ホラー検証:マンガ

紹介リスト (オススメ度 だいだい

 基本的に、「面白いマンガ」より、「怖いマンガ」を求めて、検証しています(どれだけ面白くても、ホラー要素がなければここでは無意味)。
 ホラー的に優れたマンガには、をつけています。

1巻のみレビューそのA(8作)
1巻のみレビューその@(5作)

みんな!エスパーだよ!
毒虫小僧、地獄の子守唄、蔵六の奇病など
善悪の屑
黄昏乙女×アムネジア
未来日記
透明なゆりかご
死人の声をきくがよい
テラフォーマーズ
サユリ
宵闇眩燈草紙
不安の種
邪神伝説シリーズ
魔王ダンテ
ヒキ
チキタ★GUGU
エコエコアザラク
少女椿
赤い蛇
ライチ光クラブ
エルフェンリート
ミスミソウ
誘怪犯
学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD
マンホール
ブラッドハーレーの馬車
闇金ウシジマくん
口裂け女あらわる!
ホムンクルス
怪談と踊ろう そしてあなたは階段で踊る
魔人探偵 脳噛ネウロ


 このページの一番下に、「マンガレビュー過去分」(レビュー総数36)のリンクがあります。

>気になるホラーマンガ 1巻のみレビュー そのA 

DEADTube(デットチューブ) ―― 原作 山口ミコト/作画 北河トウタ

 ホラー度:★★★★(前半の読者を騙(だま)すところが最大の見せ場。中盤ややダレますが、ラストでまた見せ場アリ)
 面白さ :★★★★前半は文句なく面白いのだが、中盤はゴチャゴチャしすぎ。だが、最後にある衝撃は最高にいい…と思いきや、さらなる騙し(「カット!」)にはノレず)
 次巻読み→絶対します!(ヒロインがどうなったのか、これは見なければいけません)

 北河トウタさんと言えば、エロマンガ。名のある方なので、さすがに絵は上手く、見やすいです。開始3ページ目でヒロインがどーんと大コマで描かれてますが、なかなかに魅力的。
 高校。映画研究部主人公、町谷(まちや)は、ヒロイン――真城(ましろ) 舞に頼まれ、彼女のビデオ撮影をする事になる。

 二日間ずっと。初日から、放尿シーンや入浴シーンの撮影をさせられる。彼女は恥ずかしがりながらも、やたら嬉しそう。変態なのか。
 そして二日目。舞は彼氏を連れてきて、主人公はそのデートを撮影させられる。そして廃校舎でのからみが始まる。

 ビデオ撮影を続けながら、町谷は急激に冷める。「なんてつまらないものを僕は撮ってるんだ」と。
 しかし、ここで事件が起こる。これについては触れません。

 ●

 そして今度は、別の女性をビデオ撮影する事になる。
 それは町谷が「監督」と慕う先輩、大島さなぎ。舞が言うには、大島は5日後に自殺するのだという。……何故そんな事が言えるのか? それはまだわかりません。

 同時に、映画研究部の合宿が開始。大島さなぎを撮るだけではなく、大人数(脇役キャラが7人ほどイッキに増える)をからめて、合宿の様子を映す事になる。脇役キャラがおっぱい丸出ししたり、それなりのハプニングも起こる、と。
 大島は本当に自殺するのか? 町谷は当の本人にその話をしたら、笑い飛ばされてしまう。大島は今、恋人もできて幸せの絶頂にいるらしい。なのに、町谷(他の男)に裸を見せまくりなんですね……。

 そして事件が起きる。大島の恋人が殺され、なお立て続けに脇役キャラ(しかも男だけ)が殺されていく。でも死体描写は……あまりホラーっぽくはないですね。
 と言うか、真城 舞が、大島を自殺に追い込んでいますね(「自殺しないと部員を次々に殺す」と脅迫メール)。ハナからその気だったのかどうか。

 そして町谷は、大島と組んで一芝居打つ事にする。舞より、大島を選んだワケですね。ですがこの辺、何だか話がゴチャゴチャしてます。
 で。大島と町谷は、夜の校舎の屋上に、舞をおびき寄せた。
 ここで一波乱起きるんですが、舞が半裸の女を何メートルもぶん投げて?屋上のフェンスにぶち当てて、フェンスの外で飛び降り自殺をするフリをしていた大島が屋上から落下。……ここはあまりにも力技すぎる気が。
 で、大島を失った町谷は、全ての元凶である舞をバットでぶん殴って、殺す。そこで、いきなり「カット!」の声かかる。余韻(よいん)もナシで。

 で、脇役キャラ達にどんでん返しをとくとくと説明される。……正直、ここは好きになれなかったですね。ネタバレ: 者を騙すのはいいんですけど、脇役達が急にドヤ顔になって、「演技でしたー」とか言われても
 そうして次巻に続く。
 ヒロイン死亡(重傷だが助かっているとか?)で次巻に続くんですか? これは見ないといけません。
 ちなみに、エロはあるんですが、少なめでしたね。-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

このエロさ! さすがです。

でもエロマンガではないので、量は
少なめ。

●殺人オークション ―― 原作 八頭(やず)道尾/作画 秋吉宣宏

 ホラー度:★★★☆☆(犬に食われた男の死体が★4。他は低め。全体的なホラー度はかなり低い
 面白さ :★★★☆☆普通の刑事モノ。せっかくの死体も、描写はおとなしめのものが多い。主人公の印象が薄い)
 次巻読み→しません。(オークションの億超えにノレず。そもそも、ホラーマンガでもないようですし)

 主人公は女刑事。彼女は他人が嘘をついているのかどうか、カンでわかる。なお、引きこもりの妹と住んでいる。
 絵は劇画風ですが、線が洗練されていて見やすいですね。描き込みも極力抑えられていて、劇画とアニメ調の中間みたいな絵ですね。

 公園。顔を焼かれ、オブジェクト風に飾られた女の死体。
 その裏で、その死体の「殺害方法」をネットで落札した男がいた。彼はそれが本物の落札だと知り、狂喜する。
 話は刑事側の視点と、闇オークション側の視点で進められます。
 さらにはその闇オークションを作ったプログラマーの視点も加わり、彼の苦悩がつづられます。

 そして闇オークションを作った男は、正義感にかられ、事件を止めようと行動を起こす。データ解析。そして殺人オークションに関わった人物を割り出す。
 だが彼は警察に相談せず、個人で行動を起こしたため、事件に巻き込まれてしまう……。

 ●
 
 ホラー度は、犬に食われる男を描いたシーンが特出。それ以外はさほどでもないですね。
 話は3つの視点で描かれていきますが、さほど混乱はしませんね。描き方が上手いからでしょうね。ただ、1巻ですでに3つもの視点がある事で、主人公の視点はそれだけ少なくなり、主人公の印象は薄めですね。(特徴として、「他人の嘘を見抜ける」というのがなかったら、主人公にすらなり得なかったほどの印象の薄さ)

 ●

 全体的に良くできているマンガなんですが、オークションそのものに、かなり疑問を感じてしまいました。
 ――人の「殺害方法」を落札。たったそれだけに、1億、払いますか?
 ヒトの価値観(その価値があるから払う)の問題うんぬん以前に、「説得力」がない。だから、話にノレなかったですね。

 ……でも億ごえしないと、「落札できずに悔しがる男」を描く事はできなかった。そうしないと、彼だけがどんどん落札していくマンガになってしまう(金は腐るほど持ってるようですし)。
 そういう理由があっての億超え、なのかも知れませんが、でももう少し、何とかして欲しかったですね。「そんなものに1億払うなんて、ありえないだろー?」と思わせない工夫が。

 そもそも、人を殺す体験ができる闇オークションがあったとしても、数十、数百万程度で落札できそうな気もしますし。(怖い事言うな!)----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

ほんと普通の刑事モノ…。

主人公も普通すぎるほど普通…。

地獄の教頭 ―― 大沼良太

 ホラー度:★★★★(恐怖描写は非常にドロドロしていて、迫力アリ。教頭そのものに非常な凄み。血まみれ具合も良好。しかしグロはない)
 面白さ :★★★★★(よくある、悪人退治のマンガ。ヒーローが、教頭先生というのが意外。地獄の凄みで悪者を改心させていく(殺すワケではない))
 次巻読み→します。(続きが気になるタイプのマンガではなく、面白いから続きを読みたいという感じ)

 近衛 修文(このえ おさふみ)。52歳。彼は優秀な教頭先生である。
 チャラチャラした新人教師が入ってくる。彼はとある女教師に目をつけ、集団で襲い、レイプしようと画策(がさく)するが……。
 で、ここでエロが軽めにでも入ってくるのがまぁ普通だと思いますが、それを一切描かない。そして事件解決。この硬派ぶりはめずらしいです。

 この教頭は、何らかの地獄と通じている模様。時折、化け物じみた目をします。で、問題を力づくで解決していくですね。読み切りの話が続いていきます。続きものではないんですね。

 なお、新人教師がレイプ未遂事件を起こすまでの段階を描いた部分も面白い。彼のメチャぶりが、見ていて面白いんですね。こういうところで、マンガの面白さもずいぶんと変わってくるんじゃないかと思います(真面目に描きすぎると、面白味がなくなる)。

 第1話から、教頭の凄みが炸裂(さくれつ)でも悪者をこらしめるので、痛快なんですね。しかもそれは「教育」なのだという。なかなかにシビレさせてくれます。
 中にはムリヤリ話を終わらせてしまった、というものがないでもないですが(4話。しかし、すがすがしい)、1巻の中にかなり色々な話が詰め込まれていて、満足度は高いです。

 教頭が特には血まみれになり、身体を張って、生徒らを更正させる。おせっかい焼きのレベルを越えたりもしていますが、ピンチの時にこうして現れるヒーローは、見ていて頼もしいです。------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

まさに、地獄の教頭。

この圧倒的な凄みを持ちながら、
彼は正義の人。

●ドクムシ ―― 原作 八頭道尾/合田蛍冬(けいと)

 ホラー度:★★★☆☆(状況はかなりのホラーになるハズなのに、場がムダに広いせいと、絵柄が明るいせいで、恐怖度は低め)
 面白さ :★★★☆☆(複数の人間が監禁される。殺し合いを強要されているのか? 1巻後半の盛り上がりは劇的。だがキャラ達が面白味に欠け、人的魅力も低め
 次巻読み→悩む……。キャラが弱いし、絵がザツだったり、色々な面で魅力に欠けるマンガですが……行く末は気になります)

 スマホの広告などでよく目にしていて、以前から気になっていました。
 で、原作者の名前が見た事あるなぁと思いきや、「殺人オークション」の原作者さんでしたか。偶然ですが、びっくりです。(後日談: さらに選んだ「学園×封鎖」も同じ原作者さんでした)

 絵柄はアニメ調で見やすいです。でも、でぶ(失礼)のタイチくんの描き方がやたらザツ。美男美女以外をテキトーに描きたくなるのはわかりますが、扱いがムゴイ。
 話は、いきなりの監禁。男が4人、女が3人。年齢はさまざま。女の中には子供もいます。主人公はスギウラ レイジ、男、20歳。

 で、場は閉ざされたどこかの廃校。校舎内を自由に移動できるんですが、外へは出られない。窓ガラスなどは全て、金属の板で封鎖されている。
 処々に監視カメラ。秒を刻んでいく、大きな電光掲示板。他、校内のモノは、机や椅子に至るまで完全に取り払われている。
 そしてとある一室には、ビニールシートが床にかけられ、土鍋(どなべ)と包丁(床に鎖でつながれている)があった。

 掲示板が刻む数字は7日間を示している。7日間、ここで生き延びる事ができれば、開放されるのか?

 ●

 ヒロインと思われた子がレズッ気があって、その後すぐに他の男にレイプされてしまう(しっかりとエロ描写あり)、というのがなかなかに意外。
 彼らは協力しあうどころか、すぐに敵対し出すんですね。そして荒くれ者の男を、全員で排除し始める。

 マンガの最初の説明にあったように、この場の主催者は「蟲毒(こどく)(毒虫を競い合わせ、生き残った一匹を呪術の虫として使う)を期待しているのか?
 つまり、最後の1人になるまで、競い(殺し)合わせるのが目的なのか。

 1巻最後のシーンはなかなかに衝撃的。彼女の微笑みにもグッと来ます。
 絵はザツなんですが……なかなかいいマンガかもしれません。特に、あの土鍋とかを本当に使う事になるのかどうか(人肉を喰う)も気になりますし。
 でも荒くれ者を早くも消去してしまい、残る者達はいささか頼りない(皆、草食系)。それがどうなっていくのかは、本当に予想がつかないな、と。

 しかしですね。集まった7人が「蟲毒」で言われるような「ドクムシ」とは遠くかけ離れたひ弱な者達、というのが気になります。だったらもっとアクの強い、毒々しい者達を集めれば良かったのに、と。
 ですが、草食系にしか見えない彼らが、秘めた毒性を発揮していく姿が今後描かれていくのであれば、もしかすると面白くなっていくのかな、と。-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

彼はここに監禁される前、悲惨な
交通事故を引き起こしていた。

この監禁には、何か理由があるのか

鬼畜島 ―― 外園昌也

 ホラー度:★★★★描き込まれた緻密な絵。残酷描写も充分すぎるほど描かれており、見た目の恐怖度はバツグン
 面白さ :★★★★(1巻のラストが意外すぎて拒否反応を起こしそうですが、全体的に謎の無人島での話をリアルに描いてます。主人公とヒロインの立ち位置(嫌われている)も新鮮)
 次巻読み→悩む……。筋肉ムキムキが全く受けつけませんでしたが、やはり続きは気にはなります)

 外園さんのマンガは以前「犬神」を読んでいました。ウィルスものの「エマージング」も読んでいましたが、ラストが甘すぎるせい(都合良すぎ)でノレなかったのを覚えています。
 最近、外園さんが手がけた様々なホラーマンガを、アマゾンでよく目にしてしました。マンガの原作も多いですね。そんな中、気合いが入っていそうな、この作品を選んでみました。

 で。手に取ってまず驚いたのは、本の薄さ。「え?」と驚くほど、薄い。150Pくらいしかないんですね。今回レビューしたマンガの中で、ダントツに薄い。(ダントツに厚いのが「地獄の教頭」。約90Pもの差があります。なのに値段は「鬼畜島」の方が若干高い…)これはハナから、印象が悪いです。

 それはさておき、内容。怖くて面白ければ、それでいいんですから。
 やせ細った女が、ブタの面を被った太った男に殺されます。男は知能が低い模様。 
 場は島。その島にクルーザーでやって来る、若者の群れ。彼らは廃墟研究サークルのメンバー。この島は無人島であり、調査にやってきたんですね。

 島のほとりに、遭難(そうなん)者らしきものを見つけ、クルーザーから飛び込んで島に助けに行く、かっこいい先輩。ロインも見惚れます。しかし遭難者だと思ったのは、冒頭に出てくるブタ男。先輩はハンマーで殴打(おうだ)され、連れて行かれます。
 この辺の描写は、さすが色々なホラーを手がけている作者さんゆえ、なかなかに凄惨。ホラーしています。
 ヒロインも追って飛び込み、先輩を助けに行きます。主人公は外の女達にせかされ、その後をいやいや追います。ヘタレを前面に押し出した、主人公らしからぬ主人公。でも味があっていいですね。
 その後、クルーザーは座礁(ざしょう)。全員がその島に避難する事になります。

 しかしそこは殺人者の住む島。何故かスマホも効かない。とにかく、どこかに連れて行かれた先輩を捜しに、島を探索します。
 このマンガ、背景とかやたら緻密(ちみつ)に描かれていますが、人物の邪魔になる事もなく、スッキリした印象。人物の線もハッキリしていて、非常に見やすいです。

 そして森の抜けた先の広い場には、十字架に張りつけにされた者達が無数にいた。
 そんな中、生きている者がいて、主人公らに助けられる。そのガリガリに痩せた男は、借金が返せなくてこの島にムリヤリ連れてこられたのだと言う。ここはヤクザが取り仕切る、「人の廃棄場」との事だった。
 回想シーンでも非常に残酷なシーンが描かれています。ここまで描かれたら、ホラー度は高評価せざるを得ません。力が入っています。

 そして痩せた男に案内され、島の中の廃墟の町へ連れてこられる。ここもまた、圧巻の背景画です(アシスタントさんのがんばりですかね)。
 そこで日が暮れゆく。腹が減った、と海の魚を釣ってみるが、どれもひどい奇形魚(島の周りには放射性廃棄物が沈んでいる)。でも食っちゃうんですね。
 それを、笑ってみている痩せた男。見る間に、その身体が異様に変化していく。化け物魚を喰ったから、こうなったらしい。

 で。何故か、筋肉ムキムキの超人になってしまうんですね……。はあッ?! これはどうにも受けつけません。笑うしかないです。ホラーというより、変なマンガになってしまいました。
 そしてブタ男もくわわり、主人公らは絶対絶命のピンチに陥(おちい)る。

 とにかく、何で筋肉ムキムキなのか(奇形魚を喰った末路だとしても、全くリアリティがない)。これがなければまだ普通のホラーマンガだったのに……。
 でもそういった意外さや奇怪さを盛り込んで、作者さんは新しいものを描こうとしているのかもしれません。続きはやはり、気になります。ホラー度も充分でしたし。---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

この残虐性とこの迫力。

見事なまでにホラーしています。

●学園×封鎖 ―― 原作 八頭道尾/画 Nykken

 ホラー度:★★☆☆☆ホラー描写はないに等しい
 面白さ :★★☆☆☆展開に大きな違和感やツッコミどころが多い。生徒側とテロリスト側両方にキャラ性ア
 次巻読み→しません。(主人公、殴る相手が違うんじゃないの?というのが二回。他、全体的にノレず)

 今回選んだマンガの中で、八頭さんの原作3つ目。レビューするまで気づきませんでした。偶然……と言うか、それだけ多く、近年出たホラーマンガにたずさわっていたという事でしょうか。
 このマンガ。1巻目がKindleで99円だったので、悩まず即購入。

 研究所でゾンビが流失。パニックに。
 学校。男子が女子の話をしています。なお、桜井という生徒がヒロインらしいんですが、担任の先生もサクラちゃん(別人)。これはややこしい。

 で。突然、学校のグラウンドに黒いワゴン車が数台乗り込んでくる。体育教師が怒るが、いきなり銃で脇腹を撃たれる。
 黒い車からは、武装集団がわらわらと降りてきた。
 彼らは校内に入り込む。保健室に運び込まれた女――鬼灯(ほおづき)。彼女は腹に重傷を負っていた。
 その部下の女は、「この人に何かあれば、この学園の生徒を全員殺す」と言う。
 (この時点で、彼らが「学校」に乗り込んできた理由は不明。ただ、本当にリーダーの鬼灯の命を救いたかったのなら、学校などではなく、「病院」に乗り込むべきだったのではないか、と思われます)

 そして校内に放送が入る。彼らは「テロリスト」だと言う。そして学園を封鎖した、と。抵抗する者は射殺。逃げた者が出た場合、1人につき5人殺す、などと突きつけてくる。

 テロリストらは非情な者達ばかりかと思いきや、普通っぽい人間もいる。キャラを持たせてあります。
 で。ヤンキー男がテロリストに歯向かうと、別のテロリストが銃を乱射。そこで主人公の親友が撃たれ、重傷を負う。

 そこにコワモテのテロリストが来て、自分達は「従順な者には寛容だが、反抗する者には厳しい」と説く。
 その言葉に乗せられ、主人公の草太は、歯向かったヤンキーに殴りかかる。「お前のせいで!」みたいな感じで。なおひどい事に、次々とそのヤンキーがクラスメイトらの標的になる。……悪いの、本当にコイツなんですか?
 とにかく、歯向かうべきはテロリストであり、ヤンキーではないハズ。主人公がヤンキーに殴りかかった時点で、大きな違和感を感じてしまいました。
 そんな感じで、冒頭から大きな違和感があると、話そのものにノレなくなってしまいます。せっかくいい作画なんですけどね……。

 ●

 その後が全く目に入らなくなるので、一旦違和感を押さえ込みます。
 続き。テロリストのリーダー、鬼灯が何らかのクスリを打った後、何だかゾンビっぽくなってしまいます。おっぱいとか丸出しですが、人を殺してる画ゆえ、萌えたりはしません。

 生徒らと、テロリスト側の2つの視点で物語は進んで行きます。そのどちらにも、キャラ性を持たせてありますね。
 男女とも、個性的な顔立ちのキャラが多く出てきますが、いちいち覚えてはいられません。そして間違った場所で大ゴを使ったり(変態男が女のブルマか何かを嗅ぐシーン一連)。←最初、何だかよくわからなかったんですが、おもらししちゃった子がいて、そのオシッコをふき取ったタオルを私物化したワケですね。(まじ要らねぇシーン……)

 そんな中。草太は、テロリストに直接、撃たれた親友の大地を助けてもらうよう、お願いしに行く。
 代わりに指を食い千切ってみせろ、と言われその通りにするが、ストップが入る。

 ●

 その後、非常おおぉにワケのわからない展開になる。
 腹話術を使う(は?)テロリストのリーダーに指示され、クラスの変態男が場を仕切る事になり、その変態性をさらけ出す。そしてクラスメイトの中から、処刑する者を1人選ぶ権利を与えられたりする。
 この辺、本当に「何でこうなるの?」と。リーダーもそんな下らない事を、後押ししちゃってますし。

