリフが違和感ありまくり
んですが、まぁいいですか…。獅子神もあきれ
ている事ですし。
 ●中盤以降 ※そろそろネタバレぎみになっていきますので、隠します

 獅子神が、告白された渡辺しおんに心を開き、改心する。
 獅子神が犬屋敷じみた事をし始め、(いや、このまま行くワケないよな…)と思っていたら、こう来ましたか……。
 流れを変えるすべはいろいろあったでしょうけど、獅子神がまた他人を憎むように仕向けた感じになるのかな、と。

 いやいや。しおんらは殺されずに済んで、あの特殊隊員らだけが惨殺されるのか。とにかく、獅子神としおんらはここで別れる事になるんだろうな、と。
 上げて、落とす(幸福へ持っていき、どん底へ)、といった感じですね。

 ●

 あの女性2人の扱いについて、作者さんは意外と優しいな、と。この人の事だから、殺しちゃうんじゃないかと思ってましたけど。(失礼)

 そして獅子神は怒りの矛先(ほこさき)を変える。ダイタンに突っ込んでいきますね。でもそこに怒りの表情はなく、淡々と殺していくんですね。
 1人だけ生かしたまま残す、というのも妙に味があります。そういうのはなかなか思いつかないんじゃないか、と。皆殺しにするより、意外さがあって印象に残ります。 

 しかしそんな盛り上がったところで、犬屋敷の娘の進学の話ってどうなの……?と。完全に次元が違う話なんですけどね。物語の腰を折るような感じ。
 でもそんな娘の夢を、父親である犬屋敷が知る事で(お父さんというより、おじいちゃんにしか見えませんが)、守りたいものができた……なんてな感じですか?

 ●終盤へ向けて

 話がでかい事になってきました。ここは奥浩哉さんが得意?とするところですね。GANTZでは終盤、とんでもない所までいってましたし。
 街を襲撃、というのもGANTZでやってましたね。ただ獅子神の場合はそこまで襲撃にこだわる必要がないハズなので(サッサと2人を連れて、外国に逃げてしまえばいいだけ)、ちょっとこの辺りは「見ているしかない」という感じ。

 あの2人が殺されたのなら、復讐という形で強い情念が生まれるハズなのですが……でも、そういう物語はどこにでもありますし、あえてあの2人を生かしていたのかな?と。警察も一般人を無為に殺すワケにはいかなかったでしょうし。

 で、死ぬのはエキストラばかり。この辺で主要キャラが殺されるのかどうなのか、注目どころ。逆に殺されないと、ドラマが熱くはならないと思うのですが……果たして。
 獅子神もずいぶんと淡々としてますね。今時の若者(ただし、はぐれ者)を描いているという感じなんですかね。
 あぁいや、最愛の母親が(自分のせいで)死んでいますし、獅子神の心はだいぶ空虚になっているのかもしれません。(もう何もかもがどうでもいいや、みたいな)
 でもアニメのEDでも歌っているように、獅子神の心に宿るものがある。腐っても、腐りきれない。それがラストにつながっていくワケですね。

 それにしても獅子神は、GANTZの玄野(くろの)にしか見えませんね。

 ●ラスト

 もちろん、詳しくは書きません。
 見せていただきました。という感じです。これ以上のラストはないでしょう。胸に響きます。

 やはり奥浩哉さんはやってくれましたし(原作見てませんが、原作あってのアニメでしょうし)、アニメも高クオリティのものを作っていただいてどうもありがとう、という感じです。
 作品の存在そのものに感謝したくなるほど、素晴らしかった。
 存分に、楽しませていただきました。近年見た中でアニメの中でNO.1ですね、個人的には。(「魔法少女まどか☆マギカ」の価値に匹敵)

●総評

 個人的に、だいぶホラーから離れている時に観た作品でしたけど、やっぱり恐怖描写というのは、作品を壊し、未知で意外な展開に持っていくのに必要な要素なんだな、と改めて気づかされました。それに、人を殺す描写には緊迫感も出ますしね。

 獅子神の大量殺戮。あの後、展開はどうにでもできるワケですよね。無敵なんだから、どれだけ派手に殺しても、警察に捕まったりはしない。そのままの流れで、犬屋敷との対決に持っていってもいい。
 でも奥浩也さんは一旦日常に落として、ちょっとしたラブストーリーを取り入れた。こういうのも面白いですね。しかもおばあちゃんともからませたりして、かなり日常感が出ていました。こういうのも奥浩哉さんの特徴ですね。2chの向こう側の男どもも、こういう人いそうだな、という感じでしたし。
 GANTZでも(無駄に)エキストラのキャラが今風なセリフを吐いたりしてましたけど、そういうものをわざと取り入れる作家さんなんですよね。

 ●OP(オープニング)、ED(エンドクレジット)について。

 OPEDとも、だいぶ好きですね。
 OPがいい曲なのは、アニメでは必須(ひっす)に近い重要な要素だと思うのですが(自分、OPが気にいらないだけで、そのアニメを観なかったりします)、どうにも「ED曲が弱い」アニメがちらほら見受けられる気がします。
 その点、この「いぬやしき」はやってくれました。EDもかなりいい曲です。胸に沁(し)みます。

 まぁ曲の良し悪しなんてものは感覚的なものなので、こればっかりは個人的すぎる話かとは思いますけど。

 ●全11話という中途半端さの謎(解けません)

 全11話。これって何だか中途半端な話数です。アニメの1クールって12、3話が普通だと思いますし。
 でも11話で見事に完結していました。まぁもう1話ぐらい増やして、ネタバレ: アメリカが隕石に対してどんな攻撃を行ったのか、詳しく描いても良かったんじゃないの?と思ったりもしますけど。今のままでは、「え?もうあきらめたの?」という感じなので。マンガではその点も書かれているらしいので、興味ありますね。
 全11話は短いんですが、でも「人物の日常」を細かく描けていたりと、見ごたえはありました。

 よく考えると、前半でのヤクザ、鮫島の話はホントに単話だったなぁ、と。あれ以降、あのカップルも話に出てきませんし。何だったの?と。まぁ登場人物が全て終盤までからまなければならない、という事もないので、これはこれでいいのかな……と。
 でもあの美人、何か一瞬だけ特殊能力使ってませんでした……?(後日談: 勘違いでした。頭突きでしたね)

 ●作画監督いすぎ

 EDでのスタッフロール。総作画監督と作画監督がそれぞれ複数いる、ってあんまり見た事ない気がするんですが、最近はそういうものなんですかね?
 ウィキペディアに細かく載ってますけど、最終話では作画監督が何と12人! びっくりですね。てか、現場がどうなっていたのか、想像がつかないんですけど……。

 ●残虐な描写を否定する人間にならなくて良かったとすら感じる、物語のラスト

 この作品は残虐な描写が多数なので、そっぽを向いてしまう人もいるでしょう。例えば、小さな子供を持つ幸せな母親が、こういう作品をのめり込んで観るとも思えませんし。どちらかというと、この作品を否定し、「こんな、人を大量に殺す話の何が面白いの?」と非難すらしてくるかもしれません。

 でも自分はそういう人でなくて良かった、と思ってしまいます。こういう残虐なものを頭ごなしに否定する人間になっていたら、このアニメの視聴を途中で投げ出していたでしょうし。そうなると、この物語のラストを観る機会を永遠に失っていたでしょう。……と、そんな大げさな事を考えてしまうほど、この物語のラストは良かった。
 もちろんラストばかりでなく、物語全体がエンターテイメント性にあふれていて、十二分に楽しませていただきましたけど。

 実写映画化になるみたいですが、もしラストが改変されていなければ、一般の多くの人もあのラストを味わえるのかな、と。
 どれだけ残虐な描写があろうとも、映画なら(残虐描写に耐性がない人も)最後までガマンして、観るでしょうし。
 好きですね、この作品のラスト。ネタバレ: ハッピーにもできたでしょうけど、そうだったら「心に刺さらない」んですね。胸、痛すぎです

 映画では、とんねるずの木梨さんが犬屋敷を演じるみたいですが、キャラ的に間違っている(先入観として、「性格が違いすぎ」)とは思いますけどね……。


頭が割れるというのが大きな特徴ではありま
すが、劇中でこれが役に立つ事はありません。
 ●2度見ると気づく事も多い

 レビューをする時、まずは1回普通に観た後、もう1回(ザッと)観る事が多いんですが(写真撮ったり、不審点を見直してみたり)、そこで改めて気づかされる事も多いです。
 劇中の犬屋敷は素晴らしく、まさにヒーローなんですが、冒頭の犬屋敷は非常に弱くてミジメ。ある意味、これは「変身」の物語だったのかな、と。
 そして犬屋敷は機械になってしまったけど、その事で自分自身もだいぶ救われたんじゃないかな、と。人間のままの犬屋敷だと、ホントに冴えないまま一生を終わってしまいそうにしか見えませんし。
 だからこれは、夢のある、希望の物語だったんですね。冴えない男が強大な力を突然手に入れて、ヒーローになる、と。
 でも優しさを秘めていたからこそ、ヒーローになり得たんでしょうけどね。

 あと11話で犬屋敷がどうして腹に水を溜めていったのか、1話を見直して思い出したりもしました。中盤、犬屋敷が水を欲する場面があんまりなかったですからね。これは(自分が)忘れてしまってもしょうがないな、と。

 あと、1話でどうして獅子神があの場にいたのかという事。11話で犬屋敷が改めて問いますが、答えはありません。で、多分ですけど、ネタバレ: 獅子神がUFOを呼んだんじゃないか、と。犬屋敷は偶然、その場に来てしまい、事故に巻き込まれてしまった
 近年のアニメやマンガなどで、「重要なものをあえて隠して、読み手に推測させる」ってな手が見受けられますが、そういうのも面白いですね。


ドント・ブリーズ
 (2016年米国劇場公開/88分/原題 Don't Breathe)

 監督 フェデ・アルバレス(リメイク版「死霊のはらわた」)
 脚本 フェデ・アルバレス/ロド・サヤゲス
 製作 ゴースト・ハウス・ピクチャーズ/グッド・ユニヴァース
 キャスト スティーヴン・ラング(盲目の老人)、ジェーン・レヴィ(ロッキー)、ディラン・ミネット(アレックス)

 ※スティーヴン・ラング(Stephen Lang)は、ステファン・ラングと書かれているサイトもアリ。

 ホラー度:★★★★(グロはなし。強盗に入った若者達を、元軍人の盲目の老人が返り討ちにする。ドアの施錠や窓の鉄格子により逃げ道がふさがれ、若者達は出口を探して逃げ惑う)
 面白さ :★★★★★(敵が盲目であるがゆえ、気配を悟られないように息を殺してやり過ごすスリル。盲目で無口、しかして優れた戦闘能力を持つ老人。そんな老人を出し抜いて大金を奪ったはいいが、家からそう簡単に脱出できない。次々と事が起こる、ストーリー展開が見事)

 (あらすじ: 過疎地域にある、とある老人宅に強盗に押し入る3人組。老人は盲目で、たやすく金が手に入るハズだった。しかし老人は軍人だった過去を持ち、なお家の中はセキュリティが配備されているばかりではなく、窓の全てに鉄格子がハメられており、出入り口には異様なほど錠が仕掛けられてあった。盲目の老人に仲間が一人殺され、場は狂っていく)

 (一言: 老人宅に強盗に押し入るという単純な話なのに、次々と展開が用意されていて飽きる事がない。後半のたたみかけもスゴイ。終わったかと思いきやまだ災難は続く。エンタメ性が高い。ホラー的には、いつ殺されるかわからないという緊迫感が主。老人の迫力(筋肉むきむきの圧倒感)が凄い。なお、老人が「盲目」というのがこの映画のキモ。息を殺してさえいれば、すぐ傍にいても見つからない。そういった独特の緊迫感を作り出している)-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

画像はアマゾンより

●レビュー

 ゲオのチラシにて。面白そうだと思い、即レンタル。
 Don't Breathe。ネットで翻訳してみると、「呼吸しないで下さい」「呼吸しません」と出る。くだけて言えば、「息をしてはいけない」。そんな感じですかね。
 画面サイズは横長。2.35:1。

 ●

 とある住宅地。ヒビ割れた道路の真ん中をゆっくりと進む人影。
 若い女性が引きずられている。引きずっているのは、白髪の男。一体何があったのか。


左から)ロッキー、アレックス(後ろ)、マネー
 場は変わって、無人の家に入り込む窃盗(せっとう)団。皆若い。男が2人、女が1人。
 だが現金は盗まず、物を盗む。しかも1万ドル以内という制限もつける。捕まった場合、罪が軽くなる(らしい)。
 一人の男は物を壊し、床に放尿したりと、したい放題。(後日談: 最初見た時は、逃げる際に窓ガラスを割った意味がわからなかったんですが(わざわざ警報を鳴らすワケですから)、よく考えると、これは偽装工作なんですね。鍵を使って侵入したとバレないための(バレたら、セキュリティ会社のアレックスの父親に捜査の手が伸びる))

 そしてまんまと車で逃げ去る窃盗団の3人。腕にたかったテントウムシを見つめる、女性の名はコペッキー。(後日談: 「ロッキー」でした。コペッキーは愛称ですかね)
 彼女は引っ越す話をする。デトロイドを出て、カリフォルニアへ。
 生真面目な顔の男。彼は、「親父がいるから」と街を出て行く話には乗らない。
 彼の父親はセキュリティ会社で働いている。彼は、そんな父親から顧客の鍵を勝手に拝借(はいしゃく)し、盗みを働いている。

 窃盗団の男の1人が、ボスらしき男から分け前をもらうが、どうにも割りに合わない。
 そして次の仕事の情報を得る。
 陸軍の退役軍人が住む家。過疎(かそ)地域。金持ちのお嬢さんが彼の娘を轢(ひ)いた。その親が、彼に相当な示談金を支払ったのだという。
 少なくとも30万ドル。それを盗もうというのだ。話を聞いて、仲間達は色めき立つが、生真面目な男がそれを制する。名前はアレックス。

 盗んだ額が1万ドル以上だと重窃盗罪にあたる。捕まれば禁錮10年という重い刑を課せられるのだ。さらには、セキュリティ会社の父親が巻き込まれるのを恐れる。(今回も(セキュリティ会社に預けた)鍵を使って侵入するつもりでいる)
 しかし仲間の女に「これが最後」だと推される。

 で、一度はやらないと言ったアレックスだが、仲間の女――ロッキーから送られた「妹を脱出させたい」というメールに心を揺さぶられる。
 ロッキーの母親は、よその男を家に入れたり、どうにもあまり良くない母親らしい。ロッキーは幼い妹を、その家から出してやりたいのだ。
 そしてアレックスは「(強盗を)やろう」というメールを返す。

 場の下見。ブエナビスタ通り。そこは話に聞いていた通りの過疎地帯だった。住宅地に見えても、実際には荒れ果てた廃屋だらけだった。
 そんな中にある、目的の家。周囲4ブロックは空き家。クスリで老人を眠らせれば、強盗は楽勝だ。

 車中で話し合う窃盗団の3人だったが、そこでふいに犬がガラスごしに吠えかかってくる。
 その犬を呼ぶ老人。見れば、細い杖を手にしている。
「あいつだ」
 ドレッドヘアーの男が言う。その老人が、今回の窃盗を行う家の、主であるらしい。
「盲目なの?」
 そう聞くロッキー。イラクで失明したとの答えが返る。「盲目の男から強盗?」とアレックスは言うが、「別に聖人とは限らねえ」と返る。
「今夜やるぞ」
 そう話は決まる。

(ここで14分ほど。そこそこ話は早いです)

 午前2時。彼ら3人は老人宅に強盗に入る。ボス風を吹かしたドレッドヘアーの男。生真面目な顔のアレックス。女、ロッキー。
 まずは犬。睡眠薬の入った食べ物を与え、寝かせる。

 玄関の鍵は、セキュリティ会社に預けたもの以外にもいくつか使われていて、侵入できなかった。
 彼らは裏口から侵入する事にする。……しかし彼ら、顔を出したまま堂々と強盗するんですね。防犯カメラの存在とか、まるで考えてないんでしょうか? 普通なら顔を隠すと思うんですけどね。(映画的には面白味に欠けるでしょうけど)
 裏口からも入れない。老人はかなり用心深いようだ。
(後日談: なお、このシーンで見える窓ガラスには、鉄格子がはまっています。他の窓についても、後ほどチラチラと出てきます)←特に劇中での説明はないのですが、窓ガラスを割って外に脱出する事はできないんだな、とわかります。

 そこで頭上にある小さなガラス窓からロッキーが侵入し、警報装置を切り、中から鍵を開ける運びとなる。
 警報装置解除成功。仲間のアレックスは、セキュリティを無効化するすべなども熟知しているんですね。
 そしてロッキーは、裏口のドアを家の中から開ける。その間、ドレッドヘアーの男(名前はまだ出てきません)とアレックスが、ロッキーに関してけん制しあう。ロッキーはドレッドヘアーの男の、女なのだ。しかしアレックスはロッキーが好きらしい。
 靴を脱ぎ、家の中に入る3人。

 2階へ向かうドレッドヘアーの男。寝室。TVの音。老人はベッドで寝ていた。
 ドレッドヘアーの男は、ペットボトルで何か細工をしている。そして薬品を入れ、ペットボトルにペンを突き刺した瞬間。
 老人はむっくりと半身を起こしていた。

 息を呑むドレッドヘアーの男。しかし老人は盲目だ。見えないハズだ。気配さえ気取られなければいい……。
 老人はTVを消す。そしてまた眠りにつく。
 ドレッドヘアーの男は、ペットボトルを床に置く。途端、小さな穴から煙が吹き出る。それは寝室に充満していく……。催眠ガスだ。

 男は階下に降りる。老人が深い眠りについたと確信。
 広い一室で、ロッキーが示すドア。そこにはでかい錠がかかっていた。大金を隠すのなら、ここだろう。
 ドレッドヘアーの男は、小型のバールなどを使い、やや強引にその錠を壊そうとする。金属音が響く。

 そしてドレッドヘアーの男――(名は)マネー拳銃を取り出す。驚くアレックス。銃を持って他人の家に侵入するという事は、逆に撃ち殺される可能性もあるのだ。(アメリカの法律では、「銃を持った侵入者を撃ち殺せる」という法があるらしい)
 恐れをなしたアレックスは、立ち去る。降りたのだ。
 そして錠は壊される。
「誰だ?」
 ふいに、ロッキーとマネーの前に、老人が姿を現した。盲目だが、元軍人である老人が……。


盲目でも元軍人。腕力がある。



クローゼットの中に身を隠しおびえるロッキー



老人は盲目なので、すぐ傍にいても、気配さえ
感づかれなければ、気づかれない。
 ●※ この先、ネタバレぎみ

 マネーは銃で脅すが、老人に素手で捕まってしまう。そしてマネーは……。
 老人が元軍人、というのが(ストーリー的に)生きてます。その迫力に圧倒されます。(なお、ここで老人に仲間の人数を問われるんですが、マネーは仲間を気遣って「一人だ」と答える。しかしそれが逆に、マネーの悲劇につながるんですね)

 ロッキーは怯え、クローゼットの中に身を潜め、へたり込んでしまう。
 老人は壁を何度も殴る。不法侵入された事に対しての怒りか。ロッキーは息を殺して、むせび泣く……。

 銃の音を聞いたアレックスは、ロッキーが心配になり、家の中に戻る。
 廊下で老人とはち合わせになるが、老人は盲目のため、アレックスに気づかず行き過ぎる。(この1シーンがゲオのチラシに載っていたんですが、プロはさすがにいいシーンを選ぶなぁと感心)
 老人は裏口のドアに錠(じょう)をかけ直す。それを傍で目にするアレックス。家の中に閉じ込められてしまった……。他に出口を探さなくてはならない。

 老人がなおも家の中を足早に歩き回るさまを見、異変を感じるアレックス。何が起きているのかわからず、恐れる。
 なお(ロッキーが家内に侵入した時の)小窓まで、板で塞がれてしまう。

 ●

 ロッキーはLINEをアレックスに送る。アレックスは、マネーが老人に撃たれた事を知る。(2人とも手袋をしてスマホで文字打ってますけど……器用すぎ。ですが、そんな便利な(通電する)手袋があったっけなぁ、と思い出してみたり)

 ロッキーはクローゼットの奥で息を殺してへたり込んでいるワケですが、そこに老人が来る。そして棚の上にある隠し扉を開ける。そこには小型の金庫があった。
 浮かび上がる暗証番号。それを偶然、間近で目にするロッキー。

 >老人が盲目、というのが最大のキーポイント。それでこの映画は、かなり特異な場面を生み出す事に成功しているワケですね。面白いです。
 なお「元軍人」というのも鬼に金棒。この映画の怖さを引き上げてくれています。物語はストーリーばかりでなく、「設定」がホントに大事なんだな、と思わされます。(後日談: この老人が「盲目」ではなく、「元軍人」でもなかったら、これほど面白い映画にはならなかったと思われます)

 ●

 家の中に戻るアレックス。マネーの死体を確認する。
 クローゼットの中にいるロッキーを見つけるアレックス。「警察に連絡しよう」とアレックスは言う。しかしロッキーは目の前で金庫を開け、金を盗み出す。
 驚くアレックス。しかし驚いたのは、ロッキーの行為に対してではなかった。金が30万ドルどころではなく、100万はあったからだ。(細かい話ですが、アレックスもただの善人ではなく、やはり犯罪者なんだな、という感じですね)

 逃げる場所の算段。地下室からの出口が、裏口にあった。外からは開けられなかったが、中からならボルトを外して、外に出られるハズだ。

 そこにふいに現れる老人。マネーの死体(ウッと声を発しましたが…)を運び去る。
 その時、アレックスの足元がきしむ音を立てる。気づく老人。立ち止まり、銃を向ける。息を殺して場に立ちすくむ、アレックスとロッキー。
 やがてあきらめ、老人は静かに銃を下ろし……そこでスマホが鳴る! バンッ!!

 老人は死体と共に去り、二人は行動を開始。
 マネーが銃で壊したドアの先。そこは「お宝」ではなく、地下室に通じていた。

 ● ↓なおストーリーを追っているため、隠します

 老人は偶然、複数の靴を見つける。そして強盗が一人ではなかった事を知る。
 クローゼットの中の隠し金庫を開け、金を盗まれた事を知る。わめく老人。

 一方、地下室で出口を探すアレックスとロッキー。そこに突如現れる謎の化け物!
 ちりんちりん……ベルが鳴る。老人は遠くでそれを聞きつける。

 いえいえ、化け物ではなかった。ただの女性。口をテープで塞がれ、体にロープをくくりつけられている。監禁されているのか。
 そして銃を持った老人が、地下室へと追って来る。

●総評

 ここからさらにさらに面白くなっていきますが、あえて書きません。
 ここで映画の半分。見所はまだまだたくさんあります。

 強盗3人が主人公ですが(一人はすぐにリタイヤしますが)、彼らが根っからの悪者ではなく、普通の若者だというのがよく伝わってきます。
 印象的なのは、目を丸く見開くアレックスの顔(多発)。実直そうな彼の驚きの顔につられて、コッチまで驚いてしまう事もしばしば。
 ロッキーはよく泣くんですが、その行動は大胆。彼女には妹を(荒れた生活をする実の母から)救い出すという目的もある。何としても大金を奪い取りたい。

 盲目の元軍人である老人。口数も少なく、人を殺す事もいとわない、なかなかの不気味さ。そして後半、その不気味さがなお増すんですね。「うわ、こんな人だったの?」という感じに。

 強盗VS殺人者、みたいな図式ではありますが、老人が「盲目」という弱点を持っている事で、音さえ立てなければ、「すぐ傍にいても気づかれない」という面白さとスリルがあります。
 アイディアの勝利、みたいな映画でした。逆に、老人が盲目じゃなかったら、あまりにもフツーの映画になっていたのではないかと思われます。
 普通の物語をちょっとひねっただけで(この「ひねり」が難しいんですけど)、これだけ独特の物語を作る事ができる。これはなかなか勉強になります。

 理屈抜きでハラハラと楽しめる、エンタメ性もかなり高かったです。


●「エルム街の悪夢」シリーズ(1〜7)

●いきさつ

 以前から「エルム街の悪夢」には興味を持っていました。昔に何作か見た記憶もありましたし。(VHSの頃)
 で。アマゾンで調べてみたら、「エルム街の悪夢」全7作がおさまったパッケージがそこそこの安価(新品で3700円。定価は4800円)で売られていたんですね。試しに1作目だけ、アマゾンの「プライムビデオ」(プライム会員なら無料)で視聴して、充分面白かったのでパッケージを買ってしまいました。

 なお、自分が買ったパッケージは、「WARNER SPECIAL PACK」というもので、BD4枚組。4つのケースを紙の帯でひとまとめにした商品でした。
 なお、このパッケージは1作目のみ日本語吹き替えアリで、以降は全て、吹き替えナシ。字幕のみです。

 でも各話に特典映像もついていて、なかなか楽しめます。ブックレット(冊子)は、なしです。------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

★★「エルム街の悪夢」
 (1984年米国劇場公開/91分/原題:A NIGHTMARE ON ELM STREET)

 監督・脚本 ウェス・クレイヴン(「スクリーム」シリーズ)
 製作 スマート・エッグ・ピクチャーズ
 配給 ニューラインシネマ(以降、「エルム街の悪夢7」まで同様)

 出演 ヘザー・ランゲンカンプ、ロバート・イングランド(全7作、「フレディ・クルーガー」役で出演)

 (上記情報はウィキペディアにて。以降も同様)

 ホラー度:★★★★(ティナが天井を這い回りながら殺されるシーンが衝撃的。他にはベッドから大量の血が天井に降り注ぐなど、独創的なホラー描写が光る)
 面白さ :★★★★(眠ると(殺人鬼に)殺される、という不可思議さ。現実から夢に落ちる時、現実がゆがむ(ありえない事が起こる)描写も楽しい)

●あらすじ&レビュー

 少女はどことも知れぬ暗い通路を行く。
 「ティナ……」少女を呼ぶおぞましい声。逃げる。その先は工場内。パイプから蒸気が噴き出している。
 そこに現れる奇怪な男。あわや殺される、と思った瞬間……目が覚めた。夢だったのだ。しかし、着ていたパジャマが引き裂かれていた。


ティナは天井を這いずりながら、殺される。
シリーズを通して、これ以上の殺戮シーンは
なかったのではないかと思われます。
 ティナはそんな悪夢を気にする。母が家を留守にしている晩、心細くなったティナは友人らを家に呼び込む。
 夢の話をしている内に、友人のナンシーもティナと同じような夢を見た事に気づく。奇怪な男。それは赤と緑のセーターを着て、ナイフみたいなツメをつけていた……。
 そこにティナの彼氏であるロッドが現れ、彼にティナをまかせてナンシーらは退散する。
 しかしその晩、ティナは夢の中で謎の男に襲われ、現実でも血まみれになって天井を這い回った挙句、死んでしまう。

 ティナと一緒にいたロッドが、ティナを殺した犯人という事になってしまっていた。なお、ロッドは行方をくらましていた。
 だが、すぐに捕らえられる。警官である、ナンシーの父親に。

 ナンシーは学校の教室で、悪夢を見る。廃工場の奥に、あの男がいた。
 自分の腹を引き裂いては高笑いを上げ、金属のツメをキーキー鳴らして襲い来る殺人鬼。
 狭い工場内を逃げる。追い詰められて絶対絶命の瞬間、ナンシーは自らの腕を高温のパイプにぶつけ、やけどを負って無理やり目を覚ます。
 (なお、ここに出て来る女教師は明らかに、映画「インシディアス」での霊能者ですね)


有名なワンシーン。
フロに入った女のマタの間から出てくるとは
何とも不届きな殺人者です。

 それからもナンシーは、眠る度に殺人鬼――フレディに襲われるようになる。眠らないように眠らないようにとがんばるが、なかなかそうもいかない。
 そんな時、彼氏のグレンが部屋に忍び込んでくる。ナンシーはグレンにボディガードを頼む。ある人を捜しに行くために。(後日談: ある人、というのが結局ハッキリしませんでしたが、フレディだとは思います。まずはロッドに会いに行くんですが、捜しに行く本命ではないハズ(「捜す」というニュアンスに合わないから))
 結局はまた襲われて、命からがらナンシーは逃げ帰る。

 ……このシーン。最初は現実かと思わせておいて(夜中に家を二人で出たように見える)実はハナから夢の中に入っていた(ナンシーは元々そのつもりで、眠った自分の見張りをグレンに頼んでいた)というのは、なかなか見せ方が上手いです。

 ●

 睡眠障害研究施設で、科学的にナンシーの悪夢の治療を試みる母親。しかし実験は失敗に終わった。眠りの途中でナンシーが異常をきたしたのだ。
 目を覚ましたナンシーは、夢の中で男からひったくったという「帽子」を母親に見せる。それを見て、母親の顔色が変わる。
 帽子に書かれていた名前は「フレッド・クルーガー」。その名前を、母親は知っていた……。

 そして母親に真実を告げられるナンシー。ネタバレ: その殺人鬼はすでに死んでいたのだ。しかも母親達の手によって殺された。だから、母親はナンシーに迫っている危機を感じ取れない。夢の中で殺される、などという話を信じてはいないのだ。

 ナンシーが頼れるのはグレンだけだ。殺人鬼をどうにかしなくてはいけない。
 ナンシーには秘策があった。しかし、それが上手くいくかどうかはわからない……。

●1作目総評

 非常に見所の多い作品でした。「殺人鬼モノ」とは言え、フレディは「夢の中で」人を殺す。これが非常に独創的(オリジナリティがある)なんですね。
 人をただ殺すんじゃなく、悪夢の中に引きずり込んで恐怖を味わわせてから殺す。そしてそれは現実にも反映されて、夢の中で殺された者は現実でも死ぬ。(後日談: 特にこの1作目の死にっぷりは派手でした)ロッドだけ、おとなしい殺され方ではありましたが。

 ジョニー・デップの映画初出演作というのも意外でした。若々しいです。この頃からおとぼけ気味な感じが出てますね。ちょい役じゃなく、メインキャストですね。
 映像に関しては、さすがブルーレイという事もあり、なかなかキレイです。

 あと、眠りに落ちる時の描写も凝ってます。うとうとしていると現実離れした事が起きる。(視聴者に気付かれないように)、いつの間にか夢に落ちていた、なんていう描写があったりもします。
 ……この辺がこの作品の大きな魅力なんじゃないかな、と。

 シメはいかにもB級ホラー映画らしいな、という感じでした。ちょっと笑えるんですね。やたらとバッドでもなく、グッドでもない感じ。
 なお、特典映像内に「もう一つのエンディング」集があるんですが、どれも大差ないですね。


●「エルム街の悪夢2 フレディの復讐」
 (1985年米国劇場公開/87分/原題:A NIGHTMARE ON ELM STREET 2:FREDDY'S REVENGE)

 監督 ジャック・ショルダー(「ヒドゥン」「アラクニッド」)
 脚本 デイヴィッド・チャスキン
 製作 ヘロン・コミュニケーションズ/スマート・エッグ・ピクチャーズ(以降、「エルム街の悪夢7」まで同様)

 ホラー度:★★★☆☆(殺し方に1作目のような派手さがない。フレディが主人公の身体の中から出て来るシーンはなかなかいい)
 面白さ :★★★☆☆(普通の学園生活が長め。主人公がやや面白味に欠けた。夢と現実のからみも少ない)




フレディにいいように操られてしまうジェシー。
●あらすじ&レビュー

 スクールバスが荒野までブッ飛んでいって地が割れて、逃げ場のない場での殺戮(さつりく)。
 序盤からなかなか派手だなぁと思いきや、以降はおとなしめの学園生活がやや長めに続く。
 なお主人公の青年ジェシーは、1作目のナンシーの家(空き家になったんでしょう)に引っ越してきたんですね。で、フレディに目をつけられる、と。

 ジェシーは悪夢を見続ける。
 ジェシーはおとなしくて気真面目な青年なんですが、それが映画そのものをあんまり面白くしていない気もします。でも時折笑えるシーンはありますね。 

 で、半ば辺りでやっと一回目の殺戮。ホモッぽい?先生が学校の部室っぽい所でボールをガンガンぶつけられて、しまいにはシャワー室に引っ張られていって、全裸にされてケツをタオルでブッ叩かれる。笑えます。
 殺しについては「ホントに殺したのか?」と疑いたくなる程、軽い。血の量も少なめですね。

 ●

 ジェシーの友人のロン殺害の辺りは盛り上がりますね。フレディがジェシーの身体の中から出て来るんですが、それがこの映画一番の見所なのではないか、と。

 なるほど、この作品は1作目の逆なんですね。1作目では「眠ると殺される」んですが、この2作目では「眠ると人を殺してしまう」ワケですね。
 何か調子出ないなと感じていたのは、「フレッド」という呼び方もありますね。これがイマイチ、フレディとつながらなかった気が。

 ジェシーの恋人のサラの家で行われる大規模な学生パーティ。クライマックスとして用意され、パーティはフレディのせいで台無し。惨事の舞台となりました。この辺はパニック映画みたいな感じ。
 廃工場でネタバレ: フレディは死ぬワケですが、結局誰が殺したの?というワケのわからなさ。まるで自殺したかのよう

 ラストのオチはなかなかいいですね。ED曲は場違いすぎだとは思いますが。
 (後日談: シリーズ通して何度も出て来る「フレディの数え唄」、この「2」では出てこなかったですね)


★★「エルム街の悪夢3 惨劇の館」
 (1987年米国劇場公開/96分/原題:A NIGHTMARE ON ELM STREET 3:DREAM WARRIORS)

 監督 チャック(チャールズ)・ラッセル(「ブロブ/宇宙からの不明物体」「マスク」)
 脚本 ウェス・クレイヴン他

 ホラー度:★★★★夢ならではの特殊な殺し方(手足の筋を切られて操り人形にされたり)が生きている
 面白さ :★★★★★1作目のナンシーが成長した姿で登場。怖がるだけではなく、フレディに戦いを挑むのが燃える。ラスト、二つの展開が同時進行するのもいい)
 演出度 :★★★★★現実から夢に落ちる時など、魅力的な演出が数多い。派手に壁などを壊す演出も多め


1作目でのナンシーが大人になって再登場。


パトリシア・アークエットは叫びまくり。
●あらすじ&レビュー

 BDの裏表紙には「シリーズ中、一番の傑作」と書いてますので、期待です。
 お?ローレンス・フィッシュバーンが出てる!と思いきや、OPでの表記がラリー・フィッシュバーン。はて? 昔はそう名乗っていたんでしょうか。しかしあの顔は間違いない。

 冒頭。パトリシア・アークエットなんらかの工作をしてますね。のりを使ったり、新聞紙を使ったり、木材を使ったり……。
 で、眠りこけそうになると、眠らないように刺激物を飲む。あぁ、物語はもう始まっているんだな、と。話が早くていいですね。

 パトリシア〜の役名はクリステンでしたか。で、作っていたのは小型の家。上手いもんです。
 そしたら次のシーンではの中に入り、ベッドの向こうには古びた家が。その前で子供達がなわとびをし、フレディの数え唄を歌っている。なかなか美しい光景です。
 家に入り込んだ少女を救おうと、追うクリステン。そしてフレディに襲われる。序盤から素晴らしいホラーっぷり。これは期待できそう。
 と油断してたらおまけつき。いやー、やられました。さらには、フレディの凶行をクリステンの自殺未遂と見せかける(カミソリの刃を持たせるという小技)スキのなさ! 見事です。

 で、1作目の主人公ナンシーが、大人になってご登場。いやーなかなか楽しいです。

 クリステンの病室にふと赤い三輪車が。しかも血の跡のおまけつき。
 それがさらには高熱で変形し出して、クリステンはドアから逃げようとしたら、逆に冒頭の家に閉じ込められるという流れ。見事です。
 家に閉じ込められるというだけの事に、「流れ」を用いる事で魅力的に仕上げているんですね。天才的です。

 そしてそして! ナンシーが夢に落ちるその瞬間の描き方の素晴らしさ! うおー!(興奮しまくり)
 クリステンが「他人を自分の夢に引き込める」というのが楽しいですね。


ただ殺すのではなく、その過程で怖がらせる
というのは非常に勉強?になります。
 フレディに手足を裂かれ、筋(血管?神経?)をむき出しにされて操り人形にされるフィリップ。これは観ているだけで痛そうでたまらない。

 あと、2作目ではナリをひそめていた、「夢が現実に浸食する」という描写が蘇ってますね。色んなパターンで見せられると、やはり楽しいです。
 女優志望の子を殺す場面も、頭にアンテナをつけたバカバカしいフレディが見られますね。しかもTVに頭を突っ込ませるという殺し方もほとんどギャグ。

 催眠療法(さいみんりょうほう)そこで一人離れたジョーイがまさかのエロシーンに突入……も短く(無念)、フレディに捕らえられる。(後日談: 結局最後まで長々と生かされてますけど……そこに特別な理由はないんでしょうね)
 で、「夢の中で超人になる」という夢のある話。しかして彼らは早速ピンチに陥るんですが、彼らの窮地(きゅうち)を救ったのがまさかの……。なるほど、皮肉なものです。

 で。クライマックスの一角。ネタバレ: フレディを埋めるハズが、逆に埋められるとか!いやはや、ホントにギャグです。あのガイコツのカクカクの動きも、時代を感じさせられます。
 シメ方もなかなかいいですね。ハッピーでもなくバッドでもなく。

 エンドの曲、なかなかいいですね。こういったロック調の歌が、ホラーのシメには結構似合いますね。
 そうそう。ローレンス(ここではラリー)・フィッシュバーンは結局、チョイ役でしたね。


「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター最後の反撃」
 (1988年米国劇場公開/94分/原題:A NIGHTMARE ON ELM STREET 4:THE DREAM MASTER)

 監督 レニー・ハーリン(「ダイ・ハード2」「クリフハンガー」)
 脚本 スコット・ピアース他

 ホラー度:★★★★(全体的には★3。しかしデビーのむごい死に様が底上げ)
 面白さ :★★★★★容赦なく殺されまくり。主人公交代というのも凄い。アリスが力をつけていき、ラストも盛り上がる

●あらすじ&レビュー

 アップテンポな女性ボーカル曲にのせて、タイトル。
 小さな女の子が、地面にクレヨンで家の絵を描いている。話しかける若い女性。ふと顔を上げると、目の前には絵と同じ家があった。
 そこで突如の雨。洗い流される絵。
 大雨になる。女性は目の前の家に逃げ込む。そして女性は家の中に閉じ込められる。

 そこは廃屋。千切れたカーテンがゆらめく、ガラスの割れた窓から風雨が室内に入り込む。
 ふいに女性は身体ごと吹き飛ばされる。
 出だしから飛ばしてます。ここまでわずか5分。

 気づけばそこは廃工場内。不穏な空気。
 女性は助けを求める。するとその夢に黒人の少年が入り込む。
 この女性は前作のクリステンなんですね。だから自分の夢の中に他人を呼び込む事ができる。前作のクリステンはパトリシア・アークエットだったんですが、今回は別人。どうせなら変えないで欲しかったんですが
 少年がもう一人入り込む。彼はジョーイ。黒人の少年はキンケイド。
 二人は夢に呼び込まれた事を非難し、クリステンに「もうフレディはいない」と諭(さと)す。
 そこで何故か犬が飛び出てきて、クリステンの腕に噛みつく。

 起きる3人。クリステンは腕に大ケガ。しかしシーツを巻きつけただけで、また寝ちゃうんですか?えー……。(後日談: ちなみに、ここで犬がクリステンに噛みついた事は意味不明なまま。おとなしい飼い犬なんですけど。←もしかして、犬が悪夢を覚ましてくれた?)




この殺しのシーンは非常にグロテスク。


アリスの成長していく姿がいい。
 キャンパスでの平穏なひと時。
 クリステンの彼氏は日本かぶれ。家の自室で日の丸のハチマキを締め、空手の練習。部屋の壁には「忍者」のポスターと、日の丸の旗が……。
 彼は何とヌンチャクまで使いこなす。何ですかこれは? 間違った日本のイメージをそのまま映像化したようなシーンですが……。
 で、その妹アリスはどうやら妄想癖(もうそうへき)がある模様。

 夢の中。キンケイドが復活したフレディに襲われる。ジョーイも。美女の裸をおがめたりもします。しかしてこのシーン、いかにも手作りっぽいセットです……。 

 ●

 今度はクリステン。浜辺でのんびりしているハズが、一瞬にして廃屋の中へ。さらには廃工場内。夢の場面転換が見事ですね。
 で、ネタバレ: みんなやられちゃうんですが、現実での死に様は結構おとなしめ。これが1作目などとは大きく違うところですね。派手さにはかなり欠けますね。
 結構、容赦なく死にますね。

 で、誰かが死ぬ度に、アリスはその能力を受け継いでいく。え? まさかの主人公交代ですか。登場時はただの脇役だと思いましたが……なかなかサマになっていくもんですね。

 ●

 この4。なかなか濃いです。見所も多く、面白い。この時点でホラー度★3、面白さ★4。
 主人公が前半と後半で変わる、というのもスゴイ。(そう見えただけで、元々アリスを物語の主眼に置いていたのかもしれませんが)

 映画館のシーン。映画のスクリーンに入り込む視覚効果も、なかなかいいですね。

 デビー。彼女の死に様はやたらグロテスク。ここだけホラー度★5ですね。どんなものかは観てのお楽しみ。

 クライマックスもなかなか盛り上がります。アリスの鋭いアクション。
 アリス、いい顔してました。


●「エルム街の悪夢5 ザ・ドリームチャイルド」
 (1989年米国劇場公開/89分/原題:A NIGHTMARE ON ELM STREET 5:THE DREAM CHILD)

 監督 スティーヴン・ホプキンス(「プレデター2」、TVドラマ「24-TWENTY FOUR」第1シーズン)
 脚本 レスリー・ボム

 ホラー度:★★★☆☆これといった見所がなかった
 面白さ :★★★☆☆登場人物の個性が感じられず、彼らがフレディに襲われても感情移入ができなかった。次々に友人らが殺されていくという流れも普通すぎ。夢がからむ描写も、良かったのはマークのみ)

●あらすじ&レビュー

 人肌のアップ。なまめかしい動き。男女のからみ。
 そして女はシャワーを浴びる。前作のアリス、ですね。セミヌードを披露。
 バスルームからいきなり男だらけの収容所に。アリスはいつしかアマンダ・クルーガーになっていた。前々作でフレディの母親として出て来た、精神病院の患者100人に犯されたという、精神病院の職員だった修道女ですね。
 しかしそれは夢。覚める。

 キャンパス。卒業式か。
 公園にて、フレディの数え唄を歌う子らを見つけ、アリスは逃げたその子らを追う。
 修道女の姿が。それは城……のような教会?に逃げ込む。

 城内。場面転換。アマンダは子を産む。異様な姿をした胎児。フレディか。
 それは前作でのフレディの亡骸に命を与える。

 アリスはすっ転がってパンツ見せたり、と今回はサービスが多め。
 で。アマンダが、フレディを倒すために自分を見つけて欲しいとアリスに頼む。今作のキーキャラはどうやら、アマンダである模様。(後日談: ハナから映画の答えが出ていたんですね……)

 ●

 プールで学生らがたわむれている。
 アリスの彼氏であるダン車を運転中にフレディに襲われる。だが何とか助かる。で、フロントガラスを突き破って落ちた先が何故かプール。
 で、お次はバイクでひどい目に。何だか「スカルマン」とでも名づけたいような造形になってますけどね……。フレディも悪ノリしてます。
 その夢が現実につながって、ダンは死亡……。

 さて。アリスは妊娠していた。
 そこにヤコブという少年が現れる。彼はアリスが悲しんでいると思って、見舞いに来たのだという。

 アリスはダンがフレディに殺された事で、友人らに協力を求める。しかし話をまともに聞いてもらえない。
 友人らについては今作で新たに出てきたので、感情移入も何もできませんね。しかも個性が足りない。面白味を感じるのは、いつも絵を描いているマークぐらいなもの。
 ついでに言えば、主人公であるアリスにも面白味がない。感情移入できない。真面目すぎるからか。主人公が妊婦という状況に「萌え」がないからか。(個人的すぎる話ですみませんが)

 で、グレタという友人が何の個性も見せないまま、フレディの手にかかる。非常に変な殺され方でしたけどね。


ヤコブ。この子の顔が素晴らしい。
 マークがグレタを愛していたという事で、アリスに協力する。ここはいいですね。
 お〜。マークが眠る前に残した廃屋の絵に、アリスが自分の姿を描き込んでその廃屋の中に入る、というアイディアはいいですねー。こういうのは理屈ではなく、直感で伝わってきますね。

 マークが夢の中で消えうせ、代わりにヤコブが現れる。この顔は素晴らしいです。正体はハナからバレバレなんで、すぐに明かしてしまうようですけどね。

 ●

 まぁフレディがヤコブを狙って手なづけるのはいいんですが、もっといい描き方はなかったのかなと思ってしまいます。描き方が直接的すぎるんですよ。ソウルフードとして、殺したアリスの友人らの魂を食わせる、とか。それを「マンガ的表現」でやっちゃうという。

 先の夢から無事に逃げられたようで、マークは助かる。しかし友人のイヴォンヌが未だにフレディの話を信じてくれない。
 なお、ここで話が変な側面を持つ。ダンの両親がアリスのお腹の中の子を引き取ると言い出す。しかも法的に。……こんな面倒な話は要らなかった、と思いますけどね。

 コミックおたくのマークが、またフレディに襲われる。コミックに入り込んだような、なかなか面白いビジュアルで楽しませてくれます。まぁ今度こそ、やられてしまいましたけどね。
 ……あれ。イヴォンヌは殺されそうで、殺されませんでしたけどね。で、フレディの存在を身に染みてわかったイヴォンヌは、やっとアリスに協力してくれる。

 冒頭の城?は精神病院だったようですね。ん?もしかすると「3」での精神病錬施設が建つ前の建物? あそこにアマンダが閉じ込められたという塔がありましたし。(これに関しては、劇中でハッキリとは描かれてません)

 この作品でも、ラストは二つの展開が同時進行しています。でも燃えない。イヴォンヌに全く感情移入できなかったからか。

 そしてラストは、あぁまたかの阿鼻叫喚(あびきょうかん)。アマンダの美しさに救われた感じです。
 しかし。化け物に色んなものを食わされた子供が無事に生まれてしまうワケですが……。そんな話がどこかにありましたねぇ……。

 ●

 3作目のラストで強くなったアリスが何故か今回は弱体化してしまって、アマンダに頼るという筋書きが面白味に欠けた気もします。アマンダなんか出さなくて、ヤコブだけで良かったんじゃないの?と。

 アリスの特殊能力もイマイチ光らなかったので(3作目では、死んだ仲間の強さを受け継ぐハズだったんですが)、その辺もスッキリしなかった理由かな、と。
 でもまたアリスが格闘しても「3」と同じ映画になってしまうでしょうし……。難しいところです。

 この「4」のED曲を聴くと、軽めなんですね。
 本当はこういった映画を、生真面目になって解説してもしょうがないのかもしれないと思わされたりします。
 劇場でポップコーン片手にコーラをぐびぐび飲みながら、「映画を観ている間だけ楽しめればいい」という程度の事で。ヘタすりゃ、ホラーシーンで「ワオー!」などと叫んで喜んでいる若者とか、いるのかもしれませんね。アメリカでは。
 一回観ておしまい。あとは忘れてしまってもいい。

 まぁとにかく、名作ではない事は確かです。まともに2回観たんですが、やっぱりあんまり面白くなかったです。


「エルム街の悪夢6 ザ・ファイナルナイトメア」
 (1991年米国劇場公開/89分/原題:FREDDY'S DEAD THE FINAL NIGHTMARE)

 監督 レイチェル・タラレイ(「ヴァイラス」「タンク・ガール」)
 脚本 マイケル・デ・ルカ

 ホラー度:★★★☆☆ギャグが強すぎてホラーがかすむ
 面白さ :★★★★エンタメ映画として見れば面白い。もはやこれはホラー映画ではない。ラストの(かなり不要の)バカアイテムが場をぶち壊す
 ギャグ度:★★★★(殺しの前に、やたらとコミカルな場面がある。バカバカしくて笑えます)

●あらすじ&レビュー

 もうアリスはいいや、別の主人公で頼むと思いながら、6作目を視聴。
 流れる洋楽。タイトルはでかでかと「FREDDY’S DEAD」。もう何回も死んでますけどね。
 今回でホントに終わりにしようという意気込みを感じます。でも次回作、あるんですけどね……。

 オハイオ州スプリングウッドで、ティーンエイジャーが一人を残して全員死亡、というショッキングな出だし。なお大人達は生きているが、精神的におかしくなっている、との事。

 飛行機内。若者は気分が悪い。そしてあれよあれよとギャグみたいな事になってしまって……あぁ夢ですか。と思いきや、なかなかスゴイ事に。フレディもノリノリのご登場。
 そして若者は草の斜面を転がり落ちる。これがまた長い。しつこくしつこく落ちる。
 落ちた先の路上。若者はその辺を歩き回る。なおもフレディに遊ばれるんですが、彼は助かる。主人公ですかね。ジム・キャリーに似てます。
 そして彼はスプリングウッドの路上をさ迷う。

 ●

 矯正(きょうせい)施設。……更正施設みたいなものですかね。
 2人の少年と1人の少女。彼らは見ていて楽しいですね。少女はボクサーめいたトレーニングをしてます。
 難聴の少年。彼が補聴器を取った瞬間、映画の音も消えるのがいいですね。

 ――眠り込んだら殺される。その特性をまた、蘇らせている模様。(「5」がその辺、うやむやになってましたし)


ゲーム中のキャラにさせられるスペンサー。
ホラー映画という事を忘れて笑いましょう。


美少女キャラも忘れてはいません。
 冒頭でのジム・キャリー似の少年は記憶喪失に。刺激を与えようと、矯正施設の女の先生車で「スプリングウッド祭」に連れてくる。なお後部座席には、先の3人の少年少女らも乗り込んでいた。
 テントやら出店やら。しかし賑わいがどうにも足りない。……ここには、子供がいない。

 で、3人の少年らは「車で戻れ」と先生に言われるが、道に迷う。いや、どうやっても同じ場所に戻ってしまう。しまいには地図を広げるが……それがまたギャグに。
 疲れ果てたので、見つけた空き家に入って眠ろうとする3人。しかしその空き家が突如、化ける。いい演出です。
 未だに彼らの名前が出てこないなぁと思ったら、ここで立て続けに出てきます。難聴の少年カルロス。ボクサー少女はトレイシー。

 カルロスの責め苦のシーンが開始。場は廃工場に。フレディとのホラーにならない悪ノリ合が続き、シメはホラー。

 ジム・キャリー似の主人公の名前は、ジョン。今は3人とは別行動で、先生と行動を共にする。
 ジョンは地元で自分だけが生き残り、大人が自分を恐れるという事で、自分は「フレディの子供」なんじゃないかと疑っている。

 先生の名はマギー。空き家の中でトレイシーと合流。姿を消したスペンサーとカルロスを捜す。
 で。ここで、この映画最大級のギャグシーンが炸裂(さくれつ)。スペンサーがフレディに遊ばれまくり。ゲームコントローラーで好き勝手に操作されちゃうんですね。
 バカバカしくて笑えるんですが、シメは笑えない事に。……笑わせて笑わせて、ホラーでシメる。何だか新しいです。

 ここで評価するならば、ホラー度★3、面白さホラー映画ではなくエンタメ映画として★5。
 フレディ、ハンパなく悪ノリしてます。


紙メガネをかけるマギー。
最高にかっこ悪いです…。
 廃工場でフレディを見つけるトレイシー。見事なハイジャンプ+(ネタバレ: 金蹴り)。まだまだ笑わせてくれます。
 しかし事情を知らないマギーのせいで、場は中断。せっかく夢の中に入ったトレイシーらを起こしてしまうんですね。瞬間的には、トレイシーを助けた事にはなってますが。
 一方、ジョン。家に戻ったと思った瞬間、何と……。これはヒドイ。ギャグが冴え渡ってます。というか今回はギャグだらけ。

 以降もなかなか派手な演出で楽しませてくれます。
 そしてこの辺でやっと、誰が主人公なのかわかってくるんですね。彼女の幼少期のコスプレはちょっとひどかった気もしますが……。

 で。クライマックスを迎えるに辺り、赤青のセロファンが張られた昔懐かしの「3D紙メガネ」が出てくるんですね。これがイマイチわけわからなかったんですが、劇場ではこの紙メガネを観客も実際にかけて、3Dで見られる映画だった模様。だったらその映像を収録してくれれば良かったのに。
 と言いますか、このアイテムはビジュアル的に場をぶち壊しです。……脳内補正するのならば、このメガネは「自己暗示用のアイテム」。決してその威力に期待してはいけない。つーかやっぱり要りません、このメガネ。

 フレディの倒し方は、以前にもあったヤツですね。最後のセリフはかなり軽いですけどねー……。
 なおエンドクレジットでは、過去作の名シーンが見られますね。あーこんなのもあったなぁ、と。


●「エルム街の悪夢7 ザ・リアルナイトメア」
 (1997年米国劇場公開/114分/原題:WES CRAVEN'S NEW NIGHTMARE)

 監督・脚本 ウェス・クレイヴン

 ホラー度:★★★☆☆ホラー的な見所に欠ける
 面白さ :★★★★(前半はダメだと思いましたが(映画の舞台裏とか、映画で見せられても…)、後半はなかなか盛り上がりました

●あらすじ&レビュー

 7作目は、1作目の監督であるウェス・クレイヴンが担当。
 原題が「〜NEW NIGHTMARE」という事なので、「6」の続きではなく、新たに始まる物語なんでしょう。
 パッケージ裏のキャストを見ると、過去作で死んだハズのナンシー・トンプソンが出ているじゃあありませんか! しかも配役がヘザー・ランゲンカンプ。まさに1作目そのまんま。
 さぁ。期待して見てみます。もしかすると、1作目の焼き直しですかねぇ……? でもまたナンシーが見られるのは嬉しい限りです。美人でしたからねぇ。

 冒頭。フレディが爪を作っている……と思いきや、それは映画の撮影。ウェス・クレイヴン本人もいる。あらら。
 しかしその爪が動き出してスタッフを襲う!と思いきや、夢ですか……。
 ナンシー息子のディランは、大きめの地震で目が覚める。

 ん? ナンシーではなく、「ヘザー」と夫に呼ばれてます。つまりヘザー・ランゲンカンプは、本人役として出演?
 金髪美人のジュリー。ヘザーの家に、子守りとして雇われている模様。


映画のキャラとしてのフレディ。
もちろん人を襲いません。
 ヘザーがTV出演でインタビューを受ける。
 そこにフレディが現れる……が、ロバート・イングランドが扮したフレディ。ロバート・イングランド本人も素顔で出てきますね。
 映画の舞台裏を映画化した、という感じなんでしょうけど……駄作の予感がぷんぷん。理解するのが面倒くさい展開で、しかも面白くなさげ。

 夫が映画撮影所から車で戻る途中、フレディに襲われ……夢っ!
 しかして夢でなかった。そう来ましたか……。

 死体安置所で夫の死体を確認するヘザー。というか現実をモチーフにしているのなら、縁起でもない話ですね……。しかも葬式までやってしまうという。
 その葬式で一波乱。ヘザーは額にケガをするが、介抱するのが1作目での父親役。ウェス・クレイヴンも心配そうに見てます。

 ●

 この辺で面白さは★3。現実を舞台にしているので、リアリティの都合上、派手にフレディを出せない。その辺が盛り上がらない要因かな、と。
 しかも全くの現実(怪物がいない世界)を舞台にすれば、面白くなるワケがない。基本的に、映画裏の彼らの生活を見ているだけ。地震とか奇妙な電話とか、やや不穏な事が起こったりはしてますけどね。


ヘザーと息子のディラン。
恐竜のぬいぐるみに守ってもらっている。

全編に渡り、ディランの顔芸がスゴイ。
 この映画の不穏なキーポイントは4つ。
 頻発(ひんぱつ)する地震。フレディを思わせる謎の電話。息子のディランの奇行。ウェスが書いている新作映画の脚本。

 病院でディランの横で眠りこけてたらフレディが。そこで目を覚ますヘザー。
 で、パニックになるヘザーをさとす黒人看護婦の顔が、何故か最高にホラーしてますけどね……。

 ●

 車が行き交う路上で大パニック。はた迷惑な親子です。
 ここで急に父親役のジョンがヘザーを「ナンシー」と呼ぶ。ほー! いつしか映画の中ですか。なるほどー。これは感心しました。

 しかしあれ? 他人の夢に行けるんでしたっけ、ナンシーは。そんな能力はなかった気が。(後日談: 基本的には、ないですね。強いて言えば、1作目でロッドの夢に行けた、というのはあります。「3」ではクリステンに引っ張られただけ)
 でもいい感じ。前半はダメだと思いましたが、後半はやってくれてます。

 ウェスの書いた原稿がキーアイテムになるワケですが、こんなモノを書かなきゃ何も起こらなかったんじゃないの?とか思ってしまいます。
 ヘザーはとにかく、災難続きでした。

 映像特典でウェス・クレイヴンの話が聞けますね。現在(2017年)はお亡くなりになったようですが。
 氏が映画監督になったいきさつとか、なかなか興味深い話が聞けます。

●シリーズ総評

 BD化になり、画面サイズは16:9。ただそのサイズだと、画面の左右がカットされている可能性が大ですね(映画サイズはもっと横長)。7作全て、そのサイズで統一。

 画質も良好。そんなに目を見張るほど素晴らしい……というワケではないのですが(DVD並みの画質が大半)、過去のVHS版と比べたら、そうとう画質はアップしてるんでしょうね。
 文字。これはかなりクッキリしてますね。字幕はもちろん、映画内のOPやスタッフロールなどの文字もかなり鮮明です。

 ホラー映画ではありますが、アクションに目を見張るシーンも多かったですね。クリステンやアリスの回転ジャンプが目に焼きついて離れません。
 殺人鬼を怖がるだけじゃなく、戦ってしまうとホラーにならない……気もしますが、これはこれで面白いなと納得しつつ、楽しむ事ができました。
 他の印象としまして、葬式のシーンが多い映画だったな、と……。

 ●夢がからむ魅力

 天井にドバドバ降り注ぐ大量の血とか、現実にはありえない派手な死に方が見られる。なお夢での殺しはどれも派手で、趣向(しゅこう)が凝らされていました。

 そもそも「夢で殺されると現実でも死ぬ」という不可解さが、このシリーズでの大きな魅力であり、また独自性(オリジナリティ)を生み出していました。
 なお、夢でフレディに殺されるばかりではなく、ある程度抵抗できるのも面白かったですね。ぶん殴ると、「ウオー」とフレディが悲鳴をあげる。痛がらない時もありましたけどね。

 なお、夢がからむ事で、演出も派手で楽しかったですね。場面転換もスピィーディで、見事なものが多かった。
 現実に妙な事が起こると、そこで「いつしか夢に入り込んでいた」事を知る。そんな場面にも感心させられました。

 あと、夢からモノを持ってこれるというのは非常に魅力的だったと思います。
 劇中でそんなに数多く使われたワケではない(残念)のですが、これがネタバレ: フレディを倒す手がかりになりえたワケですね。ここに脚本家がもっと注目してくれていれば、また違った映画ができたのではないかと思ったりもします。
 以前、映画「輪廻」でもそういったシーンを見たりもしましたが、こういうのは大好きです。

 ●どの作品が面白かったか?