 そして、変態男が処刑と称し、刺したのが、半死半生の大地。(しかも彼の名前は、ムダに大智 大地(だいち だいち)……)。これは何なんですか。変態男が他のクラスメイトを刺すのではなく、ほぼ死んだと思われる大地を刺したから、皆の命を救った、と見るべきなんですか?
 そこでまた草太が怒りを爆発させ、変態男からナイフを奪い、今度こそテロリストに歯向かった! ……つーか、今度やるべき相手は、大地を刺した変態男でしょうが! また怒る相手、間違ってます。
 と、非常にいい絵なのに、どうしてこうもツッコミを入れなきゃならないのか……。

 もちろんそれはソッコウで、他のテロリストに阻止される。殺されるかと思いきやリーダーがまたもストップをかけ、草太は許される。まぁ主人公ですからね……。
 つうかテロリスト達。全然、甘すぎじゃないですか……。自分達が言った事を、くつがえしてばっかり。
 その後、大地は生き返り、草太の首に噛みつく。あぁ、これはいいですね。主人公もゾンビ化しちゃうの?と。

 ●

 で、回想シーン。何故か鬼灯に好かれた草太は、エロく迫られる。おっぱい丸出しで尻を突き出され……って何なの急に。
 大地に噛まれた草太は、血への乾きを抑えられなくなる。ゾンビ(吸血鬼?)化してしまうのか。あぁ、そういう話だったんですね。
 そしてヒロインにひと気のない場所で襲いかかったその瞬間、止めに入ったテロリストがいた。それは武安くんだった(知らない人です……)。←冒頭に名前だけ出ていた人ですね。
 2巻に続く。

 うーーむ。とにかく、何でこうなるの?とツッコミを入れたくなる場面が多かった気がします。テロリストがこの学園を封鎖して、何をしようとしているのかも、まだサッパリわかりませんし。
 で、個性的なテロリストが出てきたかと思いきや、プッツリと現れなくなったりするし。ムダにキャラを作り過ぎ。

 画はかなりいいんですけどね。でも面白いから続きをぜひ読みたい……とはなりませんね。そう言えば、ホラー度はないに等しいですね。これは期待外れでした。
 なお自分、ツッコミどころの多い作品の方が、レビュー長くなるんですね……。---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

この主人公。正義感ぶったり、都合
悪い時にはだんまりを決めたり。
殺されるとなったら、急に命ごい
したり。
全然ダメじゃないですか…。

でも普通の高校生っぽいのかも。

●絶叫学級 ―― いしかわえみ

 ホラー度:★★☆☆☆(ホラーな話を描いているのに、恐怖描写はひかえめ)
 面白さ :★★★☆☆どこかで聞いたような話ばかり。都市伝説をまとめたマンガ、という感じ)
 次巻読み→しません。(明らかに、ホラー初心者向けのマンガなので)

 以前の掲示板でどなたかに情報をいただいてましたので、読んでみました。
 絵柄はいかにもな少女マンガ。1話読み切り型ですね。
 時折空いている妙な縦横の空白は、雑誌連載時の広告欄でしょうか。こういうのは、ずいぶんと久しぶりに見ました。

 1話目。呪いの携帯ゲームを拾う話。で、主人公が悲惨な目にあう、と。こういう話(呪いのモノを拾い、主人公がひどい目にあう)はよくありますし、1話目がこれだとかなり弱いかな、と。
 読者への語り部は、テケテケでしょうか。

 2話目。短い話なので展開もかなり早め。子犬をケガさせていたのは、あの人だったと。そして呪いをかけ……。
 話としてはいいんですが、その悪人が死ぬ場面を見せず、会話だけで済ませるというのは、かなりはしょりすぎなのではないか、と。でも、作者さんは友情の方に焦点を当てたみたいですけどね。
 でも「絶叫学級」なんていう大それたタイトルをつけたのなら、それなりにホラー描写に力を入れて欲しかったです。

 3話目。人形にのっとられていく話。食べ物を与え続ける、というのはいいですね。ですが、主人公がやっと自分の力で食べられるようになったのに、そこから異変が始まる(食べているのに、体力がなくなる)っていうのは、ちょっと話の流れがおかしい気がしました。まぁ時すでに遅し、という感じだったのかもしれませんが。
 で、BADEND。これはこれでいいんですけどね。絵柄に迫力がないものだから、あまり怖くはならない、と。

 4話目。ブログで見つけた優しいママ。メールを送っている内に、欲しかったものがどんどん届くようになったのだが……。
 ラストは感動と見せかけて落とす、のはなかなかいいです。やってくれました。

 で、この後は「絶叫学級」ではなく、短編の読み切りがいくつか続きます。作者さんの初期作品、みたいですね。

 「黒いプロフィール」。プロフ帳というのが流行っていて、友達のプロフィールを書き込んでもらって、ファイルしていく、と。
 で、黒いプロフ帳に書き込むと、呪われる。それがまた、両足切断やら何やら、ダイタンに実行されていく。友達全員いきなり死亡とか。笑。……と言うか、主人公らが黒いプロフ帳に書き込んだ描写があいまいすぎ、なんですけど。
 終わり方はあまりにもありすぎで、ちょっとヒキますけどね……。この話もどこかの都市伝説を引っ張ってきたのかな、という感じです。

 「海が呼んでいる」。これはクラス旅行で自分が死んだのか、それともクラス全員が死んだのか、みたいな話を描いてます。いいんですけど、ラストは感動。ホラーではないですね。
 他、読み切りマンガもあるんですが、短いページながら、なるほど、という感じでした。

 ●

 この「絶叫学級」は13巻以上も出ていて、人気作なんですね。でもホラーマニアが読むには物足りないかな、という感です。一般の人向けですね。小学生くらいが読んでも、大丈夫そうな感じ。
 それに、聞いた事がある話ばかりなので、全体的に弱いです。------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

ホラー描写はあるにはあるんです
が、幼少の子向け、といった感じ。

ホラーマニアが楽しむマンガでは
なく、ホラー初心者向け。


過剰なあおり文句の入った
オビ。

ある意味、サギ。
おまけ●ブレインダメージ ――駕籠(かご) 真太郎

 ホラー度:★★★☆☆せっかくのホラー絵がギャグによって壊されたりもしますが、壊されない間はなかなかに恐ろしい)
 面白さ :★★★★☆(ホラーを期待して、肩透かしを食らわされる。その連続。ですが、独特のセンスで描かれた変態性が笑えます)

 何故おまけにしたのかと言うと、この本は本来、気合いを入れて、単品でレビューしようと思っていたのですが、内容があまりにも(ホラーとしては)弱く、こんな場でのおまけ扱いとなりました。
 この方のマンガは以前に何作か読んでいましたが、今時のマンガにはない、妙な古くささ(絵柄)と変態度の高いギャグが印象的でした。オリジナリティ(独自性)の高い、作者さんなんですね。

 で、この本の表紙があまりにもホラーしていたので期待して読んでみたのですが……正直、「ホラーマンガではなかった」んですね。1作目のオチでかなりの肩すかしを食らい、ガッカリしました。これじゃ「表紙サギだ」と。
 でも面白くないかと言えば、そうでもなく、この方独特のセンスで描かれています。

 短編集なんですね。1作目「4人の迷宮」。
 妙な迷路風の場に監禁された、同じ格好をさせられた少女達。殺人鬼がいて、色々とホラーな場面が目白押しんですが……最後の2ページでそれらを粉砕(ふんさい)。この作者独特のオチで締めくくっています。

 次の「呪いの部屋」。少女は自室で様々な恐怖体験をする。しかし、彼女はすでに死んでいたのだ。
 その裏には、彼女の周辺を操る者達がいた。ゾンビ化した彼女が凶暴化しないために、日常を操作し、安らかな死へと導いていく職員。ゾンビ化が、全国的にひんぱんに起きており、彼らを無事に成仏させるため、そういった職員達が暗躍(あんやく)しているのだった。
 彼女の次に扱うゾンビは、身体が半壊した少女。オチも含めて、全体的にギャグ調で描かれてますね。
 なお、とかよく出てくるんですが、あまり魅力的には描かれていませんね。萌え絵にはほど遠い絵柄ですし、わざと日常的に描かれているような感じです。

 「家族の肖像」。行方不明になっていく隣人ら。その原因は……。
 ラスト付近、いつも痴漢(ちかん)行為をされていた少女が、自身の存在を消されないために、逆にケツを押しつけるところとか笑えるんですが、オチがあまりにも普通すぎて、弱いのが惜しいです。
 でも、このマンガの全体的な不可思議な感覚は、なかなかに魅力的です。映画「バタフライエフェクト」とか、思い出します。1人の人間が周囲に多大な影響を与える、と。

 次の「血の収穫」もっと面白い。
 あれ? 意外とホラー度も高いし、これはかなりいいですね。この方、もっと真面目に描いた方が、いいホラー作品を描けるんじゃないでしょうか。独特のセンスも捨てがたいんですが、真面目に描いてくれれば、また違う世界を見せてくれそうです。
 というか、「変なオチにしないでくれ」と念じながら読んでいきます。この作者さんの「変」さは、読者への裏切りに近いものがありますから。

 車内での不可解な死亡事故が多発していた。車の中で無残な惨殺死体になっていたり、焼けこげていたり、様々。
 その生き残りである少女は、突如、異界を見たりする。そこは大勢の車の墓場だ。そこからお化け車が町に降り注いでくるビジョン。少女は、それを止めようとする。

 なお(以前、ちょっと顔を合わせていた)霊能力女を探し当てるシーンは笑えますね。こういう不真面目さ(スペシャルパンケーキを台無しにする)が織り込まれていると、マンガとしての面白味が増しますね。
 で、主人公の少女もまた、特殊体質だった。その血で、「お化け車を暴ける」んですね。そこで、この作者独特の「変」さが出てくる。死なない程度にどう血を使えばいいのか、計算したりするんですね。
 どうなんでしょう。おかしな感じになってきましたが……。

 うわ、来た。最後の1コマでやられてしまいました……。想像のナナメ上を行く、変なオチでした。これがなければ、真面目なホラー作品だったのにー!
 やはりこの方にはかないません。この方は真面目なホラーなど描く気はさらさらなく、独自の世界を描き続けるのでしょう……。

 やっぱりこの本、ホラーマンガとしての単品レビューをするには弱すぎました。
 失礼ながら、こうしたおまけ扱いで、この方の「ホラーじみた」(決してホラーではない)マンガを紹介するに留めておきます……。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

容赦のないスプラッター。

こんなものがバンバン出てくる話な
のに、オチがギャグとは誰が想像で
きるでしょうか…。

●総評

 「DEADTube」「殺人オークション」「地獄の教頭」「ドクムシ」「鬼畜島」「学園×封鎖」「絶叫学級」「ブレインダメージ」。
 レビューを終えてみれば、なかなかの顔ぶれ。レビューできて満足しました。未知が未知のままだと、落ち着きませんからね。

 「DEADTube」前半、やってくれました。見事に騙してくれたし、ホラー度も良好。後半はゴチャゴチャしていてあまりノレなかったのですが、最後、ヒロインの生死がどうなったのか、見なければなりません。上手い終わり方ですね。(他のいらぬ騙しはともかくとして)

 「殺人オークション」はホラーとしての印象はかなり薄いです。普通の刑事モノといった印象。特にそそられないので、次巻は読みません。あの程度のオークションに1億払う、というのが受けつけませんでしたし。

 「地獄の教頭」は凄みのある描写にヤラレました。教頭そのものにも凄みがある。悪人を更正させていくという真面目さもいい。殺さないのも意外。
 真面目で正義感があり、しかし教育方針は過激。この教頭から目が離せません。

 「ドクムシ」は絵柄が明るくて、なおザツでノレなかったんですが、1巻のラストは見事でした。どのキャラもかなり弱いんですが(誰にも惹かれない)、この物語の行く末は気になります。いずれ彼らもドクムシとして、毒を見せていってくれるのでしょうか。

 「鬼畜島」リアリティに凝った絵柄とストーリー。謎の無人島の描写も文句なく素晴らしい。1巻ラストの筋肉ムキムキはガッカリしたんですが(どんなマンガだよ、と)、これはこれでオリジナリティの高い物語を今後も見せてくれるのかな、と期待できそうです。全体的にしっかりとした構成のマンガですし。さすが、手馴れた作者さんです。

 「学園×封鎖」絵が良かったし、キャラ性もあったんですが、主人公の殴る相手がどうにも違うような気がしたし(2回とも)、変態男に焦点をあてた部分はホントいらないと思ったし、テロリストらが何故、学校なんかを占拠しなければならなかったのかもまるで理解できませんでしたし。色々とノレない部分が多かったですね。

 「絶叫学級」は完全に名前負け。なお、聞いたような話ばかりで弱すぎました。でもホラー慣れしていない幼少の子が読む分には良さそう。

 「ブレインダメージ」は誇大(こだい)広告すぎましたね。ホラー度も高く、見所も多いマンガでしたが、オチで壊されてしまってはどうしようもない。
 真面目に描いて欲しかったな、と(でもそうなると、この作者さんの持ち味が失われる)。残念です。

 ●E☆エブリスタとは?

 前回も含め、ここで紹介したマンガの中には、「E☆エブリスタ(またはエブリスタ)」という会社?がからんでいる作品が多数ありました。(監獄実験、殺人オークション、ドクムシ、学園×封鎖)

 E☆エブリスタとは何か、と思って調べてみたら、それはネットでの「投稿小説サイト」なんですね。そこで人気作は、書籍化やコミック化される、と。
 シロウトが書いても、人気さえ出ればコミック化の道が開かれている。そういった、何とも夢のある話でした。
 でも逆に見れば、「プロが描いた物語ではない」から、どこか展開が甘かったりするのではないか、と(執筆にあたり、プロの編集者と綿密な打ち合わせをするのなら、話は別ですが)。

 自分も以前、似たようなサイトで投稿小説を続けたりもしましたが、とにかく投稿数がやたらと多く、「こんなに書きたい人っているんだな」と驚かされた記憶があります。
 投稿しても、すぐに大勢の作品の中に埋もれていく。そんな中で、上位に立つのは、本当に至難のワザだと思いました。

 あと逆に、シロウトが書いた物語でも、興味をもって読んでくれる読み手も多くいるんですね。これは意外でした。(読む大半の人が、自分も書いているのだとは思いますが)
 なかなか活気のある場だったと思います。投稿小説サイトというのは。


>気になるホラーマンガ 1巻のみレビュー その@

●いきさつ

 アマゾンを眺めていると、ホラーっぽいマンガが次々と出てきます。でも数が多すぎて、どれから手をつけていいのかわからない。でも、どれもこれも気になる。
 ……じゃあ、たくさんのマンガを「1巻だけ」レビューしてみようかな、と思いつきました。とにかく、数をこなしたくなったんですね。せっかく、たくさんのホラーマンガがある事ですし。

 で、今回は気になっていたものを5冊、読んでみました。
 全て、1巻のみのレビューなので、その後面白くなったり逆に面白くなくなったりしても、それについては全くわかりませんのでご了承下さい。

●皆様の玩具(オモチャ)です ―― 石井康之

 ホラー度:★★☆☆☆ほぼなし。全体的に緊迫感がない。たまに来る暴力にちょっと驚く程度)
 面白さ :★★★☆☆(美女達に監禁されて、暴力を受けまくるが、時にウハウハなご褒美が与えられる事も。そのご褒美に期待するマンガなのか?
 次巻読み→します(1巻の終わり方が上手い。半分、エロに期待)

 主人公の少年はある日、5人の美女達に拉致監禁される。中には、少年がひそかに慕っていた桜野先生の姿が……。
 監禁された施設は広く、豪華。そして少年はそこで、美女達に拷問(ごうもん)される事になる。

 最愛の先生にいきなりオシッコをかけられるとか、なかなかハード。
 絵は(かなり)新人っぽい。でも見やすくて、そんなに悪くもないですね。惜しみなく裸を出してくるのもポイント高い。ムダにパンチラもありますし。

 5人の美女達に、次々と好き勝手なふるまいを受ける主人公。彼女らは嬉々として痛めつけてくる。皆、S(サド)属性らしい。
 ただ、キャラがかぶってたりしますね。同じ子が2人いるような。

 監禁施設では何と、スケジュールまで決まっている。主人公はそのスケジュールに従って行動する事になり、毎日5人の美女達に2時間交代で拷問を受ける事になる。
 だが悪い事ばかりではなく、与えられた自分の部屋はかなり豪華。そして風呂も広く立派。なお、裸でいいコトをされたりするご褒美もあったりする。

 女装させられるイベントがありますが、あれは丸ごと、何か「違う」。
 見方によれば、精神的な拷問になるのかなぁと思ったりもしますが、もうホント、どうでもいい。主人公も変にノリノリだし。緊迫感崩壊。(この女装イベントで、面白さの★を1つ減らしました)
 そしてまた別の少女と息抜きのゲームを楽しんだり。意外性はいいんですが、ちゃんと拷問して欲しいところ。そういうマンガなハズですし。
 と、油断したところで、ネタバレ: 爪はぎの拷問が開始。次巻に続く。

 ●

 5人の美女に監禁されて、好き放題にされる。なかなか見ないシチュエーションだと思います。
 ただ、監禁されているのにやたら明るい(ギャグッぽい)んですね、全体的に。だからホラー度は、今後もあまり期待できないかな、と。
 少年が拉致されたのには何らかの理由もあるみたいなので、その謎も気になりますね。

 このマンガ。この先、主人公がどれだけムゴイ目にあうのか(五体満足のままなのかどうか)で、方向性(主人公が怒りに燃えて逆襲など)が違ってくるような気もします。
 まぁそんなにエグいマンガにはしないのかな、という気もしますけどね。(怖いのが半分、美女にあれこれされて嬉しいのが半分、か)-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

もしや作者さんは、ホラーではなく、
変態女を描きたかっただけ…?

●ジンメン ―― カトウタカヒロ

 ホラー度:★★★★迫力の画で人面動物達が人間を襲う。グロもあり
 面白さ :★★★★(パニックもの。しかし、敵方にわかりあえそうな相手がいるのがポイント。主人公がただの乱暴者ではないのもいい。1巻後半で大胆な見せ場があるが、それにノレるかどうかで評価が分かれそう)
 次巻読み→気が向いたら(ただし好感触)

 ゾンビ→人面動物にしたパニックもの。
 ですが、話は動物園(サファリワールド)から始まる。それに動物(象のハナヨ)と親しい主人公が出てくる。こういったところで、似たシチュエーションの「渋谷金魚」(冒頭、設定が安易すぎ)とは大きくかけ離れたものになっています。そこがまず、評価に値します。

 絵が見ずらいですね。線が雑で、さらに(顔などに)細線を多用してますので。

 ちょっとした事ですけど、カンガルーがムキムキの筋肉で、人の頭をねじ曲げる場面は、あまりにもマンガ的(悪い意味で)でしたね。動物のうんちくをたまに披露(ひろう)してくれてますけど、だったらその動物の能力をあまり超えない程度にして欲しかった。あまりやりすぎると、何でもアリのただの化け物になってしまうので。
 →でもチンパンジーが人肉加工処理をする場面もありますし、やはり化け物特化(動物としてのリアルを超えている)のマンガですかね。

 この「ジンメン」については、ヒトの顔を持つ動物達が化け物なワケですが、それらは人為(じんい)的に作られたじなので、色々と謎が残りますね。
 そういう謎があると、やはり続きを読んでみたくなります。が、ある程度答えは出ていますけどね。

 後半、主人公の身体になんらかの異変があったり、人面動物達の「王」らしき者が「ジンメン」と名乗り、人間に挑戦してくるとか(要らなかった気もしますが)、その後への布石(ふせき)が投じられています。
 主人公の目的は、彼女のヒトミを無事に家まで送り届ける事。可愛い子ですが、ケータイのカバーの趣味がすごいです……。

 人面動物VS人間。キーマンは、主人公と仲良しだった象の「ハナヨ」なワケですが、あの造形はあまり好きになれないんですけどね……。
 ハナヨの「みなぎってるのぉおぉ!」には笑わせてもらいましたけど。

 と言うか、後半で地形が大きく変動してしまってますけど、あれってあの程度の地震(主人公ら無傷)で起きたワケなんですか?
 絵的にわかりずらかったんですが、超巨大な断層ができてしまってますよね。あれって付近の建物、大崩壊してもおかしくない気がするんですが……。
 人面動物達にそこまでできる科学力があるのもスゴイんですが……。

 見所の多いマンガですけどね。後半の展開にノレるかどうかで、次巻を手に取ってみるかどうか、意見が分かれるところだと思います。
 あのブタが敵の王だと思うと萎(な)えますけどね……(ビジュアル的に)。だったらゴリ園長(ジンメンを作り出したらしき人物)そのものが敵の王だった方がまだ良かった気が。

 基本的に真面目に描いているのに、妙なところで不真面目になったり。この変なバランスは、何だか新しい気もしますが……。--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

パワフルな動物達に、襲われたり
追いかけられたり…

でもグロもあります。

食糧人類 ―― 原作 蔵石ユウ/漫画 イナベカズ

 ホラー度:★★★★無数の人間が拉致され、謎の施設において、巨大生物の食料にされる。の施設の恐ろしさと未知。人体切断や皮はぎなどのグロもあり
 面白さ: ★★★★謎の人間処理施設。巨大生物。未知の多いマンガ。さらには主人公とともに施設からの脱走をはかる二人の熱い男が、魅力的
 次巻読み→します(今は満腹ぎみ)