 ホラーとして観れたのは、「1」と「3」。この2作だけ、かなり秀でていたと思います。映画としてもホントに面白かった。

 他に「4」も面白かったんですが、あれは徐々にアリスが成長していくのが良くて、さらにはラストのアリスのアクションがあまりにもかっこ良かったからシビレたのであって、ホラー的にはどうだったかな、と。
 「6」も面白かったんですが、あれはただ「笑えただけ」でした。もはやホラー映画ではないな、と。
 「7」も悪くはないんですが、前半がノレないかな、と。後半は面白くなるんですけどね。

 結論としまして、シリーズを重ねる毎に、だんだんホラー映画ではなく、エンタメ映画になっていったという感じでした。「6」ですっかりそうなってしまい、「7」で何とか路線をシリアス気味に戻したかな、と。
 フレディが、コミカルなキャラになり過ぎていったんですね。

 このシリーズが「6」で打ち切りだったら、「(真面目にやっていたのに)最後は砕けてお終い」という印象になっていたのではないか、と思われます。
 「6」でのフレディの死に方が最悪ですし……。ビジュアル的に。

ハンバーガー・ヒル
 (1987年製作/110分/アメリカ映画)

 監督 ジョン・アーヴィン
 脚本 ジェームス・カラバトソス
 製作 RKO

 ホラー度:★★★★(リアルな戦場。銃撃や爆撃でバタバタと死んでいく兵士達。時折、過激な死に様の描写もあり)
 面白さ :★★★★(物語的に難しさはなく、戦場のリアルさを見せつけられる、というだけ。兵士達の個性も生きている)

 (あらすじ: ベトナムの地、エイショウ・バレー(アシャウ渓谷)。その丘を攻略せんとするアメリカ軍と北ベトナム軍との10日間に渡る激しい戦闘を描いた映画)

 (一言: 史実にあった熾烈(しれつ)な歩兵戦を描いた戦争映画。映画を見ているという気がしないほど、リアル。戦闘の合間に何度か休息が挟まれ、兵士達の人間模様も描かれる。不真面目さが心地よい。ただ、劇中での説明がほぼないので、「この戦争が何なのか」とか基本的な事がわかりにくい---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

●あらすじ&レビュー

 1969年5月10日。アメリカの第101空挺師団は、ベトナムの地、937高地で敵と交戦した。
 その丘での10日間の激戦。丘を登ろうとする者をことごとくミンチにするため、兵士達はそこをこう呼んだ。
 ――「ハンバーガー・ヒル」と。

 ●

 背丈ほどもある草地。負傷兵を数人がかりで運び、ヘリに乗せる。
 絶え間なく続く銃撃。爆撃。そしてそれにかかんに応戦する兵士達。
 ふいに、内臓の飛び出た兵士がぶっ飛んでくる。「衛生兵(救急処置係)!」叫ぶ兵士。

 戦っているのは若き兵士達。彼らを乗せたヘリが去った後、爆撃が数回、花火のような閃光を放つ。


戦闘以外の場面もやや多め。
 場は変わり、平穏な場面に。
 地元の女とにこやかに話す兵士達。トラックの荷台に複数の兵士達が乗り込み、場を移動する。

 に着く。水牛がのっそりとうごめき、いくつかのテントが露店を開いている。
 そこで兵士達は休養につく。
 一方では土のうを積み上げ、バリケード造りに精を出す者達もいる。
 軽口を叩いてケンカになりそうになっても、他の者がそれをいさめる。仲直りの握手をすぐにさせる。仲間同士のいざこざを残さないようにしているのだろう。

 村には風俗店らしきものもある。
 ベトナム人が、戦争相手のアメリカ人を客にしているという、一見、意外な光景。商売には敵味方もないという事なのか。(後日談: これは勘違いしてました。アメリカ軍にとって南ベトナムは味方の地であり、北ベトナムが敵なんですね)

 黒人のドク(医師)。新入りを並べて、真剣に歯磨きをさせる。異国の地では伝染病などがはびこり、衛生面での注意をおこたれば、それは悲惨な結果を招く事になる。

 なお、ここで出て来る(恐れるべき)「ハン」というのがよくわからなかったんですけどね。
 (後日談: ウィキペディアでは、ハン=アメリカの先住民族とあります。ベトコンの恐ろしさを例えるにあたり、そのハンの恐ろしさを持ち出したのでしょうか。つまりあの映像(ハンがほふくで忍び寄ってくる映像)は、実際に彼らのそばでそれがほふく前進してきているのではなく、ハンについてのイメージ映像だったのかな、と)

 川で水浴びをする兵士達。現地人達も温かな目で見ています。
 川のほとりでの質素な食事。仲間同士、会話に花を咲かせます。ですが、白人と黒人のちょっとした弊害(へいがい)のようなものを感じさせられたりもします。仲良くやっているようでいて、やはり彼らには決してわかりあえない、根本的な隔(へだ)たりがあるようで。
 その休息のさなか。突如として場を爆撃が襲います。川のほとりで洗濯をしていた現地人のベトナム女性らも、あわてて逃げます。

 爆撃によって、地が揺れ白煙が舞う。
 一挙にこの場は戦場と化す。現地人の女性が巻き込まれて死んだりします。

 なおこの辺まで、誰が主人公とかそういうのはほとんどなし。人物の名前も、特に表には出てきません。
 ですがこの辺で、一人の男がこの場に於ける指揮官なのだとわかってくる。
 戦いはすぐに止んだ。

 場に残されたのは、頭部を失って死んだ仲間の兵士。誰なのかわからない。黒人のドクが取り乱すが、指揮官にいさめられる。

 ●

 場はまた休息へ。現地の木造建ての質素な風俗店で遊ぶ兵士ら。順番がどうこうともめたり、カードゲームを楽しんだり。酒に酔い、無礼講の状態だ。
 だがちょっとした新兵の一言がドクを怒らせ、殴り合いのケンカに発展。すぐに場はおさまるが、それを冷ややかな目で店のママは見つめる。「みんな頭が変なのよ」。

 何度か出て来る「エイショウ・バレー」という言葉。地名であり、そこもまた戦地らしい。その場へ戻るため、ここ(ベトナム)での戦闘を仕方なく繰り広げているらしい?事はわかるんですが……イマイチ意味がわかりません。(劇中での説明はなし)
 (後日談: 勘違いしてました。エイショウ・バレー(ウィキでは「アシャウ渓谷」)こそ、別名「ハンバーガー・ヒル」の事だったんですね)

 ●

 青々とした草地。そこは丘。
 複数のヘリがアメリカ兵を乗せてどこかへ飛び立つ。ここで何故か軽やかな音楽が流れる。
 軍用ヘリって、機体側面の左右のドアを開け放ったまま飛ぶんですね……。と言うか元々ドアがない……?

 丘のふもとの草地に降り立つ兵士ら。その数は……どのくらいでしょうね。50名以上、でしょうか。
 そこで日付が表示される。この映画の本当の始まりはここから、と言った感じでしょうか。この時点で映画は40分弱過ぎています。残りは1時間ほど。そこそこ長い映画です。




黒人のドク。医者なのに、よくキレる。
 青々とした森林の中を静かに歩いていく兵士達。新兵達は落ち着かなげな表情で場を見渡す。
 すぐに緊迫が解かれる。銃声だ。皆、一斉にしゃがみこむ。
 マシンガンで応戦。手榴弾(しゅりゅうだん)も使う。
 「前進しろ!」
 そんな非情な命令。
 前進する中、敵の姿を発見。
 誰かが足を撃たれる。その男はやけくそで前進するが、棒状の手榴弾の直撃を受け、死亡。

 やや開けた場で休息。手紙を書き始める者、雑誌を読む者もいる。
 ここでまたドクが弾ける。彼はかんしゃく持ちらしい。同じ黒人にいさめられ、場は終息。彼らの絆みたいなものを感じます。

 ここで出て来る名称「937高地」。
 数名での作戦会議。話は終わったと腰を上げる者達に、若き上官が「ヒュッ」と口笛で引き止める。そういう細かい演出が生きているな、と思わされます。(真面目(普通)すぎると、場に面白味が湧かない)
 性格とかもそれで表現されますし。アメリカ兵ってこんな感じかなぁとか。口笛一つだけなのに、あるかないかでは大違い。

 兵士達は何班かにわかれてるんですね。時にクローズアップされる指揮官めいた男は、その班を仕切る者らしい。第1分隊。

 5月11日。
 笹に覆われた丘を登る兵士達に、爆撃が襲いかかる。空爆か。
 早速、怪我人や死人が出る。

 大雨。テントを張り、休息する兵士達。
 照明弾が木々の上をゆっくりと落ちてゆく。

 朝。テントをたたみ、出発する兵士達。
 「この丘を奪う」
 そんな言葉が指揮官からかけられる。ドックは「何のために」と聞き返す。そこは軽口でかわされるが、彼らもまた、何もわからずに軍の指令で戦闘をさせられているだけなのか。

 早速、爆撃の洗礼を受ける兵士達。地を揺るがすその威力(いりょく)。映画という気がしません。本当に戦地を見ているかのよう。
 丘の傾斜がキツクなってくる。地にへばりつきながら、彼らは死闘を繰り広げる。
 敵の姿は見えずとも、銃声が視界を塞ぎ、雨あられのように爆弾が降ってくる。




戦闘機による空爆。圧倒的な破壊力。


主人公的な軍曹。
 ……と、ここまで書いた分で映画の半分くらいですね。後は延々とこの丘での戦闘が繰り広げられます。

 この辺から敵の姿が見えはじめてくる。ベトコンと呼ばれる、アジア系の顔の者達ですね。
 銃弾の直撃で頭を粉砕されたり、と過激な描写が突然出てきたりします。まさにホラー。きっとこういう悲惨な死に方が、現実の戦地ではゴロゴロしているのではないか、と。(銃で撃たれて、身体の損壊がないままキレイに死ぬばかりではない、と)

 イモムシのように地を這い、丘をじりじりと登っていく兵士達。戦いは激しさを増していく。

 ●

 戦闘機が空を駆け抜け、丘に火花を植えていく。
 さらに重低音を響かせて丘をイッキに焼いていく。

 ここでよく顔を出してきた指揮官が、「軍曹(ぐんそう)なのだとわかる。ほんと、説明が何もないですからね……。
 なお軍曹というのは、この戦場に何人かいるみたいですね。班ごとに分かれたリーダーみたいなものでしょうか。

 ●

 その後はひたすら、丘の頂上を目指し、進軍していきます。
 全身土ぼこりまみれになり、ブーツは泥だらけ。地を這いながら懸命に登り、銃を乱射していきます。
 しかし、味方のヘリからの機銃で同士撃ちをされたり、そんなやるせないハプニングがあったりもします。

 なお、四六時中戦闘をしているワケでもなく、時折休息が入ります。愛する彼女からのテープメッセージがあったり、手紙があったり。しかしアメリカ国内でも戦争を支持している者ばかりではなく、彼女から戦争への嫌悪を告げられてショックを受けたりもします。

 「進め!この丘を占領するんだ」
 叫びを上げながら、進軍していく彼らの前に、思わぬ者達が出くわします。
 なんとそれはネタバレ: TVクルー達。戦争中でありながら、兵士達は彼らにインタビューされたりします

 ここで軍曹が彼らに放つ言葉が、カッコよすぎてシビれます。従順で素直で平和的な人間には決して放つ事などできないこの言葉。人間、時に反発する事を覚えた方がいいのかもしれません。



場はまさに阿鼻叫喚(あびきょうかん)の
地獄。
 大雨の中での戦闘。死者も増えます。
 砲撃、銃弾は激しさを増すばかり。彼らを丘から洗い流そうとするかのよう。
 全身泥まみれになりながら、嗚咽(おえつ)や叫びを上げ、彼らは必死で丘の頂上を目指していく……。

 別の軍曹の独白。しんみりと語る、彼の壊れた人生。
 彼らもまた普通の人間であり、普通の暮らしがあるべき人達なのだ。しかし戦争に関わった事で、家庭が壊れ、普通の暮らしへと戻れなくなってしまったりもする。

 戦闘の終盤。勇ましいBGMが流れます。
 ひたすら頂上を目指し、銃を撃ちまくる兵士達。その丘を奪い取る事が、果たしてできるのか……?


 1969年の出来事。史実を元にした映画なんですね。
 この映画での主人公的な軍曹の名前はフランツ、だったんですね。ラストのキャスティング紹介場面でやっと名前が出てきました。

 調べてみると、これはベトナム戦争の一角なんですね。映画を観ている間はそんな事すらわかりませんでした。

 さらにベトナム戦争についてわかりやすく書かれたサイトを紹介します。 http://eiga-kaisetu-hyouron.seesaa.net/article/137067680.html
 ベトナム戦争って、別にアメリカがベトナムに攻めていったワケではないんですね。(全くのドシロウトですみません)

●総評

 戦場のリアルさ。これに尽きます。
 映画という気があまりしない。本当の戦場を目で追っているかのようでした。

 ホラー度については、4。熾烈(しれつ)な銃撃戦により、人がバタバタと死んでいきます。時に頭部を失い、時に腕を失う。そういった描写も時折描かれています。

 ハナにつく(失礼)戦争賛美や戦争の悲しさ、おろかさなどを表面に出してくる事もなく、戦場というものを特別な感情表現なしに、リアルに描いているというだけの映画。でもだからこそ、いい。
 そして時折語られる人間模様。等身大の彼らに共感、同情させられます。

 結論としまして、「ハンバーガー・ヒル」の名にふさわしい、死体ごろごろの映画でした。


極黒(ごくこく)のブリュンヒルデ
 (アニメ全13話/2014年4月TV放送開始/DVD、BD化済み)

 原作 岡本 倫(「エルフェンリート」「ノノノノ」)
 監督 今泉 賢一
 製作 ARMS(アームス)/「極黒のブリュンヒルデ」製作委員会

 ホラー度:★★★★美少女がどろどろ溶けたり、血まみれになったり、半身がぶったぎられたり……。残酷描写を隠さず描いてます)
 面白さ :★★★★★(ラスト直前まではもう、のめり込みの6。しかしラスト付近は色々とご都合主義的すぎ。でも全体的に、ハラハラさせるのが上手い)

 (あらすじ; 高校生の村上 良太は10年前に自らの過失で亡くした少女の事をずっと想っていた。その少女にそっくりな女生徒が学校に転入してくる。しかしその子は九九も知らない変な子で、しかも魔法使いだった……。やがて魔法使い達が集まり始める。しかし、彼女達が生きるために必要な薬が不足し、彼女達の死が間近に迫る。良太は彼女達を助けたい一心で奔走(ほんそう)する)

 (一言: 人体改造されて「魔法使い」になった少女達と主人公の少年が、生き延びるために困難を打ち破っていくストーリー。最初の難関は、少女達が生きるのに必要不可欠な「薬」の不足。それをどう入手するのか。そしてヒロイン達の命をおびやかす、機関直属の高レベルな魔法使い達との死闘。ヒロイン達はどんどん増えていき、華やかになる。しかし命を落とす者も(泣けます)。作画レベルは良好(マンガ版よりキャラが可愛い)。期待感抜群のOPも素晴らしい)

 ●レビュー

 観ようと思ったいきさつは「エルフェンリート」つながり。岡本 倫さんの作品は他に「ノノノノ」とかありましたが、あれはスポーツマンガだったようなので興味は持てなかったんですが、この「極黒のブリュンヒルデ」は何かありそうだな、と。
 原作マンガではなくアニメのレビューになってしまったのは、たまたまアニメを先に手に取ってしまった、というだけの話です。

 で。面白すぎて次々と観てしまって、全13話をものの3日くらいで観てしまいました。
 ラスト付近になると、「あぁ、もう後2話で終わるのかぁ」と非常に残念な気持ちになるほど、観ていて心地良かったですね。まだまだこの世界に浸っていたかった、という感じです。

 泣けるシーンも多めでした。やっぱりネタバレ: 奈波のエピソードは胸に残ります。EDでの心使いにもグッときました。こういう小さな心配りは素晴らしいな、と。

 でも何でしょうね。エルフェンリートでもそうでしたが、主人公の男の子が、特殊能力を持つヒロイン達をたくさん集めてわきあいあい……という「ハーレム状態」。状態が同じすぎ。
 まぁ余計な男キャラが出てきて、場が台無し……というのも面白くなさそうですから、今のままでいいのかもしれませんが。


村上 良太。
幼い頃、事故で死なせてしまったクロネコの事
を想い続ける。
ずば抜けた記憶力を持つ。
ヒロイン達に好かれすぎ。

黒羽 寧子。
佳奈が予知する「死」を止めるべく、良太のい
る学校に転入してきた。
彼女は良太の幼なじみのクロネコなのか?

佳奈。
予知の魔法を持つが、全身不随。
この設定が異質すぎて凄い。
 ●個性的なヒーロー、ヒロイン達

 主人公の村上 良太。高校生。10年前にダムからの転落事故で死なせてしまった「クロネコ」という少女の事を想い続け、彼女が言った「宇宙人に会った事がある」という言葉を信じ、何とNASAの研究員をめざしている。成績はトップ。
 学校では廃部寸前の「天文部」を一人で行い、山の上の天文台で星を見続けている。

 そして極度のお人よし。それがヒロイン達に好かれる要因なんですね。なおヒロイン達のボケにツッコむ感じの役割。そして恋愛の対象。
 魔法というワケじゃないんですが、良太には「一度見たものをスキャナーで取り込んだように覚えている」という能力がある。それが物語上、色々と役に立っていきます。

 黒羽 寧子(くろは ねこ)。良太のクラスに転入してきた少女。寧子を一目見て、「クロネコ」なんじゃないかと良太は思う。
 寧子はそれを否定する。しかし寧子は幼い頃の記憶を一切なくしているのだ。なお学校に通った事がなく、語学力や常識は小学生以下。

 幼い頃のクロネコにあった、「脇の下の三角形のホクロ」は寧子には見当たらない。……だからやはり、他人なのか?
 そして寧子は「モノを破壊する魔法」を使う。寧子が変な歌を一人で口ずさむのが可愛い。して魔法の誤発動という嫉妬(しっと)の表現も笑えます。

 佳奈(かな)。全身不随(ふずい)の魔法使い。寧子に介護されている。「予知の魔法」を使い、次々に出て来る予知が、物語を大きく引っ張る形になっています。メイド服(…ゴスロリ?)を着用。
 左手の指だけが動くので、音声変換のキーボードで会話はできる。
 (後日談: マンガよりアニメの方が数段可愛いです、佳奈は。ちなみに寧子達より年下だったんですねー)

 カズミ。最初は寧子達と離れた場所にいたが、やがて合流する。ネットを使い、情報操作を得意とする。魔法なので、ハッカー以上の力を持つ。
 エロ担当。良太を気に入り、ガツガツ攻める。しかし処女であり、本音はまだ純真。死ぬ前にHな事(もしくは恋)がしたい、という感じ。

 他、おっとり系で「入れ替わりの魔法」を持つ鷹鳥 小鳥や、人の記憶を操る奈波、死んでも生き返る「回復の魔法」を持つ初菜、などのヒロイン達がいます。

 対する敵も、なかなか強力なヤツらばかり。アニメに於ける最大の敵は「ヴァルキュリア」。なり強力な攻撃魔法を使います。
 寧子達は魔法使いランクが低いんですが、敵はその上。強力な敵を、能力では劣るヒロイン達が協力しつつ、良太を交えて頭をひねりつつ倒していくのは、なかなか胸が踊るものがあり、見応えもあります。
 良太の頭の良さが、毎回生きてきます。

 ●

 ヴァルキュリアに関しては、本編に出てくるとずいぶんアッサリした顔だな、と。初期のOPに出てきた、あの素晴らしく深みのある顔と、かなりかけ離れているのが少しだけ残念でした。
 13話しかないのに、後期のOPもありますね。イカレた感じの曲(アニメ「寄生獣」のOP曲にそっくり……)ですが、やはり初期OPの方がいいかな、と。雰囲気があって非常に盛り上がるOPでしたし。
 主要ヒロイン4人が歌うED曲もまた素晴らしいです。癒されます。

 ●ホラー的には

 肝心のホラーシーンですが、女の子達がドロドロに溶けて死んだり、身体を真っ二つにされて死んだりと、なかなかグロテスクな描写が多めです。
 そして差し迫る「死」。
 魔法使いである彼女達はとある機関に肉体を改造されており、毎日、鎮死剤を一つ飲まないと死んでしまう。その薬は常に不足していて、物語開始時でもう5日分しかないという切迫さ。
 あまりにも死が近い彼女達。はかなさがあります。何かしら行動しなければ、すぐに死んでしまう。

 半ばあきらめて、死を受け入れようとしている彼女達に良太が関わって強く引っ張っていく事で、物語は始まっていくんですね。


カズミ。
わざとエロいシーンを入れてみました。
貧乳(失礼)キャラでエロ担当というのもめず
らしい気が。

魔法使い達のうなじに埋め込まれたハーネス
ト。
さまざまな秘密がある。
 ●他

 ちょいエロシーンがそこそこありますね(乳首もちゃんと描かれてます)。
 カズミがエロい子なんですが、あんな風に迫られたら、男はイチコロでしょうねぇ……。
 自分は、ビジュアル的に佳奈が好きなんですが、カズミも面白い子なので捨てがたいですね。

 ●残念だったところ

 この作品で、2つだけ大きな違和感を感じました。
 小鳥の登場時の「微笑みの理由」。あれはどうにも上手くないな、と。後から理由を聞かされても、「こじつけ」めいた印象しかもてませんでした。(後日談: 原作マンガも同様でした)

 あともう一つ。非常に残念だったのが、ラスト前の村上のネタバレ: 土下座のシーンれは致命的と言えるほど、かなりかっこ悪かった……。別に、あんな心にもない事を言わなくても良かったのに……。(敵の虚(きょ)を突くのはわかりますけど、もうちょっと何とかならなかったのか、と)

 さらに言えば、魔女達のうなじに付いているハーネストの「死ぬより恐ろしい事になるボタン」。
 これがラストで、大きな「ご都合主義的な展開」を生んでしまっているんですね。全くして、都合良すぎ。だから少し、萎(な)えました。(後日談: しかし、マンガではちゃんと別の説明がついていて、これなら納得、という感じでした

 (後日談: 動こうと思えば佳奈は動ける?という伏線についても、アニメではやや投げられた感じになってますが(ボタンを押せば、という伏線だと理解するしかないが、それだとニュアンスが少し狂う)、マンガではちゃんと説明されてますね

 全体的に、ラストはやっぱり「色々と都合良すぎたな」と。そんな印象が強いです。
 でもまぁ、あんまり暗く重い物語でもしょうがないですし。上手く終わったな、という感じでした。

 ●BDBOXについて

 ブルーレイが欲しい……とは思いましたけど、BOXが2巻に分かれているんですね、たった13話しかないのに。
 amazonで値段は変動し続けているようですが、(2016年10月現在)BOX2巻で2万数千円。ちょっと手が出ませんねー……。

 ちなみにBDBOX特典の第11.5話「から騒ぎ」はネットで観る事ができましたが(いいのか…?)、かなり気抜けした内容でしたね……。作画もあまり良くなかったですし……特に笑えるでもなく、下らなさすぎて(失礼)、本編の流れに入ってなくて良かったな、という感じでした。
 正直、本当に要らなかったな、と。

●原作マンガ(全18巻)との比較など

 アニメ全13話を観終えた直後。マンガも全巻イッキ買いしちゃいました。amazonで結構安く買えたので。
 読むと、ほとんどアニメと同じ流れですね。セリフなどもマンガと同じものがほとんど。
 やっぱりマンガの方もかなり面白い。アニメを観終えたばかりなのに全く飽きる事なく、マンガも読み進めていってしまってます。

 意外だったのは、アニメの方がエロかった事。マンガじゃ女の子の乳首が描かれてないんですが(何故でしょうね。「エルフェンリート」ではちゃんと描いてましたが)、アニメではしっかりと描かれてます。
 ただアニメではおっぱいをアップで描きすぎて、顔が画面に入ってなかったりして、構図的にちょっと残念なものがちらほらあったかな、という感じでした。(そこまで評論するのか…)


奈波。
この子のエピソードは丸ごとお気に入り。
 アニメの方はキャラデザとか、原作より人物の描き分けがしっかりされているマンガはみんな似た顔…ので、ビジュアル的にはアニメの方が勝ってますね。
 佳奈もアニメの方が可愛いですし、カズミが良太に迫るエロシーンもアニメの方が格段にエロい。

 でも原作は18巻もありますので、当分の間は楽しめそうです。アニメでは描かれていないエピソードもいくつかありましたし(山荘襲撃とか)、さらにはアニメ以降の話も読める。

 原作とアニメの違いですが、最初の方はほぼ原作の流れ通りでしたが、巻が進むにつれて、かなりアニメと違ってましたね。大まかな流れは一緒ですが、細かな見せ場が色々と違ってます。
 アニメ後半での重要人物である初菜いなかったら、重要キャラ死亡者多数……)。彼女の登場シーンもだいぶ違ってましたね。ここはアニメの方がいいかな、と。
 個人的にかなり好きな奈波のエピソードですが、ここはアニメとほぼ同じだったので、何だか嬉しかったですね(ここ、アニメでカットされてなくてホントに良かったです)。

 とにかくマンガもアニメも、存分に楽しいのは確かです。ハマッてます。ハマリすぎてます。

 佳奈が動けるのに、動かないフリをしている?という伏線ですが、これはマンガ版ではカズミがかなり強いツッコミをしてますね。そしてちゃんと後に説明付けされている。納得いきました。(アニメのようにあやふやではない)

 他、アニメでは描き切れていなかった部分が、マンガではヴァルキュリアとの対決以降、新たな問題として浮かび上がってきます。
 アニメのラストでは、実は大きな不安が水面下にただよっている。魔法使い達のハーネストの中に宿っている、寄生生物の事ですね。それが成長してしまうと、ネタバレ: 魔法使い達は化け物のようになってしまう。そしてそれは確実に、いずれ起こる。
 魔法使い達は、生きながらえていてはいけないのか……?

 ●ホラー的には

 アニメと同様、血まみれだの胴体切断だの美少女どろどろだの、ホラー的な見所は多いですね。
 なお、魔法使い達のうなじにあるハーネストをイジェクト(魔法使い達は死ぬ)した時の描写は、マンガの方が凄惨な印象を受けますね。ギリギリブチブチメリメリメリ……「ああぁあぁあああぁああああ!!」(擬音、マンガのまま)ですから。壮絶です。

 なお、ハーネストは筒状をしており、その中には、見るもおぞましい寄生生物(ドラシル)が宿っているんですね……。つまりそれ、ネタバレ: ヒロイン達全員に埋め込まれている)……んですよ?
 アニメ以降の話になりますが、マンガではそのドラシルが魔法使い達の恐怖の対象となります。そのドラシルがやがて孵卵(ふらん)すると……彼女達はネタバレ: 人を喰う化け物になってしまう。

 ドラシルにはもう一つ恐ろしい秘密があるんですが……それは「3X3EYES(サザンアイズ)」の化蛇(ホウアシヲ)を彷彿(ほうふつ)させますね。

 ●マンガ冒頭2ページの謎

 マンガの冒頭2ページ。あの謎の場面、もちろん後に伏線として機能するワケですが、ちゃんとネタバレ: ヴァルキュリアの影も最初から描かれているのには驚きました。
 この謎の場面が再現されるのは、何と10巻目。どんだけ先を見越してこのマンガを描いたんですか……? 大体にしてそのシーンまで連載が持つかどうかもわからなかったでしょうに……(半ばで打ち切られたら、冒頭2ページはマジでワケのわからないシーンに成り果てたのでは)。

 でもこの2ページ、凄くいいシーンというワケじゃないんですよね。要は読者を「?」にさせるミスリード(誤解させる)の役割を持つ2ページなんですね。実際、10巻目ではこのシーンをムリに再現させたようにしか見えません。その場でもっと的確なセリフとかあったのでは?と思ってしまいました。


アニメでの最大の敵、ヴァルキュリア。
容赦なく魔法使い達を殺す中、何故か寧子を
殺そうとしない。
●総評

 もちろん、原作マンガあってのアニメ。原作マンガの存在価値は相当なものです。

 物語の設定が凄い。宇宙人の存在、魔法使い、人体改造、その機関などを小出しに出してきて、物語はなかなか複雑に移行するのに、話の整合性の矛盾とかあまり見られない。(つまり描きながら、思いつきで設定を増やしていったり、というのがあまりない?)
 ちょっと「エヴァンゲリオン」ぽさが入ってるかな〜という感じもしますが(宇宙人の復元。謎の者達が集まっての会話)、それはそれで。

 そして魔法使い達の「ランク分け」というアイディア。さらには各々の魔法を、効果的な場面で魅せるという作者さんの腕。
 さらには魔法使い達のうなじにある「ハーネスト」の設定。3つボタンがあり、左はイジェクト=死。右は能力を使えなくする(ハングアップ)。上は「死ぬより恐ろしい事になる」ボタン(マンガではちょっと違う)。
 こういった設定の作りが非常に魅力的で、引き込まれます。

 何だかんだ言っても、とにかく面白い。笑えるし、泣ける。アニメもそうでしたが、とにかく見所が多い作品です。
 岡本 倫さんのマンガ、実に素晴らしいです。ハマリますね。
 主人公が流されるばかりではなく、行動的だったのも良かったです。


闇芝居 ――「闇芝居」製作委員会
 (2013年TV放映開始/一期、二期、共に全13話(三期もあり)/DVD化済み)
 (情報提供: NIRVANAさん)

 アニメーション製作 株式会社ILCA
 総合演出 高嶋 友也
 脚本 熊本 浩武(二期は熊本氏に加え、ブラジリィー・アン・山田、映画監督の清水 崇(「呪怨」)などが参加)

 ※上記情報はウィキペディアにて。

 ●一期

 ホラー度:★★★★(マニアック(グロなど)さはなく、一般人も視聴に耐えられる程度のホラー。オチのキレがいい)
 面白さ :★★★★★(ショートホラーなので、1話ごとに新鮮。様々な恐怖を楽しめる。秀作も多い)

 (あらすじ: 夕闇に染まる公園内。紙芝居の男が子供達を呼ぶ。今日の紙芝居はどんなものなのか…)

 (一言: フラッシュアニメ風。1話4分程度。短い話ながらも見所は多く、話もよくひねられていて、オチのキレも良い(似たようなオチ(化け物がドーン)がいくつかあるが)。秀作が多く、ハズレは数少ない)

 ●二期

 ホラー度:★★★☆☆(絵の質が向上し、ホラー演出(動き)がパワーアップしているものの、話そのものがストレートすぎて面白くない)
 面白さ :★★☆☆☆ひねりが足りない話が多い。面白いと思える話が、あまりにも数少ない

 (一言: 一期と比べ、絵の質が向上。実写の混ざり具合も多い。しかし、面白怖い話が数少ない)―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――−―----------------------------------------------------

画像はアマゾンより

●いきさつ

 掲示板にて、NIRVANAさんから教えていただきました。どうもありがとうございます。

 (無題)  投稿者:NIRVANA  投稿日:2016年03月07日

  お久しぶりです!(略)また今日もとっておきのホラー仕入れてきましたよー

  現在進行形で放送されてる、「闇芝居」というオムニバスホラーショートアニメで、ノリは不安の種のようなノリです
  今は3期放送中のようですね
  ニコニコで最新話無料で公開されてたので、ご覧になってはいかがでしょうか?
 (後略)

 最初、ネット上の動画でちょっと観てみたんですが、なかなか良さそう。で、調べてみたらDVDが出ていたので、レンタルで観ました。
 ネットの動画だと有料だったり、無料で観られても広告がありまくり、だったりしたもので。

●レビュー

 一期は全13話。どれも4分程度のショートストーリー。全部観ても1時間程度というお手ごろさ。
 なかなかの良作揃いなので、13話全部をレビューしてみました。

 お札女

「これはあるアパートに引っ越してきたばかりの、男のお話なんだな〜……」

 荷物を部屋に運び、寝転んでふと天井に目がいくと、そこには1枚のお札(ふだ)が。はがす。窓から向こうの建物が見え、そこにはたたずむ女の姿が。こっちを見ている気がするが……。
 翌朝。ゴミ捨てに出ると、その女が昨日と同じように、窓からじっとこちらを見ていた。怖くなって逃げる。

 その日の夕方。部屋に戻ると、はがしたハズのお札がまた天井に貼ってある。はがそうとしたら……部屋の中に、女がいた。向かいの建物の女だった。それは化け物などではなく、普通に警察に連行されていく。
 男は気を取り直し、部屋の掃除をしていたら、ちゃぶ台の裏にびっしりとお札が。頭にきて、それを全部はがす。すると……

 >
 普通のアニメではなく、フラッシュアニメみたいな感じです。最小限のパターンの絵を動かして、アニメとして見せているような感じ。昭和を思わせる古びた背景。雰囲気もいいです。
 ホラー的にもなかなか楽しめます。たった4分程度の話ですが、ストーリーが練られていて、感心させられました。

 ★惨拝

「これは会社の出張で、ある田舎の村へやってきた、男のお話なんだな〜……」

 足にギプスをつけた状態で、病院の一室で目覚めた男。部屋の隅には3人の男がよりそって話をしている。
 医者は言うには、自分は山道で足をすべらせて、がけ下で発見されたとの事。足は骨折している。
 夜中になっても3人の男はまだ話をしている。カーテンごしに立っているなどの異様な行動に、男はおびえる。

 翌日の夕方には退院。
 病院を振り返ってみると、屋上から先の3人がバンザイをしているのが見えた。自分の退院を祝ってくれている……。悪い人達ではなかったのか、と安堵する。
 タクシーで病院を離れる。男はふとその事を運転手に話す。運転手がミラーごしに見たそのバンザイ。しかしそれはバンザイではなく……。