 今回紹介したマンガの中で、絵は一番上手い。未知の化け物も最高級の絵で見せてくれます。キャラにもクセがあります。
 謎を引っ張らず、すぐに答えを出してくるのもいいですね。そうして次々と未知を見せてくれる。

 主人公はある日突然、町なかで拉致され、どこぞの施設に捕らえられる。そこは何かの工場のようだが……。
 見れば無数の人間達がコンベアに乗せられて、冷凍、切断されたりしている。
 主人公は暗くて広い場に落とされる。そこにはぶくぶくに太った人間達が大勢いて、皆一様にチューブに吸いつき、それを夢中で飲んでいるのだった……。
 その中で、まともな人間が二人いて、彼らとともにここから脱出する、という感じですね。

 このマンガ、めずらしくヒロインがいないんですね。それでも充分に面白さを引き出してくれています。
 絵はリアルなんですが、マンガそのものにはリアリティはありそうで、やはりなく(民間人がこんな風に捕らえられる事を、国が認めるワケがない)、難しい事を考えずに、SFとして読めば面白いですね。
 未知の化け物達に、食料として与えられる無数の人間達。
 そもそも未知の化け物はいつどんな風に、地上に現れたのか。謎も残ります。

 ただ逃げるだけじゃなく、主人公を引っ張っていく(主人公がムリヤリついていったんですが)脇役達の活躍も光ります。優しさと強さと面白さをあわせもった、いいコンビです。
 主人公の特殊能力は、最近たまに見かけるものですけどね。現時点では、主人公の方が脇役(要らない子)みたいですけどね。

 後半は、ちょっと寄り道してますね(入らなくていい部屋を覗き見)。
 この先も未知をどんどん見せてくれると思うと期待が高まりますが、1巻でだいぶ見せてくれていますので(情報量が多い)、ややお腹いっぱいになっちゃって、次巻に手が伸びにくい……気が。
 なお1巻目の終わりが、主人公らの危機ではなく、他人がただ殺されただけ、というのが弱かったのかな、と(次巻への期待度が高まらない)。--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

無数の人間が、無造作に運ばれて
いく。

その先にあるのは地獄。

●渋谷金魚 ―― 蒼伊宏海

 ホラー度:★★★☆☆化け物金魚の群れに襲われて人が喰われていく、というわかりやすい恐怖。グロっぽい恐怖画は多数。しかし、ただのB級。深みはない)
 面白さ :★★★☆☆ゾンビを金魚に置き換えただけ、というひねりのない設定。絵はアニメ風で見やすい。意外性の連続で、展開もかなりがんばっているんですが、元の設定が安易すぎて、冷める。本当に「ただのパニックもの」
 次巻読み→しません(次巻予告の主人公に、全く惹(ひ)かれない…)

 (失礼ですが)今回選んだマンガの中で、「一番ダメだろう」と予測していたマンガ。
 何故って、「でかい化け物金魚が突然街中に現れて、人を襲っていくだけのマンガ」だろうから、それが面白くなる要素なんかあるの?と思ってました。「金魚に襲われて、逃げまくるだけの話でしょ」と。

 ……事実、冒頭は全くの予想通り。こんなどうでもいい設定(失礼)で、プロが描いちゃっていいの?と。大量の金魚が人を襲う場面とか、普通にただのゾンビもの。迫力ある画ですけどね。

 で、ヒロインの裏切りは良かったです。そして最近たまに見かけるようになった、ヒロインの交代劇。1人目が死んじゃって、本当のメインヒロインはその次に出てくる、と。この意外性は好きです。
 そして「(金魚の現れた)渋谷の町を巨大な金魚鉢が覆(おお)っている」というところで噴きました。「そこまで(ダイタンな事を)やっちゃうのか?」と(もはやリアリティ放棄)。でも、意外すぎていい、という気もしてきました。ここ、異世界なんじゃないの、とか思ったり。

 おぉ。助け役の女警官の死に様、見事でした。メインキャラっぽいのにもう死なせちゃうとか、スゴイです。
 で、その次に来る自衛隊のヘリがまさかの……。噴きましたよ、これは。いやホント、これは予想できませんでした。やってくれます。

 車で逃げる主人公ら。しかし道の真ん中にあったは何と、(でかい)金魚のフン。それに激突で車が大破って……どんだけウンコ硬いんスか! ここは爆笑しちゃいましたよ……。
 いやでも、すげえ。ゾンビ→金魚にしただけのマンガかと思ってましたが、「超巨大金魚の存在」と「金魚にまつわるうんちく」で、結構、奮戦(ふんせん)してくれてます。

 で、投げ出された路上にて金魚の群れに襲われた時、主人公はライターの火で車を燃やし、金魚を撃破。しかして「これが人間(僕ら)の”命の炎”だあー!」は主人公、勝手に盛り上がりすぎ。

 さて。ついに自衛隊のヘリに救助される主人公ら。しかし一瞬の油断でヒロインが落下。辺りに金魚が群がる。
 ヒロインの絶体絶命。そこで主人公がとった行動は――。

 このまま2巻に続くワケじゃなく、ここで、この主人公の話は終わり(ハアッ?)。で、2巻は新主人公による「シーズン2」。いやいや、シーズン変わるの早スギでしょ!

 結論としては、「続きを読みたいとはあまり思わない」ですね。やっぱり基本設定が安易すぎる気がします。ただ、渋谷を覆った「金魚鉢」の説明は気になりますが……。-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

ずーっと、ただひたすらにパニック。

たまにはそういうマンガもいいんで
しょうけどね。

監獄実験(プリズンラボ) ―― 原作 貫 徹/作画 水瀬チホ

 ホラー度:★★★★監禁という異様な場。残酷な事(歯をペンチで抜くなど)を容赦なく見せる。ただ、監禁という暗いイメージが損なわれる設定(立派な施設、従業員、他の参加者)には疑問)
 面白さ :★★★★監禁にゲーム性や謎を持たせてある。同時に3組の監禁が行われているので、話がダレない。他の参加者との接触も、話を面白くしている(が、残虐性には(ムダに)ブレーキがかかりそう)。次巻への期待度も大きい。ネタバレ: 主人公の指が食い千切られたあとの不自然さで★1つ減
 次巻読み→絶対する!(気になる終わり方。他の脇役キャラの行く末にも期待)

 出だしはそこそこ目にするタイプですね。「●●というゲームに参加しませんか?」と誘いがきて、それに参加する、という感じ。正直、安易すぎて好きではないんですけど。

 主人公はイジメられっこ(汚いトイレに顔を突っ込まされるとか、なかなかにムゴイ)。しかしそのイジメの主導者が、愛らしい少女というのが意外。
 で、「監禁ゲーム」の招待状が主人公に届く。登録。意外なのは、やってきた黒服。ヌケてるんですね。気さくだし。

 監禁ゲームの施設で1ヶ月に及ぶ監禁が始まる。監禁の対象に選んだのは、自分のイジメの主導者、桐島 彩(きりしま あや)。
 ただ監禁するだけじゃなく、色々とルールがあり、ゲーム性もある。監禁された者は自分を監禁した者の名前を当てると1000万もらえる、など。逆に1ヶ月間、監禁された者に名前を当てられないと、監禁した者は1000万もらえる。他、監禁者は監禁した者を殺してしまうと、ペナルティとして罰金1000万となる。
 要は、監禁した相手を殺してはいけないんですね。それ以外なら好き勝手してもいい。

 その施設では3組の監禁が同時に行われていて、他の2組のゲーム参加者と顔を合わせる事になる。若い薄着のお姉さん。真面目そうな男。その二人も、各々の監禁部屋で誰かを監禁している。
 他の二人の監禁具合もモニターで見る事ができて、マンガとしての意外性はどんどん広がっていきます。他に参加者がいる、というのがでかい。面白味を増しています。主人公がとまどっている残酷な仕打ちを、愛らしいお姉さんが嬉々としてやってしまう。
 物語の展開も非常に速いし、無駄も少ない。1巻で存分に監禁劇を目にする事ができます。

 ただ、これは「他人の監視つきの監禁」なので、自分の欲望をさらけ出そうにも、だいぶ「ブレーキがかかる」んじゃないかと思うんですけどね。
 レイプしようにも、監視があると思えばなかなかできないだろうし。そういう点では、「1対1で行われる閉塞(へいそく)的な監禁」とはかなりかけ離れたものになるんじゃないかな、と。

 このマンガの特色としては、「監禁しているのに、他人との関わり合いが多い」。だからこのマンガ、あんまりドロドロと暗くはならないんですよね。

 ●

 1巻のラストはほんと上手い。続きが気になってしょうがない。
 でも欲を言えば、ちょっと主人公の変化がいきなりすぎるかな、と。ネタバレ: まずは泣き叫ぶんじゃないですか? そして千切られた指を持って急いで部屋を出て、病院へ駆け込もうするんじゃないですかね
 (ネタバレ: 自分の指が食い千切られたのに、そのまま痛みをガマンして続行(しかも場を変えてくつろいだりする)、というのはまぁないだろうな、と
 そこだけ不満でしたし、不自然に感じました。

 なお欲を言えば、主人公がどんどん冷酷な人間になっていく過程を描くのかなと思いきや、そういうのは「一瞬で終わってしまった」のが惜しい。

 色々と意外性にあふれていたマンガでしたが、ゲームの主催者側の人間である「担当者」らが、普通の人間っぽく描かれていたのも意外でした。-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

主人公は憎い相手を監禁しているの
に、怒りをぶつける事ができずにいる。

●5作総評

 「食糧人類」と「監獄実験」。この2つが今回のオススメとなりました。さらにしぼれば、「監獄実験」。続きを早く読みたいです。

 「皆様の玩具です」「監獄実験」は、監禁という同じシチュエーションながら、明と暗に分かれた作品ですね。
 真面目に描いた「監獄実験」。これが今回の5作の中で、ホラー度、面白さ共にNO.1ですね。僕的には。
 主人公がネタバレ: 指を食い千切られたあともっとそれらしく描いてもらえていたら、最高でした。ネタバレ: 指を食い千切られたのにあんだけリラックスしてお姉さんと会話するとか、急にクールになるとか(泣きわめいた方がまだ自然)、どうにも不自然)

 「渋谷金魚」はほんとに、ゾンビ→金魚にしただけ。次巻以降面白くなると言われても、これは読みません。
 展開とかかなりがんばっていて、読めば面白いんですが……買って手元に置いておくまでもないかな、という中身のなさ。

 「食糧人類」は5作の中で1、2の絵の上手さ。個性的なキャラが良かったですね。主人公より脇役が濃い。
 1巻なのにずいぶんと「未知」を見せてくれたマンガでした。映画的です。でも不思議と、2巻をすぐ読みたいとは思わない。1巻でだいぶ未知を見せられてしまったから、次巻を手にとるには、さらなるエネルギーが必要なのか……。
 まぁ未知と言っても、色々と推測しようのある範囲のものなので、ワクワク度はそんなでもないかな、と。
 ただ、あの巨大生物らにどうあらがっていくのかは、期待が膨らみます。

 「ジンメン」評価に悩む作品ですね。だいぶ展開とかがんばってくれていて、面白いんですよ。
 で、続きを読めばきっと面白いんでしょうけど……1巻最後の「ブタ園長」の破壊力が、読もうとする気力をも破壊してくれたみたいで……。正直、萎えました。


みんな!エスパーだよ! ―― 若杉公徳(わかすぎ きみのり)
 (2010年単行本1巻発売/全8巻/ヤンマガKC/TVドラマ、映画化済み)

 ホラー度:★★★★★一部のみ。しかし強烈
 面白さ :★★★★1巻から5巻半ばまでは、文句のつけようがない素晴らしさ。後はもう、期待するものとはかなりかけ離れていました

●ちょいレビュー

 最近はマンガを買わず、レンタルで済ませたりしてますが、その中で気を抜いて読もうとしたこの作品に、まさかの衝撃を受けたので、レビューせずにはいられませんでした。
 ですが、怖いのはほんの一部。しかし「魔法少女まどか☆マギカ」以来のかなりの衝撃を受けました。

 ズバリ書くと、怖いのはネタバレ:3巻のラスト。そこのみ、です。

 で、続きが気になってごっそり借りて一気に読んでしまいましたけど……5巻の半ばから何だか雲行きが怪しくなってきて、おかしな流れが続き、ラスト付近はもう展開が未知すぎて、「変」。期待するものとはかなりかけ離れた展開に、ただひたすらに無念。
 破壊力ありすぎましたネタバレ:バーチャファイターと、テンガ風のアレ。あの全裸男もムダに大活躍してますからね……。

 欲を言えば、あの衝撃のシーン以降、そのままシリアスに描いて欲しかったんですけどね……。ただそれだけで、とんでもない傑作になりえたんじゃないかと思います。……でもそれは、僕が求めるものと作者さんが描きたかったものが違っていた、という事なので仕方ないんですけどね。
 今のままでも面白おかしく読めるので、これはこれでいいマンガだとは思います。色々とぶっ飛んでます。

 後になりましたが、このマンガは「超能力に目覚めてしまった者達の話」です。最初はバカやって各々が楽しんでるんですけど、黒い感情を持つ超能力者が現れた事で、事態がまずくなっていくんですね。-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


「毒虫小僧」「地獄の子守唄」「蔵六の奇病」など ―― 日野日出志
 (amazon内kindle/108円〜432円)

 ホラー度:★★★★(怖い(ホラー)というより、気持ち悪い(怪奇)。死肉を喰う描写なども丁寧な線で描かれてます)
 面白さ :★★★★(作品ごとの当たりハズレはあると思いますが、どの作品もおおむね満足しました。品薄、プレミア価格などで入手しにくかった作品の数々がこうして手軽に読めるようになったのは大きな収穫)

●いきさつ

 通販サイト「amazon(アマゾン)」の電子書籍サービス「kindle(キンドル)」にて、近年(2016年)、日野日出志さんの作品が多数読めるようになりました。
 日野日出志さんのマンガは以前からプレミア価格(1冊4000円なんてのはザラ。1万円以上のものもある模様)になっているものが多く、なかなか入手しずらかったんですね。
 それが電子書籍化になり、数百円程度で読めるようになったので、気になる作品を数冊買って読んでみました。

●レビュー


氏の作品には死肉を喰らうシーン
がよく見られます。
 怪奇!毒虫小僧(432円) >カフカの「変身」を思わせる作品。毒虫になってしまった少年は家族に捨てられ、そして自らの意思で人里離れて暮らすのだが……やがて凶悪になって戻ってくる。恐怖度も文句なし。

 病弱で何をやらしてもだめな子、三平。彼は虫や動物をこよなく愛していた。学校にイモムシや蛇などを持ち込んでは、先生に叱られていた。クラスメイトらにもイジメられ、家に帰れば学校からの報告を受けた父親にこっぴどく叱られる。
 そんなある日。彼は自分が吐いたゲロの中にいた真っ赤な毒虫に指を刺され、奇病にかかる。
 顔がふくれて変形していく。指先が溶けて、腕ごと腐って落ちる。やがて四肢全てが溶け落ち、彼はだるまのようになってしまった。それでもなお身体は溶けていく。家族はそんな三平に手が負えなくなる。
 やがて三平は脱皮した。そしてイモムシのような姿になったのだった。

 だがそんな三平を家族は邪魔に思い、毒を盛って殺そうとする。それは成功したかに見えたが、三平は埋められた土の中で生きていた。三平は自ら家族の元を去る事にし、下水道などを住みかとし、一人でたくましく生きていく。
 そして彼は人間に捕まり、そこから脱出した際に、自分の身体に毒針ついている事を知る。

 「ボクは強いんだ!! ははは何てゆかいなんだ。ボクはもう弱虫小僧なんかじゃない……」
 そして三平は、自分をいじめた人間達に自らの毒針で復讐する事を誓うのだった。

 ●

 恐怖まみれ、といった感じのマンガですね。
 まずは、奇病にかかった三平の身体が腐っていく描写が怖い。迫力ありすぎです。そして、中盤以降の毒虫として人間に復讐していく姿も恐ろしい。
 毒虫のキャラデザについては、恐ろしいというより不気味さと愛らしさが混ざった感じですね。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


化け物ねずみの支配下に置かれた
一家。まさに悪夢。
問題の解決策は色々ありそうです
けどね。
★★毒虫小僧(108円)

 上の「怪奇!毒虫小僧」とどう違うのかと思えば、内容は同じ。
 さらに「はつかねずみ」という作品まで付いてくるというワケのわからなさ(上より値段が安いのに、ですよ?)。つまり、かなりお買い得(2016/10現在)。それゆえ、★2つです。
 「毒虫小僧」については全く同じ作品ですので、「はつかねずみ」をご紹介。

 はつかねずみ >一家を恐怖におとしいれる化け物ねずみの話。

 子供の頃に読んだ記憶があるんですが、トラウマになってますね、これは。
 話は単純で、飼っていたねずみが凶悪になっていき、手に負えなくなってしまう、というもの。一家が化け物ねずみの支配下に置かれてしまうんですね。

 警察やら病院やら、本来なら介入すべきものを排除(はいじょ)したからこそ、成り立つストーリー。「こんな話はありえない」と一言で済ませてしまえば終わりなんですが、力技で見事に描き切ってますね。
 オチがどうにもスッキリしないんですが、これはこれで。------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

●地獄小僧

 円間大雄(えんまだいお)少年は交通事故で死んだ。土葬を済ませた時、謎の老人が現れ、生き返りの秘術をその父親に告げる。
 大雄は生き返った。半壊の化け物として。血をすすると元の少年の姿に戻り、その記憶も蘇るのだが、それも長くは持たない。
 そうして化け物となった大雄は、夜な夜な人間を襲っては殺し続ける。
 医者である大雄の父親は、何とか大雄をまともな人間にしようと手術をこころみるが、失敗が続く。
 やがて、大雄が人殺しの化け物である事を知った町の住人達が、円間の家に押しかけてくる。家に火がつき、大火となる。そんな中、大雄は屋根から落ちて死んだ。
 しかしその目玉が下水道に落ち、それは卵となって、新たな化け物を生み出すのだった……。

 ●第2部
 もはや大雄の面影もなくなり、別の化け物としての話が始まります。
 短編形式で、色んなサブキャラとからんでいきます。悪霊の武者と戦ったり、動物の目玉を集める怪奇趣味の少年と仲良くなったり、雪女ならぬ雪少女とのからみがあったり。なかなか楽しめますね。
 そして最後はとんでもない世界に落ちちゃったり。
 なかなかに「未知」が詰まった作品なんじゃないかと思います。展開はかなり冒険してますね。------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


憎らしい他人を呪い殺す事に喜び
を見い出す主人公。


恐怖列車。
とにかくおびえっぷりがスゴイ。


頭が弱い上に奇病に冒され、村八
分にされる。
病気に苦しみ続けながらも、蔵六は
自らの七色のウミで絵を描き続け
る。
地獄の子守唄 >名作「地獄の子守唄」と「蔵六の奇病」が読めるお買い得品。

 地獄の子守唄

 冒頭のカラーが素晴らしいです。
 日野日出志さんが語り手として、自らの生い立ちが描かれていきます。いじめられ、他人を憎む。そしていじめたヤツらを妄想で呪い殺したら、本当に彼らはその通りになって死んだ。
 次は母親。次は友人。兄や父親も呪い殺していく。そして最後に日野日出志が呪い殺す者は……?