 >
 ラストがなかなかにドラマチック。スピーディにオチがきて、切れる。このキレの良さがいいですね。
 聞いた事のない「村の風習」みたいな感じの話が、この後にもいくつかあったりしますね。

 ●家訓

 その家では毎年決まったある日、親戚一同が集まって「笑鎮め」という行事を行う事になっていた。一晩じゅう、大人達は笑い話をし続けるのだ。
 子供が夜中、おしっこに起きる。そして座敷で笑いあっている大人達を見る。

 子供から見た大人の不可解さ。ラストのキレはいいんですが、ビジュアル的にはちょっとつまらない感じ。

 ★かみ

 とある小学校で、夜遅くまで学級新聞を書いていた女教師。コピー機で(昭和らしくない近代的なコピー機…)新聞をコピーする。
 しかしコピーした紙には、妙な線がいくつも入ってしまっていた。コピー機のフタを開けて中を見るとそこには……!
 疲れて変なものを見たんだろうと気を取り直して再度コピーをする。今度は上手くいったかと思いきや、印刷された紙には徐々に妙な線が増えていき……。

 2回3回となかなか怖いシーンが盛り込んでありますね。そこそこ予測できる感じですけど、ラストも怖楽しいです。
 コピー機のレーンを引き出すシーンを見て思ったのですが、こういう恐怖モノってもしかすると、視聴1回目が花なのかなって思ったりします。要は、そこでどうなるのか全く予想ができないから怖い。(レーンに手を挟まれたりするのではないかと思ったり)
 2回目以降は、話のスジがわかってしまっているので、未知の恐怖というものがない。これは恐怖モノの悲しい宿命なのでしょうか。

 異階

 とあるデパート。エレベーター内で見る異世界の数々。
 いいですね、これは。エレベーターガールのあの衝撃のヒトコマ。そして明るい店内に戻って来た男が見たものは……。

 ●網棚

 ここで急に絵が変わりますね、ダメっぽく。でも上手い絵じゃないと怖がれない、という事もないとは思いますけどね。

 電車内での男のイライラ具合が笑えます。網棚には妖怪みたいな変なものが。そこで人身事故が発生。
 電気を消された車内。男は化け物を見続ける。そしてどんどん飲み込まれていく……。

 男の演技が楽しい一本。話としてはちょっとストレートすぎ。
 化け物、という派手なビジュアルを出してきたのもいいですね。

 ★★矛盾

 これはよく聞く話ですけどね。
 友人から電話がかかってきて、ツレが事故にあって死んだという。だが、本当に事故にあって死んだのは、実は電話をしてきた友人だった、とかいう感じの話。それをひねって、描いてるんですけどね。
 これはもう「題材の勝利」なので、面白いのは仕方ない。色んなパターンが描けそうですね。
 ちなみに絵は戻りましたね。色んな人が描いてるみたいですね。

 題材の勝利ではありますが、この筆者はそれをかなり面白くしてくれています。廃病院。まゆみの奇妙な一言。そしてわかってはいるけど、怖いオチ。
 名作ですね。こういった話が何本も入っていると、作品全体の完成度が増していく感じです。
 ショートホラーを集めても、つまらない話ばかりだったらどうしようもないですからね。

 ★★傘神様

 個人的にかなり気に入った話です。
 友達の家に遊びに行った少年の話。少年は家の前で、傘をさした女を見つける。しかし雨は降っていない。(まぁ日傘かもしれないんですが)
 その話を家の人に言うと、怯え出す。そして少年は一晩、蔵の中に閉じ込められてしまう。朝まで決して、開けてはダメだと。

 何がいいのかと言うと、傘神様が出てくる時の「効果音」がいいんですね。どういう音かは実際に聴いてもらいたいんですけど。何とも天才的なセンスだな、と。
 さらには傘神様が傘を手に持っているのではなく、ちょっと違った持ち方をしているんですね。そこもまたビジュアル的にも怖いな、と。

 ラストのキレも最高級。そしてそれにかかる一言もまた、印象的です。

 ★★祟られ

 その娘は全身に青アザが。呪いか。今まで除霊してもらってきたが、「手に負えない」と言われ続けてきた。
 母親は新たな除霊者を見つけてくる。神社の宮司(ぐうじ)。除霊は成功し、娘からアザが消え、元気になったのだが……。

 ラストが最高にいい。もちろんホラー的に、ですけど。

 ●月

 少年が幼い頃、その合宿所のぼっとん便所に落ちた時に見た、異様なもの。
 話があまりにもストレートすぎましたね。でも怖いものを見せる演出はなかなか。

 ●ビデオ

 幽霊が映っているビデオを友人らと見るが……。
 なかなかいいんですけどね。現実がありえないようにゆがんでしまう話は結構好きですね。

 ●トモナリクン

 団地。子供達が集まっている。彼らは「トモナリクン」と遊んでいるという。しかし女子高生には、それが地面に映り込んだ影かシミにしか見えない。
 女子高生は、一緒に遊ぶという約束をしてしまったばっかりに……。

 これもまた、なかなかいい、という感じ。悪くもなく、そんなにズバ抜けて良くもなく。

 ★★疼憑き(うずき)

 見てはいけない、と言われているもの。それを遠くから、双眼鏡で覗き見していた子供達がいた。
 大勢の大人達が目隠しをし、その後ろでは踊っている者がいる。一体何をしているのか?

 序盤の恐怖演出も素晴らしいし、オチの演出が何と言っても凄すぎ。

●一期を見終えて

 そんな感じで、一期はかなり満足して視聴する事ができました。続けて二期を見てみます。

●「闇芝居」二期

 問題の二期。それというのも、アマゾンでの酷評の数々を、先に目にしていたもので。どれだけひどいのか、非常に気になりました。(これはこれで楽しみ)
 ついでなので、全話レビューしてみました。

 タロちゃん

 絵は一期よりいいですね。安定感が増しています。
 警察官が子供達を前にして、人形を使っての腹話術を披露(ひろう)。

 流れは何となく予想がつくんですが、これはいいです。怖さも面白さもなかなか。ラストの静けさもたまらない。

 ●台所

 友人のアパートに招かれ、食事をする。しかし台所から妙なものがのっそりと出てきて……。
 これもそんなに悪くはないんですが、オチまでの流れがストレートすぎるかな、と。
 化け物の絵と動きはかなりいいんですけどね。

 ★中身

 子供が空き地で拾っただるま人形。母親が捨てに行くが、なかなか帰ってこない。
 帰ってきたかと思えば、何だか様子がおかしい。捨てに行ったハズの人形もかかえている。
 そして母親の様子がおかしいと気づく子供。母親がフロに入っているスキに、だるま人形を調べてみると、それにはとある秘密があった……。

 かなりいいです。人形の秘密がビジュアル的にもいいし、オチも「なるほどな〜」と納得いきます。

 ×壁女

 向かいのアパートにいた奇妙なものを見てしまい、それがこっちにやってくるというだけの話。
 これはストレートすぎて、全ッ然面白くないですね。
 いえ、ストレートより悪い。ムダな事をさんざんやってますし。

 ●ロッカー

 とある地下のコインロッカーで、人形の入っているロッカーに好きな人の写真を入れると恋が叶う。そんなウワサを信じた女子高生の話。
 あれ? 悪くないですねー。なかなかいいですよ、これは。
 ただ、「これはないだろう?」という死に方をしますからね……。ちょっと奇抜すぎた気もします。

 ×ナオちゃん

 両親と子供。子供は天井に、ナオちゃんを見る。……ダメでしたね。何にも面白くない。
 しかも調べてみたらこの話、映画監督の清水 崇氏の脚本ですか。これは残念。

 ●ガチャ

 ガチャガチャ(カプセルトイ)ですね。20円で出てきたものは、昔なくした宝物……。
 次々と出てくるなつかしい思い出。夢中になっていく内に……。
 そんなに悪い話じゃないんですけど、老化するのが早過ぎる気もしますし(別に老化しなくてもいいのではないかと)、オチが普通すぎましたね。

 夢中になって次々と思い出をたどっていく内に、忘れてしまっていた恐ろしいものが出てくる、といった感じでも良かったんじゃないかなー、と。
 と言うのも、今のままじゃ怖くはないですし。

 ウィキペディアによれば、ガチャを一回回すのに、20円ではなく20年を費やすとの事で。だから老化しちゃったんですね。納得。

 ●告別

 葬式。告別式ではなく、「つげわかれ」だそうで。まぁそういう風習を勝手に作ってみました、という感じの話なんでしょうけどね。
 故人に秘密を打ち明けると、それは故人の魂と共に浄化される。
 オチが何となく読めるだけに、「あぁやっぱりな」という感じで終わってしまう。

 ……この二期は全体的に「強さ」に欠けますね。
 全然ダメな話があったり、まぁ普通かな、という話が多くて、感心するような話がかなり少ない。
 アマゾンのレビューでの酷評も、わかる気がしてきました。一期と比べると、ほんと「面白くない」。

 ●おみにえさん

 おみにえさんとは、その田舎での特殊な食べ物。地元の人には大人気。
 その田舎に赴任してきた新任教師はそれが給食に出てきても、気持ち悪くて食べられなかった。

 オチとかストレートですけど、そこそこいいかな〜という感じではあるんですが、やっぱり力強さに欠けるかな、という気もします。
 なんか微妙すぎなんですよね。「あぁそうか」で終わってしまうような。

 ×虫唾

 イライラしながらも日記をつけ続ける男の話。「はぁっ?」という感じのオチ。何でそうなるの、と。
 と言うかこの1話だけ、ワケわからなさすぎです。

 ×拾い業

 電車で忘れ物の小説を拾い、それを投稿して、受賞してしまった男の話。せっかく題材も流れも良かったのに、下らない展開にしてしまったなぁという感じ。
 あまりにも、もったいなさすぎ。序盤を大人が書いて、後半を子供が書いたような話。

 ●根付け

 イヤリングの話ですね。まぁこれもストレートかなぁと。オチも大して感心するワケでもなく……。絵は非常にいいんですけどね。

 ×寄鼓

 その村には、引っ越してきた者を歓迎するため、でんでん太鼓を、道端の両脇にずらりと並べて道しるべにし、「良いもの」を家まで送り迎えるという風習があった。
 オチがもう、どうしようもない。

「何でプロがこんな話を書いて、しかも自分にOKを出したんだろう?」と不思議になるほど、面白くも何ともない。
 それとも何か、隠し要素でもあるんでしょうか。近隣の家の明かりが、あの叫びに呼応してましたからね。……でもまぁそう深読みをしてみたところで、感覚的に面白くないものはやっぱり、面白くはならないんですけどね。

●総評

 確かに二期はパワーダウンしていましたね。オチが何のひねりもなかった話が多かった気がします。
 二期のアマゾンでの低評価、間違いではなかったです。「面白い」と思える話がほんと、数少なかった。いいな、と思ったのは、「タロちゃん」と「中身」、この2つ。次点として、「おみにえさん」と「ロッカー」と「台所」。
 その他はもう、直感的に全然面白くない。いくつか「惜しいな〜」と思える話があったりもしましたが、駄作にしちゃってあー残念、という感じです。(いつもながら、エラッそうですみませんけど)

 二期はともかく、一期は奇跡のような名作揃い。これは胸を張って、オススメできますね〜。(自分、極端な性格みたいですみません……)
 普通のアニメではないので、動きがややぎこちない感じなんですけど、それがまた味があっていいのかもしれません。「絵を揺らす」という演出のみで、人物の動きを表している箇所がかなり多く見受けられますね。

 ところで、ネットで調べてみてわかったんですが、この「闇芝居」は「都市伝説」を描いた話だったんですね。
 だから、それをそのまま素直に描いてしまえば、それなりの話で終わってしまう……。しかし面白くしようと話をひねってしまえば、都市伝説そのものをゆがめてしまう。脚本化にはそういった「制約」じみたものがあったのかもしれません。
 二期は都市伝説を素直に描きすぎて、面白くならなかったのかな、と。でも一期ではやれたんですから、二期でも何とかできたハズ。
 絵の素晴らしい二期ではありましたが、絵だけじゃあ作品は面白くはならないんだな、と再確認しました。やっぱりシナリオありき、ですね。驚きと感心を、与えてほしかった。

 なお余談ですが、自分が利用しているレンタル店には「闇芝居」のDVDの一期は置いてなくて、ゲオの宅配レンタル(ネット)を利用しました。そこには置いてありますので、参考までに。


ハンニバル
 (TVドラマ版 1話42分/2013年製作/原題 Hannibal/シーズン1〜3)

 ホラー度:★★★★(やたらめったら怖いワケではなく、ほど良い怖さ。だが死体はかなりリアル(グロもあり)。人の臓器を調理するシーンも多い(血なまぐさくはない))
 面白さ :★★★★★(主人公ウィルが凶悪犯になりきって、その犯罪を「見立て」るシーンが斬新。数々の凶悪犯罪が解決されていく、という(正統派的な)爽快感もある。紳士的にふるまい続けるレクター博士。しかし彼の正体は、視聴者があらかじめ知っている)

 製作総指揮・脚本 ブライアン・フラー 他
 原作 トマス・ハリス「レッド・ドラゴン」
 出演 ヒュー・ダンシー/マッツ・ミケルセン/ローレンス・フィッシュバーン

 ※以上の情報は「ウィキペディア」より。
 ちなみに監督は毎話違う模様。シーズン2より、「CUBE」のヴィンチェンゾ・ナタリ氏が監督を務めた回が多くあるのも注目。

 (あらすじ: ウィルは特殊なプロファイラーで、犯罪現場で凶悪犯になりきって、その犯罪の詳細を「見立て」る。その能力をFBIのジャックに買われ、現在起こっている「女子学生連続誘拐事件」の捜査に協力を求められる。その後も次々と起こる凶悪犯罪の捜査に関わっていく内、ウィルの精神状態は危うくなっていく。ウィルとともに、ジャックは精神分析医のハンニバル・レクター博士に協力を求める。レクター博士は表面上はウィルのよき理解者であり続けるが、彼の裏の顔を誰も知らない……)

 (一言: 「羊たちの沈黙」のレクター博士を、スマートな紳士が演じている。リアルな死体など多数出てくる。話が進むにつれ、次々と新たな凶悪犯罪が起こっていく。主人公ウィルのサポート役をし続けるレクター博士が、その正体をさらけ出すのはいつの日か。彼は優雅に人肉を調理し、複数の客人達に上等の料理としてふるまい続ける。その料理が美味そうで困る)――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――−―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――--------

●いきさつ

 映画DVDの本編前にある「作品紹介」のCMで、この作品が紹介されていて、興味を持ちました。
 最初は普通の映画かと思ったんですが、意外にも「TVドラマ」だったんですね。自分、TVドラマは観ない方なんですが(1話が1時間ほどだと、観るのに時間がかかりすぎる)、作品紹介のCMがあまりにも面白そうな感じだったので、試しに観てみようと、手を出してしまいました。
 まずはDVDを3巻までレンタル。1巻に3話入っていて、2巻以降は2話ずつ。1話42分。シーズン1は全6巻。

 結果から言いますと、非常に引き込まれまして、ものの数日で借りた分を全部観てしまいました。面白いです。

 ●

 ハンニバル・レクター博士。「羊たちの沈黙」でアンソニー・ホプキンスが演じた殺人鬼ですね。続編の、映画「ハンニバル」では人肉を食うシーンもあったりしました。
 このTVドラマ版の「ハンニバル」は、映画「レッド・ドラゴン」と内容がかぶるようですね。主要の登場人物はほぼ同じ。でも脇役は、両作品でかなりの違いがある模様。
 作品ごとに話は前後しますけど、ハンニバルシリーズでちゃんとつながりがあるのも面白いですね。映画「ハンニバル・ライジング」では、若き頃のハンニバルを描いているようですし。

 ちなみに自分は「羊たちの沈黙」はかなり好きなんですが、このTVドラマ版の「ハンニバル」もなかなかのめり込み始めています。シーズン2、3と続くようですので、まだまだ長く楽しめますね。
 こちらのハンニバル・レクター博士は、スマートでハンサムで理知的で紳士。これは男でもホレてしまいます。しかしてその正体は……。(話数が進んでも、なかなか正体を現しません)

 アンソニー・ホプキンスの迫力ある存在感抜群のレクター博士も良かったんですが、こちらの気品あふれる優雅なレクター博士(料理したり、食事するシーンが多め)もなかなかいいです。


ウィル・グレアム
FBI捜査に協力するプロファイラー。
凶悪犯に「共感」して殺害現場をリ
アルに想像する能力をジャックに買
われる。


ジャック・クロフォード
FBI行動科学課長。ウィルに協力を
求め、さらにはレクター博士も引き
込む。
事件に真剣に臨む。話が進むと彼
の悩みが表に出てくる。


ハンニバル・レクター博士
精神分析医。ウィルとともに凶悪犯
罪の捜査協力をする事になる。
彼の正体をまだ誰も知らない…。


レクター博士が料理し、それを食べ
る場面が多く出てきます。時には客
人にふるまう事も。
食材は内臓系ばかり…。
●あらすじ

 ●第1話 ※ネタバレぎみ

 血しぶきと死体が残る、屋内の殺害現場。
 青年ウィルはその現場を見て、犯人像と殺害場面を克明(こくめい)に割り出す。ウィルは犯罪者になり切って、事件そのものを頭の中で再現する。それは彼の特殊能力だった。ウィルは誰にでも「共感」きるのだ。
 そして捜査官に、自分の「見立て」を述べる。ウィルは「プロファイラー」なのだ。
 冒頭からその「見立て」の特殊効果などに引き込まれます。殺害現場を殺害前まで「巻き戻す」んですね。

 ウィル・グレアム。彼は(FBI)アカデミーで凶悪犯罪についての講師もしている。
 そこに現れるジャック・クロフォード(ローレンス・フィッシュバーン)という男。(FBIの)行動科学課長と名乗る。
 ジャックはウィルの能力を買い、現在起きている、「女子学生連続誘拐事件」の調査に、協力を依頼する。

 ウィルは早速、自論を述べる。誘拐された先の7人は既に殺されているから、新たな8人目が誘拐されたのだ、と。
 誘拐(殺害?)された8人の女子学生はどこか皆、似た顔つきをしている。ウィルはこの中に犯人にとっての「当たり」がいる、と見立てる。

 8人目のエリースの家族に会うウィルとジャック。
 誘拐されたハズのエリースが、まさかの自室のベッドにいた。しかし、彼女は殺されていた。
 ウィルは、この殺害には「謝罪」が含まれていると見立てる。殺害をした後、彼女を治癒しようとした痕跡(こんせき)がある、と。

 ●

 ウィルに家族はなく、複数の犬と暮らしている。彼は大学での講師をしたり、プロファイラーとして犯罪者の精神分析をしたりしつつも、自らが自閉症ぎみなのだった。他人と関わる事があまり得意ではない。
 ジャックに向かい、ウィルは犯人の「謝罪」の意味を述べる。彼は殺した女性達に、愛情を示していた。慈悲で、苦しませる事なく素早く殺し、そして彼女達を性欲の対象とする事もなかった。犯人は、彼女達を「敬(うやま)って」いたのだ。

 ウィルの友人である女性、アラーナと接触するジャック。ウィルはアラーナを全面的に信じている。そこでジャックは、ウィルを支えて欲しいとアラーナに頼む。

 被害者の司法解剖にもウィルは立ち会い、推測を述べる。他の捜査官には想像もつかないような自論を述べて皆に驚かれるが、それこそがサイコパスである犯人そのものの考え方であり、行動でもあるのだ。
 そうしてウィルの見立てにより、犯人像を割り出していく。

 ●

 肉料理を優雅に食する紳士、ハンニバル・レクター博士。彼は精神分析医であり、多くの顧客(こきゃく)を抱えている。
 ジャックはレクター博士の元を訪れる。アラーナつながりで、事件に関わる精神分析の手助けをしてくれるよう、頼むのだった。
 レクターはいつものクセでウィルの精神分析をしてしまうが、ウィルに拒まれる。レクターはあくまでも、犯人に対する精神分析をするため、ジャックに協力する形になっている。
 レクターは言う。「(ウィルの能力は)諸刃(もろは)の剣」だと。

 ●

 全裸女性が、荒地にて鹿の頭部の角に突き刺された格好で死亡しているのが発見される。
 だがこれは、エリースの殺害犯の犯行ではないとウィルは見抜く。模倣犯(もほうはん)が別にいる。
 この死体には、犯人の愛が感じられない。ブタ扱いだ。そこが決定的な違いであるらしい。

 (女子学生連続誘拐事件がいつの間にか、その女性達は体の一部を食べられた事になっている(ウィル談)んですが……ちょっと話が飛んでいて、混乱します)←もちろんそれこそが、ウィルの特殊能力のなせるわざなのかもしれませんけど。

 (なお、「ミネソタのモズ」という通り名がここで出てくるんですが、それがちょっとピンと来ない。誘拐された先の7人がそういう殺され方をしたのなら話はわかりますが、彼女達は未だ行方不明なまま。どこで警官らが「ミネソタのモズ」と名づけたのか、ハッキリしない。事件が表に出てきているのは、エリースとこの荒地の2件のみ。しかも荒地での殺害は模倣犯のしわざであり、一連の誘拐事件とは別件なのだ)←という、ウィルの見立てを知らない警官達がつけてしまった通り名、という事なのかもしれませんけど。

 ウィルは言う。犯人には一人娘がいて、じきに独り立ちする。犯人は彼女を失うのが耐えられないのだ、と。
 なお、荒地で放置された女性の死体からは、「肺」が抜き取られていた。そこに、レクター博士が人の肺らしき内臓を調理し、食す場面がクロスオーバーする。

 ●

 ウィルの自宅を訪れるレクター博士。タッパーに入れた朝食を一緒に食べる。そしてお互いの話をする。
 ウィルとレクター博士は捜査に乗り出す。殺されたエリースの服から配管工事に使われる金属片が見つかった事で、犯人は配管工である可能性が高まる。その業者を片っ端から当たろうとした矢先、早々に怪しい男を見つける。
 ギャレット・ホッブズ。これからその男を調査する必要がある。
 ウィルの目を盗み、レクター博士はホッブズに電話を入れる。「(お前の犯行は)バレてる」と。←こういうところが非常にドラマチック。

 ホッブズの自宅へ向かうウィル達。そこで首を切られたホッブズの妻が玄関先に出てくる。
 拳銃を構え、屋内に侵入するウィル。その目の前で、ホッブズは娘の首を包丁で切り裂いた。
 そしてウィルはホッブズを射殺する。必要以上の弾を撃ち込んで……。

 ●第2話 ※ネタバレぎみ

 ギャレット・ホッブズの自宅を調査する捜査官ら。
 既に7人の女性は食べられた後だと推測するウィル。
 ホッブズの娘のアビゲイルが共犯ではないか、とジャックは言う。父娘はそうとう親しかったようなのだ。だがウィルはその意見を受け入れない。

 ジャックとアラーナは、ウィルの今現在の精神状態を危惧(きぐ)して、セラピーを入れるよう助言する。それにはレクター博士が適任(てきにん)だと。
 ホッブズの娘、アビゲイルは一命を取り留めた。だがウィルとレクター博士は、彼女の運命を変えてしまったと責任を感じる(レクターは本心ではないでしょうけど)。


死体はグロいものばかり
 森林公園内を歩く若者が3人。ここで死体でも見つけるんだろうなーという感じなんですが、想像をはるかに超えるものがあったりして、驚かされます。これが物語上の、大きな第2の事件の発端になります。(この先、第3第4と続けて様々な事件が起きていきます)

 9つの死体は地表浅くに埋められ、被害者の体には無数のキノコが植えられていた。
 その9名は地表の中で生かされていた痕跡(こんせき)があった。栄養を送るチューブと空気穴。犯人の目的はまだハッキリとはわからない。

 タブロイド紙(新聞)の女記者フレディ・ラウンズ。彼女がこの辺りから物語に関わってきます。
 ジャックはレクター博士に手料理をもてなされる場面が増えていきます。おそらくは人肉料理を食わされているんでしょう……。(ローレンス・フィッシュバーンがちょっとヌケた役をやらされている……)

 キノコの栽培に関し、犯人は被害者達を生かしたまま、キノコの苗床(なえどこ)にした。薬物に詳しい者の犯罪。医療関係者である可能性が高い。
 と、その次のシーンではもう犯人を突き詰めている。その薬局でインスリンを買った客10人が失踪しているのが決め手だった。その薬局の営業時間内に、武装姿で突入するFBI捜査官ら。
 薬剤師エルドン・スタメッツ。彼は姿をくらましていた。
 駐車場での彼の車のトランクの中には、まだ生かされている被害者が閉じ込められていた。

 逃亡したエルドンはフレディに接触。フレディは犯罪サイトに、ウィルに関するゴシップ記事を載せ、それをエルドンは見ていた。エルドンはウィルに関心を持っていた。
 そしてエルドンはウィルの共感を得るために、大胆な行動に出る……。

●感想など

 観て最初の感想は、「外国のTVドラマは質が高いなー」という事でした。映画と遜色(そんしょく)ないですね。
 そして映画では単調に描かれそうな部分も、時間をたっぷりと取ったドラマだからこそ、犯人像を二転三転できる。物語を複雑化できるんですね。だから短時間で終わってしまう映画こそが、逆に単調に見えてしまう。「濃い物語を描ける」という、「TVドラマの強み」みたいなものを感じました。もちろん失敗すれば、冗長(じょうちょう)でムダが多い、つまらないものになるとは思いますけど。

 あと、外国作品でいつも思うのが、「主人公達の名前を覚えるまで、何度か混乱する」という事ですね。
 ウィル・グレアムという名前をすっかり覚えていればいいんですが、ある者は彼を「ウィル」と呼び、ある者は彼を「グレアム」と呼ぶ。だからその両方が頭の中で結びついていないと、「グレアム」って誰だっけ?なんてな事になる。ジャック・クロフォードについても同じ。

 で。このドラマは、「主人公がハンニバル・レクター博士ではない」んですね。あくまでも脇役。こういう立ち位置でのドラマも、なかなか面白いなと。
 もちろん主人公のウィルと密接にからんでいくんですが、レクター博士はほとんど、大胆な行動を取ったりはしない。数話進んだ先で、アビゲイルという娘がらみで、ほんのちょっとハメを外した、という程度。
 一体、レクター博士はウィルをどうしたいのか。3巻くらいまで観ても、まだまだ見えませんね。

 ウィルはさまざまな異常犯罪の現場に立ち入り、犯人の心理に「共感」していく内に、精神状態もだんだん危ういものになっていく。そんな彼を精神的に支えているのが、友人のアラーナとレクター博士なんですが、彼は決して善人ではない。ウィルが壊れていくのを、楽しんで観察しているのかもしれない。そして時にはひそかに毒を与えているのかもしれない。

 話が進むごとに様々な事件が起こるんですが、その事件ごとにレクター博士がどこでどう関わっているのかは、明らかにはされていないんですね。でも関わっていそうな事件は確かにある。
 ハンニバル・レクター博士の正体がどんなものなのか、視聴者はあらかじめ知っているワケですが(他の彼の映画にて)、彼はなかなか本性を見せない。あくまでも精神分析医として、紳士的にふるまうのみ。
 でも彼は着々と、狂気を表に出してくる。それを静かに感じられるからこそ、視聴者はこの作品から逃れられなくなっていくのかな〜なんて思ったりします。なかなか夢中にさせてくれます。

 他、ジャック役のローレンス・フィッシュバーン。久しぶりに見たなぁと。「マトリックス」以来ですね。TVドラマで映画俳優が起用されている、というのもいいですね。登場人物がみんな知らない俳優ばっかり(※1)じゃあ、少々魅力に欠けますからね。知っている顔が出てくると、映像そのものに親近感も湧きますし。

 ※1 とは言え、ウィル役のヒュー・ダンシーもレクター博士役のマッツ・ミケルセンも、かなりの数の映画に出演しているみたいですね。全くの無名、というワケでもないようで。

 ●

 3巻(6・7話)辺りを見ると、料理がとても美味そう。(美味そうなのが逆に怖い)
 レクター博士の凶行はほとんど表に出さず、続々と料理が出され、それを誰かと食べていく。見た目には、気持ち悪さが全然ないんですね。

 現場に残された死体などはかなり気持ち悪いんですが、レクター博士の料理に関してはあくまでも美しいまま。血なまぐささが一切排除された見せ方になっています。
 でも視聴者は「これは人肉料理なんだ」とある程度わかるので、やっぱり怖くて気持ち悪くなってしまうんでしょうけどね。
 ちなみに「人肉パイ」を扱った「スゥイーニー・トッド」という映画があるんですが(後にティム・バートン監督が、主演をジョニー・デップに迎えてリメイク)、そこでは人肉の扱い方がかなりグロい。血なまぐさいんですね、こちらは。

 人肉食という一見、気色悪くしかなりそうにない題材を、まるで高級料理を扱っているかのように見せる。これはかなり新しい表現の仕方なんじゃないかな、と。
 この作品はもちろん「ホラー」というものを前面に押し出しています。しかし血なまぐささをあえて消し去って、人肉食を優雅に見せている。つまり、ホラーになりうる部分(死体から臓器を抜き取りそれを料理に使っている、という直接的な描写)をあえて見せずに押し隠している事で、作品の気品を高めているんですね。
 気色悪いものをそのまま見せればホラーになるのだ、という安直な考えを打ち砕かれているかのようです。(でも、この先の展開でどうなるのかはわかりませんけどね)

 近年のハリウッドホラーは「美しすぎて怖くない」と思っていたんですが、「汚くて気持ち悪いものを見せればいい、というものでもない」んだな、と教えられた気がします。この作品は、やりすぎれば血みどろの気色悪いドラマにもできたハズなんですが、あえてしなかった。そのおかげで一般の視聴者の目にも耐えうるものとなり、なお気品高いドラマに仕上がったワケですね。
 表現を抑える事も、時には大事なんですね。直接的な凶行をなかなか見せないからこそ、レクターがより不気味に見えてしまったり。我々は彼の正体をあらかじめ知っているワケですから。

 この先のシーズン2、3できっとレクター博士は恐ろしい素顔をさらけ出す事になっていくんでしょうけど、その準備段階と思われるこのシーズン1も、なかなか味わい深いです。嵐の前の静けさ、みたいな怖さがありますね。


ファニーゲーム
 (1997年製作/原題 FUNNY GAMES/本編108分)
 (情報提供: 紐切りさん)

 監督 ミヒャエル・ハネケ

 ホラー度:★★★★凶行に至るまでが、やたらゆるやかで不気味。凶行中も、男達の人格が豹変(ひょうへん)するでもなく、淡々としている。この映画で描かれる「死」も、いやにリアル)
 面白さ :★★★★容赦なく、救いようのない展開が凄い。だがこの映画を面白いと言えば、人格を疑われる事間違いなし)
 オリジナリティ:★★★★★(ただ暴力的に家族が襲われる映画は数あれど、この映画は冒頭が普通ではない

 (あらすじ: 湖そばの別荘で休日を楽しもうとするゲオルク夫妻と息子。そこに卵を分けて欲しいという青年が現れる。2度も割ってしまうが、まだしつこく卵を要求してくる。そこにもう一人の男が現れ、ゲオルクを挑発する。平手打ちした直後、男はゴルフクラブでゲオルクの足を殴る。骨折するほどの激痛。そして男達は家族3人をリビングのソファに座らせ、向かいあって、「ゲーム」と称した凶行を開始する)