 この作品は有名作なので、「とっくに知ってます」感が強くて感心はしなかったんですが、この作品を知らない方が読めば、なかなかいい感じに怖がれるんじゃないかと思います。
 この「地獄の子守唄」を長編にしたものが、「地獄変」(別作品)という感じですかね。

 胎児異変 わたしの赤ちゃん

 その夫婦に生まれた子は、人間ではなく、カエルの化け物だった。
 恐れる夫をよそに、妻は大事に育て続ける。そのカエルの化け物はやがて生肉を食いたがり、そして生きた動物を食い、そして……。

 妻もその化け物を恐れていたら、成り立たなかったお話ですね。

 ●恐怖列車

 田舎のおじいちゃんの家で楽しく過ごした後、友達と3人で電車に乗り、家へ向かう。その途中、トンネルを抜けた後、電車内に異変が起こる。
 家に帰ると、両親の様子がおかしい。そして真夜中に死体を埋めているところを見てしまうと、両親が襲ってくる。
 だが秘密をもらさないと誓うと、その場は許してもらえる。
 翌日学校に行くと、電車に乗った他の友人達も、同じように両親がおかしくなっているという。
 と。そこで学校に乗り込んでくる両親ら。そこから先は逃げまくり。

 とにかく主人公の少年が異様におびえまくる。そして素晴らしい行動力で、どこまでもどこまでも逃げていくんですね。
 遊園地に逃げ込み、何故かジェットコースターに乗り込む。しかし線路が寸断されていて、グワシャッー! でも少年は足を打った程度のケガで済んじゃう。
 まだ逃げる。マンホールから下水道へ。そして何故か大蛇のオリの中に出てしまい……ともうムチャクチャ。
 あまりにも色々やりすぎて、トンデモ作品になってしまったんじゃないか、と。

★★蔵六(ぞうろく)の奇病

 とある村に住む、蔵六という頭の弱い男の顔に、できものができた。やがてそれは身体じゅうに広がり、村の皆が「うつる病なのではないか」と恐れだした。
 そして蔵六は、村はずれのねむり沼という地にある空き屋に一人、追いやられた。
 蔵六をふびんに思う年老いた母親は毎日、食事やくすりを届けに行くが、蔵六の病気が進行するにつれ、それも皆に止められるようになる。
 蔵六の身体じゅうのできものは七色のウミを持ち、蔵六はそのウミを使って、絵を描いた。
 だがその臭気は夏になると、村じゅうに広がるほどひどかった。

 そして蔵六の病はなお進行していき、その姿は化け物のようになっていく。
 蔵六を村はずれに追いやってもなお安心できない村の衆達は、やがて蔵六を殺す事に決める……。

 ●

 昔から何度か目にしてきた作品ですが、個人的にかなり好きです。
 村の者達の顔が「昔話風」で雰囲気あります。そして蔵六の身体が病に冒され、腐っていく過程などがほんと恐ろしい。
 そしてラスト。蔵六が残した絵に焦点を当てるのではなく、蔵六のなれの果てに焦点を当てているんですね。
 ネタバレ: 蔵六が残した絵が美しいのは言うまでもなく、蔵六そのものも結局、村人達が息を呑むほど美しいものに成り果てた、という救われるラストがいいですね
 自分、日野日出志さんの作品の中で、一番好きな作品です。今回改めて読み直し、そう強く思いました。-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

●妖女ダーラ >妖女の醜い化け物顔を見た者は悪夢を見る。ダーラのキャラクター性が弱い。

 妖女ダーラ。彼女が長髪で隠している醜悪な顔の半分を見てしまったものは、悪夢に突き落とされる……といった感じの作品。

 ダーラがちょっとスカしてる感じ(自分に酔ってる)で、時代を感じてしまうような(要は、古くさい)作品でした。
 でも、日野日出志さんが美女を主人公にしている作品はめずらしい気がします。

 で、4話目の「血ぬられた小包」。
 ある日、ゆきに小包が届く。それには人間の小指が入っていた。翌日には耳。その翌日には目玉。
 その部位を、家族らは失っている。ゆきは知らん顔をする家族らに詰め寄る。すると……
 ダーラが出てこないな、と思ったら、これは読み切りの短編だったようですね。いいホラー短編だと思います。

 そして短編「首」。「血ぬられた小包」のラストと妙につながってますけどね。
 日野日出志さんの作品というより、楳図(うめず)かずおさんの作品なんじゃないの?という感じの絵柄が多かったですね。
 その次は「え〜……っ?」というような作品。賭けゴルフでハメられた男の話ですけどね。
 その次はスプラッター。狂った男の妄想劇、という感じの話ですね。絵がかなりエグいですね。

 この1冊で10話ほどの話が読めますけど、ちょっと弱めの作品が混じってるかな、という感じです。表題作の「妖女ダーラ」はかなり弱いです。-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


人間の魂を地獄へ落とす気まんま
んなんですが…




毎回くる、このシーンが楽しい…
魔鬼子 >醜悪な化け物が人間界で、人間を地獄へ突き落とそうとする。しかし幼少向け作品。

 「妖女ダーラ」がちょっとノレなかったので、こっちはどうかな、と思って読んでみました。同じく化け物女の作品ですが、こっちは顔の破壊力が違います。
 魔鬼子は「地獄の悪魔の中でも最も醜い女」だそうで。冒頭で、自分でそう語ってます。で、美しくなるためには、人間どもの魂を地獄へ落とさなくてはならない。
 美を手にするために、人間どもの魂を地獄に落とそうとする魔鬼子だが……。

 第1話
 アイドルの付き人として、人間の姿になっている魔鬼子。清純派として人気絶頂のアイドル(日野日出志さんの絵じゃないっぽい)は、実は性格が悪い女だった。
 魔鬼子はそのアイドルを自殺に追い込み、地獄の鬼どもにその魂をくれてやろうとするのだが……。
 意外と、オチがホラーじゃないという。

 第2話
 今度は医学生の仲間入りをしている魔鬼子なんですが……ぎぃやああああッ! オチが第1話と全くおんなじとは!!
 あぁそうですか。この作品はこういう作品だったワケですね……。
 要は、見た目はすごいおどろおどろしいマンガなんですけど……ちょっとひねってあるんですね。

 第3話
 こりゃ第3話もオチが同じなのかなぁと逆にワクワクしながら読んでみました。
 ニキビに悩む少女が使っている薬が「オクレアラシル」。クレアラシルって相当昔からあったんですかね……(ネットで調べてみたら、この作品は1987年頃の作品であるとの事)。
 はい。期待に違わず、やってくれました。魔鬼子、愛らしいです。いいキャラですよ、これは。でも何だかもう、半分以上ギャグになってしまってるような……。

 第4話
 雪国での話。またキター!という感じで。

 第5話
 「あわわ!」「がくがく!」という怯え描写をフキダシに書いちゃうのは日野日出志さん、色んな作品でやってますね。ホント、昔(昭和)の作品ならでは、といった感じです。
 で、これで最終話なんですが、地獄の大魔王もずいぶんと甘いですねぇ……。決着はつきませんでしたね。
 ここまで大魔王を裏切ってしまったら、魔鬼子、処刑されてもおかしくないと思うんですけどね……。

 いやでも、変な意味で楽しめた作品でした。魔鬼子がズガーンと雷に打たれるのがもう……愛らしい。
 恐怖描写もなかなかいい感じですし、良かったですね。
 ですが、「日野日出志作品なら、本当に怖い作品以外許せない」という方にはちょっとオススメできませんね。この作品は幼少向けっぽい気もしますし。---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


善悪の屑(クズ) ―― 渡邊(わたなべ)ダイスケ
 (2014年連載開始/全5巻/少年画報社/ヤングキングコミックス)

 ホラー度:★★★★★(復讐代行の残酷さ。ある者は睾丸(こうがん)を切り取られた挙句に逆さ吊りで殺され、ある者は肛門に焼いた鉄棒を突っ込まれ……。しかも未成年にも容赦ないところが凄い)
 面白さ :★★★★全5巻で「第1部完」。しかもその終わり方も非常に中途半端。物語そのものは面白いんですが、全体的に大ゴマが非常に多く、なお悪人どもの生活感までリアルに描いているので、展開はのろい

 (あらすじ: その古書店では裏で「復讐の代行」の依頼を請け負っていた。事件の被害者やその家族が恨みを晴らすべく、今日も依頼にやってくる。非情で冷酷な「カモ」と、非情にはなりきれない「トラ」。二人の復讐屋は時に衝突しあいながらも、悪人どもを凄惨な拷問にかけた上、殺していく)

 (一言: 復讐屋がコンビ、というのがいい。火と水みたいな二人なので、話にも厚みが出ます。復讐は残酷なものばかりですが、復讐される側の人間もまた、相応の悪人ばかり。悪人がどんな凶悪な事件を起こしたのかも描かれているので、復讐そのものに共感できる。逆に、こういった復讐屋がいない現実の事を思えば、「現実こそ救いがないのではないか」という理不尽さも感じてしまいます)--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

●いきさつ

 スマホで2chとか見てますと、マンガの広告が出てきます。
 たいがいはエロマンガの広告なんですが、この「善悪の屑」もよく広告されていました。復讐屋の話らしい。ひどい事をしたヤツらに、被害者や被害者の家族らが復讐を依頼する、という感じ。その復讐がまたえげつなさそう。

 最初は「過激さを売りにした低俗なマンガなんだろう」とか思ってましたが、やたら気になってしまい(刷り込み効果をまともに食らってしまったのか……)、アマゾンでその商品を検索。しかして、単行本がない。kindle(キンドル。電子書籍)にはある模様。いやしかし、「購入できない」という状態……。レビューなどを見ると、アマゾンでは取り扱いをやめたようなんですね。

 じゃあDMMはどうだろうと思って検索したら、電子書籍版が購入可能。しかも5巻までそろってます。
 で、読んでみました。

●レビュー


復讐の依頼は、書店の奥の座敷で
行われる。



拷問中。
カモは悪人に容赦はしない。
●1巻

 古びた街並みの中の小さな古書店。客の若い女が、サングラスをかけたコワモテの店員に、手にした本の値段を聞く。
「いくら出せるの?」。逆にそう店員は聞いてくる。
「…お給料の3ヶ月分…で」。そんな女の答え。店員は、彼女を奥の座敷に案内する。

 座敷で寝転がっている別の若い男。彼は自分を「相棒」だと言う。
 そして若い女が、自身に起こった7年前の事件を語り始める。宅配便を装った見知らぬ若い男に突然アパートの部屋に上がり込まれ、身体を触られ、ナイフを突きつけられる。
 そこに来た、よちよち歩きの幼い息子。男は邪魔だとばかりに、その息子を部屋の窓から外に放り投げる。
 ここはアパートの4階。窓に駆け寄る間もなく、女はナイフで腹を刺され、レイプされる。そして息子は……。

 それから7年経った今。その犯人は当時未成年だった事で大した罪にも問われず、すでに出所していたのだ。
 女はそれを、どうしても許せない。その復讐の依頼を、この古書店の店員である「鴨ノ目(かものめ)」に依頼してきたのだ。
 そう。ここでは秘密裏(ひみつり)に、「復讐の代行」を行っているのだ……。

 ●

 スマホの広告ではどうにも変態っぽいイメージしかなかったんですが(「あんたもう二度とウンコできないねぇ」とか)……読んでみると、予想以上にまともなマンガでした。
 復讐屋が2人、というのが意外。このコンビがまた、いい味を出してるんですね。
 そして大ゴマをふんだんに使った復讐劇。まずは犯人を襲撃。面倒な事なく、展開も早い。「カモ」こと鴨ノ目の相棒の「トラ」は格闘系。腕に刃物をしこんでいたりします。
 そして彼らが行うのはあくまでも「復讐の代行」。殺すだけが目的ではないので、簡単には殺さない。

 ここでは依頼人の女性の前で、男を拷問(ごうもん)にかける。睾丸(こうがん)をナイフで切り取り、それをムリヤリ食わせる。そんな凄惨な復讐劇をじっと見つめる依頼主の女性。
 トラはカモに「オレらまでクズ野郎のマネ事する必要ないやろ」と非難するが、カモは聞き入れない。「オレのやり方に口を出すな」と。
 そこで依頼主の女性が、犯人と話がしたいと前に出てくる。首を絞め、憎い男に直接恨み言を語る。しかし犯人の泣き言を聞き、女の恨みはフッと消え去った。

 ……そのまま終わるのかと思いきや、そうはいかない。圧倒させられました。

 ●学校でのイジメ話

 そしてまた別の依頼人が。今度は老婆。彼女は、イジメで自殺した孫の、復讐の依頼をしにきたのだ。
 どんなイジメが行われてきたか、描かれています。先生もひどいものです。その孫も気弱なせいで、同級生の言いなりになってます。教室でみんなが見ている前でオナニーをさせられたり……って、ちょっと言う事を聞きすぎじゃないかと。
 そして自殺。遺書でイジメが発覚。でもその子の人生は何だったのか……。

 加害者の生徒の親の態度も凄い。逆に、イジメの被害者側に「いいがかりをつけられて精神的に被害を受けた」と訴えてくるというワケのわからなさ。いやいや、これはひどい……。
「どうか孫の無念を晴らしてやってください」
 そう静かに手を合わせる老婆。カモ達が、その復讐の代行を引き受けない理由はない。

 いやいや、しっかし……第3話の最後のコマ。あれは吹きました。ひいいっ!ネタバレ: カモが車で、イジメの加害生徒らを派手に轢いて一言、「しつれーい」
 見るからに憎たらしいヤツらをひどい目に合わせる。それを読み手が、爽快に感じる。……何とも危険なマンガです。
 しかもここでは、未成年者をひどい目に合わせる(直接的な描写はなし)んですから……やっぱり問題作になってしまうんでしょうね。(アマゾンでは、単行本の取り扱いをやめ、電子書籍の配信も停止)

 このイジメの話。復讐屋がいない現実だったら……最悪じゃないですかね。
 こんなひどいヤツらがのうのうとしてるとか……ほんと許せなくなります。先生も最悪……。
 加害生徒らも、復讐される側になった途端、「マジで反省してます!」とか言いますけど、その「マジで」というのがまたムカつきますねぇ……。このマンガ、嫌なヤツを描くのが上手いです。
 でも先生、土壇場(どたんば)で意外と男気があったりして、何かキャラが違うなと思ったり。(泣き叫んで命乞(ご)いでもしそうなのに、かなり立派な事を言う)


こんな表情が描ける方はそうはいな
いと思います。
(画像が小さくてすみませんけど)
 ●女子監禁レイプ事件

 女子が監禁され、複数人にレイプされおもちゃにされ続け、その挙句の果てに殺されたという事件。
 惨劇の描かれ方が、昔あった現実での事件に似ているんですけどね。女子コンクリート詰め事件。(「氏賀Y太」という方がマンガ化)
 ここではその加害者達が、ちゃんと裁かれていない。被害者の姉は、カモ達に復讐の代行を依頼する。

 6話のラストも深いですね。
 むごい事件にあった被害者の遺族が、この先どう生きるのか。一生、遺族は笑う事すらできないのか?
 しかしこのマンガ。人物の表情の深みが凄いです。

 ●ここでいきなり気抜け…

 第7話でまさかの展開。小さな女の子が、チンピラに殺された学校のウサギの復讐依頼に来るという……腰が砕けそうな話に。
 今度の加害者達はアホ丸出し。アホすぎて笑えます。

 それにしても、小さな子の仕草とか、非常に上手く描かれていますね。リアルすぎです。
 そして復讐屋のカモの過去とからめてあったりして……なかなかに上手いストーリー作りに感心させられました。

 あっという間に読んでしまったので、ソッコウで2巻も購入です。肝心のホラー度は、4〜5くらいですね。面白さもそのくらい。
 問題作という事で?アマゾンでは購入すらできないというこのマンガ。この先、DMMなどでも規制がかかったりすれば読めなくなる可能性もありますからね。幻のマンガ、なんてな事にならなきゃいいんですけどね。

 でもしかし、このマンガを異様にプッシュするネット広告(ハンディコミック)。なかなか見る目ありますねぇ……。いいですよ、このマンガ。ハマります。
 ただ復讐の方法が残酷ですからね。その辺は見る人を選ぶと思いますし、幼少の子には(いつも僕はコレを言う)見てもらいたくないマンガではあります。

 復讐屋が2人コンビ、というのがいい味出していると思います。これがどちらか一人だけでも話は成立しそうですけど、2人だからいい。やりとりが楽しいし、2人が衝突して緊迫感を出したりもする。話にふくらみができるんですね。


異常者による殺害現場。
そこに至る経緯もリアルに描かれて
いる。
●2巻

 家を他人に乗っ取られる、という変わった話。自転車事故で怪我を負わせた、その相手がロクでもないヤツだった、という話ですね。
 でもこれはどうにも……リアルそうでリアルじゃないような。相手のいいなりになっているだけじゃなく、どこか相談できる機関があるかと思うんですけどね……。
 後から読むと、「あの人(悪人)がやってきた」というシーンの描かれ方もおかしいんですけどね。ある日突然その人がやってきたような描かれ方をしてますが、ちゃんと理由があって(たかるために)やって来たワケですし。

 正式な復讐依頼があるワケでもなく、カモは事件に巻き込まれていく。復讐代行のパターンを大きく崩してますね。
 しかし、家を乗っ取られ、言われるままに(悪人に逆らった)家族をみんなで殺すとか……ずいぶんと話がブッ飛んでますけどね。

 ●

 引きこもりの少女の家に、従姉妹(いとこ)が遊びに来る。そこに殺人鬼が侵入。従姉妹と両親を惨殺。その様子を2階の自室で無線で聞いていて、引きこもりの子は自室のベッドの下に隠れ、難を逃れる。
 その少女がカモ達に復讐の依頼をしてくる。犯人はまだ特定されていない。
 少女の名前は奈々子。SNSを使い、犯人を「釣る」事ができるという。
 そして見事に犯人は釣られるものの、あと一歩のところで取り逃がしてしまう。そして事件が解決するまで、奈々子をかくまう事にしたカモ達。

 するとここで意外な展開に。
 別の依頼が舞い込んでくるんですね。そしてそのままその依頼が進展。つまり、奈々子の事件が解決しないまま、平行して別の依頼が進展していく。さらに複雑な事に、そこでトラの過去話もからんできたり。そのまま、奈々子の事件はほったらかしに。
 はぁ。どういう事でしょうね。

 そんな感じで2巻目もあっという間に読み終えてしまいました。読後すぐに3巻に手が伸びてしまいます。
 それにしても、ここまでほぼ、エロはないですね。ありそうでない。描けそうなシーンでも、あえて描かない。描いても、エロさを前面には出さない。そういうものにこびない姿勢もまた、素晴らしいです。--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


「カモ」こと、鴨ノ目(かものめ)。
家族を惨殺された過去があり、悪人
を決して許さない。
その拷問も凄惨を極める。



トラ。
格闘術に長け、主に悪人を捕らえる時
に活躍する。
拷問にはほぼ加わらない。



奈々子。
カモ達に保護され、他の事件にも関
わっていき、ほぼレギュラー化。-
●3巻

 奈々子はカモ達の元に居座り続ける。
 でも冒頭での鍋をつつく話とか、ほんといらなかったかなーと。読んでいる方としては、かなり気が抜けてしまいます。まぁいい話なんですけどね。凄惨でむごい復讐代行屋をする彼らもまた、普通の感覚を持った人間なんだという事ですかね。

 そして次の話。何と、一旦捕らえた悪人に、拷問直前に逃げられてしまうんですね。こういったパターン崩しを、前巻から取り入れてますね。

 奈々子がらみの殺人鬼がここで再登場。そうですね。コイツの事件を何とかしてもらわないと。
 雑誌の編集者をやっていながら、殺人鬼。人を殺し、それを「経験」する事でリアルさを学んでいきたいとする変態。殺しの場に邪魔が入るなど、なかなか展開も上手いです。
 でも彼の話はまた寸断。別の話が始まります。

 で。どっかで聞いたようなひどい話(コンパの席で酒で酔わされ、若い女が集団の男に輪姦される)をモチーフに描いてますね。姉妹がワナにかかり、妹は長時間に及ぶレイプのせいで身体的に障害が起こり、責任を感じた(妹をコンパに連れ出した)姉は自殺。妹が復讐を依頼してくる。
 悪人がまたひどい目にあうんですが、最初の頃よりだいぶパワーダウンしたかな、という印象を受けました。
 これでも充分衝撃的ではあるんですが、冒頭の方はむごさが突き抜けてましたからねぇ……。

●4巻

 ホストクラブでの殺人話。大ゴマを使ってリアルに描いているのはいいんですが、殺すだけで一話って……。そして死体を処理するだけで一話。次の話も何だかしまらない。
 で、この話は投げ。次の話に。……って、一体何だったんですか、この3話は。

 次の話は同業者の話。復讐の依頼が被ってしまい、同業者とハチあわせてしまうワケですが、これはなかなか面白かったです。

 次。男が子供達を殺す話。ホストクラブでの殺しについて、ニュース沙汰になったりしてますけどね。でもホント、カモ達に全くからまない話でした。
 男の生活感、そして殺戮に至るまでが淡々と描かれています。そして4巻は終了。
 なかなか怖いです。殺人犯達もちゃんとした人間として描かれている(生活感ありすぎ)のが、リアルで怖い。

●5巻

 4巻後半の話はここで締めくくり。やはりカモ達が悪人を殺さないと、このマンガはしまりません。

 で、やっと奈々子がらみの殺人鬼の話が来たかと思いきや、これは彼の過去話。ずいぶんと行ったり来たりしますねぇ……。

 はてさて。5巻も残り少なくなってきたというのに、カモ達の下らない飲み屋話が始まったり。何をやってるんですか……。
 そしたらそのまま5巻は終わり。あれ?5巻完結じゃなかったのか……と思いきや、
 「第1部完」。
 そして「外道の歌」として第2部がスタートって……う〜む。知らなかったとは言え、騙された気分。
 と言いますか、タイトルを変えて第2部開始って何ですか、それ……。

 ハッキリ言って、最悪。
 第1部完にしても、全然ドラマチックでも何でもない。日常のヒトコマを見せて終了って何ですかそれは……。

 う〜む。最初は面白さ5だったんですが、どうにもこうにもグダグダで無駄な部分も多すぎるので、4つに格下げです。(毎度エラそうですみませんけど)
 どうでもいいような日常シーンでも大ゴマを使いすぎだと思いますし。それに人間描写に重きを置きすぎて、話が全然進まない。まぁそういう、作者特有の独自性(オリジナリティ)がある、という事ではあるんでしょうけど。

 奈々子は面白いんですが、あの子が入ってきてから、マンガそのものが優しくなってしまった気もします。俗っぽい笑いも多めになってきましたし。
 それに、あの殺人鬼編集者をどうにかしてから、第1部を終えて欲しかったです。今のままでは、中途半端すぎ。

 第2部「外道の歌」は2016年夏発売との事で、現時点(2016/7)ではまだ発売されていません。
 期待はしています。主人公であるカモの過去話が見れるようですので。そうとうツライ話が描かれるのは、想像に難くありませんけどね。

●総評

 面白いんですが……中盤以降は話の流れが複雑化したりして(大きな事件を水面下で泳がせたまま、別の事件が起こっていく)、スッキリしませんでした。
 話のパターン化をすぐに断ち切ったのが良かったのか悪かったのか……。
 話そのものが無駄だったという話もいくつかありましたね。(殺人鬼編集者の過去、ホストクラブでの殺し)

 主人公のカモとトラ。この二人のぶつかりあいも楽しいですね。
 お互いに、悪人を憎む事になった過去がある。その憎しみが癒える事はない。むしろ復讐の代行をする事によって、クズどもへの怒りは増していく。
 善も悪もなく、クズどもへ制裁を加えていく二人。依頼主の恨みが晴らされていけば、それでいい。

 なお、このマンガを読んで、女性って色んな危険があって簡単に人生を壊されてしまうんだな、と思いましたね。
 まぁもちろんこんな事ばっかり(コンパで大勢にレイプ、チンピラにからまれてレイプ)現実で起きているワケでもないでしょうけど……。でも悪人に目をつけられてしまっただけで、女はむごい目にあってしまう。簡単に。
 怖い世の中だと思います。今の日本は全然、安全だとは思えない。いつどこで、ロクでもないヤツにからまれるかわからない。

 それはともかく、凶悪な事件を起こした加害者が数年ののちに釈放されて、世の中に普通に溶け込んでいる。未成年犯罪なら出所も早い。
 そんな理不尽さ。殺された側の人間はどうなる? 家族がひどい目にあった上、殺されたんだぞ? ……そんな被害者遺族のやるせない気持ちを描いたマンガなんですね。


 黄昏乙女(たそがれおとめ)×アムネジア ―― めいびい
 (2009年1巻初版発行/全10巻/ガンガンコミックスJOKER/アニメ化済み)

 ホラー度:★★★★話そのものは、タネを明かせば怖くない(オチが弱い)ものがやや多め。しかし、ホラーシーンは鋭い迫力がある
 面白さ :★★★★(貞一にべったりの幽霊、夕子。明るくてちょいエロ。しかしそれが覆(くつがえ)されたりする時があると……怖くて切なくなる)

 (あらすじ: 貞一が旧校舎で出会った幽霊の夕子。幽霊とは思えないほど愛嬌(あいきょう)があり、貞一は気に入られてしまう。夕子は死んだ時の記憶がなく、貞一とともに「怪異調査部」なるものを始め、自らの過去の真相を探っていく事になる)

 (一言: 明るくてちょいエロの夕子と、振り回されっぱなしの貞一のドタバタを楽しむのが基本。しかし恐怖話に入ると、迫力あるホラー画に気を引き締められる(オチは怖くなかったりもするんですが)。冒頭での見所は、夕子が怨霊化する話。普段が明るいだけに、意外性が強くて惹かれました)-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


元気で明るい幽霊、夕子さん。
こんな幽霊なら大歓迎です。



右)貞一
こんなドタバタもたくさん。
だがもちろん、ちゃんと怪談話も用意
されている。



ホラーシーンはなかなかの迫力。
●レビュー

 アマゾンでホラーマンガを探していて見つけた一作。夕子さんというキャラが魅力的との事で、興味を持って読んでみました。

 ●乙女心と夕の空

 中学1年生の新谷 貞一(にいや ていいち)は、学園内の旧校舎をさまよい歩いていた。出口を探すがなかなか見つからない。
 そこに現れた美少女。彼女に出口まで案内してもらう。
 そして貞一は少女に、どうしてあんな所にいたのかと聞く。すると少女は答えた。
 ――だってわたし 旧校舎の幽霊だもの。

 庚 夕子(かのえ ゆうこ)と名乗った少女。それは確かに、学園内にはいない名前だった。
 なお彼女は自分が死んだ時の事を覚えていないと言う。

 それ以来、夕子に何かとつきまとわれる貞一。お弁当を食べさせてもらったり、おでこにキスされたりと、からかわれっぱなし。
 夕子は言う。
 ――この学園のある丘は昔、呪われた土地だと言われていて……一人の女の子が土地の祟りでこの学園のどこかに閉じ込められてしまったんだって。

 そして貞一は、旧校舎の幽霊である夕子に関係がありそうなウワサ話を聞いていた。
 旧校舎には大きな鏡があり、その鏡の前では決して振り返ってはならない。振り返ったら、旧校舎の幽霊に引きずり込まれ、鏡の中を永遠にさ迷う事になる、と。

 夕子さんは本当に旧校舎の幽霊なのか。そして旧校舎の大鏡が抱える秘密は?
 貞一は真相を探るため、その大鏡を割る。するとそこには地下に続く階段があった。
 この先に、本当の夕子さんがいる。そう確信する貞一。しかし夕子は貞一を止める。
 それを振り切って、貞一は階段の下へ。そこには、白骨化した女生徒の死体があった……。

「見てしまったんだ……ダメだって言ったのに……」
 階段の上から貞一を悲しげに見下ろす夕子。
 そして彼女が放った一言は……

 ……まぁ、かなり意外な一言だったんですけどね。それがもう、この作品のイメージを決定づけています。これはぜひ、みなさんの目でお確かめ下さい。

 その後。夕子は旧校舎で「怪異調査部」なるものを始める。夕子は自分の死の真相を知りたいらしい。自分の死が、学園の怪異の一つとなっているので、学園内の怪異を色々と調べていけば、いずれはわかると思ったようだ。
 そして貞一は協力を要請(ようせい)される事になる。

 ●霊の怪 隠れ鬼

 実質、2話目。早速、旧校舎の「怪異調査部」に依頼が入る。
 依頼主は、この学校の生徒の小此木(おこのぎ)ももえ。「隠れ鬼」という怖い遊びをやっていたところ、その儀式に使った人形が消えてしまい、儀式を正しく終える事ができなくなってパニックになってしまっていた。
 夕子が美人系だとすると、小此木はかわい子ちゃん(+ドジッ子)。
 小此木はおびえている。それを貞一が「怪異調査部」部員として、夕子の協力を得て助けてやる、というお話。

 なお、小此木には夕子は見えておらず、夕子は本物の幽霊なんだなーとわかります。

 ●一の怪 夕子さん

 ここでは、学校の裏山にあるという、「夕子さんのお墓」が出てきます。ただ、夕子さんの真相に迫る回ではないんですね。まだまだ序の口。

 ●二の怪 放課後のクイックシルバー

 水銀中毒で死んだ生徒の霊が、放課後に教室を荒らし回るという怪談。
 タネを明かされた後は、ちょっとした美談になってますね。この先も、そういった「冒頭で恐怖をあおっているだけで、オチを見れば全然怖くない話」というのがちらほら出てきます。……これは残念ですが、そういうマンガだったんだな、とあきらめる他はなさそうです。

●2巻

 表紙に続くカラーページでは水着姿でミニプールでくつろぐ夕子さんが。全ッ然幽霊っぽくないですけどねー。
 他のマンガじゃあ、幽霊は言葉をしゃべらなかったりとか変わった特徴があったりするものなんですけど……このマンガの幽霊の表現はちょっと、普通の人間すぎますね。

 ●三ノ怪 呼び止め窓

 この学校の怪異はそのほとんどがウソなんだなー、とばくぜんとわかってきます。自分以外の幽霊はいない、と夕子がハナから言ってますし。
 ここでは夕子さんが、小此木に対して嫉妬(しっと)する姿が見られます。

 ●四ノ怪 神隠し

 貞一にデレデレになっている夕子さん。
 ここで新たな女生徒が出てきます。短髪でボーイッシュな子。彼女は貞一の後ろにいる女(夕子さん)の事を知っていて、このままでは「神隠しにあう」貞一に警告してきます。
 そして幽霊というものの本質を、貞一に言い聞かせます。そこには強い情念がある。苦しみや憎しみや痛み、そして哀しさ……。そんな強い念が、魂をこの世に遺すのだ、と。
(夕子さんが……悪霊?)
 女生徒の話を聞いて、夕子に不安をいだき始める貞一。彼女は自分をとり殺そうとしているのか……?

 そして雨の中。自分を探し回って見つけにきた夕子に、貞一は恐れを感じてしまう。-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
 ●五の怪 昏黒の夕子@

 雨に濡れた二人。保健室でのちょっとしたエロ展開何故こうなる)……しかしそれを打ち破る、あの謎の女生徒。
 彼女は言う。「死にたいのか? 新谷 貞一」。

「新谷 貞一! 教えてあげるよ……ソイツの本当の姿を!! 新谷を魅せているまやかしの姿を…ひん剥いてやる……!!!」
 そして貞一が見た、夕子の姿は……

 謎の女生徒は、自分の名を明かす。庚 霧江(かのえ きりえ)。夕子の血縁関係にある者だった。

 ●六ノ怪 昏黒の夕子A

 この辺はホラー的に引き締まっていて、非常にいい感じです。普段の茶目っ気ある夕子さんとは一味違う、シリアスな夕子さんが見られますし。
 でもまぁ、またも変なエロ展開?になってしまったりもしますが……上手くまとまってますね。
 明るいだけじゃない夕子さんが非常に魅力的です。見所のある回です。貞一の気持ちもここで大きく動いたんじゃないかな、と。

 ●七ノ怪 高松さんと柿崎くん

 ちょっとここは話にノレなかったんですが……たまにはしょうがない。保健の先生の過去にまつわる話なんですけどね。話が単純なのか複雑なのか、よくわからない話でした。
 で、庚 霧江も怪異調査部に混じって、今後も物語に関わる模様。この子、ツンデレなんですねぇ……。
 女の子のキャラが増えていくのはいいんですが、貞一がモテまくりでハーレム状態。エロのないエロゲーを見ているような感じに……。


サービスシーンは多め。

しかし重要なシーンでいきなりエロに
入るとズッコケそうになる。
●3巻、4巻

 怪の数がどんどん普通に増えていきますね。七ノ怪辺りで終わるのかと思いましたけど。何話目、というだけの数字だったんですね。

 3巻では「六年桜」「呪い石」といった話がメインで出てきます。「六年桜」は、話が二転三転するんですね。
「呪い石」では夕子の新たな真相に大きく近づくワケですが、なかなか怖い怨霊が出てきまして、これは(夕子みたいな)冗談では済まされない模様。
 この怨霊を大写しで描いたコマがあるんですが、凄まじい迫力です。

 それはさておき、庚 霧江。ずいぶんとパンチラする子になっちゃいましたけどね……。この子だけじゃなく、全体的にパンチラがほんと多めですけどね、このマンガ。

 4巻では、有子という子が出てくるんですが……これがどう見ても「マクロスF」のシェリル=ノームにしか見えないという。
 この話に夕子さんも上手くからんできていい感じになってますが、やっぱりこのマンガで語られる怪談話はひねりが強すぎて、頭がこんがらがったりもしますけどね。
 この巻は恋愛色が濃かったですね。まぁその恋愛の見せ場では「貞一、お前本気かよ!」とツッコミたくもなってしまうんですけどね……。

 で、4巻に「アムネジア」という話があったんですが、アムネジアとは「記憶喪失」といった感じの言葉なようですね。やっとタイトルの意味がわかってきました。
 あの(やたらおっそろしい)怨霊については、この辺での解決はなく、今後も物語に深く関わってくるみたいですね。

●総評

 とりあえず4巻まで読んでみましたが、全部の話が完璧に面白い……というワケではなかったですね。
 夕子があまりからまない、生徒間に伝わる怪談話は、ちょっと「ハズレ」と言えるような話がちらほら。クイックシルバー、高松さんと柿崎くん。この辺はノレませんでした。
 なお、クイックシルバーとは「水銀」そして「ポルターガイスト(騒霊)」を差すとの事。後から「なるほどー」と思ったり。

 そこそこがんばっていた「六年桜」も……やっぱりラストが弱すぎるかな、と。迫力の怖顔であおってきたりもしましたが、結局は怖い展開にはならず。元々このマンガそのものが、怖くしようという意思が弱いようなので、そこは仕方ないのかな、と。
 基本、「優しいマンガ」ですからね。人が派手に死んだりしませんし。(読んだ巻までは)
 実質的なホラー度は★3くらい。でも怨霊の描き方や随所(ずいしょ)に盛り込まれるホラー絵が凄まじくいいので、評価は高めです。


 未来日記 ―― えすのサカエ
 (2006年連載開始/マンガ全12巻(他ファンブックあり)/アニメ化済み(全26話))
 (情報提供: 弐唐奈さん)

 ホラー度:★★★☆☆全体的には明るめ。ただし、ヒロインの我妻 由乃の壊れっぷりが凄い
 面白さ :★★★★(12人でのサバイバルゲーム。各キャラに応じたシナリオ展開が、多彩で面白い)

 (あらすじ: 主人公、雨野 雪輝は、時空王デウスから90日先まで見通せる「未来日記」をさずかる。しかしそれを授かった者は他にも11人いた。その全員で生き残りをかけた殺し合いが始まる。勝てば神になれる。雪輝はひ弱な少年だが、超ストーカーの我妻 由乃のおかげでピンチを切り抜けていく。まるで慣れているかのように、軽々と殺人を繰り返していく由乃。そして彼女が抱える大きな黒い秘密。それは何なのか…)

 (一言: マンガとしては非常に面白いんですが、ホラーとしては、我妻 由乃の存在以外にあまり見所がない(純粋なホラーマンガではないので仕方がない)。しかし、「こんなに狂っているヒロインは見た事がない」というぐらいのインパクトがある)――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――--------------------------------------------------------------------------------

●いきさつ

 掲示板にて、弐唐奈さんから、教えていただきました。

  本当にお久しぶりです  投稿者:弐唐奈  投稿日:2011年12月03日

  (略)
  ・未来日記/えすのサカエ
  アニメ化もされたのでご存知の方も多いと思います。
  あらすじは「未来が書かれる日記を使い、生き残りと次期時空王の座を賭けた殺し合いのサバイバルゲームに巻き込まれる主人公とヒロイン」といった具合なのですが・・これの一番の怖い所はヒロイン:我妻由乃のヤンデレ(病んでるデレ)具合ですね。主人公:天野雪輝(ユッキー)の為なら人を殺す事も他人を犠牲にする事もいとわない病的な愛が恐ろしいです。
  このヤンデレ属性を萌として見られるか否かでホラー度も変わるかと思います。

  ・当て屋の椿/川下寛次(略) ・屍姫/赤人義一(略)

  長々とすみません。語りだしたらやめられない止まらない・・。どの作品も好きなので夢鳥さんのお眼鏡に適えればいいなと思います。それでは今回はこれで失礼させていただきます。

 との事でした。もう5年も前の書き込みに、今さらレビューとか。すみません。今後もあるかと思います(反省していない)。
 きっかけとしては自分、最近マンガのレンタルをし始めていまして、タイトルを知っていた「未来日記」を読んでみようかな〜と思ったんですね。そして読んでみたらなかなか面白かったので、読みつつ、全巻買いそろえてしまいました。
 弐唐奈さんの書き込みは、「花子さん掲示板 未来日記」でyahoo検索して見つけたという……。変な話です。

 全くして今さらですが、教えていただいて、どうもありがとうございました。


主人公、天野 雪輝
すぐ泣きべそをかき、我妻 由乃に
頼りっきり。由乃には不信感を持ち
続ける。


恐怖のヤンデレヒロイン我妻 由乃
雪輝をユッキーと呼び、付き従う。
邪魔をする者は、何ぴとたりとも容
赦なく殺そうとする。


時空王 デウス・エクス・マキナ
寿命が尽きるのを目前にし、自らの
座を他の者にゆずろうとする。
●冒頭あらすじ

 中学生の天野 雪輝(あまの ゆきてる)は、内向的な少年である。クラスメイトと遊ぶより、自分の殻にこもり、ケータイで日記をつけるという日々。目にした事をただひたすら、書き留めていく。
 そんな彼にも友達がいる。その名はデウス。時空王「デウス・エクス・マキナ」。雪輝の空想の中にいる、巨大な姿のである。
 そのデウスが、雪輝の日記に細工をした。90日先の未来まで書かれた日記にしてしまったのだ。しかしケータイが壊れると、未来をなくし、ぬ。そういうデメリットもあるという事だった。
 もはやデウスは空想の産物などではない。実際に雪輝は、その未来まで書かれた日記を頼りに、学校などで上手く立ち回る事を覚えた。事前に危険を察知できるし、抜き打ちテストなどもお見通しなのだ。「超勝ち組」になったと喜ぶ雪輝だったが、そこで水を差す出来事が起こる。

 クラスメイトの我妻 由乃(がさい ゆの)。彼女の机の上にあったものを見て、雪輝は驚愕(きょうがく)する。そこには、デウスの小間使いである「ムルムル」の姿をしたねんど細工が置かれてあったからだった。デウスは雪輝の空想の産物だし、ムルムルだってそうだ。だから他人がその姿を知るなど、ありえない。
 そして雪輝の未来日記に「DEAD END」の文字が浮かび上がった。――通り魔に追い詰められ、殺される。
 それがあなたの未来なのだと、突如現れた我妻 由乃に告げられる。

 危険を感じ、雪輝は逃げる。しかし我妻 由乃に先回りされ続ける。……こんな事ができる者など、いるワケがない。未来日記を持つ、自分以外には。

 逃げた先の工事中のビルのエレベーターの中で、我妻 由乃に捕まる。そこで雪輝は気づく。由乃が「もう一人の未来日記所有者」なのだと。
 殺されると思った雪輝は、腰のケースに入っているダーツで由乃を刺そうとする。しかし「刺せないよ」と言われ、何故か熱いキスを受ける。
 そして由乃に「勘違いしている」と言われる。雪輝を襲う通り魔というのは、他にいる。由乃は、雪輝の未来を見て、助けに来たのだ。そんな由乃が持つ未来日記の名前は……「雪輝日記」。雪輝の行動が10分刻みで書かれた「愛」の日記なのだった。

 成績優秀で美人の我妻 由乃が、自分のストーカー……。そんな衝撃の事実を知ってしまった雪輝だったが、通り魔に殺される未来はすぐそこに迫っている。
 ビルの屋上まで来て、身を隠す雪輝達。通り魔の男もそこまで来るが、雪輝達の姿は見えない。通り魔は雪輝がどこにいるのかを探るため、未来日記を頼り、ケータイを取り出す。そのスキに、雪輝はダーツを投げ、通り魔のケータイを破壊する。
 通り魔の男はねじ曲がって死んだ。未来日記を破壊され、未来をなくして、死んだのだ。

 ●

 とんでもない事に巻き込まれてしまった――。
 雪輝はいきどおって、デウスに問い詰める。デウスは「日記の所有者が一人だと言った覚えはない」とぬけぬけと言う。そしてこれは「ゲーム」のだと。
 未来日記を手に入れた者達によるサバイバルゲーム。その生き残った一人に、「自分の後継」をやると言う。

 そして後日。改めてデウスから招待を受ける。どこぞと知れぬ時空間に集められた11人。彼らは皆、「未来日記」所有者達なのだった。
 そこでサバイバルゲームの説明を受ける。お互いに殺しあうのが基本だが、未来日記に書かれた「DEAD END」(回避不可能な死)は、「奇跡」により、回避できる。
 以前、雪輝が通り魔からのDEAD ENDを回避できたのは、我妻 由乃という協力者がいたからだった。それは奇跡なのだと賞賛される。

 互いの姿は見えない。しかし1st(ファースト)と呼ばれる雪輝に、皆の矛先(ほこさき)が向けられていく。しかし何故か4th(フォ−ス)の男は、雪輝を「保護する」と言ってくれる。
 そして未来日記を持つ11人は、デウスの後継――つまり「神」を目指して、互いに争う事になる。

 ●

 雪輝の中学校に現れる、謎のメイド服姿の女。彼女は雪輝を1stだと見抜く。たちまち雪輝のケータイに「DEAD END」フラグが立つ。
 9th(ナインス)。このメイド女は「雨流(うりゅう) みねね」と名乗る。
 その直後、視界が爆発する。雨流みねねは、爆弾を校舎内に仕掛けていたらしい。

 突きつけられる死におののく雪輝。しかし由乃は笑顔で言う。「大丈夫。アイツは私が絶対”殺す”から」。
 DEAD END――避けられない死。しかしそれは、「奇跡」で回避できる。

「由乃。僕を守ってくれ!」
 雪輝は由乃に頼る事にする。だが我妻 由乃は、得体の知れないストーカー女だ。それを忘れてはならない……。


9th 爆弾魔、雨流みねね

場を盛り上げてくれる名脇役。
●感想など

 内向的でクラスでも目立たない雪輝を、成績優秀で美人の由乃が、ストーカーになるほど好き……というのにムリがある気もしましたが、それはそれで。

 とりあえず、全体的にホラーという感じではないんですね。普通の少年マンガです。しかし、我妻 由乃というキャラクターそのものが、ホラーなんですけどね。

 ばんばん人を殺す。簡単に殺す。何で警察に捕まらないの?と不思議になるほど、あちこちで殺しまくる。
 そして戦闘能力もズバ抜けている。ナイフの一閃(いっせん)で生首がぶっ飛ぶ。もはや殺戮兵器です。