 (一言: 凶行に至るまでの過程が静か目で、嫌に不気味。家族3人(特に妻のアナ)の抵抗がかなり弱く、そこは不満。中盤すぎに独創的な演出場面があり、非常に印象的。後半は泣きっ面にハチ状態で、観るのがツライ。後半、TVのリモコンを使った1シーンだけ、反則的------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 ※同監督リメイク作の「ファニーゲームU.S.A」(2008年製作)もあり。

●いきさつ

 掲示板にて、紐切りさんから教えていただきました。どうもありがとうございます。

 ホラー映画  投稿者:紐切り  投稿日:2015年07月24日

 夏です、怖い話が楽しい時期になってまいりました。
 私は低予算のホラー映画やマイナーな映画を見るのが好きで特に真夜中の観賞は楽しいものです。

 今回おススメしたいホラー映画は『ファニー・ゲーム』です。
 1997年製作のオーストラリア映画、監督はミハエル・ハネケ。
 この映画は2008年に全く同じシナリオ、同じ監督でただキャストをアメリカ人にしただけの『ファニー・ゲームUSA』というリメイク作があるのでどちらを見ても観賞後の感覚は同じだと思います。

 あらすじとしては非常に簡単で湖畔の別荘でバカンスを過ごす為にやってきた夫妻とひとり息子。別荘に到着し、隣人に挨拶をすると隣人の背後には、使用人にしては異様な真っ白な服を着たふたりの男。
 挨拶を終え、バカンスを楽しもうと夫と息子は湖へセーリングへ。妻が料理の支度をしていると先ほどの白い男の片割れが現れ「婦人が卵がなくて困っている、4つほどくれないか」と言い出す。
 その頼みを聞き、卵を渡したその時から異常で、理不尽で、残虐極まる「funny Game」が始まる…

「今から12時間後まで君たちが生きてるかどうか、賭けをしよう」

 いわゆるホラーやスプラッターとは違い、グロテスクな要素は薄いのですが、兎に角イライラする、気分が悪くなる映画です。
 その、なぜイライラするのか、なぜ気分が悪くなるのか。その理由を突き詰めて考えるのも楽しいのかもしれません。
 カンヌ映画祭での上映時、批評家や観客の多くが席を立ったといういわくつきの映画です、よければ見てみてください。

 との事でした。タイミング的にも、自分は「より怖い映画」を求めていましたので、どんな風にイライラして気分が悪くなるのか、と興味を持ちました。自分、バッドエンドの映画でも全然構わないので。
 さらには、りばいばるくらぶさんも推してくれましたね。どうもです。

●冒頭

 古い映画なので、画面サイズが中途半端なんですけどね。自分が使っている視聴ツールには「ズーム機能」があるので、それで調整。
 冒頭は紐切りさんが書いてくれたので割愛しようかと思ったんですが、凶行に至るまでの過程を描いた冒頭もまた、この映画の重要な見所だと思うので、あえて細かく書かせていただきます。

 車で別荘に向かっている家族3人。夫ゲオルクに妻アナ、そして息子(まぎらわしいんですが、父と同じ名前、ゲオルク)。車の後ろにボートをつなげてます。湖畔(こはん)の別荘でボート遊びをするんですね。
 クラッシック曲を流して、誰の曲かを当てたりしてます。そして突然のイカレたパンク曲。破壊の予兆、ですね。

 湖がすぐそばに見える別荘に着き、アナはキッチンで食事の支度に取りかかります。電話をしながら、器用に動き回ってます。で、肉をかたまりを豪快に切ったりしてます。こういうシーンを見ると、文化の違いを感じてしまいます。自分は、肉をかたまり(量り売り)で買った事はないですねぇ……。
 なお、この電話は子機かと思ったんですが、古いタイプの携帯電話だったようですね。


とある婦人の使いで、卵を欲しいと
言ってくる。
 そこに大人しそうな好青年がやってくる。半そで短パン姿。手には手袋。彼は「卵をもらえないか」と言う。どこぞの婦人の使いらしい。
 アナは快く卵を4つ渡すが、男はすぐに落として割ってしまう。

 謝りはするが、男はあまり悪びれた様子もなく、また卵を要求してくる。ほぼ目配せのみ、で。そこにまだあるでしょ?と。
 なお、男は流しのフチに置いてあった電話を、流しに落としてしまったりもする。そこには水を張ってあり、電話は水没。使えなくなってしまう。(ちなみにこの電話が使えなくなった事で、映画の後半にて苦労する事に)

 また男に卵を渡し、難が去ったとばかりにタバコを吸ったりしてリラックスするアナ。
 だが犬が激しく吠えているのを聞き、キッチンを出てみると、そこには先の男ともう一人、いた。短髪の男。その男も、先の男と似たような軽装で、同じく手袋もしている。

 家の表には犬がいて、吠えられた事で、家の中に避難(ひなん)してきたらしい。
 短髪の男は廊下にあったゴルフセットを目ざとく見つけ、試し打ちしたいと申し出る。夫の物だが、アナはそれを許す。

 短髪男はゴルフクラブを手に外に出るが、そこで犬の鳴き声が急に止む。それをボートを湖に出す準備をしていた夫のゲオルクも遠くで聞いていて、不審に思う。

「トムに卵を渡しましたか?」
 短髪男にそう聞かれ、アナはそろそろ、この男達に不審なものを感じ始める。……どうにも事が終わらない。ずるずると居続けられている。
 そして帰ってもらうよう、2人に強く言うが、男達は顔を見合わせて「自分達は何か悪い事をしたか?」と首をかしげる。
 男達はなおしつように卵を要求してくる。さっき渡した卵も、犬に吠えられた事でまた割ってしまったらしい。

 これで3度目だ。とにかくもう、この男達には帰ってもらいたい。アナは男達の腕をつかんで、強引に家の外に引きずり出そうとする。そこに、夫のゲオルクが息子とともに戻ってくる。


左)パウル
右)ペーター(トム)

見た目はごく普通の若者達。
だから、妻のアナは全く警戒などし
なかった。



一家はソファに座らされ、男達と向
きあう。



逃げ出して助けを求める息子。
 ゲオルクは二人の男ともめてイライラしている妻のアナを見て、驚く。聞けば、卵ごときでこの騒ぎになっているらしい。
 アナはキッチンから最後の残りの卵を持ってきてゲオルクに渡し、奥の方に引っ込む。

「お引き取りを。あえて何も言いません」
 ゲオルクは男達にやんわりとそう告げる。しかしそれでもまだ卵を要求してくる男達に、ゲオルクも不審なものを感じ取る。

「奥さんが卵をくれ、犬が落とした。これが代りの卵だ」
 男は突きつけるように言う。
「その口のきき方は?」
 ゲオルクは怒りをあらわにする。

 そこでゲオルクを挑発する短髪男。
「タマ取られるなよ」
 ゲオルクは男のほほを叩くが、すぐさまゴルフのクラブで足を殴られる。
 悲鳴とともに倒れるゲオルク。そばにいた息子が男に殴りかかるが、痛手になるハズもない。

「言う事きけ。そしたら何もしない」
 抵抗してくる子供を引き倒し、そうさとす短髪男。息子は母のアナにすがりつく。

 ゲオルクを椅子に座らせ、男は「手当てをする」と言い出してくる。足の骨が折れたかもしれない。ゲオルクはもう、立ち上がる事もできない。
「出て行け。頼む!」
 しかし男達は場に居残り続ける。あくまでもとぼけた顔のままで。
 そして犬をゴルフクラブで殴り殺した事をそれとなく伝えてくる。ゲーム形式で。

 そこで隣人家族のボートが湖をつたってそばまで来るが、迎えに出たアナは男に言われるまま、普通にふるまってしまう。(ここはかなり惜しい場面だと思います。ここでは必死になって助けを求めるのが正解かと。ここは完全に、アナの判断ミス。……と言うか、ここの脚本が弱すぎなんじゃないか、と。「アナ、何やってんの?」とツッコミたくなります)

 ●

 足の怪我の応急処置をされ、リビングのソファに座らされるゲオルク。
 その辺で男達は暴力的になっていく。激しく泣き出すアナ。だがゲオルクはなだめる事しかできない。

 そして場に、緊張感を持った静寂が訪れる。
 ゲオルクの家族3人と向かいあって座る、男達。パウルとペーター(トム)。←おとなしそうな男の名前が、トムだったりペーターだったりするのですが、どうやらトムの方が偽名である模様。

「何故だ?」(どうしてこんな事をする?)
 ゲオルクは男達にそう問うが、ハッキリとした答えはない。
 そしてパウルは子供を抱え込み、アナに脱ぐ事を強要する。子供は布袋をかぶせられる。子供に親の裸を見せない、道徳的配慮(はいりょ)だと言う。

 夫は動けないし、息子を盾(たて)にとられている。アナは素直に従う。男達の前で裸になったのだ。
 息子はオシッコをもらし、ソファから開放されたスキを突いて、逃げ出す。両親の悲鳴が響き渡る中、あたふたしつつも、息子は家の外に逃げ出す事に成功する。

 場に残されたゲオルクとアナ。
「何故さっさと殺さないの?」
 そう言うアナに、ペーターは軽く答える。
「お楽しみだよ。何でも楽しまないと」

 一方、外に逃げ出した息子は、誰かに助けを求める事ができるのか?


ゲオルク。

冒頭で足を負傷したため、男達に
逆らうすべを失い続ける。

だが座ってばかりじゃなくて死に物
狂いで抵抗できなかったのか…?
●レビュー

 凶行に走るまでの段取りが、いやに不気味でした。
 いきなり家に押しかけてきて、ワケもなく乱暴を働くワケじゃあないんですね。そういうわかりやすさが、ない。

 ゴルフのクラブで、ゲオルクの足を打ったのが凶行の始まりなんですが、それはあくまでも、顔をぶたれた事への報復。非は自分達にはない、とでも言うかのよう。……いや。挑発して、相手が手を出してくるのを待っていたのかもしれない。
 と言うか、ささいな事の積み重ねが多くて、事の発端を説明するのもなかなか難しい。何が原因でこうなってしまったのかという、決定的なものがないんですね。ずるずると妙な方向に引きずられていくような感じ。
 元々、そんなものはないんでしょうけどね。男達はハナから、この家族を痛めつけようとしてやってきた、と。

 細かく書いてしまった冒頭ですが、まださらに追加の要素もあります。
 同じ避暑地で夏休みを楽しんでいる友人のフレッド。彼もまた、凶行をはたらく男達とからんでいる。そしてフレッドの娘のシシーがいないらしい。
 何度か映画を見直しても、冒頭の時点でフレッド家がどういう状況に置かれているのか、ちょっと想像がつかないんですけどね。シシーが殺されていたのなら、フレッドはあんなに平静を保っているワケもないし……。それとも「娘を殺されたくなければ平静を装うんだ」と、男達に脅されている最中だったのかもしれません。

 ●抵抗の弱い一家

 冒頭で、ゲオルク一家は色々なミスを犯します。男どもにつけ入られるミス、ですね。

 @ゴルフのクラブを貸してしまった。→犬が殺される。
 A最後に残った卵を渡さなかった。→もしかすると、男達は素直に撤退したかもしれない。(また割ってしまうかもしれませんが)
 B隣人がボートに乗って顔を見せた時に、助けを求めなかった。これは完全に大きなミス。映画そのものも、ここの詰め方(アナがそうせざるを得ない状況にする)が多少甘い気がしました。
 C全体的に、アナの抵抗が弱かった。→スキをついてキッチンへ行き、包丁などを持って来る事は充分にできた。ゴルフクラブを奪うスキもあった。何故そうしなかったのか。(逆に男達の凶行が早まった可能性も大ですが)

 そうして徐々に、一家は男達の凶行の深みにハマッていくんですね……。
 と言うか、何度もこの映画を見直している内に、「非常に抵抗が弱いな」という気がしてきました。もっともっと、男達に抵抗できたハズ。この辺については、脚本が弱いのか、それともあえてそういう作りにしているのか。わかりませんけどね。
 アナは比較的自由に動き回れるんですから、ゴルフクラブなどを手に、男達に反撃しても良さそうな気もしますけどね……。

 いや、もちろん相手が怖くて、言いなりになる事しかできない、というのもわかる気がします。反撃イコール家族皆殺し、というのも充分にありえるワケですし。

 ●ミヒャエル・ハネケ監督の素顔

 ネット上にあった監督の顔写真を見てみると、温厚そうで知的な感じの老人なんですね。決してイカレた感じはしない。

 ハネケ監督はこの映画を「(観客を)憤慨させるために作った」と語っているようですね。「ハリウッド映画は暴力を快楽の道具につかっている」などと語っているようで、監督はこの理不尽な映画を、短絡(たんらく)的なエンターテイメントとして描いたワケではなかった、という事なんですね。
 映画公開時に観客などが途中で席を立った、という逸話(いつわ)もあるようですし、監督のもくろみは成功したんでしょうね。

 ●「ショルシ」とは?

 ちなみに、この映画の息子の名前を「ショルシ」と紹介しているサイトが多数ありますが、それは違うでしょ?と。映画内で出てくる「ショルシ」の言い方が、僕には「坊や」って感じに思えたんですね。「ショルシ」というのは、決して名前ではない、と。
 だってパウルに名前を聞かれた時、「ゲオルク」(父の名前と同じ)と名乗ってるんですから、息子自身が。

 じゃあ「ショルシ」って何? 真相はどうなのかと、ネットで色々調べてみる。
 そしたら、「ゲオルク・レーバー」という政治家に行き当たり、彼は「ゲオルク」という名前でありながら、通名が「ショルシュ」だったと。
 パウルが、父と同じ名前の「ゲオルク」と名乗った息子の事を「ショルシ」と呼んだのは、そういった「通名(愛称めいた呼び方)に変えた」という事なんじゃないでしょうか。

 でもまぁ、父も息子も「ゲオルク」じゃあまぎらわしいので、息子の名前をあえてショルシと記しても、間違いではないんでしょうけどね……。

 ちなみに「ゲオルク」というのは「Georg」のドイツ語読みであり、英語読みすると「ジョージ」になるとか。だから「ファニーゲームU.S.A」版では主人公がジョージになってるんですね。

 ●後半は蛇足ぎみだが、やはり怖い

 中盤すぎで、この映画のキモと思われる、非常に独特なシーンが出てきます。どういうものかは観てもらえばわかります。
 非常に印象的なシーンです。若い頃に観たら「何これ?」と全然理解できなかったかもしれないシーンですが、非常に重苦しいです。友人などと一緒に観ても、このシーンはネタバレ:長すぎてやたら不自然なので、思わずツッコミたくなると思います。
 ここはぜひ、お一人で観て欲しい。そうじゃないと、この重さが正確に伝わってこない。……そんな気がします。

 ここで映画が終わるんじゃないかと思いきや、まだ続く。
 泣きっ面にハチ状態。後半についてはあえて触れません。

●総評

 犯罪に巻き込まれる一家の話なんですが、凶行をはたらく男達が淡々としてるんですね。彼らは妙な遊び心を持っている。凶行を「ゲーム」と称し、楽しもうとする。
 男達がおお事を起こしてしまった中盤すぎで、「ずらかろう」と言うんですが、そこでやっと感情的なセリフを聞いたかな、という感じがしました。

 それにしても、家族達の抵抗が弱かったですね。最初はあまり気にならなかったんですが、何度か見直している内に、抵抗できるスキがぼろぼろと見つかってきて、紐切りさんの言う「イライラ」が、この抵抗の弱い部分にあったのかな、と思ったりしました。「何でここで抵抗しないんだよ!」って感じですか?
 息子が逃げ出すところは良かったんですけどね。ここで絶対に助かるハズだと思ったんですが……。さすがの展開でした。

 紐切りさん。ご紹介いただきまして、真にありがとうございました。なかなか独特な映画だったと思います。
 男達、不気味でしたね。普通そうなのが不気味。そして犯罪を犯罪とも思わないようなふてぶてしさも、不気味でした。


インシディアス
 (第1章 2010年製作/本編103分)
 (第2章 2013年製作/本編105分)

 監督 ジェームズ・ワン(「SAW」「デッド・サイレンス」「死霊館」など)
 脚本 リー・ワネル(「SAW1〜3」「デッド・サイレンス」など)、役者として「SAW」「インシディアス」などに出演

 主演 パトリック・ウィルソン、ローズ・バーン

 ホラー度:★★★★(数多くの心霊現象。演出による要所要所の盛り上げ方も上手い。ワクワクする怖さ。グロは一切なし)
 面白さ :★★★★(物語の進み方(問題に対する対処の仕方)はごく普通。しかし演出がそれを盛り上げる。幽霊屋敷話、悪魔憑き、殺人鬼話など多彩な題材を盛り込んでいるのが楽しい(悪く言えば、どれも中途半端)。異世界の魅力も大きい)

 (あらすじ: 息子のダルトンが突如、昏睡(こんすい)状態におちいる。それは3ヶ月経っても変わらぬまま。それに加え、家を引っ越してもなお続く怪奇現象。霊媒師じみた一行に調査してもらうと、悪魔がダルトンを狙っている事がわかったのだが…)――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――--------------------------------------------------------------------------------
 (一言: 幽霊屋敷話でもなく悪魔憑きともまた違う。独創的な異世界が描かれています。心霊現象が数多く起こるので、飽きずに怖がれる。意外にも人はあまり死なない)

仰々しいレンタル版のパッ
ケージ


息子のダルトンが突然、昏睡状態に


インシディアスと言えば、このシーン


さんざん恐怖体験をする妻、ルネ
●あらすじ

 古風な邸宅(ていたく)に引っ越してきた一家。ジョシュ、ルネ、そして息子2人と赤子1人。
 息子のダルトンは屋根裏部屋に来て、はしごから落ちる。その時、ダルトンは何かの気配を感じて叫びをあげた。
 びっくりして両親が飛んでくるが、ダルトンははしごから落ちた事以外には何も言わなかった。
 だがその翌朝。ダルトンは昏睡(こんすい)状態におちいり、目覚めなかった。病院でも原因がわからないらしい。

 そして3ヶ月がすぎる。
 未だ目覚める事なく、ダルトンは自宅療養となる。傷心し続ける家族達。
 その頃さらに、奇怪な事が起こり始める。妻のルネは赤子の部屋で、謎の男の怒鳴り声を聞く。息子のフォスターは「お兄ちゃん(ダルトン)が夜中に歩き回る」と言って怖がる。

 そんなある日の夜。突如(とつじょ)、玄関のアラーム(警告音)が鳴る。
 しかし、侵入者の姿はない。大丈夫かと思ったその時、またもアラームが鳴る。今度は玄関をこじ開けられていた。切られたドアチェーン。家に侵入したのは何者か? しかし誰もいない……。
 何が起こっているのか、まるでわからない。

 ジョシュは教師であり、仕事が忙しくなり、家に帰るのが遅くなりがちになる。
 やがてジョシュはその事でルネに責められる。家で奇妙な事が起こり続けているから、そこから逃げているのではないか、と。
 ルネに手渡された、ダルトンのベッドのシーツ。そこには獣の手形がついていた……。

 そんなある晩。決定的な事が起こる。
 ルネは、2階の窓外に無数の人影が行き来しているのを目撃する。そしてふいに謎の男が室内に入り込み、ルネに襲いかかった……!
 泣き叫ぶルネに、ジョシュはこの家を手放す事を約束する。

 ●

 呪いの家から引越し、平穏な日常が訪れるハズだった。
 だが、その期待はすぐに裏切られる。ルネは騒々しくはしゃぎ回る子供の霊を、家の中で目撃する。
 ジョシュの母親は引越しの手伝いというばかりではなく、胸騒ぎがしてその家を訪れていた。その予感は的中した。悪魔じみたものが確かに、間近にいる!
 その悪魔を見た直後。ダルトンの室内が派手に荒らされる。ダルトンの命は無事だったものの、このままにしてはおけない……。

 ジョシュの母親のすすめに従い、ジョシュ達は霊媒師(れいばいし)めいた一行を家に招くのだが……。

●レビュー

 ホラーものの有名作なので、これは観ておかねばと思い、観てみました。
 率直に言って、当たりでした。大変、魅力あふれる映画でした。

 まずはタイロルロゴの仰々(ぎょうぎょう)しさにちょっと驚き。最近、こういった気合いの入ったタイトルロゴはあんまり見ないなー、と。まるでゲームのタイトル画面のようです。

 最初、「よくある幽霊屋敷の話か」と思いきや、どうも違う。
 「あぁ、悪魔の話だったのか」と思うも、それもまたちょっと違う。
 じゃあ何なのか。……それは観てのお楽しみ。なかなかに独創的で、魅力的な世界が描かれています。


中央)エリーズ
後ろの二人は助手
 ●人があんまり死なない

 そしてこの映画。怖いんですけど、意外にも人があんまり死なないんですね。
 殺す描写なしにこれだけのホラー映画を作れる、という事にまず驚きました。しかもホラー度はそこそこ良好。

 途中、家に霊媒師めいた一行を呼ぶんですが、これがいかにもインチキくさいゴーストバスターズみたいで、「これ、(展開が)失敗なんじゃないの?」と心配すらしてしまいました。
 温厚そうな彼らのおかげで、物語が多少明るくなるんですけどね。
 ただそのおかげで、物語の方向性が大きく変わってしまったのも確か。「エクソシスト」みたいなシリアスさが、そこで失われてしまうんですね。怖く真面目に進んでいたのに、そこで俗っぽさが混じってしまいました。
 でもそれはそれで、なかなかに面白い展開を迎えます。

 あと個人的に魅力を感じたのは、「その家で過去にあったであろう惨劇」を描いたシーンですね。(後日談:よく観ると「家」とは関係ないんですけどね。その辺は第2章で明かされるんですが)
 彼らがロウ人形のように動かない。その流れで、殺戮現場をショッキングに見せているんですね。「普通ではない見せ方が成功している」という、非常に興味深い演出でした。
 これはこれでいいんですが、第2章に出てくるパーカー・クレインとは全く無関係の事件なんですね(と解釈)。何の説明もないので、まぎらわしいと言えばまぎらわしい。(この事件が何なのか、ちょっと理解に苦しむ)

 あと個人的には、主人公ジョシュの母親のロレーヌのかっこ良さに、ホレかけました。別段、かっこいい役というワケではなく、ただ単に「いい顔をしてるなぁ」と。横顔とか、特にかっこいい。
 正直言って「おばさん」なんですが、そのおばさんに対し、「かっこいい……」と思ったのは、何だか初めてなんじゃないかな、と。バーバラ・ハーシーという役者さんなんですけどね。ここで自分、今まで自分にはなかったモノに、目覚めてしまったような気がします。
 魅力的なおばさん、っているもんなんですね〜……(失礼な奴ですみません)。

 クライマックスはなかなか盛り上がりますが、悪魔がどうにも中途半端でしたけどね。ネタバレ: 脅かすだけ脅かしておいて、実はそんなに強いヤツでもなかった、と。さらには倒せたワケでもないので、何だかスッキリしない
 第1章の終わりは非常にショッキング。
 続きがなくても、これはこれで、ホラーとしていい終わり方だと思います。


子供の頃のジョシュ。
●第2章

 「第2章」も立て続けに観たんですが、前作のラストをちょっとくつがえした形になっているんですね(ヤツが本性を現したワケではなかった、と)。感心モノです。

 基本的には第1章の続きが描かれるんですが、まず冒頭はジョシュの過去話からですね。
 ジョシュの過去に何があったのか。そして霊媒師エリーズとのつながりなどが描かれます。

 そして第1章の続きに話が戻る。無論、警察ざたになってます。
 でも警察は、物語にほとんど介入してきませんね。それは正解だったと思います。警察が物語の表に出てくると、そういう捜査方面の物語になっちゃいますからね。

 ダルトンが正常に戻り、ジュシュ一家には平穏が訪れていた。
 ダルトンの弟であるフォスターが、空き缶で作った糸電話。これは後半にも使われるんですが……いかにもスティーブン・キングの作品に出てきそうな小道具の使い方に、にんまりとしてしまいました。たあいのないガラクタが、異世界において超常的な機能を発揮する重要なアイテムになる……という感じ。その感覚、好きですね。

 家の中での異変はなおも続いている。気のせいではなく、ハッキリとした姿で、霊が家の中をうろつき回っている。
 なお、霊の見せ方は、「そのまま役者さんを出してるだけ」ですね。邦画の「呪怨」などで見せたやり方ですね。霊を全く隠さない。エフェクト(画面効果)すらかけない。そんな感じに、霊じみたものをハッキリと見せるやり方の作品が最近は多いかなー、という気がします。

 霊を見せないのもいいんですが……そうすると絵的につまらないんですね。何かが動いたとか壊れたとか、大きな物音がしたとか。それを繰り返されても、あんまり面白くならない。古典的名作には、そういった手法のみで怪奇現象を表現した作品があるみたいですが、今時の人が観れば、多分かなりタイクツに思えるんじゃないかな、と。(喜ぶのはマニアだけ、とか)

 どんなに演出が上手くても、やはり時折、視覚的にびっくりさせてくれないと、飽きてしまう気もします。
 その辺のバランスが、この「インシディアス」はなかなかいいかな、と。新旧の演出(新:霊をハッキリ見せる、旧:小道具や音だけで表現)を多数、劇中にちりばめてあるんですね。


ランプを手に、ジョシュは異界に入り
込む
 ●異世界「彼方(かなた)」について

 この展開はどうかなー?と疑問に思うのは、過去のジョシュのビデオ映像に、ネタバレ:大人のジョシが映り込むところですね。
 これが伏線となり、後で明かされるのはいいんですが……やっぱり変だな、と。

 タイムパラドックスも生じるだろうし(同じ時間に同一の存在(人間)が2つあってはならない)……これはちょっと、展開として「余計な事をしてしまっている」のではないかなと思ったりしました。
 時間を越えて、過去のジョシュに助けを求めなくても、もっとどうにかできた気がするんですよね……。

 魅力的ではない、というワケではないんですが、過去に行ったり来たりできてしまうと、その世界があまりにも万能すぎて、「その展開ではなくて、もっとこうすればいいんじゃないの?」とか、無数の可能性を生み出してしまう事にもなりかねない。
 この脚本以上に、「視聴者側が自由な発想で問題を解決できる」という武器を与えてしまったような気がするんですよね……。
 だからこの異世界に「時間を自由に行き来できる(制限などは劇中で語られていない)」というのをからめたのは、やりすぎなんじゃないかなと思った次第です。

 そもそも、あの異世界が何なのか、よく考えても全然理解できないんですけどね。
 単なる「あの世」というワケでもないみたいですし。でも死んだキャラがそこに行ってるし(「誰でもいつか通る世界」だと劇中では言ってますね。あの世の1つ手前の世界、という事でしょうか)。悪魔じみたものもいるみたいだし。さらには時間を自由に行き来できるみたいだし……。何なの、ここは?と。
 だからあまり深い事は考えずに、「ご都合主義的に回る世界なんだな」と解釈するだけでもいいのかもしれません。

 自由に過去を覗けて、しかも干渉できる(ビデオに写りこんでしまった例があり)とか。それってとんでもない世界ですから。過去改変までできちゃったりすれば、もはやあの異世界に行ける能力があるだけで、とんでもない事ができちゃいそう。

 そもそも、「時間が存在しない世界(第1章でエリーズがそう説明)とはなんぞや?」と、考えれば考えるほど、ドツボにハマッてしまいそうです。

 ●「とぼけないで!」……ハアッ?

 あのビンタ。あれは怖いんじゃなく、爆笑モノなんですけどね……。
 こういうアップテンポでキレのいいシーンを盛り込む事で、ややだらだらしがちだった流れを断ち切るのはいいですね。

 ●

 中盤以降の大きな魅力の盛り込みとして、霊と交信する「サイコロ」が出てきますね。
 エリーズの旧友、カール。こういった「老人が活躍する話」は嫌いではないです。
 カールは、とある霊と交信をこころみるんですね。

 そしてこの第2章には、隠された大きな謎があるんですね。それは主人公ジョシュの事。彼は一見正常に見えるが、でもそうじゃない。何かが隠されている。第1章の終わり間際の凶事についても、忘れてはならない。

 ●エリーズの言葉に従い、廃病院へ

 自分、一時、廃墟マニアみたいなところがありまして。もう廃墟が出てくるだけで、妙にワクワクしてしまいます。
 そういった事で中盤辺りはなかなか楽しめました。この怖さ、身にしみてわかります。

 もう何というか……廃墟にいるだけで、本当は物凄く怖いんですよ。昼間でも充分に怖い。荒れ果てた、無人の建物の中。そこに何があるか、全く予想ができないワケですから。
 そしてもし廃墟内で誰かと出会ったら……もうそれだけで、かなりビビる事間違いナシです。(廃墟の場所や広さなどの、シチュエーションにもよるでしょうけどね)

 ●後半を少し

 廃墟後。ジョシュとカールのやり取りもなかなかスリリングでいいですね。
 第1章ではダルトンを取り戻すためにジョシュが異世界(彼方)に行きましたが、第2章では異世界に取り残されていたネタバレ:ジョシュが、元の肉体に戻るために奮戦(ふんせん)します。

 個人的すぎる話ですみませんが、自分、あんまりエリーズが好きになれなかったんですよ(演技が仰々(ぎょうぎょう)しいというか……)。でも物語の最後で見せたいたずらなしぐさに、ちょっとグッときました。勉強に?なります。
 後半は、そんなエリーズが助け役になって、物語が進んでいきます。

 ちょっと現実での話が入ってきたりして、交差してますね。子供達が目にするあのシーン。トラウマものでしょうね。
 そしてちょっと映画「シャイニング」っぽいシーンが入っちゃったりして。ドタバタしますね。武器らしい武器もないので、ちょっとここは怖いというよりドタバタしすぎかな、と。
 ルネがハンマーで応戦したりしますが、それが映画「ハプニング」でのシーンを思い出しちゃったりして、「そりゃ死ぬでしょ……」とツッコんでみたり……。

 何だかんだで、なかなか盛り上がります。ただ、第1章もそうでしたが、最後の敵があまりにも弱い……。そんなんで終わり?みたいな。
 まぁでも、壮絶に戦えばいいってものでもないでしょうし、これはこれでいいのかもしれませんけどね。

 ●理解不能(ネタバレあり)

 何度か見直している内に疑問が生じてきました。
 ジョシュが異界から家に戻る、その「タイミング」が理解できないんですよ。
 それって、玄関のアラームが鳴る第1章の場面と交差するんですが、あの時、家の中にいるジョシュはネタバレ: ニセモノではない(ダルトンのために異界に行くのは、後日の事)。なのにどうしてそのタイミングにするのか、よくわからなかったんですよ。玄関で向かいあう二人は、同一人物であるハズ。

 伏線の回収の仕方が間違っているのか、僕には理解できない謎がまだあるのか。深く考えずに楽しめばいいのか。
 理解、できませんでした。

●総評

 第1章も第2章もなかなかに面白い。さらにはまだ続くような終わり方をしているので、第3章もいずれ出るんでしょうね。(レンタル版の第2章のパッケージには、でかでかと「完結」の文字が。映画観てないんでしょうか? まぁジョシュ編は終わり、という感じではありますが)

 さほど壮大な話にもならず、物語をメチャクチャに壊すような事もせず(展開に冒険がない)、ハタから見ると結構普通の流れで進んでいってますね。
 ただ、異世界の見せ方とか面白いので、演出の勝利かな、と。

 これ、映画なんですが、TVドラマっぽいですね。第2章のラストで、続きをほのめかすのはやめて欲しかった。映画として、しっかりと切って欲しかったですね。それとも元々から3部作だったとか、そういう構想があるのかもしれませんけど。

 でも文句なく、面白怖がれる映画です。異世界についても、なかなか魅力あふれる演出がほどこされてますし。難しい事を考えなければ、楽しいです。
 ただ怖さに関しては、一般的かな、と。ホラーマニアが喜ぶような(圧倒的で凄惨な)怖さは、あまりないです。


サプライズ
 (2011年製作/原題:YOU'RE NEXT/本編94分)

 監督 アダム・ウィンガード

 ホラー度:★★★★(登場人物が多いので、惨殺シーンも多め。でもそんなにグロさはない)
 面白さ :★★★★(集団の殺人鬼に家族皆が殺されていくという、どこにでもある映画。しかしそれに反撃するたくましいヒロインが見所)

 (あらすじ: 別荘を買い、結婚記念パーティを行う中年夫婦。集まった子供達とその恋人。総勢10人。しかし殺人鬼の襲撃で次々と殺されていく。そんな中、エリンは皆を適正に指示し、そして殺人鬼達に立ち向かう。彼女は幼少の頃から、サバイバル技術を父親に叩き込まれていたのだ)

 (一言: 一家惨殺をもくろむ殺人鬼達。普通のホラー映画と決定的に違うのは、ヒロイン、エリンの反撃。ホラー度もほどよく、そして明かされる真相なども心地よい。難しい事や重苦しさなどはなく、軽い気持ちで観られる)--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 注意:ネット辞典「ウィキペディア」では、この映画の重要なネタバレ部分を「ストーリー」として紹介しているため、映画を観る前に見てはいけません。

●冒頭

 中年男性と女性のからみ。寝室での営(いとな)みを終え、シャワーを浴びたり、リビングで音楽をかけたりとくつろぐ2人。そこは一軒家だ。
 男性がシャワーから上がると、窓に妙なものを見つけた。
 ――YOU’RE NEXT。(次はお前だ)
 窓ガラス一面に、そう血文字で描かれていた。

 窓ガラスの下には、今しがた愛し合った女性の死体。男はあわてて逃げようとするが、その背後にはナタを持った男が……

 ●

 その惨劇を知らず、その家の近所に向かうらしい、中年夫婦の車。古い家を買い、これからそこに住むのだ。
 家に着いてみると、玄関のドアは開いたままだった。だが「改装業者の閉め忘れだろう」と、さほど問題にはしなかった。

 その夜。若いカップルがその家を目指して車を走らせる。
 口元にたっぷりとヒゲを生やした男は、中年夫婦の息子であり、助手席の女はその恋人だった。

 一方、家の中で、中年夫婦の妻オーブリー2階からの他人の足音を聞き、おびえる。夫がそれを確認しに2階へ行く。
 探索の途中、背後の人影に驚いて振り向くと……それは息子のクリスピアンだった。先の若いカップルの、ヒゲの男だ。
 結局、物音のした2階には誰もいなかった事を告げられ、オーブリーはやっと安堵(あんど)する。

 玄関先で不安におびえて泣いていたオーブリーと一緒にいた、クリスピアンの恋人であるエリンも家の中に招かれる。
 エリンはやや色黒で、芯の強い女性であるようだ。持論もハッキリと述べる。

 明日は中年夫婦の結婚記念日だという事だ。もっと家族が集まるらしい。
 だが、その日が惨劇の日になるなどと、一体誰が予測しえただろうか……?


左)エリン
右)クリスピアン

2人は教授と助手という仲から恋人
になる。
事件はクリスピアンの両親が新たに
購入した別荘で起こる。




殺人鬼のワナに引っかかり、致命
傷を受けるエイミー。
このシーン、父親も後押しするのが
悪いと思うんですけどね…。




ボウガンの矢を食らったドレイク。
動けず、活躍の場を失い続ける。




ついに堂々と家の中に進入してくる
殺人鬼達。
しかし恐怖を見るのは何と、彼らと
なる。
●流れを交えた感想

 全体的に、軽い気持ちで楽しめるホラーだと思います。難しくも重苦しくもなく、エンターテイメント色が濃いんですね。
 若いカップルの男がヒゲ面……というのが珍しいかな、とまず最初に思いましたね。ハンサムというより、やや童顔系で。愛くるしい熊、みたいな感じですね。

 そして兄弟達の恋人も含めて集まり、場には10人ほどが集まる。10人も登場人物がいるのに、意外と覚えやすい感じです。影の薄い人は薄いまま、というのもあるでしょうけど、数人ずつ順序よく、観客にキャラを紹介しているんですね。

 夕食の席でクリスピアンと兄ドレイクが口ゲンカ。それがピートアップしている時、自称映画監督という男が窓際に立つ。外に何か不審なものを見たのだ。
 そのせつな。男は矢で額を打ち抜かれる。
 上がる悲鳴。次々と室内に打ち込まれる矢。そしてドレイクの背にも矢が突き刺さる。

「みんな殺される!」
 そんなわめきが上がる中、エリンは冷静に皆に指示を出す。まずは皆をしゃがませ、そして室内から、盾(たて)代わりにイスを持たせ、矢の当たらない奥の方へと逃がしていく。

 玄関先に集まる皆。しかし警察を呼ぼうにも、携帯電話は使えない。電波妨害されているようだ。誰かが外へ出て、車で助けを呼ぼうという話になる。
 エリンは「出る必要はない、家の中にいた方が安心だ」と言うが、周囲の者で話がまとまってしまう。「外へ出て助けを呼ぶ」話を、父親が後押ししたような感じになってるんですが……ここはちょっと違和感を感じました。自分の子供達に危険なマネをさせるワケですから。外の状況もよくわかっていない状態なのに。

 そして女エイミーが全力で玄関から走り出た途端。新たな悲劇が……。
 ここでBGMにバグパイプっぽい音(ブィ〜ブィ〜)が流れてますが、なかなか合いますね。盛り上がり(失礼)ます。
 何でこんな事すんの?(危険な外に一人で飛び出す)という違和感が大きいシーンなんですが、それを考えなければ、なかなかにショッキングなシーンです。

 ●

 2人が死亡。まだ何が起きているのか、よくわからない。ただ、この家の住人の命が狙われている事だけはわかる。
 エリンは率先して2階へ。そして窓とドアをロックしていく。

 2階の方が安全だ。気が弱りかけてきた母オーブリーを、寝室で寝かせる。そして皆はまた玄関先に集まる。
 だが、その寝室に潜む者がいた。キツネの仮面を被ったその者はナタを手に、オーブリーに襲いかかる……!
 悲鳴を聞いて、駆けつける皆。しかし時すでに遅かった……。オーブリーは惨殺されていた。

 ――YOU’RE NEXT
 壁にそんな血文字が残されていた。

 ケリー(ドレイクの恋人)はその血文字を眺め、オーブリーが殺されたベッド下を恐る恐る覗いてみる……と、白い仮面の顔がヌッと突き出された。
 わめき散らし、2階から駆け下りるケリー。勢いあまって何と玄関から外へ。え〜……っ?
 ドレイクはケリーを追うが、背に刺さったままの邪魔な矢を引き抜いたところで、力尽きる。

 クリスピアンは、外にある車まで走っていくという。そして車を玄関に着けると。
 皆で脱出する案を出したのだ。

 一方、ケリーは隣の家までたどり着いていた。そこが先に惨劇のあった家とは知らずに。
 窓から室内に男の姿が見える。しかし男はソファに座ったまま、動かない。
「中に入れて!」と叫ぶケリー。(「オープン ファッキン ドア!(くそったれなドアを開けろ!)」とか言っちゃってますね)

 そしたら背後にいた仮面の男に、鼻面にパンチを食らう。ガラスを突き破って室内に倒れこむケリー。
 点けっぱなしのオーディオから陽気な音楽が流れる中、ケリーははいつくばって逃げようとするが、すぐに男に捕まってしまう。羊の仮面。その手には柄の長いハンマー。それを振りかぶって……グシャッ。

 そして羊の男はソファにどっしりと座り込み、2つの死体(冒頭で殺された中年男とケリー)を眺める。これは映画「アクエリアス」を彷彿(ほうふつ)とさせるシーンです。

 ●

 この時点で生き残っているのは、エリン、クリスピアン、影の薄い男フィリックスとその恋人のジー、そして父親。もう一人、背中に重傷を負ったドレイク。
 クリスピアンはまた家の中に戻り、皆に隣の家に行って助けを呼ぶと言う。家から充分離れたら、携帯電話も使う、と。
 ……ですがここ、よく飲み込めませんでした。さっきクリスピアンは車まで行ったハズなんですが、どうして何もせずにまた家に戻ってきたのかよくわかりません。さっさとその車で、助けを呼んでこれば良かったのに。
 ちょっとこの辺、後への伏線なのか、行動の順序立てがおかしい(つまり脚本がおかしい)のか、理解できませんでしたけどね。

 ●

 この辺で物語の中盤。ここからさらに、エリンは独自の行動を起こしていくんですね。

 窓を突き破り、とうとう家の中に進入してきた仮面の男。キツネだ。
 エリンは手にした小型のハンマーで、その男を殴り殺す。全く取り乱さずに殺したかと思えば、その後さらにさらに殴る。
 そばにいたフィリックスに、知っている顔かどうか見てもらうが、知らないと言う。犯人達の意図はまだわからない。

 その辺でとうとう、父親も殺人犯達のエジキに。それと同時に、物語の真相が明かされる……。

 ●

 後はネタバレになるのでくわしくは書きませんが、面白く観れました。
 何と言ってもこの映画、ただ皆が殺されていくのではないんですね。ヒロインのエリンが戦闘力抜群、というのが一風変わっています。彼女は幼い頃から、そういうサバイバルじみた訓練を父親から受けてきたらしい。
 だからギャーギャーわめいて逃げ惑うだけの映画ではないんですね。エリンが逆に、犯人達を殺していくというのがスゴイ。

 ラストも笑えます。アメリカンジョーク、といった感じの軽さがありますね。
 真顔で観る映画ではなく、「ホラーを楽しむ」ための映画、という感じでした。「エリンの反撃」という素晴らしい見せ場のおかげで、この映画は痛快に楽しむ事ができました。

 ちなみにこの映画、画面サイズが横長なんですね。2.40:1、でしょうか。近年のDVDはそのサイズのものが多めになってきている感じですね。
 自分はPCで観ているので、そのサイズだと画面の上下が空いてしまう。16:9がピッタリおさまるですけどね。
 ちょっと残念です。


伝説巨人イデオン ―― (C)サンライズ
 (1980年〜1981年放送/全39話(DVD全10巻)/他、劇場版「接触篇(TV版ダイジェスト)・発動篇(TV版の続編)」)

 監督/富野 喜幸(とみの よしゆき)(現 富野 由悠季) :「機動戦士ガンダム」シリーズ、「無敵超人ザンボット3」「聖戦士ダンバイン」「OVERMANキングゲイナー」などの監督を務める。

 キャラクターデザイン/湖川 友謙(こがわ とものり) :「戦闘メカ ザブングル」「聖戦士ダンバイン」などのキャラクターデザイン他、数々の作品の作画監督を務める。
 メカニックデザイン/サブマリン(社名) 樋口 雄一(ひぐち ゆういち) :「銀河旋風ブライガー」などのメカニックデザインを手がける。
 音楽/すぎやまこういち :「ドラゴンクエスト」シリーズ作曲。


 ホラー度:★★★★(全体的に怖さがただよっているワケではなく、要所要所が怖い。人が残酷に死んでいく。明るく愛らしいキャラも、重要なキャラさえも。特に「発動篇」は、幼少の子が見ればトラウマレベル
 面白さ :★★★★★★(恐怖のみではなく、もちろん全体的に面白い。レトロロボットアニメとしては異色の部類(毎回、悪いメカを倒すという感じではない)に入るのではないか、と。「イデ」という無限のエネルギーを軸に、主人公達と異星人との戦争を、始まりから終わりまで描いている)

 (あらすじ: 異なる2つの種族、バッフ・クランと地球人。出会い頭(がしら)に放たれた爆撃により、彼らは対立せざるを得なくなった。バッフ・クランが求める無限のエネルギー「イデ」。その鍵となる、ソロ星の遺跡「ソロシップ」「イデオン」を地球人がその手にするが、バッフ・クランはそれらを奪うべく、宇宙の果てまでも追い続ける)

 (一言: ストーリーの展開が上手いのか、夢中にさせられます。コスモをはじめとしたキャラクター達も非常に魅力的。ロボットアニメとしても要所要所で盛り上がります。ホラーは「発動篇」でごっそりくる)

 ●いきさつ

 自分はレトロアニメをよく観るんですが、そんな中でもどうやら異色の作品であるらしい、「伝説巨人イデオン」に興味を持ち、観てみる事に。
 特に「ザンボット3」つながりですね。「ザンボット3」もなかなか残酷なシーンの多い作品なんですけどね。
 「伝説巨人イデオン」も、そんな感じの作品でした。TV版での残酷さは「所々に散りばめられている」という軽い程度なんですが、後半の「発動篇」では止まりません。


イデオン
3機のメカが合体する。
バッフ・クランが求める無限の力
「イデ」の鍵を握る。



左)主人公 ユウキ・コスモ
右)デク
ガンダムのアムロより、モロにアフロ
です。



カーシャ
男まさりで好戦的…
声がいかにも昭和的(失礼)。



カララ・アジバ
訳あって地球人らに捕らえられた
バッフ・クランの姫君。
美しすぎてホレます。
 ●冒頭

 ソロ星。そこでは地球人により、第6文明人が残した遺跡の発掘と調査が行われていた。
 その遺跡は、大型の戦車か車両のような形をしていた。これが何であるのか、誰にもわからないでいた。

 時同じくして、バッフ・クランという遠く離れた星から、そのソロ星へ調査団がやって来た。彼らは無限のエネルギー「イデ」の捜索を行っていた。その鍵が、ソロ星にあるとつかんでいた。
 そして彼らはソロ星が他の異星人により開拓されている事を知り(地球人が先にこの星の調査を行っていた)、ソロ星の調査に慎重になる。
 しかしカララ・アジバという姫君が、先んじてソロ星に乗り込んでしまう。その後を追うバッフ・クラン軍。ソロ星の遺跡発掘現場付近で、バッフ・クランの兵士の一人が、戦闘機より発砲。戦いの口火を切る事になる。

「何故撃った?!」
 そう叫ぶ同乗者に、兵士は恐れの顔を見せる。
 ……それは姫君であるカララの身を案じての事だった。バッフ・クランの姫君であるカララがこの辺りに降り立ったのは知っている。だが敵の戦力は、想像以上のものであるようだ。
 カララがもし、敵(地球人)に捕らえられでもしたら、自分達はドレイになるか自爆させられる。それを恐れての事だった。敵を叩いて、カララを救出しようとしたのだろうか。
 だがこの兵士に正当性はない。自分の身を案じ、恐れと焦りにより、誤った発砲をしてしまったのだ。

 戦闘は瞬く間に激化し、双方が敵の戦力に恐れをなす。お互いが、高度な文明を持つ異星人である事がわかったのだ。叩かなければ自分達がやられる。殲滅(せんめつ)しなければ、自分達の星に危機が及ぶ……。
 なお、バッフ・クラン軍にはカララを命がけでも救出しなければならないという焦りもあり、戦いを放棄する事はできない。

 そんな中、第6文明人が残した車両型の遺跡に乗り込む地球人達。赤毛の少年コスモ、弟分のデク。おてんばな友人のカーシャ。軍人のベス、遺跡調査員のシェリルらが乗り込むと、その車両は各々動き出した。
 バッフ・クラン軍の爆撃をものともせず、自走するその車両。それはやがて勝手に変形し、そして連結し、巨大なロボットとなった……。
 それは立ち上がり、圧倒的な力でバッフ・クランの戦闘機を撃破するのだった。

 ●壊され続けるイデオン

 冒頭付近では、イデオンはどれだけ爆撃を食らってもビクともせず、無敵っぽかったんですが、話数が進むにつれ、バッフ・クランが次々と打ち出してくる重機動メカとの戦闘で、毎回どこかに穴を開けられたり、ひどく粉砕されたりするんですね。毎回ハラハラさせられます。イデオンが壊されると「うわーやめろー」と叫びたく?なります。

 ●何がホラーなのか

 「伝説巨人イデオン」は、TVシリーズ39話。アニメDVDをレンタルする場合、全10巻になります。
 もう一つ、「伝説巨人イデオン 接触篇・発動篇」という、TV版の総集編+「真のラスト」が描かれたものがあります。自分は最初、これを観ました。

 この「発動篇」が、モロにホラーなのです。
 どういった怖さかというと、エヴァンゲリオン旧劇場版の「Air」に似てます。元々は巨大ロボットや戦艦同士の戦いで描かれていたものが、艦内での白兵戦になり……ネタバレ: 人間同士が殺しあうんですね。
 かなりエグいシーンの連続。今現在なら何らかの規制が入るんじゃないか、と思ってしまうほどです。

 ちなみに、TVシリーズを全話見終えた後で「発動篇」を観る、というのが一番正しい流れです。
 時間があまり取れないけど、イデオンを楽しみたいというのであれば、「接触篇・発動篇」のみで充分です。
 なお、イデオンはレトロアニメとしてかなり有名な部類に入るので、普通にレンタル店に置いてあると思います。

 ●イデオンのここが好き

 イデオンのメカデザイン、合体システム、大好きです。そして徐々に秘めたる力を解き放っていくのがいいですね。(イデオンがこてんぱんにやられ続けたりしていて、不安になってきているところで、いきなりとんでもない武器で圧倒してくれたり。ドラマチックです)

 湖川さんのキャラデザインも好きです。「ザブングル」でのキャラもかなり好きだったんですが、イデオンのキャラもまた素晴らしいです。
 なお湖川さんのキャラは、横顔と頬のえらに特徴があるみたいですね。ザブングルでは「湖川立ち」呼ばれる独特のポーズ(足に特徴あり)が顕著(けんちょ)に現れていたんですが、イデオンではその特異な(失礼)ポーズはほとんど見られませんでしたけどね。
 細かい話ですが、重機動メカを粉砕する際に「ブゥゥーン」という重低音が出るんですが、あれも好きですねー。

 その他。ネタバレ: コスモとカーシャが物語の終わり間際にキスしようとするんですが、互いのヘルメットが邪魔してキスできないシーンが印象的ですね。
 主人公とヒロインがキスするシーンは数あれど、こういう「もどかしさ」って、あんまり目にした事がなかったかな、と。しかも主人公達は「死」を背負っている。このシーンにも重みがあるんですね。

 なお、「接触篇・発動篇」だけを観ても充分満足できるんですが、TVシリーズを観た方が、より物語に入り込めますし、イデオンの勇士もより堪能(たんのう)できますね。自分は「接触篇・発動篇」を観た後、改めてTV版全39話を観直すという、変則的な見方をしてしまっています。TV版は「あぁ立派にロボットアニメしてるなぁ」という印象を受けました。

 それに何といっても、TV版のOPとEDがいい。特にEDの曲が好きですね。カララ・アジバ役の戸田恵子さんが歌っているんですが、その美しい歌声と旋律(せんりつ)に、とても癒されます。
 OP、ED共に、あのすぎやまこういちさんの作曲です。

 ●イデオンを好きになりすぎた自分

 イデオン。これは決して子供だましのアニメじゃない。大人が見て充分に楽しめるアニメです。
 しかも古いアニメだからと言って、近年のアニメに引けを取ったりしない。引けを取るのは画力や画質のみ。物語そのものの面白さは唯一無二のもの。
 そしてまた「発動篇」によって、物語は完璧な形で幕を閉じている。イデオンは、「描かれ切った」物語なのです。


TV版ED(エンドクレジット)。
この歌がまたいいんです。
●他の富野作品

 富野さんの作品は「ガンダム」「ザンボット3」「ダンバイン」「ザブングル」などを観てきましたが、「イデオン」の良さはダントツですね。自分、かなり惚れ込んでしまいました。

 ちなみに、ダンバインは40話ほどで展開がどうにも受け付けなくなってしまい……保留中。ザブングル(今時の若い人は、お笑いのザブングルを連想するんでしょうか)は全話観終えたんですが、この話はやたら明るいですからね。死んじゃう人もあんまりいませんし。
 まぁとにかく、イデオンは立派にホラーしてます。逆に言えば、普通のロボットアニメにしては残酷すぎるんですけどね。後半の畳みかけはほんと恐ろしい。

 なお「ザンボット3」にも「人間爆弾」という悪名高いエピソードが盛り込まれています。あれもほんと残酷。
 でも人の死を描く中で、強いドラマが生まれるのも事実。残酷なものをただ無慈悲に描くのではなく、主人公らの悲しみや怒りといった感情を交えて描く事で、視聴者の胸に響く物語になるんじゃないかな、と思います。

 でも視聴者に愛らしさを感じさせておいて、そのキャラを無残に殺しちゃったりするんですから(人間爆弾でドカーン、爆撃で生首が飛ぶとか)……「ザンボット3」も「イデオン」も、ムゴイと言えばムゴイです。


School Days(スクールデイズ) ―― (C)STACK/schooldays製作委員会2007
 (DVD全6巻/全12話)
 (情報提供: ねこっちゃさん、すけあくろうさん)

 監督 元永慶太郎
 原作 Overflow
 製作 ティー・エヌ・ケー

 ホラー度:★★★☆☆(最終話のみ★5
 面白さ ★★★★★

 (あらすじ: 高校生の伊藤 誠は、通学時の電車でいつも目にする、桂 言葉(コトノハ)が気になっていた。その思いを、クラスメイトの西園寺 世界(セカイ)に知られてしまう。セカイは、誠の恋の応援を買って出る。誠とコトノハは付き合う事になるが、誠の気持ちはやがてセカイへと移っていく…)

 (一言: 原作は18禁ゲーム。アニメはTV放映作品なので、エロのない恋愛もの。最終話だけ、異様にホラー度が高い。この物語の核は「セカイが、恋愛のヘタな誠に、恋愛の練習相手になってあげる」という所。これが物語の方向性を決めています。登場人物のほとんどが、コトノハをイジメているのも印象的)

 ※アニメ内の著作表記では「(C)STACK/schooldays製作委員会2007」となっていますが、実際にアニメを製作したのは、「ティー・エヌ・ケー」という会社である模様。
 原作は、ゲームソフトハウス「Overflow」が製作した、18禁のアダルトソフトです。

●いきさつ

 ねこっちゃさんすけあくろうさんより、教えていただきました。ありがとうございます。

 >こんばんわ。  投稿者:ねこっちゃ  投稿日:2010年07月18日

 最近こんなアニメを見つけたのでご紹介させて下さい。「ひぐらし」と同時期に話題になった作品なので、ご存じかもしれませんが・・・
 「School Days」
 (ネタバレゆえ、リンクは略)

 このシーン以外は観ていないので本編がどんな内容なのか詳しくは知らないのですが、なかなかショッキングではないかと思います。
 それにしても「エルフェンリート」や「ひぐらし」といい、最近のアニメはどこかネジが外れていないといけない暗黙のルールでもあるんでしょうかね(^ω^;)

 >横レス失礼します。  投稿者:すけあくろう  投稿日:2010年07月20日

 いわゆる恋愛モノなんですがドロ沼化の結果です。
 あとこの最終回は色々あってTV放送されませんでした。差し替え映像などの様子から、最初から流す気がなかったという説が定番化しています。

 元々18禁ゲームでそれもそのうち3つがバッドエンド
 (軽いネタバレゆえ、略)

 これはアニメ化ということで煮詰めに煮詰めた修羅場かと
 (ネタバレゆえ略)

 3年も前の話を今更…なんですけど、アニメ全12話を観たので、レビューさせていただきます。
 これはホント、埋もれさせるには惜しいネタでした。かなり夢中になって観ました。(自分はDVDレンタル版を見ました)


主人公、伊藤誠。
桂 言葉を好きになり、付き合い始
めるが、気持ちは世界へと移ってい
く。
エッチしたい盛りの高校生。


桂 言葉。
誠とは両想いだったが、付き合い始
めると、誠とはすれ違いが続く。
胸が大きい。性格はおとなしい。


西園寺 世界。
誠と言葉をくっつけたはいいが、
自分も誠の事を想っていた。
その気持ちを抑えようとしているが
、誠にせまられている内にやがて…


世界の想いがこもったキス。

言葉がしてくれない事を先に世界が
してくれるものだから、誠は世界の
方が好きになっていってしまう。
 ●出だしの印象など

 キャラ絵はまさに萌え系。髪型以外では、顔の区別がつかないヒロイン達……。でもすぐに慣れましたけどね。

 全12話。どの辺からホラーが入るのかはわかりませんが、果たしてダレずに観られるだろうか?という不安はありました。恋愛もののアニメなんて、興味はないので。
 結果から言えば、第1話から引き込まれて、楽しく観る事ができました。後半はキツイ物語になっていくんですけどね。

 アニメの質感は、ちょっと安っぽいエロアニメに似てるかな……と思ったりもしました。2007年ぐらいのアニメってこんなものなのかな、と。でも桂 言葉の髪の毛はよく描けているかな、と思ったり。
 なお、このアニメに「エロ」は一切ないですね。それは残念なんですが……エロがあるとエロの印象が強くなってしまい、本当に描きたい部分(ホラー)が色あせてしまう可能性もある。だからこの作品は、この形で良かったのかもしれません。

 それにしても、ヒロイン2人の名前がスゴイ。
 ――桂 言葉、西園寺 世界。

 はぁ? 世界が名前ぇ? なんて思いましたが、意外とすぐに慣れましたね。(でもこんなキバツな名前なのに、それが物語中で生かされていない気もしました。単なる個性づけ、ですかね)
 なお、このレビューでは、桂 言葉(かつら ことのは)を「コトノハ」と置き換えます。西園寺 世界(さいおんじ せかい)も「セカイ」と置き換えます。

●あらすじ

 高校生の伊藤 誠(いとう まこと)は、電車通学で一緒になる隣のクラスの女の子、桂 言葉(コトノハ)が気になっていた。
 ――好きなコの写メを携帯の待ち受けにして、3週間誰にも見つからなければ、恋が叶う。
 そんなおまじないを本気で信じるワケではなかったが、誠はコトノハの写メを撮り、携帯の待ち受けにしてみるのだった。

 だが初日にして、その待ち受け画面を他人に見られてしまう。
 西園寺 世界(セカイ)。学校で隣の席の女子で、性格は明るく行動的。セカイは、誠がコトノハを好きだという事を知り、その恋を応援してあげると言う。
 誠は、セカイとちょっとした知り合い程度の仲だったが、この件で、お互いを名前で呼び合うくらいの親しい仲になる。

 セカイはコトノハと友達になり、コトノハの情報を誠に伝えていく。
 そしてコトノハと誠をくっつけるために、まず手始めに、3人で昼食をする約束をとりつけた。
 心の準備ができていない誠だったが、3人で一緒に昼食をとった事で、誠はコトノハと初めて会話を交わす事ができたのだった。

 そして誠はコトノハに告白する。
 コトノハはそれを受け入れる。コトノハも、以前から誠が気になっていたのだった。
 
 恋愛の応援をしてくれたセカイに、感謝する誠。駅で一緒に電車を待っている時に、「何かお礼がしたい」と言う。
 そんな誠に、セカイはキスをした。

 驚く誠。セカイは誠に、唇を強く押しつけた後、あっけらかんとした顔で電車に乗って逃げるように帰る。
 セカイは電車の中で一人、うつむいてこぶしを握りしめるのだった。

 ……以上が第1話のあらすじなんですが、なかなか濃いです。色々と凝縮されていて、ラストの疑問も見事。誠じゃなくても、セカイの気持ちが気になって仕方ありません。

 ●その後の流れ (ネタバレにならない程度に)

 最初、誠と乗り気じゃなさそうだったコトノハが、ある事をきっかけに急変。誠に親近感を抱いていく。
 それは、「自分の名前を呼ばれた」瞬間から。名前がコトノハ(言葉)だから、言葉に重きを置いている……? そういうキャラ設定は面白いですね。

 そして誠とコトノハの仲が急接近していくかと思いきや……第3話のラストで、誠の本音が出る。そこから、話はまた違う方向へと……。
 気持ちが合わない誠とコトノハ。誠は、コトノハとエッチな事をしたいんだけど、コトノハがそれを受け入れられない。コトノハは純情すぎるコなんですね。
 悩む誠に、セカイは「練習相手になってあげる」という。自分を使って、女心を知る特訓しなさい、と。

 だが、それが誠とセカイを急接近させてしまう要因となる。
 おずおずと、セカイの身体に触れる誠。その気持ちはどんどんセカイへと向かっていき、そして……。

 誠がうらやま……と言いますか、実を言うと、この辺は全然ホラーではないんですね。あまりにも普通の、恋愛話。
 ホラーになるのは、ホントに最後の最後。でも中盤辺りから、コトノハが精神的に壊れていく様子が描かれていくので、ラストへ向けての準備段階としての怖さはありますね。
 その辺をていねいに描いているからこそ、ラストは盛り上がる。違和感なく、自然な流れに見えるんですね。

 コトノハが壊れていくのと一緒に、セカイの気持ちも強く変わっていく。そして誠の、女に対してのルーズさが周囲をどんどん巻き込んでいき……3角関係をメチャクチャなものへと変えていってしまうんですね。
 誠があまりにもモテすぎなんですが……その辺はあえて過剰な演出にしたのかな、と。だからこそ、ラストのアレにチカラがこもる、と。

 ●エンド曲がいい

 エンド曲、毎回コロコロ変わりますね。ストーリー内容に合わせた曲を使っている、という感じなんでしょうか。何ともぜいたくですね。
 「記憶の海」「ワルツ」辺りが好きですね。好きすぎて、CDまで買いましたけどね。
 劇中に流れたりして、なかなかドラマチックな感じになったり。
 オープニングの曲も好きですよ。萌え系の歌ですけどね。

 ●優柔不断な主人公、伊藤 誠にムカツキすぎ

 しかしホント、主人公の伊藤 誠はダメ男ですね。物事をハッキリ言わないから、余計に周囲を傷つけてしまう。
 しっかりと事情を説明して、コトノハに謝れば……何も起きなかった気がします。ずるずると妙な関係を引きずっちゃうから、ドロ沼になっていく。
 誠はホントにダメなヤツです。……コトノハが可哀相でならない。

 8話目辺りでも、誠はホント優柔不断で……ムカツキますね、これは。
 伊藤 誠こそが、この物語を最悪の方向に導いてしまった……と言っても過言ではない。アッチ行ったりコッチ行ったり、煮え切らない。
 (気持ちが遠のいて、今までさんざん避けていたハズのコトノハに、8話目でその胸の谷間を間近で見せられて、鼻の下を伸ばしてみたり……)こういうちょっとした事がホント上手く描かれていて、誠へのムカつき度がどんどん上昇していきます。