 そして、雪輝が由乃の家で見た恐ろしいもの……。それが何であるのか、後半で明かされていくんですが、そこそこストレートな回答が用意されています。しかしそれに関わる大きな謎も残されています。そこはちょっと予想がつかないので、ワクワクして読み進めていけました。なかなか明かされない謎がある、というのも楽しいですね。読者のモチベーション維持(読み進めていきたいという意思)につながる気もします。

 ●

 あと、物語の最初から、なかなか飛ばしてるんですよね。だからダレずに引き込まれる、と。
 まず殺人鬼が出てくる。その次には爆弾魔。
 爆弾魔の雨流みねねの暴走具合いが素晴らしく、盛り上がります。そして意外な事に、彼女はこの先も長く、サブキャラとして活躍し続けるんですねー。


6th 教祖、春日野 椿
 ●2巻以降

 2巻の頭の方で、とんでもないものを目にする雪輝。せっかく上手くいきかけていた我妻 由乃との仲に、大きな亀裂が生じてしまう。これはホラー的にもインパクトでかいです。物語序盤での大きな山場ですね。

 次に6th(シックスス)として登場する春日野 椿(かすがの つばき)。女が持つ未来日記「千里眼日記」はケータイではなく、なんと「巻物」。この意外さがシビレます。
 ほぼ同時に関わる12th(トゥエルブス)もなかなか異様な男なんですが、かなりギャグが混じってますね。でも物語が壊れるほどでもないので、不思議なバランスを保っていると思いました。

 3巻。5thの豊穣 礼佑(ほうじょう れいすけ)での変なヒトコマ。ミニトマトの重さが変だと気づく由乃って……。まぁそれだけ人間離れした鋭さを持つ、という事なんでしょうけど。

 そして4巻。サブキャラもガラリと入れ替わり、全く別の話が始まったかのような感覚に。新たな未来日記所有者が現れる度に、舞台も大きく変わる。ダレなくていいですね。
 秋瀬 或(あきせ ある)。「エヴァンゲリオン」のカオルくんにそっくりですけどね。見た目も雰囲気も。
 彼は少年探偵。でも日記所有者かどうかはわからない。ただ、キレ者である事は確か。

 4巻は内容がややこしいですねー。コインを使った賭けがちょっと長く続きます。でもこの作者さんは、大きなコマを使って見所のあるシーンを多めに作っているので、上手く引き込まれてしまいますね。
 感心したのは、雪輝の未来日記を逆手に使ったシーンですね。未来に誤情報を与える。そんなに鮮やか……というワケではない(どちらにせよ、賭け要素が強い)んですが、そのアイディアが素晴らしいな、と。
 この辺は、秋瀬 或が主役みたいな流れですねー。

 でも、ラストの意外さは良かったですね。他人に山場を奪われちゃったじですけど。---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

4巻でサブキャラも一新


どう見てもかぶりものを着ている風
にしか見えない8th。
 ●5巻以降

 雪輝と由乃。この2人、性格がコロコロ変わりますね。子供みたいに泣いたり笑ったり。妙にりりしくなってみたり。一貫性(いっかんせい)がないですね。
 だから何だか、キャラへの感情移入が全然できませんね。キャラではなく、物語に引き込まれている、という感じで。絵柄の良さにごまかされている感じがしないでもないです。
 ただ我妻 由乃に関しては、この一貫性のなさが逆に生かされていますね。少年探偵の秋瀬 或が、由乃の特殊性に気づくんですけどね。

 そして4th(刑事)が雪輝達に牙をむく。そこに雨流みねねも加わって、なかなかの混乱戦になりますね。みねねが来ると盛り上がっていいですね。
 4th、なかなかの役者でした。5巻は見所が多かったですね。

 6巻の見所は、秋瀬 或と我妻 由乃との駆け引きですね。「誰の死体だ?」。……僕にも想像つきません。
 そしてまさかの、あの脇役キャラの輝き……。意外性が楽しかったですね。

 さらには8th(エイス)の登場。このキャラどう見ても人間じゃあないんですけど……。コイツの頭、常人の2〜3倍のデカさです。しかもなんでコイツだけ、2.5頭身なんですか……?
 で、この8thがどう見てもかなりの人格者であり、善人であるようなので、どうせなら雪輝じゃなくって、この人が神になればいいんじゃないの?と思ったりもしました。

 7th(セブンス)の日記が全然まともじゃないのも笑えましたが、ちゃんと盛り上げて、楽しませてくれましたね。
 さらには、もうこの辺にくると、我妻 由乃が誰かを殺そうとするのがギャグ交じりになっちゃったりしてますね。


全編に渡り、殺戮しまくるヒロイン。
新しい…です。
●総評など

 デウス・エクス・マキナ。パズドラ(ケータイゲーム)にも出てたので、このマンガの創作ではないなと思ったら、ちゃんと語源があるみたいですね。機械じかけの神。シナリオ上で言えば、「伏線のない唐突の終わり」だとか。

 主人公、天野 雪輝が弱々しすぎる。すぐに泣く。なお、(頭のおかしい)由乃を嫌ったかと思えば、すぐにまた頼る。芯(しん)がなく、根性もない。
 そして雪輝には、神を目指すという明確な意思もない。ただ、殺されたくないというだけ……か。
 そんな感じで、見ていてどうにもスカッとしない主人公なんですが……7巻の終わりでとある大きな出来事が起こるので、そこで雪輝が奮起するんじゃないかな〜と期待しております。

 ちなみに後半の9〜12巻はまだ読んでいない状態でレビューを書いています。たまにはそういうのもいいかな、と。答え(終わり)がわかってしまうと、レビューにも色々と修正が入って、勢いをなくしてしまうかもしれませんし。

 総評としては、「マンガとしてはなかなか面白いんですが、決してホラーなマンガではありませんよ」という感じですね。
 我妻 由乃がバンバン人を殺し、生首がぶっ飛んだりもするんですが(どんだけ力があるんだよ、と)、描き方があんまり生々しくないですし。

 オススメしてくれた弐唐奈さんがおっしゃっていたように、我妻 由乃のヤンデレ具合の凄さに感嘆する他はありません。秋瀬 或が出てきた辺りから、「記憶の改ざん」なんて事までし始めて、その狂いっぷりが加速していきますし。

 ……とにかく、我妻 由乃。このマンガでのホラー的な見所は、そこですね。


 透明なゆりかご〜産婦人科医院看護師見習い日記 ―― 沖田×華(おきた ばつか)
 (2015年5月発売/既刊1、2/書籍版: (税込み)463円(楽天ブックス)/電子書籍版: 432円/講談社KC KISS)

 ホラー度:★★★★(簡素な絵なので、絵ではなく、物語そのものに対する恐れ。中絶された胎児がどうなるのか。幼児虐待。様々な人間模様など)
 面白さ :★★★★★(未知の分野でしたので、面白く読めました。人間って様々あるんだなーと改めて気づかされました。ほんと、リアルでした)
 泣ける度:★★★★(出産へのストレートな感動。児童虐待の悲しみ。さらには、親から虐待を受けた子が大人になってから理解する、許し。わずかな愛にすがるその姿。泣ける話が多いです

 (あらすじ: ×華は、とある産婦人科医院で見習いのバイトとして働く。人工中絶して母体から取り出された、まだ人の形をしていない胎児を小ビンに収め、火葬業者に渡す毎日…。そんな中、普通の出産に立ち会ったり、出産時の死亡事故が起きたり、様々な事情を抱えた女性の中絶を目の当たりにする)

 (一言: 一般的に言う「堕ろす(中絶する)」という事が実際にはどういうものなのか、教えられました。そのまま成長すれば普通の赤ちゃんになるべきものを、人工的に母体から取り出してその命を絶ってしまう、という事なんですね。小ビンに収められた個々の命。世の中を見る事なく死んでいくというのが悲しい。他、児童虐待の話が多くありましたが、身勝手で暴力的な大人というのはほんと…恐ろしい


産婦人科医院で見習い助手のバイトをする
×華


妊婦を励ますも、彼女には彼女なりの事情
があるようで…
●いきさつ (値段などについては、2015/11現在のもの)

 スマホでネットなどを見ていると、広告がよく出てきます。
 たいがいは見たくもないマンガの広告(BLはカンベン)なんですが、たまにはまともなマンガの広告もある。そこで気になっていた作品が、これでした。

 で、アマゾンで見てみると、何とプレミアがついている。1巻目が3000円ほど。びっくりしましたね。(後日談: と思ったら、800円ほどの正規っぽい値段に戻ってました。出版社が増刷したんでしょうか)

 紙の書籍にプレミアがついていても、電子書籍ならいつでも、かなりの安価で入手可能。432円。
 ……おかしい。紙の書籍と電子書籍の値段に差がありすぎる。普通は100円くらいしか違いませんからね。どういう事なんでしょ?

 と言うか、アマゾンでの紙の書籍の値段が、いやに変動し続けてますね。わかっているだけでも、3000円→803円→843円……。何なんですかね、これは。

 ……ほんと、人気本の値段は生き物、という事ですかね。
 人気はあるハズなのに、出版社が増刷に踏み切ってくれないと……すぐにプレミア価格になってしまう。そういうものを、過去に何度も目にしてきました。いやな世の中です。マニアックなアニメ(何だそれは)のDVDBOXなんかも、安いと思ったら即買いしないと、半年も経たない内に値段がとんでもない事になったりするんですよねー……。

 ●

 自分は「透明なゆりかご」の1巻目はDMMの電子書籍で購入しました。(2巻目はKindleにて購入)。なので、左の絵は全て、カメラでモニターを映した「写真」です。

 Kindleは意外と簡単に使えましたね(これってスマホみたいなヤツを購入しなきゃならないとばかり思っていたので)。
 PCで、Kindleをアプリみたいにダウンロードできるのを知って、利用してみました。無料ですし、アマゾンにはKindle書籍もたくさんあるので、気になってたんですよね。

 (後日談: アマゾンばかり見ていましたが、楽天ブックスでは書籍版が463円という値段(しかも送料込み)。まさか、これが正規の値段なんでしょうか……(アマゾンは倍の値段)。大元である講談社のサイトでこの本の値段を調べようにも、電子書籍の紹介しか見つからなかったので…)

 ●

 絵は表紙からもわかるように、記号みたいな絵。誰にでも描けるんじゃないの?というレベル。まぁ実際にはそうもいかないんでしょうけど。
 こういう簡素な絵のマンガは内容勝負。面白いものを描けば、それで人気が出る、と。
 雑誌社が増刷しないせいなのか、このマンガはプレミア価格になってますからね。人気なのは間違いないでしょう。(後日談: このレビューを書いている途中で増刷したようで、値段が落ち着きましたけどね。でもまたなくなれば、プレミア価格になるのは目に見えてます)

 で。このマンガの何が怖いのか? それは第1話からもう始まります。


小ビンに収められ、火葬を待つ胎児

このビンが、「透明なゆりかご」という
事なんでしょうか。
●第1話

 このマンガは産婦人科の日々を描いたマンガなんですね。主人公の×華(ばつか)は高校3年生の時、バイトとして近所の産婦人科医院に勤めます。それがはじまり。
 まず怖いのが、人工妊娠中絶された後の、胎児の行く末。
 (カメラの)フィルムケースのような小ビンに入れられ、まとめて火葬となるんですが……この描写はやはり衝撃的です。

 ×華は当初、毎日この仕事を続けるんですね。中絶された「命のカケラ」を拾い集め、小ビンに入れて、(火葬)業者に渡す。
 ×華は言います。
 ――この世に出てきて「おめでとう」と言ってもらえない子が、こんなにいるなんて思わなかった。

 自分もこのマンガを見て、華々しい「出産」の裏にはこんなひどい話があるんだな、と初めて気づかされました。
 人間っていうのはほんと様々で、一人一人が違った事情をかかえている。この妊娠中絶というものにも、一人一人に様々な理由がある。だから、毎日のように捨てられる命があっても、それは仕方のない事で、今後もずっと続いていく事なんでしょうね……。
 でもせっかくこの世に生まれ出ようとしているのに、世の中を見る事なく、知る事も味わう事もなく、赤ちゃんになる前に消されてしまう……。そんな命が毎日ゴマンとあるだなんて、考えたくもない……。
 避妊(ひにん)は大事ですね。妊娠を望まないのであれば。

 で、普通の出産の話もここで描かれています。産婦人科は何も、中絶だけする場所ではないんですね。普通の出産こそ、この医院の正しい姿。
 陣痛に苦しみ、大騒ぎで迎える出産。ギャグっぽく描かれています。でも見ただけで感動的ですね。


捨て子を引き取る引き取らないとモメる

その捨て子があまりにも愛らしくて、×華は
自分が引き取りたいとすら思ってしまう


性的虐待を受け、苦しむ少女


死産のトラウマを乗り越えての出産


親からの虐待
これはまだマシな方…。
 ●第2話〜3話

 様々な事情の出産(不倫)やら子供の置き去り(高校生の出産)やらが描かれています。この絵だと重苦しくなく読めていいですね。
 自分、3話好きです。どんな話かはあえて触れません。まぁ、ホラーからかけ離れていますからね。

 ●第4話

 ――(妊娠がわかった後)、男は逃げる事ができるけど、女は全て背負わなければならない。

 そういう不幸な男女間での出来事を、×華はたくさん目の当たりにする。
 必ずしも、妊娠=喜び、とは限らない。

 ――中絶の中で一番女性が絶望するのは、「相手が産ませてくれなかった」時なのかもしれない。

 そういうサイテーな男にならないよう、気をつけますです……。
 でもこの辺で1話に複数の女性が出てきたりで、話ごとに特色があるのかないのか、わからなくなってきますね……。

 ●第5話

 この話はかなりヤバめ。何たって小学5年生の子が、性的虐待を受けるという話なんですから……。
 でも泣けます、この話。母親が理解してくれる場面がほんといいです。何も凝った絵を描かなくても、泣けるものは泣けますね。

 何というか、性的異常者の男が、未来ある女の子の人間性そのものをメチャクチャにしてしまう、というのはホント怖い。

 ●第6話

 6話も泣けます。死産(お腹の中で胎児が死亡)のショックを乗り越えての新たな出産。その死産も突然に起こり、そして原因不明というのが恐ろしいですね。

 ●第7話

 これは間違いなく、ホラー。実の母親に……。ここはあまりにもショック。
 でも児童虐待ってこういう事なのかな、と。親というものも、ただの人間。必ずしも、優しい聖人とは限らない。

 つらい思いをした人ほど、ほんの小さな愛情に気づき、目を向ける事ができる。
 幸せを幸せだと気づけない人より、どれだけ幸せかわかりません。

 ●児童虐待について少し考えてみる

 児童虐待が、近年もよくTVのニュースで取り上げられています。
 ひどいケースになると、虐待の末、死に至らしめてしまう。

 親というのもただの人間。皆、善人ばかりではない。頭のおかしな残酷な人間だって、普通の顔をした親になりうる。

 そして、再婚などがからむと、親子の関係も複雑なものになってしまう。
 妻の連れ子になじめず、暴力をふるう父親。再婚したいが、子供がいるので難しく、自分の子につらくあたる母親……などなど。

 他、いう事をきかない子へのせっかんがエスカレートしていって、虐待となるケースもあるみたいですね。


 何にせよ、「虐待」というものに耐えられなくなったら、「誰かに相談する」しかない。苦しみ続けるより、救いを求めましょう。

 >児童相談所全国共通ダイヤル 「189」番。
 >子ども虐待防止オレンジリボン運動 http://www.orangeribbon.jp/
 

●総評

 何度読んでも泣けますね。
 泣けるだけじゃなく、非常にショッキングなシーンなどもあり、恐ろしさも充分に感じる事ができます。

 第2巻もあるんですが……同じような話が続くだけのようですので(続きもののマンガじゃなく、1話ずつが読み切りみたいなものですし)、レビューはこの辺にしておきます。

 妊娠や避妊について、学校などで教えられる機会があるかもしれませんが、このマンガを使ってみるのも手でしょうね。いい教育本になりそうな気がします。

 男も好き勝手してはいけない。女性をどれだけ苦しめるかわからない。異常性欲で児童に手を出すなど、もってのほか。人間一人殺してしまうのと同じ事。
 女性も妊娠を望まないのなら、しっかりと避妊をする。ちゃんと避妊しないから、望まない妊娠をして、中絶などという大変な目にあったりする(ヘタすると命にかかわる)。

 避妊。そんな当たり前の事をしっかりとしていれば、赤ちゃんになれずに消されていくかわいそうな命を、少しでも減らす事ができるハズ。
 ……と、理屈ではわかっていても、やはり世の中の人間全てが正しく生きられるハズもない。間違いを犯すのが人間。自分が間違いを犯さなくても、他の誰かが間違いを起こす。でもせめて、このマンガに感銘(かんめい)を受けたのならば、似たような過ち(中絶、子への虐待)は犯さないようにしたいものです。

 子供へ暴力的な虐待をする親はもはや手遅れで、頭がおかしくなってしまっているとしか思えませんが、子供が多少の知恵遅れだからといって、教育を無理強いするのもまた、虐待に近いものだと理解する必要がありますね。

 色々と、考えさせられます。(自分はまだ未婚ですけどね)


 死人(しびと)の声をきくがよい ―― ひよどり祥子(さちこ)
 (チャンピオンREDコミックス/税別 552円/2012年9月第1刷、既1〜4巻、以降続巻)

 ホラー度:★★★★グロ満載。ただ、全体的にはそんなに暗くない)
 面白さ ★★★★★(名作短編も多いんですが、軽く流したような話も多い)

 (あらすじ: 主人公岸田 純は幽霊が見える高校生。幼なじみの早川という女の子が死に、彼女の霊がいつもつきまとうようになった。友人の誘いでいつしかオカルト研究会のメンバーになった岸田は、行くところで危険な目にあう。だが早川の霊に助けられて、事なきをえる。早川の霊が何故自分につきまとい続けているのか、岸田は知らない…)

 (一言 : いかにも(古き良き時代の)ホラーマンガという感じの絵。ベタ塗り部分が多く、暗く引き締まった印象を受けます。霊が一言もしゃべらないのが雰囲気バツグン。グロ絵が多く、ホラー度はかなり高め。物語は1話読み切りのものがほとんどで、読みやすい。キャラは明るめ)


主人公、岸田 純。
霊感はないと言い張るが、霊の存在
を感じると鼻血を流す。
早川だけは例外である模様。


早川。
ヒロインでありながら、幽霊。
一言もしゃべらない。
岸田につきそい、岸田の危機を何度
となく救う。
●いきさつ

 通販サイト「Amazon」で、評価が高かったので読んでみました。
 結論から言えば、当たりでした。大変、面白かったですし、ホラー度も良好でした。

 絵はベタ塗り部分が多く、力強い感じを受けます。一昔前のホラーマンガそのまんま、という感じですね。

●レビュー

●1巻

 ●第1話 早川涼子失踪事件

 学校の保健室。主人公の岸田 純(男)は保健室で、先生に診てもらっている。
 岸田は幼い頃から倒れやすい体質だった。今日も鼻血を流し、倒れたのだ。
 岸田は言う。「早川さんはこの保健室と何か関係があるんですか?」

 先生は何を言われているのかわからない。時に、早川とは、今行方不明になっている女子生徒の名前だった。
 しかし、岸田には見えていた。先生の背後に、早川の霊の姿が……。

 >感想
 昨今の、絵が美しすぎるマンガとはちょっと違う。一昔前のマンガ、という感じなんですね。背景とかやたら美しいワケではなく、手書き感がモロに出てます。
 でもちょっとしたレトロ感がにじみ出ていて、ホラー的に雰囲気を盛り上げてくれてます。

 なお、霊である早川が、一言もしゃべらないのがいい。昔レビューした「MAKOTO」を思い出します。
 霊がしゃべるのもアリだとは思うんですが、それじゃあ生きている人間と大差ない。霊と生きてる人との決定的な違いを、「しゃべらない」という方法で表現したのは、ほんと感心モノです。
 霊がしゃべらないと、雰囲気も出ます。

 で。1話目からヒロインが死んでるんですね。これはなかなか新しい……。
 ヒトの狂気やら、内臓べろべろのスプラッター描写やら。ホラー度もなかなかでした。


左)式野会長
右)小泉
 ●第2話 バテレン島の伝説

 友達の小泉に誘われて、学校の郷土史研究会の日帰り調査に参加した岸田。早川の霊も何故か同行してくる。
 間吊(まつり)島。そこは隠れキリシタンの伝説で知られる島で、宣教師と信徒らは激しい拷問の末、殺されたのだという。

 島の洞穴などを案内される一行。そこで岸田は鼻血を大量に流す。霊的なものに触れると、岸田はすぐにこうなるのだ。
 早川の霊が指さした先。浜辺の岩場に、駐在の死体があった。
 死体を見られたとし、島民から洞穴の奥底に監禁される岸田達。島民らは邪教をあがめる狂信者達だった。そして岸田達は、「だるま様」と呼ばれた化け物のイケニエにされる……。

 >感想
 島民が岸田達を監禁する理由は弱いと思うんですが(駐在の死体を見られたからといっても、ごまかしはいくらでも効きそう)、物語的には映画を思わせるほど濃い。
 このマンガもう一人のヒロインである研究会会長、眼鏡美人の式野。この先も、このマンガを大いににぎわせる彼女の(キャラ的な)活躍は、ここから始まった……。
 式野は自分かわいさに他人を犠牲にしたりするんですが……そういう性格でも何故か憎めない、おいしいキャラです。

 ●第3話 死を呼ぶ大観覧車

 廃墟と化した遊園地、「ようせいランド」。そこに乗り込む人影が2つ。岸田と、そのいとこのミユだった。
 ミユは廃墟マニアで、滅びの美と称して、その場の写真を撮り続けるのだが……。

 >感想
 廃墟、そして地獄絵の描写が圧倒的。
 物語的にも容赦なく、締めくくっています。しっかりとホラーしてますね。

●以降、特に面白かった話をピックアップ

 ●第6話 釘澤(くぎさわ)邸の惨劇

 離れ島の岸壁上にそびえる洋風の屋敷、釘澤邸。そこは今住む者もなく、怪奇スポットと化していた。
 そこでTV番組の収録が行われる。岸田の母もゲストとして参加。彼女は占星術師なのだった。
 岸田も母に付き添い、さらには早川の霊もついてくる。屋敷内にさまよう霊の姿が見える岸田は、いつものように鼻血を流し続ける。
 そんな岸田に親切にしてくる少女、魔子。彼女も番組のゲストとして呼ばれたのだが、彼女は本物の霊能者だった。岸田が感じている通り、魔子もこの屋敷に不穏なものを感じ取っていた。

 >感想
 洋館で起こる惨劇。ホラーの定番、といった感じのシチュエーション。ばんばん死にますし、グロシーンも多め。
 この先もちょくちょく出てくる魔子。憑依体質という事で、早川に憑依されちゃったりしてますね。

●2巻


爆笑のヒトコマ。

幽霊にイタズラされている小泉。
 ●第7話 無邪気な幽霊

 江口という少女は、(郷土史研究会あらため)オカルト研究会の小泉に、引っ越してきた家の事で相談した。
 その家は誰もいない部屋で物音がしたり、笑い声がしたりするのだという。
 小泉に連れられてきた岸田は、その家で早速幽霊を見る。幼い男の子。ハーフっぽい可愛らしい子だった。
 早川の霊に導かれ、岸田はその家の屋根裏部屋で奇妙な箱を見つける。人が一人入れるくらいの大きさの箱だ。その箱の内側には、びっしりと無数の十字架が描かれていた。

 江口の両親も家の怪奇現象が気になり、霊能者に見てもらう。霊能者は屋根裏部屋を見たとたん、悲鳴を上げて逃げ帰ってしまった。

 江口はその家に前に住んでいた人を、岸田と尋ねにいく。そこで聞かされる真相。岸田が見たハーフの子は、忠之(ただゆき)といい、母に虐待を受け、殺されてしまったらしい。
 早川の霊に導かれ、江口宅の林の中で忠之の骨を見つける岸田。しかしその骨を警察が調べてみると、意外な事がわかった。
 そして事の真相は……。

 >感想
 どんでん返しにびっくりする作品。よく練られていると思います。

 ●第8話 降神(うらかみ)山にツチノコを追え!

 オカルト研究会のメンバーらは、この世の神秘を探るべく、ツチノコが出るといわれる降神山キャンプ場に来ていた。
 会長、式野。小泉。補欠会員の岸田。それに加え、メンバーは2人増えていた。
 ハイキングルートを二手に分かれて探索中、早速、岸田と式野はツチノコを発見する。
 まさかの捕獲に成功する式野。しかしその背後には、大熊を思わせる化け物がいた……。

 >感想
 もはや式野会長を見ているだけで楽しいです。それだけ。

 ●第9話 人形遣い

 体育の授業で軽く骨折してしまった岸田。病院の一室にいる。
 見舞いに来た小泉は、幼女を連れていた。誘拐か何かかと思ったが、単に妹であるらしい。
 その病院に、38人もの女性を殺した凶悪犯の男が、警官に撃たれて重体で搬送されてきていた。その男は死に、死に際に持っていた人形とともに霊安室に寝かされていた。
 その霊安室で、若い男と看護婦が、その凶悪犯の男をひと目見ようと、内緒で入ってくる。凶悪犯の顔の写メを撮ったり、人形を手に悪ふざけをしてみたり。
 しかし。その人形を手にした看護婦の様子が急変。男を殺害し、人形に操られ、院内を徘徊(はいかい)し出す。

 >感想
 小泉の妹のあいかちゃんを見ているだけで楽しい。この先もちょくちょく出てきますね。
 それ以外にも、人形に取りつかれた看護婦が、病院内で惨殺しまくる様がスゴイです。

●3巻

 ……と、ここも順にピックアップしていこうと思ったんですが、18話以外の全話がオススメなので、レビューはもうこの辺にしておきます。


「絵になる」ヒトコマが多いマンガだと
思います。
要はドラマ性があるんですね。
●総評

 改めて読み直してみると、第3巻でいきなり、当たりの話が多くなっている印象を受けました。どれもこれも素晴らしい。
 ぜひ、みなさんの目でお確かめ下さい。

 基本はホラーマンガなんですが、登場人物はかなり明るめの人が多いですね。なので怖いけど楽しく読めると思います。
 でもグロ描写は全編においてかなり多く、しかもハンパじゃないグロさなので、ホラー初心者向けではない感じがします。幼少の子には刺激が強すぎるんじゃないか、と。

 何にせよ、「(楽しく読めて面白い)本格ホラーマンガ」として、大きな存在価値のあるマンガだと思います。
 各話読み切りの短編になっているのもいいし、難しい事を考えずに読める、とっつきやすさもいい。

 ホラーマンガとしてのオリジナリティ(独自性)は弱い気もするんですが、こういったとっつきやすいホラーマンガがあるのもいいなと。
 それでいて、怖いシーンはしっかりと描かれている。さらには、話も面白い。……賞賛する以外にないです。


 テラフォーマーズ
 (ヤングジャンプコミックス/税別 514円/2012年4月第1刷、既1〜4巻、以降続巻)

 作 貴家悠
 画 橘賢一

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★☆☆

 (あらすじ: 火星を人が住める星にするために500年前に放った大量のゴキブリ。それを駆除するために向かった15人の若者達。しかし彼らが火星で見たものは、500年かけて人型に進化していた、ゴキブリとは似てもにつかぬ生物だった…)

 (一言 : 絵は文句なしの最高級。展開もそこそこスピーディ。登場キャラがバンバン死にます。物語の大半の部分が、「手術を受けて超人になった人間VS進化したゴキブリ」。特殊な昆虫の能力などが盛り込まれていて、楽しい。他、色々とショッキングな展開が待ち受けていて、引き込まれます)

●いきさつ

 通販サイト「アマゾン」で見つけたマンガ。ホラーマンガ、というワケではないんですが、宝島社「このマンガがすごい!」の2013年度、オトコ編で1位という触れ込みに引かれ、購入。
 読んでみたところ、充分にホラー要素もあるので、レビューしてみる事にしました。

●レビュー


進化したゴキブリ。
凶暴かつ素早い。
 ●1巻

 西暦2599年。火星に向かう一隻の宇宙船。
 宇宙船の中には、日本、ロシア、タイ、アメリカなど各国から集められた若者が15人ほど乗っていた。
 彼らは火星に「ゴキブリ退治」に向かったのだ。

 ……今から500年ほど前。大気の少ない火星を人間が住める状態にするため、「テラフォーミング計画」というものが立てられた。
 それは火星に大量の苔(こけ)とゴキブリを放ち、地表を繁殖したゴキブリで埋め尽くして、地表を温めて大気を作り出す、というものだった。

 そして火星に降り立った彼らが見たものは……、「人型に進化したゴキブリ」だった。
 「じょう」と鳴き、人間の言葉を介さない彼らは問答無用で襲ってくる。
 だがしかし。乗組員達は皆、特別な手術を受けていた。通称「バグズ手術」。昆虫の能力を移植し、超人にする手術だった。

 地球から向かった彼らと、火星のおいて人型に進化したゴキブリ達との戦いが、今始まった……。


昆虫化した小吉

モロ仮面ライダーみたいになるキャラ
もいたり…
 ●感想

 バグズ手術を受けた乗組員達は、変身ヒーローのような姿になってゴキブリ達と戦うんですね。
 スパイダーマンとか仮面ライダーとかそんな感じのヒーローが、たくさんいるような感じ。「ジョジョ」のスタンドっぽいのも、画的にじゃっかん入ってますね。

 主人公の小町小吉と、ヒロインの秋田奈々緒の恋物語が中心に描かれていますが、ヒロインが序盤で大変な事になっちゃうんですねー。
 そして乗組員達、バンバン死んじゃうんですね。登場してカッコ良く変身した数コマ後には、もう死体……とか。キャラを活かしきらないですぐ殺しちゃう。……かなりもったいない気もしますが、「展開がスピーディ」と言えばそんな感じ。
 そのスピーディさで、物語は一巻で一旦終了させていますね。

 小吉は手術により、スズメバチの能力を持つ。拳についた毒針を撃ちこんで、敵を倒す。
 他の乗組員達も皆、多種多様な昆虫の能力を持つワケですが、その中でも特に、「エメラルドゴキブリバチ」と「ネムリユスリカ」には感心しました。こんな特殊な昆虫がいるのか、と。
 ほぼ壊滅状態に陥った地球からの乗組員達は、勝利か敗北かもわからないまま、火星を後にするのだった……。

 言うまでもない事ですが、絵は最高級ですね。
 ゴキブリのキャラデザインが土人っぽくて、個人的にはあまり好きじゃないんですが(もっと「昆虫っぽく」して欲しかった)、気持ち悪さはよく出ていると思います。言葉をしゃべらないのがいいですね。


毒舌家のミシェル
 ●2巻以降の概要(がいよう)

 世代交代した2巻目。主人公も小町小吉から膝丸 燈(ひざまる あかり)に変わります。燈は、地下格闘技場においてクマを素手で倒すほどの格闘男なんですね〜……。一昔前のマンガをそのままやっちゃった感じがしないでもないですが……。

 2620年大型宇宙船アネックスが、再び火星に向けて旅立つ。
 2巻では、その乗組員達の個々の物語がいくつか描かれている感じですね。
 1巻での主人公、小町小吉が艦長になってます。小吉がいつもお共に連れている、ミシェルという女がなかなか面白くて(ツンキャラ)、キャラ的にいい感じです。


もったいないと思うほど、バンバン
死にます
 ●ホラー的にはどうか

 まず、ショッキングな場面が非常に多めですね。「まさかここでこんな事が起こるとは!」みたいな感じのが、全編に埋め込まれています。ダレずに読めます。
 それにしても……ここまでガマンせずにバンバン殺しちゃうのもスゴイ。「死んだと思ったら生きていた」ばっかりのマンガ「エルフェンリート」とは対をなしそうなほど……。

 で、個人的に期待していたH的なシーンは、残念ながら「皆無」といっていいほどありませんね。初めて出した乳首ありのシーンが、まさかの死体とか……。そりゃないでしょ……。
 この「萌え」時代に?ここまで徹底してエロを出さないとは見事です。真面目な作者さんなんでしょうかね……。硬派です。

 人の死体やらゴキブリが無残に殺されていく様とかバンバンあるので、そういうグロ的なホラーは、充分に描かれています。
 でも生粋(きっすい)のホラーマンガではないので、心理的な恐怖場面などはあまりないですね。静ではなく、動の恐怖が描かれている、という感じでしょうか。

 このマンガ、エンターテイメント(楽しませる事)に徹していると思うので、ハラハラドキドキしながら読むのが、正しい姿勢かと思われます。
 読んだ3巻まで、充分に楽しめました。今後ももちろん、期待です。

 余談ですが、バトルものなら「GANTZ(ガンツ)」を超えるマンガはもうないだろう、と思っていたんですよ。あのマンガは「やりすぎに次ぐやりすぎ」で、もはや何もかもを超越してしまっていとさえ、思っていましたから。
 でもこの「テラフォーマーズ」を読んで、そんな事もないんだな、と安心しました。切り口が違えば、普通に面白く読めるもんですね。


 サユリ ―― 押切蓮介(おしきり れんすけ)
 (全2巻/各巻590円/バーズコミックス(幻冬舎)/第1巻 2010年9月発行)
 (情報提供: ん さん)

 ホラー度:★★★★(狂って死んでいく家族。とり残される恐怖。ひん曲がった幽霊の顔など、視覚的な怖さもかなり良い)
 面白さ ★★★★★(普通の「幽霊屋敷ホラー」になりそうな所を、ばあちゃんが大幅に路線変更。そのパワーに圧倒されました。2巻中盤以降のクライマックスには、かなりヤラれました)

 (あらすじ: その一家が越してきたのは、怨霊(おんりょう)の住む家だった。家族がどんどん狂っていき、止めようもなく死んでいく。生き残った者はやがて、家族を殺した怨霊の正体を知る…)

 (感想: 押切氏独特の絵(決して、上手いとは言えない…)に、恐怖的な磨きがかかり、恐怖シーンの迫力は文句なし。凄惨な叫び、鋭い動きで見せる恐怖、そして怨霊のねじ曲がった顔…。特に、ばあちゃんの鬼気迫る強さが、この物語を決定的に面白いものにしている)

●いきさつ

 ウチの掲示板にて、ん さんより、紹介いただきました。

 どうも、お久しぶりです  投稿者:ん  投稿日:2011年08月06日

 (前略)
 押切蓮介先生の作品で、椿鬼、および、ツバキは読まれましたか?(別社からの出ですが、実質「ツバキ1」は「椿鬼2」です)
 そろそろ押切信者もいい加減に、、と言われそうですが、「ツバキ」もこれまたオススメしたいです。
 ミスミソウあたりから感じていたことですが、押切氏は人間の中に潜む狂気の描き方がすごいですね。

 完結済みの作品で、「サユリ」という、押切蓮介最恐傑作という煽り文句の作品がありますが、これもかなり強烈な内容でした。
 個人的にはこれも大好きですが、勝手な想像ですが、結末は夢鳥さんには物足りないかも?という印象。

 あと、これはまだ読んでいないのですが、「誘爆発作」という作品もすごく気になっています。

 久しぶりにきて、あれこれ勝手に紹介しちゃいまして(しかも漫画ばかり)、なんかすみませぬ。
 しかし、ひとことにホラーといっても、切り口というのは色々あるものなのですねー。

 それではまたー

 ……との事。いつも貴重な情報と楽しい書き込みを、どうもありがとうございます。
 ホラー人間としては、「サユリ」が一番気になりましたので(最恐傑作と言われたからには…)、ありがたく読ませていただきました。

●レビュー

●第1巻

 本のオビ。
 ――僕の家族が死んでいく。
 押切ホラーの最恐傑作。悪意と思えるほどのトラウマ・コミック。
 と、あります。このあおり、裏切らない出来であるのを期待です。

 押切蓮介さん、と言えば「でろでろ」(全16巻)。ホラーというより、ギャグ色が濃い作品(変な妖怪が出まくり)でした。
 氏のシリアスホラー「ミスミソウ」(全3巻)もなかなかに面白怖かったので、この「サユリ」にもかなり期待です。



 ●あらすじ

 その家族が引っ越してきた家は、築40年の古い家だった。
 景色の良い小高い丘の上にある、一軒家。庭付きの二階建て。
 5人家族。そして別居していた祖父母を合わせた7人での、新しい暮らしがそこで始まろうとしていた……。

 温厚そうなサラリーマンの父親。コツコツ貯めてきた金で、やっとマイホームを手に入れる事ができたと、大変喜んでいる。
 庭でバーベキューをやったり、クリスマスツリーを飾ったりと、家族らしいイベントをこなそう…、と父親は意気込んでいた。
 そんな矢先。あっけなく、父親は心筋梗塞(しんきんこうそく)で死んでしまった。

 喜びから一転して、暗く落ち込む家族達。
 次に、姉の径子(けいこ)がおかしな事になった。何かにおびえ、何かにとりつかれたようにわめき出す。
 家族の様子がおかしい。気丈だったじいちゃんが急にわめいて庭を掘り出したり、母親がトゲのある言葉を吐くようになったり……。
 そしてとうとう、姉がバットを手に凶行に出る……。おびえる、弟の俊(しゅん)。

 主人公の則雄(のりお)は、家族の異変に、どうしたらいいのかわからないでいる。
 そんなある時、学校で、住田という目立たない女子から呼び出される。
 住田は――女の人が見える、と言った。

 ●感想

 容赦なく怖いものをどんどん描いてやろう、という意気込みを感じました。
 出し惜しみなく(ストーリー展開は早め)、サービス過剰気味(夢で恐がらせるシーンも多々)の恐怖度。さすがに素晴らしいです。

 で、押切さん独特の絵。決して、「整っている絵ではない」(体型のバランスが悪かったり、気抜けしすぎている絵も多々あり)と思うのですが、「この絵だからこそいい」という感じもします。
 あんまりゴチャゴチャしていないので、見ていて疲れませんし。
 絵があまり整っていない、というのも面白いもので、表情などへの「実験的な描き方」を感じとれたりして、表情一つひとつが新鮮な気もします。

 でも絵が特徴的というだけではなく、もちろんストーリー展開が面白いからこそ、絵も生きてくるんですけど。


主人公の則雄
 「この家を一番楽しまなきゃいけない人が、楽しむ前に死ぬなんて不憫(ふびん)だよ」
 父親の死後、息子の則雄がつぶやくセリフなんですが、こういうちょっとした上手いセリフが、僕は好きだったりします。記号としてではない、キャラの人間味を感じます。

 引っ越し後、父親が真っ先に、子供達の賞状などを飾っていた事に気づく、則雄。父親の死後に感じる、その優しさ。
 そんな静かな流れの後に、突然のでかい悲鳴のシーン……とか、緩急(かんきゅう)の付け方も素晴らしいです。

 セリフのないコマが多いのもいいですね。(セリフだらけのマンガは嫌いです)
 恐怖シーンの迫力も、さすがの出来。
 霊が見える女の子。この子のおかげで、物語の恐怖度が増した感じですね。

 この第1巻はとにかく、則雄の家族が狂っていき、死んでいくサマが、悪夢のように描かれていきます。
 混乱に次ぐ混乱。そして巻末に姿を見せた、狂気の怨霊……。上手く2巻へと続きます。



●第2巻 ※ややネタバレぎみ

 ●あらすじ

 その家では過去、何があったのか。
 怨念にまみれたその家。庭から出てきた白骨。一緒に埋められた遺品の中の、生徒手帳。怨霊の正体が見えてくる……。

 則雄の家族はみな、死んだり消えたりしてしまい、生き残っているのは、則雄とばあちゃんだけ。
 最近はボケていたばあちゃんだったが、ある時を境に、気迫に満ちた昔のばあちゃんに戻る。
 ばあちゃんは言う。
 ――このままで…いいんか…? やられ損のままでいいんか…

 ●感想

 この物語を独特のものとし、決定的に面白くしているのが……、ばあちゃんの存在。
 最初は影も薄く、ただボケていただけだったんですが……、2巻の冒頭でいきなりの豹変(ひょうへん)。気迫に満ちた強い存在として、則雄を助けていきます。
 こんなにかっこ良いばあちゃん、見た事ないです(笑)。

 その狂気じみた強さが、「押切節」という感じで、実にすがすがしい。……と言いますか、このばあちゃんがいなければ、この物語は成功しなかったのではないか?とすら思いました。(則雄と霊が見える子だけでは、あれだけのクライマックスは生み出せなかったのではないか、と)
 物語の展開も大事ですが、やはり「強烈な個性を持つキャラ」というのもかなり大事なんだな、と再認識しました。

 そう言えば、この家の事件に、警察が介入(かいにゅう)してはきませんでしたね。この辺は、上手くごまかされた気もします。……もし入れたとしても、ムダな描写になったんでしょうね。

●総評

 恐怖描写もさる事ながら、かなり面白く読めました。
 怨霊に対する武器が何なのか。ばあちゃんにしかと、教えてもらった気がします。

 「サユリ」を紹介して下さった、ん さん。どうもありがとうございました。
 2巻完結、というのが手頃で良かったですし、ムダなく恐怖が凝縮されていて、一気に読み終えました。
 クライマックスの盛り上がりはホント、圧倒的でした。……あれはもう、説明がいらない。あぁいう恐怖描写こそ、ホラーというものを生かしきったものなんじゃないか、と思います。あぁいうものを見せられると(落ちてくるアレ)、「やっぱりホラーっていいな」と思います。

 その他、ひん曲がった怨霊の顔なども、印象に残りました。
 見せない恐怖(センスがいるしスマートだけど、一種の逃げ)ではなく、見せる恐怖(怖いものを描く)でどこまで怖がらせる事ができるのか。……これはもう、想像力と画力なくしては、挑戦できないものだと思います。

 良かったです。「サユリ」。


 宵闇眩燈草紙(よいやみげんとうぞうし) ―― 八房龍之介(やつふさ たつのすけ)
 (全7巻/A5版/各巻税別850円/Dengeki Comics EX(メディアワークス)/月刊コミック電撃大王 連載/1999年8月、第1巻初版発行)
 (情報提供:浅漬けさん)

 ホラー度:★★★★(ホラー的にはグロさがメイン)
 面白さ :★★★★(キャラが立っていて、物語も凝っていて面白い。しかし凝り過ぎて難しい時も。バトルがエスカレートし、「やりすぎ」感も)