 でもまぁ、高校生ならこんなモンなのかな、と思ったり。「他人への思いやり」というものをまだ勉強していく過程なので、人を傷つけても全く気づかなかったり。するんでしょうかね……。

 ●皆でコトノハをいじめすぎ

 10話目になるともう、誠のだらしなさが爆発。え〜? こういうキャラだったのかぁ…と。悪役になってしまいましたね、彼は。
 でも確かに、エロゲの主人公はいつもモテモテですから、アニメで描いてしまうと、こうなってしまうのかな、と。

 それにしても、皆でコトノハをイジメすぎなんじゃないか、と。
 コトノハの妹のココロちゃん以外、「全員が」コトノハを色んな角度からイジメていますからね〜。……これはひどい話です、ホント。見ててつらくなります。
 コトノハ、何にも悪い事してないのに……。うぅっ。

 モテ男の誠との仲をイジメグループに疑われて、「私は誠くんの彼女です!」と何度も言い張るコトノハが、けなげで……そして可哀相すぎる。
 ……なんでしょうね。こういう「キャラをイジメまくる物語」って、なかなか書けるものじゃないと思うんですけどね。
 最終的に、コトノハがネタバレぎみ: 地べたに座り込むシーンがあまりにも……あぁ。

●ラスト

 観終えて、脱力しましたね。……ホント、ホラーしてました。

 TV放映が最終話のみカットされた、という話があるみたいですが、あれじゃあカットされて当然かな、と。ちょっとエグすぎますからね、色々と。
 中盤以降の誠のひどいだらしなさも、ラストを盛り上げるための演出みたいなものだったのかな、と思ったり。
 ネタバレ: あれだけの憎しみ。確かにこもるでしょう……

 あぁ、何たるBADEND……。誠がああじゃなければ、何事も起きずに済んだものを……。(そしたら普通の恋愛話になるんでしょうけど)
 ストーリー展開の奇跡、みたいなものを見せてもらった気がします。見事でした。夢中になりました。

 ホラー人間としては、大満足の物語でした。やられたな〜……と。こんなスゴイ話があったんだな〜と。
 頭にこびりついて、ウツにでもなりそうです。

 ●

 ラスト付近での誠の選択。あれは少しだけネタバレぎみ: 救われた気がします。

 それにしても、このアニメを「ただの恋愛アニメ」だと思って見た幼少の子などが、もし間違って最終話を目にしたら……そのショックとトラウマ度は、計り知れないものがありそうです。
 TV放映されなくて、ホントに良かったと思います。

 ねこっちゃさん、すけあくろうさん。大変面白怖いものをご紹介して下さいまして、真にありがとうございました。
 耐えて耐えて……そして一撃の凄まじい破壊力で、我々を圧倒する。そんなチカラ強い、ホラーアニメでした。


★★魔法少女まどか☆マギカ
 (DVD全6巻/全12話/TV放映 2011年1月〜4月)
 (情報提供: 蛆さん)

 監督    新房昭之
 脚本    虚淵 玄(ニトロプラス)
 キャラ原案 蒼樹うめ
 異空間設計 劇団イヌカレー
 アニメ制作 シャフト

 ホラー度:★★★★(切り絵風の恐ろしい魔女の世界。そして魔法少女をめぐる過酷な物語。ただし残酷な描写はほぼない)
 面白さ ★★★★★★(視聴者へのだましの演出が多めで驚かされる。ストーリー展開も意外さを極める)
 演出度 ★★★★★★(異様な魔女の世界。驚く仕掛けの数々。曲の素晴らしさなど)

 (あらすじ: 世界の終わりを夢で見たまどか。しかしその結末は、まどか自身が魔法少女になる事で変えられるのだという。暁美ほむらという謎の転校生、そして巴マミという魔法少女との出会いが、まどかの運命を変えていく)
 
 (一言: あまりもの面白さに、夢中になって観ました。タイトルから想像するロリアニメではないです。愛らしい絵柄で過酷なドラマを描く意外さ。散りばめられた数々のフェイク(だましの演出)。切り絵風の独特の異世界。全12話に盛り込まれた数々のドラマ。そして曲の素晴らしさ。何もかもが、最高)

●いきさつ

 ウチの掲示板にて、蛆さんに書き込みをいただきました。

 はじめまして  投稿者:蛆  投稿日:2011年10月07日

 初めてこのサイトに書き込みます、蛆と申します。
 ホラーレビューしていただきたい作品いくつかがあり、書き込みました。一つ目の作品はTVアニメ、「魔法少女まどか☆マギカ」です。
 どういう作品か詳しく書くと、ネタバレにつながるため、上手くは書けないのですが、ホラー作品として視聴しても非常に面白いものではないかと思います。
 (後略)

 との事でした。
 実を言えば、「魔法少女」というタイトルから、ほとんどホラーを期待してはいなかったのですが……これがまたトンデモない作品だったワケで。
 蛆さん。教えていただきまして、真にありがとうございました。近年ないほど夢中になって、イッキに観させていただきました。

●出だし

 まどかはどこぞと知れぬ白黒の異世界を走っていく。
 そしてたどりついた出口……。そこは無数のビルの残骸が宙を舞う、この世の終わりを思わせる光景が広がっていた。
 何かと戦っている黒髪の少女。しかし、苦戦している。

 ふと、そばにいた奇妙な動物が言った。
 「あきらめたらそこまでだ。でも君なら運命を変えられる」
 「避けようのない滅びも嘆きも、全て君がくつがえせばいい。そのための力が、君にはそなわっているんだから」

 まどかは返す。「本当なの? あたしなんかでも本当に何かできるの? この結末を変えられるの?」

 「もちろんさ。だから僕と契約して、魔法少女になってよ」

●レビュー

 ……びっくりしましたね。面白すぎて。
 ちょっと観ようと思っただけなのに、気づけばレンタルした3巻をあっという間に観終えてしまって。
 翌日に残りの巻を全部借りてきて、イッキに観終えてしまいました……。アニメ全12話を2〜3日ほどで観終えてしまっただなんて……、多分、自身初です。
 「続きが気になって止まらない」。そういう感覚を、久しぶりに味わわせてくれたアニメでした。

 簡素なかわいらしい絵柄のキャラ。あのロリロリッとした絵でまさか、これほどまでにキツイ物語が描かれていくだなんて……、想像もしませんでした。
 予想をはるかに超えるホラー描写にも、だいぶ満足させていただきました。特に異世界の描写が、独特で素晴らしかったです。異様な化け物が「魔女」だ、というのも大きな魅力だったと思います。(ちょっとした事ですが、悪魔や化け物、というのではなく「魔女」だからこそ、いい)

 ●かなり泣いた……

 オープニング。曲がまた感動的でいいんですよね。「コネクト」(ClariS)。
 そして「こんな感じのコミカルな魔法少女モノの話になるのかな」と想像してましたが……まぁその辺はごにょごにょ、と。

 で、自分は、物語を観てよく泣いてしまうんですが……この「まどか★マギカ」にもかなり泣かされました。
 全12話、一体どれだけ泣いてしまったのか、自分でもわかりません。もはやオープニングを観ているだけで泣けてくるほどの病気に……。

 かと言って、泣けるドラマが好きというワケでもないんですけどね。そういうのを期待するんじゃなく、自然と泣かせてくれるのがいいかな、と。


魔女の手下
フラッシュアニメ風にぐりぐり動きま
す。

色々な魔女の世界を観ているだけ
で楽しい。
 ●ホラー的には?

 ホラー的には、序盤(数話後)でまさかの展開が待ち受けています。
 観た瞬間、ちょっと信じられなかったですね。……こんな事をしていいのか、と。ネタバレぎみ: 「魔法少女〜」という、幼少の子向けのアニメ?にしては残酷すぎなんじゃないか、と
 正直、「ありえない」と思いました。ネタバレぎみ: その辺は、そこまでのフェイク(だましの演出)に見事に引っかかっていたというワケで

 そして物語は暗い方向に流れていくんですが……、あまりダレないし落ち込まない。展開が上手い。そこからさらに別の方向へ向けて、盛り上がっていきます。
 基本的に、キャラ絵が愛らしくてやわらかいから、そんなに暗く感じなかったのかもしれません。
 
 そしてホラー的に重要な位置をしめる、異世界。――魔女の世界。それがかなり独特の画風で描かれています。
 切り絵のような。フラッシュアニメのような。時に絵画(かいが)のような。芸術作品のような……とにかく、異様さを盛り込んだ世界。

 一人ひとりの魔女に、それぞれ独特の世界があり、魔女(ハタ目から見れば化け物)のデザインも一人ひとり違う。ずいぶん面白い事を考えたなぁ、と感心しました。
 これに関しては、「劇団イヌカレー」さんの偉業、なんでしょうね。 
 氏が、この作品にもっとも大きな魅力を付加してくれたんじゃないかな、とすら思います。異世界描写があれじゃなかったら、もっと普通すぎるアニメになっていたような気もします。(実際、10話で普通のアニメで描いた魔女(洗濯物を干したようなヤツ)が出てくるのですが、ここだけ「あまりにも普通」な感じを受けてしまいました)


魔法少女、巴マミ
彼女の戦いぶりをそばで見守る
まどかとさやか。
 そんな異世界で、魔女と魔法少女たちは激闘を繰り広げていくワケですが……、これがまたカッコ良すぎ。
 序盤の巴(ともえ)マミの、一丁一弾の銃での攻撃がシビレましたね。銃を何十丁とその辺にザラッと生み出して、それを一丁ずつ撃っていく……。
 何たるぜいたくな攻撃。何というアイディア。……こんなの観た事ありません。

 そういった「魅力的な演出」というものが、結構重要なのかな、と思ったりもしました。
 例えば、魔法攻撃で光の刃をガンガン放つ……というどこにでもありそうな芸のない攻撃だったとしたら……、多少、残念に思ったかもしれません。

 ――ありきたりじゃないからこそ、面白い。視聴者の想像をはるかに超えたものを見せてくれるから、引き込まれる。
 遊び心、と言いましょうか。シナリオの展開にはさほど意味をなさない部分(戦いに勝った負けた、の過程)でも、何かしらの魅力(攻撃方法など)を付けてくれると、やっぱり感心しちゃいますね。


主人公、鹿目(かなめ)まどか

まどかがいつ、どんな願いを胸に、
魔法少女になるのか。
それがこの物語一番の期待どころ。
 ●まどかはいつ魔法少女になるのか?

 「魔法少女まどか☆マギカ」というタイトルなのに、まどかがなかなか魔法少女にならない……、というのも不思議でした。

 いつなるんだ?とじらされながら観てましたね。序盤のあのショッキングな後、まどかが立ち上がるのかな……と思いきや、ごにょごにょ。
 魔法少女になる事の恐ろしさを、身にしみて感じていくんですね、まどかは。

 そしていくつかのドラマが流れ、ついに来た、まどかの決断の時! と思いきや……ギャーーッ! なんてなシーンもありましたし……。
 ホント、シナリオ展開が凄すぎますね。こんなに面白いんじゃ、夢中になる他ありません。

 で。この作品は「戦うという事は、本当は怖い事なんだ」というリアルさを、前面に押し出しているように思いました。
 戦いというものは、悪いヤツを倒すだけじゃない。――逆に自分が殺されてしまう事だって充分にある。
 そんなリアルさが伝わってくるから……、この作品は怖い。


暁美ほむら
ツン、とした高圧的な態度でまどか
にからんでくるが…
 ●ほむらの謎めいた魅力、ソウルジェムの設定など

 まどかに深く関わってくる、謎の転校生、暁美(あけみ)ほむら。
 彼女は回を追うごとに深みを帯びていきますね。
 最初はただのツン照れ?キャラかと思ってましたが、そうじゃない。彼女はキュゥべえ(まどかを魔法少女にしたがっている生物)ですら知らない何かを持っている。……とまぁ、何ともうならせてくれる謎です。

 そして魔法少女の命とも言える、ソウルジェムの設定。
 魔女を倒すと入手できるグリーフシード。それでソウルジェムにたまっていく、けがれをはらう。何ともゲームめいた設定です。
 さらに隠された重大な謎。それがこの物語の過酷さの「核」になっているんでしょうね。

 アイテムの設定を生かした物語作り、というのもまた面白いですね。
 独特のアイテムを生み出せば、独特の物語展開になっていってくれる。こういうところから、「独特の物語というものを生み出すヒント」が得られるかもしれません。

●総評など

 まぎれもなく、ホラー作品と言える作品でした。
 ホラー要素を「含んだ」作品、という程度じゃない。愛らしい絵柄の奥の世界では、過酷さが渦巻いている。回を重ねるごとに、どんどん怖くなっていく……。

 タイトルがロリッとした「魔法少女〜」ですから、蛆さんに教えてもらわなければ、多分僕は一生観る事もなかったアニメだと思います。
 ホント、感謝します。こんなに面白い作品を教えていただいて、本当にありがとうございました。近年ないほど、夢中になりました。


キュゥべえ
魔法少女モノにありがちなマスコット
キャラかと思いきや…なかなかのく
せもの。

こんな簡素な顔立ちなのに意外と
アップが多い。
 ●余談など

 いい所ばかり書きすぎましたけど、悪い所もあります。
 最近のアニメ全般に言える事なんですが、一枚のDVDに入っている話数が少ない、という事。この「まどか☆マギカ」はDVD1枚につき、たったの2話。これはあまりにも少なすぎる。
 まぁレンタルで済ませればさほど金額はかかりませんが、DVDやブルーレイを買うとなると……キツイ。たった2話に5000〜6000円とかかかりますからね。
 自分、アニメDVDを買いあさる(特にレトロアニメ)、という趣味があるもので、そういう視点で見てしまうと……ちょっと悲しくなります。

 ●

 鹿目(かなめ)まどか、暁美(あけみ)ほむら、巴(ともえ)マミ、美紀(みき)さやか、佐倉杏子(さくらきょうこ)。
 主要キャラみんな、苗字が名前になってもおかしくないような感じになってるんですね。こういう遊び心もまた楽しいですね。(でもかなめ、は無理があるか…な?)

 また2011年3月11日に起きた震災。その時にTV放映が10話でストップしたらしいですね。(残りの2話は予定より遅れて放送)
 もしかすると……残りの2話を楽しみにしていた視聴者の方が、震災の犠牲になった……と考えると悲しいものがあります。

 しかも10話とくれば、出だしが「はあッ?」と驚くまさかの展開から始まって……の重要な回。僕なんかはそのフェイクに引っかかって、「物語を壊したのか?」とすら思いましたから。

 ……観たかったのに、観られなかった。それはあまりにも悲しいです。
 今さらながら、僕らは「本当は、生きているだけで幸せ」なんですよね……。


THE MIDNIGHT MEAT TRAIN(ミッドナイト・ミート・トレイン)
 (2008年アメリカ製作/本編100分)

 監督 北村 龍平(「あずみ」「ゴジラ FINAL WARS」)
 主演 ブラッドリー・クーパー、レスリー・ビブ

 ホラー度:★★★★(しっかりとグロい殺戮シーン。殺人鬼を追い求めてしまうスリル。血の恐怖電車の映像…)
 面白さ :★★★★(数々のホラーシーンの見事さ。殺人鬼の不思議なダンディさ。危険を追い求める主人公の行く末は…?)

 (あらすじ: レオンは「街」を撮るカメラマン。ある晩、体格のいいスーツ姿の紳士が、地下鉄から上がってくるのを追った事から、悲劇は始まる。その男の恐ろしさを知りながらも、レオンは追うのをやめられなくなる…)

 (一言: 電車内を殺戮の舞台とした、スプラッター・ホラー。スプラッター度は高め。無口な殺人鬼のダンディさが魅力。物語の背景(彼は何故、電車内で殺人をするのか、など)も魅力的)

●いきさつ

 クライブ・バーカー作「ミッドナイト・ミートトレイン」。(短編小説。「血の本」シリーズの1巻目に収録)
 原作小説の存在を知りながら、今まで読んだ事はなかったんですが……、それが近年、「思わぬ」映画化。

 ……と言うのも、原作小説はそうとう古い。調べてみたら、1987年作(小説本の日本販売)。
 とにかく喜んで、DVDをレンタルしてみました。

 で。映画を観終えてから、ネットで調べてみるまで、監督が日本人だとは気づきませんでした。
 全然、そんな雰囲気を感じなかった。「フツーの、高級感あふれるハリウッドホラーだなぁ」という印象でしたので。
 もっとよく調べてみたら、「北村龍平監督が、ハリウッドに進出した」という事なんですね。日本映画ではなく、あくまでもやはり、ハリウッド映画なんですね。

 なお、原作者のクライブ・バーカーは、映画「ヘルレイザー」の脚本・監督をしていたんですね。
 余談ながら、「ヘルレイザー1〜3」が近年、新たにDVDBOX化。さらに、アマゾンにて「ヘルレイザー4」のDVDに、10万円のプレミア価格がついていたのを発見……(2011/8現在)。


冒頭。血まみれの電車内。


レオン
無名の写真家。
スーツ姿の謎の男を追い続け、次第
に彼の真相に近づいていく…。


マヤ
レオンと同棲している恋人。
レオンが危険な事に夢中になって
いくのを恐れる。


マホガニー
無口でダンディな殺人鬼。
主な凶器はハンマー。
●あらすじ

 夜の電車内。男は居眠りから目覚める。その車両にいるのは自分だけだ。
 ふと腰を上げ車内を歩いてみると、いきなり滑り、派手に転倒してしまった。
 見れば……床が血だらけだ。
 何だ? 隣の車両で妙な音がする。
 そして男が窓ごしに見たものは……、今まさにそこで殺戮が行われている、恐ろしい光景だった。

 ●

 レオンはフリーのカメラマン。ニューヨークの街を撮り続ける。だが、まだカメラマンとしての芽は出ていない。レオンの夢は、「街の心臓を撮る」事。
 恋人のマヤと同棲。マヤはレオンの夢を応援している。

 レオンは時折、妙な夢を見る。
 真夜中の電車……そこは血だらけだ。

 いつものように、レオンは夜もカメラを街に向ける。
 狭い路地で3人のチンピラが「カツアゲをしようぜ」と息巻いているのを聞きつけ、その後を追う。
 地下鉄構内。階段で、女性がそのチンピラ達に捕まっていた。
 レオンはカメラを向けながら、男達に声をかける。近寄ってくる男達。そしてレオンは充分に引きつけてから、近くの防犯カメラの存在を教えた。
 それが結果的に、女性を助ける事となる。男達は去り、女性には感謝のキスを受けた。

 その場で撮った、チンピラ達の写真には生々しい凄みがあり、マヤも称賛する。「これ以上の写真は見た事がない」と。
 スーザンという画商にもその写真は認められ、「こういった写真があと2枚あったら、今度開かれるグループ展に抜擢(ばってき)する」と言われた。

 道が開けたレオン。これは大きなチャンスなのだ。そして友人と恋人を招いての、ささやかな祝杯をあげる。
 だがレオンは落ち着いていられなくなり、カメラを手に、すぐにまた街へと繰り出した。

 ●

 夜中の地下鉄。電車内に3人の客。
 体格のいいスーツ姿の男が、彼らに近づく。男はいきなり、ハンマーで一撃。血しぶきが飛び、目が飛び出す……。
 他の2人もなすすべなく、大男にハンマーやかぎ爪でムザンに殺されていく……。

 その男が地下鉄から上がってくる場に、ちょうどレオンがいた。
 何かを感じ、レオンは男の後をつける。だが男に感づかれ、胸ぐらを掴まれる。謝ると、事なきを得た。

 しかし、レオンはさらにその男の後をつけ狙う。別の日。男の働いている職場を突き止めた。彼は、食肉解体場で働いていた。
 帰宅時。男は駅でかなりの時間、ホームのベンチに座り続けていた。
 そして、やっと乗る電車。レオンもその電車に乗ろうとしたが、警備員に職務質問を受け、機を逃す。

 ●

 その後も大男を追い続けるレオン。
 何度か危険な目にあいながらも、レオンはその男に、執拗(しつよう)な興味を燃やしていく。

 ここ3年で起きた、近辺での連続失踪事件の数々との関連。
 あの男には……何かがある。

●感想

 かなり良くできたホラー映画だと思います。
 スプラッター場面の迫力も、なかなか。目玉が飛び出すシーンをゆっくりと映すなど、そういう悪趣味もしっかりと行ってくれています。

 ハンマーであっけなく一撃で仕留めてしまったりもするんですが、その後の解体シーンもていねいに映すなど、ホラー的にかなり気合いが入っています。
 殺戮シーンの数も、ほど良く多い。消化不良にはならないと思います。

 ラストも個人的に好み。それほど衝撃的、というワケではなく、「昔、こういうオチの話をどこかで見たなぁ」という感じなんですが、こういうのは好きですね。

 物語の流れとして、主人公のレオンが、どんどん危険に飲み込まれていく様子が面白怖い。
 彼は、街を撮る写真家として、興味本位で、危険なものにも簡単に首を突っ込んでしまうんですね。
 だから殺人鬼を追い、事件に巻き込まれていくのに、説明はいらない。……「職業を前面に出して、物語の進行をスムーズに行う」という手法はためになります。(ただの一般人が、怖いもの見たさに殺人鬼を追う、というより、よほど説得力がある)

 ●

 ストーリー的に「唐突すぎたかな」と思うのは、マヤとその友人が、殺人鬼マホガニーの滞在するホテルに行くところ。
 彼らが、いきなり行動的すぎる感じ。でも、そのおかげで「怖いシーンが満載」……となるんですけどね。

 あと、食肉工場内での追いかけっこは、どこかで見たなぁ、という感じでしたけどね……。(オマージュ、ですかね?)

●他

 ケータイのサイトで調べてみたら、この映画、製作費15億円で、総興収が700万円……。
 と言いますか、映画配給会社の扱いがひどい。全米102館で2週間だけの公開。しかも入場料1ドル(今の日本じゃ77円)……。これじゃあどうしようもない。(まぁ、アメリカでは映画が安く観られる、とどこかで聞いた覚えもありますけどね……)
 というか、せっかく作った映画を公開しないで、いきなりDVDリリースにしようとしたそうで。原作者などからの反発もあった模様。

 映画そのものはかなり良くできていたと思うので、この扱いが残念で仕方ないです。もっと大々的にセールスできなかったんでしょうかね?
 この映画と北村監督は、もっと世に認められていいハズ。
 ……でもDVDリリースでも充分な収益は出ると思うので、総興収額も変わってくるでしょうけどね。

 とにかく、僕は面白怖く観られました。(日本人監督というひいき目を、抜きにしても)
 高級感あふれる、今時のハリウッドホラー映画。その中でも、目を見張るグロさ(殺人鬼のバイオレンス。ていねいな解体シーン。肉を運ぶ電車)を前面に押し出した、良質のホラー映画だったと思います。
 逆に言えば、グロすぎるシーンも多いので、一般向けではないですね、これは。
 
 わかりやすい恐怖が欲しい時に、この一本をオススメしたいですね。


妖怪人間ベム
(1968年TV放映/全26話)
(DVDBOX発売 2010年12月/税込20790円)

 企画制作 第一動画(株式会社アサツー ディ・ケイ(ADK))
 声優  小林清志、森ひろ子、清水マリ

 ホラー度:★★★★(人間の悪意や化け物など、様々なホラー要素が柱として描かれてある)
 面白さ :★★★★(各話ごとにバラエティにとんでいて、ストーリー展開も見事)

 (あらすじ: 一つの細胞から生まれた3人の妖怪人間。ベム、ベラ、ベロ。彼らは、良い事をしていけば必ず人間になれると信じて、今日も行く先々で悪を打ち倒していく)

 (一言: 1968年にTV放映された幻のレトロアニメが、DVDBOX化。画風はかなり古い。でもシナリオが凝っていて、大人でも充分に楽しめる。他、特に「音」(効果音、声)の迫力が素晴らしく、演出としてかなりの効果を発揮している)

●いきさつ

 ――「はやく人間になりたい」。そう願う妖怪人間、ベム、ベラ、ベロ。
 幼い頃から、名前だけはよく知っていた「妖怪人間ベム」。あまり記憶はないんですが、多分TV放映を観ていたんだと思います。再放送でしょうけど。
 それが近年、DVDBOX発売。これはもう買うしかありません。

 で、以前もDVD化されていたようなんですが、通販サイト「アマゾン」のコメントを見ると、どうやら完全版ではなく、「まずい部分(現在は放送できない言葉など)を修正して出した」ものだった模様。かなりの不評を得ていました。
 でも今回のDVDBOXは、放映当時のものを改変なしに収録した、完全版。ありがたく観てみます。

●あらすじ&レビュー


妖怪人間ベム
帽子の下はスキンヘッド

声優さんは、「次元大介」で
おなじみの小林清志さん
 ●はじめに

 何と言っても、42年前のアニメ。
 一般の人にオススメする、という感じの作品ではなく、昔を知っている方に「貴重なコレクション」としてオススメしてみたり、「昔のアニメの古くささに、ある程度耐えられる方」へオススメするものであるような気がします。

 今時の高度なアニメと比べると、見劣りするのは当たり前。そして、画面のノイズやゴミも仕方ない。画があまりにも古くさいのも仕方ない。
 自分としても最初、ベロ(子供)の顔を見ただけで(この、くどい顔に慣れるだろうか…)と変な心配をしてしまいました。すぐに慣れましたけど。

 26話中、最初の7話ほどを観てみましたが、シナリオはかなり凝っています。子供も大人も楽しめる、絶妙のバランスなんじゃないか、と思います。……1話ごとに、かなり面白いです。
 ホラー的にも、かなりがんばってます。
 特に、音の迫力に感心。BGM、効果音(化け物の叫びなどもスゴイ)、声優さんの迫真(はくしん)の演技。どれをとっても素晴らしい。
 個人的には、ベラ(女)の「ははははは!」という高笑いが好きですね。迫力に満ちた笑いです。

 なお、「妖怪人間ベム」というタイトルなのに、物語の発起人は、ほとんどが(子供の姿をした)ベロいう不思議さです。


かなり好きなシーンです

左から、ベム、ベロ、ベラ
 ●イントロ

 物語に入る前に、イントロがあります。(同じイントロが、各話の前に挿入)

 ――それはいつ生まれたのか、誰も知らない。
 暗い、音のない世界で一つの細胞が分かれて増えていき、3つの生き物が生まれた。
 彼らはもちろん人間ではない。また動物でもない。だがその醜い体の中には、正義の血が隠されているのだ。
 その生き物。それは人間にはなれなかった、妖怪人間である。
 (映像より原文のまま)

 どろどろした細胞が、3匹の妖怪人間になるサマが描かれています。
 怪奇色が強くて、かなり好きなシーンです。

 (なお、リメイク版のアニメ「妖怪人間ベム-HUMANOID MONSTER BEM」でも、ほとんど同じものが、より緻密(ちみつ)に描かれています。そういうオマージュ、遊び心は大好きです)


ピーターを助けるベロ(右)
 ●第1話 恐怖の貨物列車

 夜空に浮かぶ三日月。その下を走る夜行列車から、飛び降りた赤い影。それは人間の子供の姿をした、ベロだった。
 飛び降りる際に頭をぶつけたベロを笑う、マント姿の中年女。それは仲間のベラだ。
 もう一人の仲間、ベムと約束した場所に向かう2人。そこは鉄道の橋だった。

 妖怪の姿で、橋に逆さまにぶら下がっていたベム。ベロもとなりでまねる。
 そうしていると、付近の山肌中腹の道に、車が走ってくるのが見えた。ベラは、「悪のにおい」を感じるという。

 その車にはピーターという子が乗っていた。気のいい運転手が、ピーターを駅まで送り届ける途中だった。
 そこに立ちはだかる、悪人達。彼らはピーターが大金持ちの祖父母にもらわれる事を知っていて、ピーターの替え玉の子供を用意していたのだ。

 運転手とピーターは湖に突き落とされる。悪人達は車で走り去り、ピーターの祖父母が待つ駅へ向かう。
 突き落とされた彼らを救ったのは、妖怪人間のベロ、だった。そして事情を知り、悪人の悪だくみを阻止すべく、駅に向けて走った。

 >感想
 ベムとベラが夫婦でベロがその子供、と見えますが実はそうではなく、3人は対等の仲間。1つの細胞から生まれた、3匹の妖怪人間。
 で。リメイクされたアニメでも、3人の風貌(ふうぼう)はほとんど変わらない。42年前のキャラデザが数十年後にも通じるとは、恐れ入ります。る程度、奇抜な服装なんですが、ムダがほとんどないのがスゴイ。
 あと、画が古さを感じさせるのはムリもないとしても、デジタル技術で処理されたという映像は、なかなかにキレイ。他のレトロアニメと比べても、ほんと画面のゴミやノイズが少ないです。

 肝心のストーリーも、なかなか凝っていて楽しい。大金持ちの祖父母にもらわれていくピーター。それを心から祝福する、気のいいおじさん。そしてピーターの替え玉を用意して、莫大な財産をねらう悪党ども。
 他、悪人の女が自分達の計画をピーター達にバラすところなど、実にわかりやすく説明していて(しかも自然に)、感心しまくりでした。


左)ベラ

ベラは気性が荒い
だが悪い人間を許せないと
いう正義感も強い
 ●第2話 階段を這う手首

 嵐の中、今夜寝る場所を探すベム達。
 運よく廃屋を見つけるが、そこに悪人達がやって来る。そこで彼らがこれから起こそうとする悪事を、ベム達は知る事になる。

 アリスという継母(ままはは)は、この悪人達に、血のつながらない息子、ジミーの殺しを依頼したのだ。
 その晩、悪人達が出かけようとする所に、ベムが立ちはだかる。
 銃で撃たれたベムだったが、妖怪に変化して、応戦。車で逃げる悪人達。車の上にしがみつき、彼らをおどす。そして悪人達の車はガケから落下し、炎上するのだった。

 一方、アリスはジミーを連れて外へ。
 そこにベロが。ジミーを助けようとするが、気丈なアリスにかなわない。
 ベラが救いの船を出す。しかし、アリスに手をぶたれた事で怒り、周囲の木々をなぎ倒し、自分のムチの破壊力を見せつける。
 「今度の満月の夜にまた会おうじゃないか」
 ベラは、そんな決闘とも、殺しの宣言ともとれる不吉なセリフを残し、ベロと共に去るのだった。

 >感想
 冒頭でベラが「一日も早く人間になりたい」と騒ぎ、暴れたりします。気性の荒さがいかにも妖怪っぽくて、見ていて楽しい。こういう「毒」は大好きですね。
 そんな焦るベラに、ベムは諭(さと)す。「俺達はいつか必ず、人間になれる」と。

 ベラ以上に、悪人達の毒っぷりも見事に描かれています。躊躇(ちゅうちょ)しないで、すぐに銃をぶっ放してきたり、チェーンなどを使ったりと、なかなかの好戦ぶりです。

 ●第3話 死びとの町

 ベム達は、ひと気のない寂れた地にある、廃墟で朝を迎えた。ベロは眼下に広がる人里に降りてみる。しかし、そこには人の姿が見えない。
 でも何かおかしい。家の中から、まるで監視されているみたいなのだ。

 そんな時、一人の少女が泣きながら、家を飛び出てきた。少女の名はエミリー。母親に「大丈夫だ」となだめられて、家に戻る。 
 しかしその母親も影で泣いていた。近所のおばさん達も集まって、みんなで泣いている。そんな様子を天井裏から眺めていたベロは、ただ不思議に思う。

 そんな時、どこからか声がした。
 「エミリーを夕暮れまでに井戸に連れて来い。さもないと、お前達の誰かが死ぬ。または皆殺しだ!」

 同じ天井裏にひそむ何者かの影。ベロは追いかける。
 マント姿の男は、墓場の中の井戸の中に逃げ込んだ。ベロも井戸の中に飛び込む。……しかし、そこは枯れ井戸。男の姿は消え去っていた。

 エミリーの元に行き、友達になりながらも、詳しい話を聞こうとするベラ。エミリーの母親にも信用されて、話を聞く事ができた。
 ――謎の男が毎月13日になると、町の子をさらっていく。
 ベロはその話をベムとベラに話す。するとベラがその話にのってきて、さらわれる子の身代わりになる、と言い出した。

 >感想
 かなり凝った話でした。どんでん返しがスゴイ。
 それなりに、ぎこちなさやツッコミどころもあるんですが、でも物語の持つパワーに圧倒されてしまいました。

 クライマックスが「え?」とスカされた後の、盛り上がり方もスゴイ。本当の恐怖はそこから始まる……。


せむし男の出てくる後半より
前半の、ガケから落ちた子
供達の救出劇が印象的
 ●第4話 せむし男の人魂

 とある監獄の所長室。そこにとつじょ現れた人魂。所長はそれにのっとられてしまった。
 死刑囚のギルは、その所長に釈放された。その代わりにギルは、謎の男と女そして子供(ベム達の事)を殺さなくてはならない。

 崖のふちで絵を書いていたジョン少年と、友達になったベロ。しかしそこをギルに襲われる。
 格闘の末、ジョンとベロは崖から落ちた。
 ジョンを探しに来た家政婦は事態を知り、叫びながら屋敷に戻る。
 そこに丁度帰宅した、ジョンの父親。家政婦と共に、崖まで走る。ジョン達は、崖の途中の木などに引っかかって、生きていた。

 運転手らにロープをもってこさせ、決死の救出劇が始まる。そこに雨が降り出したり、ロープが足りなくなったりと大変な事態に。
 そしてジョンとベロが助けられたが……、ベロは死んでいた。

 しかしベロは息を吹き返す。屋敷のベッドに寝かされていたが、そこでおかしな夢を見たのだった。
 ――せむし男。それはたくさんの人間を殺し、えらい坊さんに地下室に閉じ込められて死んだ。
 そのせむし男が呪いの言葉を吐く……。

 ギルは監獄の所長を連れて、屋敷に来る。屋敷にかくまわれているハズの、ベロを殺すためだ。
 しかし家政婦に案内され、間一髪、ベロは地下室へと逃げる。
 そこで待っていた、せむし男。彼は館に住む者を呪う。その邪魔となるベム、ベラ、ベロの存在を消してしまおうと、裏で画策していたのだ!

 >感想
 色々な事件が立て続けに起こります。何も恐れずに、ばんばんコトを起こしてしまうシナリオのパワーに憧れます。
 せむし男の「語り」はかなり「説明」っぽく聞こえてしまいますが、まぁ仕方なかったんでしょうね。

 3話とほぼ同じ手段で、化け物にとどめを刺したのは、ちょっと残念。

 ●第5話 マネキン人形の首

 とある夜の街。車が路地に、マネキン人形の首を落としていく。それを見ていたベロは、その首を拾って、車を追いかける。

 その車は街外れの墓地で停まっていた。運転席の中年の男は、悪者達に「仕事を手伝ってほしい」と言われている。
 車の助手席には、娘のルル。ルルは、父親が過去、悪い仕事に手を染めていた事を知らない。だが父親は昔「金庫破りのモンク」として、名をはせていたのだ。

 モンクが悪者達の仕事を断ると、悪者達は暴力をふるってくる。そこに助けに入るベロだったが、逆に追い詰められる。そこにベラとベムが助けに入る。
 悪党達は退散する。
 しかし悪党達は、親分のジェロニモを従えて、再度、モンクに仕事を手伝わせようとする。金庫破りには、モンクの腕が不可欠なのだ。
 ジェロニモは、ルルに父親が過去に金庫破りをした事をバラしたり、ベロが悪いヤツなんだと吹き込んだりする。

 ベロはルルと会う約束をしていたが、顔を見せた途端、ルルににらまれる。
 ルルはジェロニモに言われたウソを真に受けて、誤解しているのだ。言っても聞いてもらえないベロは、ルルに自分の本当の姿を見せ、何とかわかってほしいと訴える。

 >感想
 いやはや。ベロの素行を見張るために、ジェロニモの親分が人形の中に隠れていて、壊して出てくるところは笑えました。あんた、そこまでしますか、と。
 今回は色々とツッコミ所も多くて、笑える出来でした。悪党どもの会話も、やたら楽しく聞けました。キャラ作りが上手いというか、何というか。
 でも、怖さは……あまりなかったですね。

●総評

 全26話ですが、全部を観終えるのはまだまだ先の事になりそうなので、この辺でおおまかな感想を。
 絵的にもストーリー的にも「レトロすぎる」ので、そういうものに興味がない人にはオススメできません。特に今時のハイクオリティな画質のアニメと、同じ感覚では観られない作品だと思います。
 ホント、この作品を観るのは「マニアックの域」、なんじゃないかと思います。昔を懐かしむ、とか。

 想像以上にシナリオがよく練られていて、個人的には非常に楽しく観る事ができました。でも、一般の人にもオススメできるかどうかは微妙なので、★マークはあえて付けませんでした。
 なお、ホラーを求めてこの作品を観る……という感じだと肩すかしを食らうかもしれません。そんなに怖い、というワケでもないので。あくまでも「怪奇色の強いレトロアニメ」という感じでしょうか。

 また、この作品には「リメイク版」もあるので、そちらであれば、今時のアニメと変わらない感覚で観られると思います。(リメイク版のレビューは、また後ほど改めて)

 それにしても、42年も前にTV放映されたものを、今こうして観られるという事は、ほんとにありがたい事です。


serial experiments lain(シリアル エクスペリメンツ レイン)
(1998年TV放映/全13話/DVDBOX 定価12000円(新品での入手は困難))

 原案 production 2nd.
 監督 中村隆太郎
 脚本 小中千昭

 ホラー度:★★★☆☆
 面白さ :★★★☆☆(後半はかなり哲学的になり、難しい)

 (一言: ネットワーク世界と現実世界の境界が、主人公の玲音(れいん)を軸に、不安定になっていく。魅力的な物語ながらも、話が難しすぎる。笑いの要素は一切なしのシリアスさ。ストーリー展開を楽しむのではなく、「現実を壊していくネット世界」という世界観を楽しむ作品か? OPの素晴らしさが特に印象的)

●いきさつ

 昔、レンタルで数話観たんですが、途中で投げ。面白いのかどうかも、ど忘れ。オープニング曲の素晴らしさが、とにかく印象的でした。(CDも購入)
 数年経った今、中古屋で2000円という安値で、DVDBOXが売っていたので、迷わず購入。……確か、ホラーっぽかったよなぁと期待しつつ。

●あらすじ&レビュー

 ――「プレゼント・デイ、プレゼント・タイム」。そして男は笑う。謎めいた出だしです。

 OP曲は「DUVET」/music by BOA。(しかし日本で流行ったあのBOAとは別人です。外国のアーティストですね)
 この曲の素晴らしさが直接、この作品の大きな魅力、となっていると思います。
 なおED曲は、忌野(いまわの)清志郎さんの歌い方にそっくりな曲……。


主人公、玲音(れいん)
 ●1 WEIRD(ワイヤード) ※この物語内での「ネット世界」の事をさす

 一人の女子中学生が、繁華街のビルの屋上から飛び降り自殺した。
 それは主人公、岩倉 玲音(れいん)と一度だけ、一緒に学校から帰宅した事のある、という程度の薄いつながりをもった生徒だった。

 ――その死んだ子からメールが来る。そんなウワサが流行り出した。

 玲音の自宅のPC(ナビ)にも、そのメールが届く。玲音は怖がる事もなく、そのメールと会話する。
 死んだ子――ちさが言うには、自分は肉体を捨てただけ、だと言う。
 「どうして死んじゃったの?」という玲音の問いに、ちさは答える。ここには、神様がいるの――と。

 PC好きの父親は言う。「この世界はワイヤード(ネット世界)でもリアルワールド(現実)でも、みんながつながっているんだ。そうして社会が成り立っているんだ」。

 ●2 GIRLS

 クラブ「サイベリア」。そこではアクセラというドラッグめいたものが手に入る。男はそれを嬉々として飲み下す。

 玲音の友人達は、「サイベリア」で玲音そっくりの子を見た、という。しかしその子は別人のようだった。派手な格好をしていて、スゴイ剣幕(けんまく)で怒鳴っていたのだ。
 それが玲音なのかどうなのかを確めるため、友人達は玲音をサイベリアに連れ出そうとする。

 玲音に最新式のナビが届く。それは父親からの贈り物だった。
 その晩、友人達から「サイベリア」に来るよう、誘いのメールが届く。

 そこで起きる発砲事件。
 「何で俺にこんな事させんだよぉ!」「ワイヤードは絶対にリアルワールドに干渉してはならない! アンタは誰なんだー!」
 玲音は拳銃を持った男に近づき、答える。「どこにいたって、人はつながっているのよ!」
 玲音に追い詰められた男は……。

 >感想
 この辺で玲音の二面性、というものが浮き出てきます。
 ナビへの強い関心。突然の不可解な言動。しかしいつもはおとなしく、トロい感じの子。……玲音は一体、何者なのか?

 ●3 PHYCHE(プシュケー)

 警察の事情聴取を終え、帰宅する玲音。夜中なのに、両親は不在。姉の姿もない。
 のろのろと夜は過ぎる。玲音の自室にセットアップされたナビだけが、静かに玲音の応答を待ち続ける……。

 朝。玲音の自宅付近に停まっている黒い車。そこからのぞく、赤い小さな光が玲音を見つめる。
 学校。玲音のクツ箱の中に入っていた封筒。その中には、謎の物体が。機械の一片のようなモノに見えるが……。

 その機械(チップ)は「プシュケー」(シュウケイ、としか聞こえませんでしたが、調べたらこうだった)。どんなナビでもワイヤードにつなげる事ができる(?)。……サイベリアで知り合った子供達3人(小学生)に、そう教わる。
 その中の一人は、玲音をワイヤードで見た事がある、と言うが……。

 玲音の自宅前にいた、謎の黒服の男達。怪しいと思った玲音の姉は、警察を呼ぼうとする。しかし彼らは言う。「我々は今、ここにはいない」。

 最新式のナビに、プシュケー・プロセッサーを組み込む玲音。PCをバラし、配線類をむき出しにしていく。
 何故、玲音にはそんな事ができるのか。そして玲音は何をしようとしているのか?

 >感想
 玲音の謎がさらに加速していく。そして謎の黒服の男達は一体何なのか。プシュケーを組み込んだナビはどうなるのか。

 ●4 RELIGION

 最近、玲音が変わってきた。そう友人達は言う。
 玲音は部屋内にたくさんの機材を積み上げ、ナビの改造にいそしむ。

 近隣の町で、連鎖(れんさ)する自殺者のウワサが流れる。彼らはネットのゲームにハマッていたらしい。
 そのゲームをしている内に、どうやら現実とワイアードの世界の境界があいまいになってしまうようだ。彼らは現実で、ゲームのダンジョンの世界を必死に逃げ惑っている……。

 >感想
 この辺の展開はかなりスローペース。結局、玲音はまだナビの改造をし続けてます。
 1〜4話まとめての感想になりますが、このアニメ、人の顔のアップがやたら多いです。
 後、背景の「影」を特徴的に描いていますね。そこに別の世界が見えるかのように。
 そして笑えるシーンが全く、と言っていいほど、ない。

 主人公の玲音(れいん)にも、魅力があまり感じられない。何を考えているのかわからない、おとなしい子。ただ、2面性を持っていて、ワイヤードに関わる玲音は機械(ナビ)に関する知識が豊富で、なお言動なども激しい性格である様子。

 ●5 DISTORTION

 車が行き交う交差点でぽつりとたたずむ、玲音。その奇怪な行動を偶然見かけた姉。
 そしてビルの側面の大型モニターに映し出される、玲音の顔……。
 友人達も公共の電波に乗せた玲音の顔を見ていて、玲音がハッキングしたんだと驚く。しかし当の玲音には心当たりがない。

 ワイヤードで力を持つ、ハッカー集団「ナイツ」の存在。

 玲音の姉の現実が急激に狂い出す。急激に交差点の真ん中にいたと思えば、次の瞬間にはファーストフードの店内に。これは夢か幻か。
 ――預言(よげん)を実行せよ。
 そんな言葉が語られる。
 何とか家に逃げ帰った姉。しかし、当の自分がそこにいた。そして……。

 >感想
 姉が狂った現実を見る場面はホラーの連続、という感じ。ただどうも、姉は玲音の周囲の出来事に巻き込まれてしまった、という感じに見えます。

 ●6 KIDS

 玲音の部屋は機材に埋め尽くされていた。……その機材の奥。ナビに夢中になっている玲音。それを見て、父親は顔を曇らせる。娘の事が不安なのか。

 両手を挙げ、空をあおぐ謎の子供達。
 玲音が友人達と一緒に町を歩いている時、とつじょ空の雲が開き、そこに神のような姿の玲音が現れた……?
 それを玲音と、友人のありすも目撃していた……。

 玲音の姉は、あれ以来、ぼけっとしている事が多くなったようだ。まるで抜け殻のよう。

 ワイヤードの中で、ホジスン教授との会話。玲音は、教授が子供達を使って過去に行ったという「ケンジントン実験」について、問う。
 その間も、黒服の男達は、玲音の部屋を外から見張っている……。

 >感想
 そう言えばこのアニメ、電線がかなり多く描かれてますね。現実での情報の伝達の線、という事で重要な位置をしめる光景、なんでしょうね。
 雲が開かれる場面は、画的にもう少し何とかならなかったのかな、と思ってしまいました。雲の線が、あまりにもマンガ的すぎたので。(実際に見てもらえばわかりますが、手書きのもこもこした線がありありと……)演出にしても、上手くはないかなぁ、と。

 ホジスン教授との会話はかなり難しいですね。ほとんど理解できないです。レセプターとかコンバートとか何とか、専門用語がばりばり出てきますし。まぁ何らかのよろしくない実験をして、教授は反省している様子。
 その過去のデータを何者かに見つけられて、悪用されているのを、教授は嘆いている。
 行っているのはやはり……「ナイツ」と呼ばれるハッカー集団なのか。

 ●7 SOCIETY

 日本各地に散らばる、ナイツらしき者達の面々と日常。

 そして玲音の部屋を監視していた黒服の男達が、ついに玲音本人とコンタクトをとる。「我々と一緒に来ていただけませんか? 決して肉体的な危害は加えません」
 そんな黒服達に連れて来られた場所は、とあるビルの一室。旧式のナビを前にした、スーツ姿の中年の男がいた。
 彼は言う。「奴ら(ナイツ)は君を、何かに利用したがっているらしい。我々にとってそれは、どんな手段をとってでも阻止せねばならないのだ」。

 そして男は、思いがけない事を玲音に立て続けに聞く。そして玲音はパニックに陥る……。

 >感想
 ここに来て、玲音自身への疑問がイッキに深まります。これはいいですね。
 全体的にスローテンポな物語だと思って見てきましたが、何度か見直している内に、これはこれでいいのかな、と思ったり。1回目見た時は、これが面白いのかどうかすらわからないアリサマでしたけどね……。

 ●8 RUMORS

 プロトコルがうんぬん、たちばなそうけん?がうんぬん。
 ワイヤード内で、玲音は情報を求めていく。
 しかしこれ、番組を観ているだけだと、ちんぷんかんぷんなんじゃないか、と。DVD付属のブックレットの説明などを読まないと、ほんとわからない。

 たちばなそうけん、とは橘総研。「橘総合研究所」なんですね。それすらもわかりませんでした。
 なおオフィスの男(ナイツ)と、黒服を部下に置く中年男(黒沢)が、僕の頭の中ではかぶったりしてました。似てますからね……。

 総じて苦言をていせば、「アニメ内での説明が不足しすぎ」という感じですね。……と言いますか、あんまり説明ばっかりでもつまらない話になりそうですし、難しいところだとは思いますが。

 ホラー的には、「静かな恐怖」が実はなかなか多い作品なんですね。
 そしてこの8話でもまた、玲音の周囲がおかしな事になってしまい……。

 ●9〜13 ※ややネタバレぎみなので注意

 いきなりドキュメンタリー風に宇宙人話なんか始まったりで、驚いてしまいましたが、どうもそうじゃない。
 ネットワークの歴史。そんなNHK番組みたいなものが、切れぎれに挿入されていきます。でも面白いです。
 ――地球が常に、8hz(ヘルツ)の波を放っている、とか。何だかワクワクしますね。地球の脳波、地球の意識というものが解明される日が来るかもしれない……だなんて、スゴイ話だと思います。

 そして神、(英利政美)デウスとの対話。かなり哲学的な感じですね。でも玲音の声にエフェクト(効果)がかかっていて、やたら聞き取りにくいのが残念。
 「なんじゃこりゃ?」という感じで、次回へ続くのが何度か。(10、11話など)
 「面白い」と感じる以上に「ワケがわからない」。 よくぞこれだけワケのわからない物語を作り切ったものだ、と変な感心をしてしまいます。

 12話で、急激にまた、ホラー的に巻き返したような感じに。
 哲学的にうんぬん長々と語られるより、やはり視覚的にこうして訴えてもらった方が楽しいですね。12話は楽しかったです。

 最終話はちょっと、流されて終わっちゃったかなぁ……という感想でした。燃えるところが足りなかったような。
 でも最終話はこの物語の回答、という感じなんでしょうね。優しい感じの締めくくりだったと思います。

●総評

 物語的には、難しい所が多かったですね。未だに何を言っているのかわからない所なども多くありますし。
 そのワケのわからない部分が、実は物語として重要な箇所だったりするので、観る人をやたら選ぶアニメなんじゃないかな、と思いました。
 詰め込みすぎ、な気もします。その割には、全体的にやたらスローペースだったという印象。不思議なものです。

 ●

 絵について。まぁ今更、10年以上も前のアニメについてあれこれ言うのもどうかとは思いますが……、感じた事などを。
 いかにも手書き、というような軽めの線で描かれた顔などが気になってしまいました。(宅配の兄ちゃんとか特にムゴイ)
 でも全体的には丁寧に描かれたアニメだったと思います。背景などもキレイですし、特殊効果なども多めに使われていましたね。
 前半で印象的だったのが、町の「影」の描写。そこに別の世界があるかのような、不思議な色使いでした。

 ●

 演出としては、現実を破壊するような描写が多めで、なかなか未知的でした。
 個人的に勉強になったのが、「現実が崩れたからといって、それを視覚的に見せただけではホラーにならない」という事。怖がらせたいのならば、そこからまた更に、何かを考えなければならないようで。

 ホラー度も、ほど良く入っていたと思います。まぁもっと派手にやってくれたら、僕なんかは大喜びだったんですが。
 この作品、現実世界と仮想世界の境界が壊れていくような話なんですが、色々と「創作のヒント」が散りばめられている、と思いました。
 「ここでこうすればもっと怖くなるのに」と、失礼ながら何度か思ったりしました。
 つまりはこの作品、生粋(きっすい)のホラーじゃないので、ホラー的な描写にはさほど比重を置いていないようなんですね。そういう意味では、「ホラー的なヒント」が詰まっている感じ。得るものは多かった気がします。

 もちろん、そういう個人的な感想ばかりではなく、物語全体としても、なかなかに面白い作品だったと思います。
 まぁ主人公の玲音は、とっつきにくいキャラではありましたが……。(なかなか好感が持てなかった)


★★沙粧妙子(さしょうたえこ) ―最後の事件―

 ホラー度:★★★★(直接的な猟奇描写はほとんどなし)
 面白さ :★★★★★★(魅力的な登場人物達。俳優の豪華さ。物語ももちろん面白い)

 (あらすじ: 連続猟奇殺人事件を追う警視庁の刑事、沙粧妙子。研修生であり熱血漢の松岡とコンビを組み、数々の事件を追う。事件の裏には、沙粧の元恋人であり、プロファイリングチームのリーダーだった、梶浦(かじうら)の影が潜む)

 (一言: サイコサスペンス。鋭さともろさをあわせ持つ沙粧をはじめ、実直な松岡、沙粧と松岡の相談役である池波、沙粧の元恋人であり天才犯罪者の梶浦など、登場人物が実に個性的で魅力的。そしてドラマチックな展開と演出。刑事モノですが、推理的なものはほとんどなし。主演の浅野温子さんの迫真の演技。表情を崩しまくる柳葉敏郎さんが笑えます。全体的にスローテンポですが、その分見どころも多い)

沙粧妙子(浅野温子)
連続猟奇殺人事件を追う
刑事。
事件の裏に、元恋人の
梶浦の影を見る。


松岡優起男(柳葉敏郎)
研修生。沙粧とコンビを組ま
される。
実直な性格で、暴走する
沙粧を止めに入ったりする。


池波宗一(佐野史郎)
沙粧と梶浦達と、3年前まで
プロファイリングチームの
一員として働いていた。

今は沙粧の相談役。
●概要(がいよう)

 1995年7月よりTV放映。各話約45分、全11話。(+1話「帰還の挨拶」)
 DVDBOX発売、2010年6月。ディスク5枚組、全話収録+特典映像。定価19950円。

 脚本は「アナザヘヴン」「ナイトヘッド」の飯田譲治。

 主演 浅野温子、柳葉敏郎、佐野史郎、飯島直子、蟹江敬三。他、香取慎吾、国生さゆり、柏原崇(たかし)、広末涼子など、豪華面々。

●いきさつ

 その存在を知りながらも、なかなか観る事ができなかった「沙粧妙子 ―最後の事件―」。TV放映より15年の時を経て、今年2010年、初のDVD化です。
 1997年に起きた酒鬼薔薇(さかきばら)事件などが世間を騒がせ、その頃はこういった猟奇的な番組の放映は自粛ムードになった模様。この作品のDVD化も、その影響を受けて控えられていた……んでしょうか。

 どんな話かも知らないのに、長年うっすらと興味を抱いてきました。「サイコもの」「飯田譲治」「死体の口の中にバラの花びら」。きっと怖いんだろうな、と。
 それが近年、思いがけないDVDBOX販売開始。「何で今頃、いきなり?」という疑問もありますが、販売側の事情は知りません。「よくぞ出してくれた!」と喜ぶばかりですね。
 ……これは決して逃せません。新品をガッチリと購入して、意気揚揚と視聴開始です。

●おおまかな印象

 まず観て、主演の浅野温子さんの美しさと、その演技にシビレました。
 犯罪心理学のエキスパート、そして刑事としての鋭さ。しかしその影にはもろさがある。
 ……彼女は精神をむしばまれていたのだ。
 過去に犯罪心理プロファイリング(分析)チームの一員として活躍したのだが、多くの犯罪者に触れていく内に、犯罪者の心理が理解できるようになり、「同化」しかけていた。
 そしてチームのリーダーである、天才と称された梶浦(かじうら)が起こした事件。沙粧の親友が殺され、その口の中に、バラの花びらが詰め込まれていた……。
 沙粧はそれを引きずり、時に過呼吸のような症状を引き起こしてしまう。彼女は今にも壊れてしまいそうな危うさの中で必死にあらがい、そして数々の猟奇殺人事件を、持ち前のプロファイリングでやや独自に(他の捜査一課の連中とは、一線を引いている状態)捜査しながらも、その影にいる「梶浦」を追う。

 猟奇殺人事件……を描いているんですが、思った以上にキレイなドラマでした。グロはほとんどなく、バラの花びらを口にくわえた死体も、怖いというよりは「美しく」撮られています。
 そして重苦しいばかりではなく、時に軽快に。沙粧と研修生の松岡とのコンビが、笑えるものになっています。

 視聴者は松岡に自分を重ねて、沙粧という人間を知っていき、そして警視庁の科学捜査研究所にいる池波に、沙粧の過去と数々の事件の裏側などを教わっていく……という作りになっているような気がします。

 個人的に大好きな佐野史郎さんが、重要な役で出ているのが楽しいです。
 他、殺人犯もなかなか面白い配役。そして沙粧とのやり取りも何度となく行われ、物語に見どころが多いのも楽しいです。
 やはり、脚本の飯田譲治さんはやってくれました。面白すぎます。胸が躍ります。(VOL.1の1〜3話はぶっ続けで観てしまいました)

 ●ネタバレぎみな収納ケース

 ちょっと上手くないな、と思ったのは、DVDの収納ケースに書かれた各話のあらすじ。
 そこにネタバレが(前回の犯人の死に方とか)結構書かれてあるんですよ……。やめてほしかったですね。あらすじは、各話の冒頭程度にとどめておくのがスジなんじゃないか、と。
 だから、僕なんかは「読まないように」と文から目をそらしながら収納ケースを開けたりしてます……。

 なお、DVD内の「予告」も観ない方がいいです。ネタバレしすぎです。


右)谷口(香取慎吾)
●VOL.1(1〜3話)

 松岡優起男(柳葉敏郎)は岩手から研修で、東京都の警視庁に来ていた。
 夜中。寝ている所を起こされて、現場に急行する。

 現場では上司らが待っていた。犯人の目撃通報があり、いざ逮捕に踏み込もうとするところだった。
 犯人らしき中年の男は、部屋の中にいた。殺した相手の、右手の小指の爪をはぐ、という連続猟奇殺人事件の犯人が捕まったかに見えた。
 しかし、犯人は毒を飲んでいて、血を吐いて死亡した。

 同じ頃、沙粧妙子(浅野温子)が付近のビルの屋上で見つけた男(香取慎吾)は、小指の爪をはがれていた。彼は事件の被害者らしい。やっと逃げてきたのだと言う。
 彼は意識を失い、病院に運ばれる。後日、沙粧らは様子を見に行くが、彼は事件当時の事を何も覚えていなかった……。

 犯人はやはり、服毒自殺した中年男で間違いはないのか。警視庁捜査一課がそう判断を下す中、一人、沙粧は納得しない。

 警視庁科学捜査研究所。そこにいる、沙粧の相談役、池波宗一(佐野史郎)。
 池波は事ある事に言う。「松岡くん。君なら妙子と上手くやっていける。君なら、妙子の支えになれる」……と。

 事件の被害者、谷口は、沙粧妙子と2人暮らしの妹と恋仲だった……。それには、何かつながりがあるのか?
 沙粧はまだ捜査を続ける。事件の被害者である谷口の捜査を……。

 ●感想など (ややネタバレぎみ)

 一際輝くのが、浅野温子さんの美しさ。いやぁ、こんなに綺麗な人だったんですね(TVをあまり観ないもので…)。そのりりしいお顔を見ているだけで、楽しいです。
 それだけでなく、彼女は壊れそうな弱さを秘めている。そういう一面があってこそ、りりしさが強まるのかな、と。その微妙な表情を、浅野温子さんはしっかりと見せてくれています。

 実直な松岡。彼がらみの笑えるシーンが時折あって、気が休まります。
 連続猟奇殺人犯を追う話でも、こういう笑えるシーンというのは大事なのかな、と。物語を壊す事もなく、いい息抜きになってくれています。

 香取慎吾さんの「無表情ぶり」という演技もスゴイ。沙粧と堂々と渡りあっていて、見ていてのめりこめます。(彼の部屋でのやりとりのシーンなど特に)

 でも3話のラスト前のクライマックスで、ちょっとしたツッコミ所がありますね。ネタバレ: ケーキのシーン、緊迫というよりもどかしいし(飛びかかればすぐに済みそう)、妹があまりにもヌケてる…。なお車のシーンで家から妹が全然出て来ない…とか

 そしてその後もやや蛇足ぎみに話が続いていきますが、物語を深く描いているといえばそうなんでしょう。この1〜3話は、縮めようと思えば縮められそうな感じですし。1つの事件を、3話に分割して描いているんですからね。
 改めて見直せば、結構スローテンポぎみですね。でもだからこそ、クライマックスシーンを2度3度と生み出せたのかもしれません。

 時折流れるマドンナのインスト曲が、やわらかくフンイキを盛り上げてくれました。

●VOL.2(4〜6話)

 前半では、沙粧と梶浦、そして池波達の過去。プロファイリングチームの事、そして梶浦が犯罪者になっていく仮定などが、また一段と深く掘り下げられています。

 そして起こる毒殺事件。死体の手のひらには、バラの花びらが付着していた……。沙粧妙子は事件の情報を読んだだけで、その犯人像をあらかたつかんでしまう。犯人は女。これが初めての犯罪。原色系の衣服を好んで着ている。そして彼女は何らかの性的コンプレックスを持っている……など。
 事件現場で犯罪者と心理同化し、沙粧は犯人像をより深めていく。

 そして意外な事に、犯人側から沙粧にアプローチがしかけられてきた……。やはり事件の裏には梶浦が潜んでいるのか。

 ●感想など

 前半はだいぶゆっくりとVOL.1での追加部分を見せてくれている、という感じ。次の事件が起きるのは、4話の終わりにさしかかってから、ですね。
 松岡の婚約者役の飯島直子さん。変な話ですが、グラビアアイドルの彼女がいやに庶民的な役(婚約者というより、もはや主婦っぽく落ち着いた姿)をしていますが……、ハマッてますね。演技もかなり自然です。

 連続毒殺事件の犯人、北村麻美役の国生さゆりさん(ハナからそういう感じなので、ネタバレにはなりません)。懐かしいお顔です。まぁ15年前のドラマですもんね。
 北村麻美のハチャメチャぶりが楽しいし、沙粧との駆け引きなどもだいぶ楽しめますね。そしてドラマチックな演出や舞台など、見どころも多いです。

 ちょっと気になったのが、後半での沙粧のピンチ。ネタバレぎみ: コードで手を縛られた程度(しかもゆるそう)では、余裕で逃げ出せるように見えてしまいます……
 しかし、この後に平穏な日常シーンが来るとは思いませんでした。松岡が婚約者の両親に会いに行くんですが……、ここはもう笑いっぱなしでした。
 
 個人的には、ネタバレぎみ: 国生さんが横を向いて銃を構える姿が印象的でした。美しい……。
 殺されチョイ役の反町隆志さんも、若くてういういしい?感じでした。

●後半

 VOL.3(7〜9話)、VOL.4(10、11話)、VOL.5(「帰還の挨拶」)と、まだまだ話は続きます。
 でもレビューはこの辺にて切り上げておきます。……予想以上のスゴさに、のめり込んでしまってます。

 このドラマで何が怖いのかと言えば、「殺人の快楽」を説く梶浦が怖い、という感じでしょうか。
 それに引き込まれていきそうな沙粧の危うさ。そして起こる数々の殺人事件。直接的な恐怖描写は控えめなものの、精神的にくるものがありそうで怖いです。




戻る