 (一言: 明治大正を思わせる世界で、2人の魔人めいた異端者と1人の医者が暗躍する。アジア系マフィアやら謎の化け物らとからみ、戦闘シーンも多め。短編と連作が入り乱れ。物語は様々なもの(人物関係・出来事の謎など)が詰め込まれ、非常に濃い。絵は丁寧に描かれ見やすく、コミカルな部分も多め)


 注意●入手困難な場合アリ。2011/7現在、通販サイトのアマゾンにて、7巻目に4000円ほどのプレミア価格がついてました。

●いきさつ

 掲示板にて、浅漬けさんよりご紹介をいただきました。

 クトゥルーなら  投稿者:浅漬け  投稿日:2011年02月16日

 (前略)クトゥルーを下敷きにした漫画作品でお薦めがあるので紹介させて頂きたいのですが……。
 もしかしたら、もうご存知かもしれませんが、八房龍之助と言う漫画家さんの「宵闇眩燈草紙」と言う作品がそれです。
 大まかに説明させて頂くと、大正時代を舞台に天狗、吸血鬼、魔法使い、スーパーロボットが暴れ回ると言う怪作ですww
 こう書くと、萌え系のありふれた作品に思えますが、その中身はエログロ・怪奇・映画・TRPGなど膨大な新旧の作品に影響を受けた一級のホラー漫画だと思います。
 クトゥルーは、作品の根幹を為している要素の一つですが、特に3、4、6、7巻(後日修正)にその影響が大きいです。
 漫画単体としてもとても面白い作品なので、宜しければ是非。(後略)

 との事。アマゾンで購入して、3巻まで読んでみました。


京太郎
医者。美津里と虎蔵を友人に持ち、
時にトラブルに巻き込まれ、時に命を
救ってもらう。


美津里
古道具屋の主人。何やら怪しげな物
品ばかりを扱う。
どんな時でも冷静沈着。
京太郎に、化け物が見える眼鏡を作
った。


虎蔵/エドワード・ロング
世界を又にかけて怪人らと渡りあう、
戦いを主とした用心棒的な男。
●あらすじ&レビュー

●第1巻

 さかしまに映る
 時は明治か大正か。
 京太郎が家に帰ると、なじみの美津里(みつり)が勝手にあがっていた。
 美津里は、京太郎の家にいつも「転がっている」、虎蔵(とらぞう)に用事があったらしい。だがあいにく、虎蔵は当分の間戻ってこない。

 朝帰りの京太郎は、自らの話をする。医者である彼は、とある娘の治療に出かけたが、その娘は「自分の病気が治らなくてもいい」と言う。
 するとその晩、その娘は煙のように姿を消してしまった……。
 その娘に心当たりがあった美津里は、その屋敷へ京太郎と共に出かける。

 その娘の部屋に忍び込んだ京太郎は、大きな姿見の古い鏡の中に、異様なものを見る……。
 一方、美津里は、娘の父親――養父に問いただす。
 「――(娘さんに)お手をつけられましたね」

 感想>
 全体的に、明治大正を思わせる雰囲気なのですが、作者さんのあとがきによれば、そうでもない模様。舞台が日本かどうかもハッキリしない。好きに世界を描いている、という事なんでしょうか。
 着物姿の主人公達。なかなかいいもんですね。
 シリアスな画風の中、ディフォルメされた絵もかなり多めにあります。ディフォルメされた部分は、力を抜いて読めるような感じになってますね。笑える部分、ですね。

 独特の雰囲気の中、物語は流れるように闇へと落ちていく。ホラー的にもなかなかうならせてくれます。

 ●ぬばたまのけもの
 京太郎の家に、虎蔵が戻ってきた。
 虎蔵は片目に眼帯をして、スーツ姿。拳銃なども扱う。

 ヤクザの親分に、麻薬の検分を頼まれていた京太郎。ヤクザの取引の場に、用心棒として虎蔵を引っ張っていく。
 取引に現れたのは、(リン)という美女。それは虎蔵のよく知る女だった。
 そこにさらに現れたのが、アジア系マフィアを思わせる馬 呑吐(マー トンツー)。彼は虎蔵に恨みがあった。
 繰り広げられる銃撃戦。そこで馬(マー)が腕から化け物を出したりで、場はさらに過激な事に。
 迎え撃つ虎蔵。彼も一歩も引かない。

 感想>
 ほとんど「3×3EYES(サザンアイズ)」のノリ。アジア系の怪しい人物が、化け物になったりで大騒ぎ……。
 虎蔵、というキャラの人物紹介じみたエピソードかな、と。
 1話のいい雰囲気(静かなる恐怖話)をいきなりぶっ壊した2話目(アクションもの)。でもこれはこれで面白い。

 ●腹上にて飼う
 2話目の続き。
 あの大混乱で身体じゅうにアザをつくった林。温泉で、美津里と出会う。
 美津里は林に、「掘り出し物」があると言う。後日、その話を信じて、美津里の元にやって来た林だったが……。

 感想>
 林がとにかく、被害者すぎて笑えます。
 美津里にとんでもない物をつかまされて死ぬ思いをした他、それを助けた虎蔵にまで妙な契約書を書かされる始末……。
 美津里がどんな女なのか、ここでまた一つわかった感じですね。そして物語はどんどん、色んな方向に膨らんでいく……。


京太郎に拾われた少女。
この話はかなり好きです。
 汐(しお)曇り/汐待ち/汐溜り
 京太郎は街の路地裏で、手枷(てかせ)をされている少女を拾った。
 美津里の所へ行き、フロに入らせて着るものを着せると、見違えるような美しい少女となった。
 だが少女はひと月経っても、一言もしゃべろうとはしなかった。

 一方。どこぞのマフィアの老人が、その少女の行方を捜していた。
 虎蔵も関わり、場は乱闘の渦へ。
 京太郎は、少女が海に行きたいのだと感じ、2人で海へ――。その先には、何が待つのか。
 
 感想>
 3話、つながってます。
 「青田刈り」(青い田を刈る、つまり子供に手を出す)とか「面妖(めんよう)な」とか、ちょっとした言葉使いがスゴイな、と。シャレてます。

 虎蔵のバトルシーンはスピード感がスゴイ。
 ラストもなかなか、ドラマ的に盛り上がります。そして迎えるシメもいい感じですね。読み応えのある連作でした。
 何度か読み直してみて、フロ場に落ちていたアレが何だったのか、やっとわかったりもしました。

 ●ゆきずりのからす

 感想>
 ある日の虎蔵、という感じの話。虎蔵は世界各地を又にかけて暗躍し、「エドワード・ロング」とか「飛 烏龍(フェイ ウーロン)」とか、色んな名で呼ばれてます。(何度か読んでわかったんですが)
 激しいバトルが堪能(たんのう)できますね。

 ●彼女の化石

 感想>
 とある屋敷。不治の病の娘に、頼み事をされた京太郎。娘が「会いたい」という新三郎の家は、すでに没落していた……。しかしそんなある日、新三郎が京太郎の元を訪れ……。
 ラストでなるほど、と。物語的には軽め、かなと。

●以降、ピックアップ作品のみレビュー

●第2巻

 ●やなりめ

 あらすじ&感想>
 京太郎と美津里の出会いが描かれています。
 京太郎はあくまでも普通の人間。医者をめざしていたが、挫折(ざせつ)してしまった。その頃父が死に、家を一軒ゆずり受ける事になった。
 出かけた先の、骨とう品屋か何かの店。美津里の店だ。京太郎はそこで眼鏡を作ってもらった。
 夜中。京太郎がぼんやりしていると、座敷に女が現れた――。

 ……化け物を喰う化け物、なんてのも出てきて、なかなかにスゴイ。化け物が「ヒィィ、たすけて……」とか悲鳴を上げるんだからもう……。
 美津里の正体はまだまだわかりませんが、強力すぎる女です。いつも飄々(ひょうひょう)としているのもいいですね。強者の余裕、みたいなものを感じます。

 ●でいがん/やせおんな/ますかみ

 あらすじ&感想>
 連作。京太郎の患者が何人か、ムザンに殺されるという事件が発生。京太郎はイヤなウワサが広まらなければいいなぁ、と願うばかり(医者として、客が減るのは困る)。
 そんなある日の晩。京太郎をたずねて来た女がいた。しかしその女は――。
 で。虎蔵がかなり残酷ぎみに仕留めるんですが(顔を傷つけられて激怒)、その女は人間ではなく、猫となって逃げた。

 京太郎は自らの行いを、美津里や虎蔵に暴露(ばくろ)する。
 その女の堕胎(だたい:赤ん坊をおろす)をしたばかりか、その水子を……。(ここでエグい描写が)

 美津里と虎蔵に助けてもらう京太郎だったが、色々と怖い目にあったのは、自業自得と言わざるをえない。

●第3巻

 あらすじ&感想>
 この辺からもう、ほとんど短編読み切りの形は消え失せてしまいました。3巻まるごと、連作ですね。以降にも続くようですが。 
 個人的には少し残念。1巻の出だしぐらいのおとなしさが、好みでしたので。
 この巻の後半ぐらいになると、巨大ロボットみたいなのも出てきて、「何だかな〜」と。……面白くないワケじゃないのですが、期待する方向性とは違った感じになってしまったので。

 物語は、虎蔵ことエドワード・ロングが、アジア系マファアの女ボス?林から仕事を頼まれた事から始まる。
 船が襲われて、積荷が持ち出されている――。自分のシマを荒らしている者の正体を知りたい。

 早速、手持ちのケースを奪われる林。追う虎蔵。キョンシーみたいな死人が2人。動きは素早い。
 そこに現れる謎のスーツ姿の女。腕は立つ。
 女と戦い、ケースを取り戻したものの、そのケースはニセモノ。

 そうして美津里や京太郎まで巻き込んで、どんどん話はこじれていき……。
 なお美津里にそっくりな金髪の女が何なのか、よくわかりませんでした。後で明かされるのかもしれませんが。

●総評

 かなり読み応えのあるマンガです。何度読んでも楽しい。1回読んでもう充分、という感じではないです。とにかく、「濃い」です。
 読むのにも何だか時間がかかる。先が気になって飛ばし読み……という感じではなく、1コマ1コマじっくり読んでいかないと話が見えてこない。
 コミカルさもやたら多い中、描くべき所(シリアス部分)はしっかりと描かれていますね。

 ホラー的な感想としては……、時折、かなり気合いの入ったグロテスクな場面があったりして、目を奪われます。また京太郎を軸とした短編などで、暗くていい雰囲気を漂わせている話もありました。
 でも全体的に見れば(3巻までですが)、アクションとコミカルな部分が多めで、ホラー的な部分は少な目かな、と。……物語に虎蔵が出てきた時点で、ホラーは消え去ってアクションものになってしまうので。

 とにかく、美津里、虎蔵、京太郎の3人を見ているだけで面白い。
 うさん臭い古道具屋?で正体の知れない美津里。派手なバトルをこなす虎蔵。物語に「静」をもたらす京太郎。面白いバランスだと思います。

 ご紹介下さった浅漬けさん。どうもありがとうございました。楽しませていただきました。
 浅漬けさんのおっしゃっていた「クトゥルフ」部分は、3巻で少しだけかいま見る事ができましたが、以降の巻でどう盛り込まれていくのか、注目して読んでいきたいと思います。

 ●他

 各巻末尾に作者の「あとがき」が数ページあるんですが、悪く言えば、こういうのって「同人っぽい」気がするんですけどね……。

 意外にも作者は男性?? 女性だとばかり思ってました。(遊び心うんぬん、装飾の美しさなどに女性誌っぽさを感じたり)
 で。あとがきを読むのは楽しいんですけど、この作者はかなり書き過ぎなんじゃないかなぁ……と。細かい文字でズラズラーッとたくさん……。う〜む。


 不安の種 ―― 中山昌亮
 (全3巻/各巻税別700円/秋田書店/第1巻2004年発行)

 ホラー度:★★★☆☆(全部の短編が恐怖一色。しかしガツンとくる怖さに欠ける)
 面白さ :★★★☆☆(工夫は感じられるのですが、ひねりのない話が多い。しかし時折、感心するような秀作も)

 (一言: 恐怖マンガ短編集。数ページで終わる話が各巻20〜30話、収められている。感心するような秀作もあれば、「ただ怖い顔を出した」というだけの(ハズレ)話もある。ストーリーではなく、絵で恐がらせるのが主。絵はかなりイイ。話の舞台はほぼ「日常」)

●いきさつ

 怖そうなマンガを書店で見かけたら、まず手にとってみる。そんな時期がありまして。
 そこで見つけた「不安の種」。恐怖一本に絞られていて、なかなかいいなぁという印象でした。
 そして数年経った今。全3巻出ているのを知り、アマゾンで買ってみました。掲示板で、どなたかにも紹介していただいた記憶が。

●レビュー (特に気に入った作品にはをつけています)

●「不安の種」 第1巻

 出だしのカラーページで動きのある恐怖を見せてくれます。シンプルでわかりやすく、なお雰囲気を盛り上げてくれます。





●題「学校」

 ●あそぼうおじさん
 夕方の6時過ぎまで学校に残っていたら、4年生〜6年生の玄関に、変なおじさんが迎えに来る、というウワサがあった。
 >感想
 布っぽい袋を被ったという、おじさんのデザインがとにかく怖くてイイ。
 リアルな絵でノレますが、ストーリー的には何のひねりもなく、「そのまんま」な印象。

 ●大きさが…
 学校をサボろうと、校舎を出る生徒ら。校舎の廊下の窓より、呼び止める先生。その先生のわきを通る、でかい女の顔……。
 >感想
 これも絵で怖がらせるだけの話。
 でも、女の上唇より下が見えない、というのがミソ。これは天才的な思いつきなんじゃないかなぁと。

 ●テンション
 >感想
 最後の一コマがオチなんですが、あまりにもストレートすぎ。

 ●しんがりの決まり
 >感想
 2ページもの。これもストレート。(でかいキモ顔が、横の鏡に見えているだけ)
 顔の絵が、ホラー的ではなくなってしまっている気も。

●題「ついてくる」

 ミミチリボウジ
 帰宅途中か。幼い姉妹が雪の町を歩いていく。その後ろ。電柱の陰に奇妙な人影が。
 コート姿で、手には裁縫(さいほう)バサミとビニール袋。身体の中心を、電柱の陰で隠している。
 その裁縫バサミがゆっくりと握られていく……。すると、妹の耳から血が流れ出て……。
 >感想
 これはイイです。怖いものを見せるだけじゃなく、コトを起こしてしまう。こういうホラーを見せられると、期待感がグッと高まってきます。
 話の切り捨て方も短編ならでは。(長編なら、出だし部分の「事件」に相当する感じ)

 ●安物買い
 古書店で買った40円の文庫本。その本は棚から落ちやすい……。
 >感想
 わめいたりせず、静かに怖いものを見せてくれるのがイイ。同じ絵を2回見せていますが、時間の流れが止まったような見せ方なので、上手い演出だと思います。

 ●のぞき
 >感想
 湯船に怖い顔が浮かんでいる、というだけの話。

 ●イモリさん
 子供が自室のベランダよりビルを見上げる。そのビルの外壁にへばりつく、妙な人影。それを望遠鏡で覗いてみたその晩から……。
 >感想
 なるほど、という感じ。こういうやや弱めのホラーがたくさん集まって、全体的にイヤ〜な怖さを感じる仕組みになっているのかなぁ、と。

 ●届けもの
 アパートのドアノブに、袋が毎日かかっている。中身はヨーカンだったり、ドーナツ屋のおまけのタオルだったり。ひどい時には新聞紙にくるまれた生肉だったりもする。
 >感想
 そしてオチ。確かに不安にはさせてくれます。一見、ギャグにも見えてしまいます。でも3ページなら、オチはこの程度で仕方ないのか。

 ●客
 とあるファミレス。ウェイターは、霊の客が見えている。好奇心か親切心からか。注文を取りに行ってみる。すると……。
 >感想
 絵的にさえなかったかな、という感じ。話としても「そのまんま」。

 ●…以降は、絶賛か酷評のみ、ピックアップしていきます

●題「訪問者」
 5作中、「ピンポンダッシュ」のみ、絵的に良かったかな、と。

●題「道端の影」

 ●送迎
 >感想
 主人公かと思った男が車にひかれる。たたずむ影がニヤけているのが怖い。ラストは人影らが消えるんじゃなく、皆ニヤけてこっちを見てたら、僕的にはもっとグッときたかな〜、と。

●題「不思議な…」

 ★メッセージ
 妹の麻綾は、病弱で家を出られない。兄はそれをふびんに思い、妹のぬいぐるみを連れて外を出歩く……。
 >感想
 思わぬ、感動話。何を描きたかったのかを、セリフなしの「絵のみ」で説明してくれるのが、さすがのプロ。

●「不安の種」 第2巻

 雪原。向こうに赤い帽子と赤いコートを着た女が立っている。そして風が吹き……。カラーページでの恐怖。セリフも説明もないのがいい。

●題「公共の場で」

 ●スウィング
 夜の社内。バットで素振りをしている少年がいた……。
 >感想
 その子の顔が変なだけ、というオチ。ぐわぁ……。

●題「さそう者」
 
 ★写真
 臨海学校の時の写真が、学校の掲示板にたくさん貼られている。その中、何の事はない小山の写真に、少女は妙なものを感じてしまう……。
 >感想
 絵だけではなく、久々にストーリーで怖がらせてくれる話。こういった、現実を破壊(世間体を破壊)するようなパワーが、ホラーに直接結びつくんだなぁと教わったような気がします。
 ハタから見れば全く意味不明の話なんですが、それがいい。なんとなく、2ちゃんねるでウワサされるような類の話かな、と。

 ★かくれんぼ
 友達とかくれんぼをしていたら、女の子に手を引かれ、廃屋の中へ。その子の顔を見ると……。
 >感想
 これも一発芸みたいに「怖い顔を見せて驚かす」というだけの話なんですが、「かくれんぼ」を題材にした事が活きていて、かなりの効果を引き出しているんじゃないか、と思いました。
 この暗い雰囲気は最高です。

●題「出会ってしまった」

 ★目撃
 新しいデジカメ。友人は部屋の外に向けて、勝手にシャッターを切った。ちょうどそこで人身事故が起きる。偶然にも、カメラはその事故現場を連続でとらえていた。
 >感想
 これもストーリーに絵が上手くからんでいて、ノレました。でも、もう少し怖い顔でも良かったかなぁ……と。

●題「気のせい?」

 ●ヒマつぶし
 >感想
 肝心の恐怖絵が、古谷実ばり(「行け!稲中卓球部」)のギャグ顔になってしまっていて、これはさすがに怖がれないなぁ……と。

 ●5時のぼー
 >感想
 1コマの恐怖絵が活きています。幼い頃の記憶とからみあい、効果もてきめん。

●「不安の種」 第3巻

●題「異形」

 ●狙い目
 >感想
 道路に無数の目が出現し、車に轢かれていく、というだけの話。不思議な光景を楽しむ、という感じですね。

 ●形態模写
 自分にそっくりの白いものが、となりを歩いている。害はなさそうだが……。
 >感想
 宇宙人?霊?などと色々想像をふくらませてみると楽しいです。

●題「才能」

 ●宿ヌシ
 ソイツには見える。家や建物の上にいる、様々な何物かが。そしてソイツは町で見た。巨大な災厄の影を……。
 >感想
 大ゴマで見せる迫力の恐怖が効いています。小規模な話ばかり続いたので、町を見せられただけでかなりスケールの大きな話に見えてしまいました。こういうメリハリもいいですね。

 ●僕のちから
 僕は信じ続ける。大ケガを負ったが、きっと生きられると。
 >感想
 医者の何気ないつぶやきが、こうして生死の境目にいる患者の命をなくしてしまう事もあるのかな、と思ったり。教訓話ですね。

 ●高橋君の理由
 会社内。家に帰りたくない高橋君。同僚達はそのワケを聞く。……高橋君は見知らぬ異様な女にストーカーされているとの事だった……。
 >感想
 長くても5ページぐらいの作品が多い中、これは11ページもあります。色々詰め込まれてありますね。望月峯太郎(もちづき みねたろう)の「座敷女」を思い出しました。
 この話のラストも投げ出された形で終わりますが、ホラーめいていていいです。

●題「気まぐれ」

 ★予報?
 終電をとうに過ぎた、明け方に近い夜。公園のベンチで気持ちよく寝ている。お仲間も多い。
 そんな時、ベンチで寝ている男達に近づく一人の女がいた。その女は、一人ひとりに何かをつぶやきかけている……。
 >感想
 自分が言われてしまう一言。そしてその顔。かなりイイです。

 ●いやがらせ
 とあるアパートの一室。これから借りようとしているのだが、中に女性がいて……。
 >感想
 初?のスプラッター。たった4ページであぜんとさせるのがいい。

●終章 作者の体験談
 >感想
 古臭いプールに幽霊が出た、というだけの話。絵が上手いから怖く見えるのであって、話そのものはあまりにもストレートすぎ。ノンフィクションかもしれませんが、これではちょっと……。

●総評(1〜3巻)

 「ただ怖い顔がそこに見えた」というパターンの話がやたら多い。でも感心させられるような秀でた話も多くありました。
 多くのハズレ話(軽く流したような話も多い)に、秀作が薄められてしまったような感じなので、全体的な面白さはやや弱めかな、と。

 読み終えた印象としては「面白かったんですが、ちょっと物足りなかった」という感じでした。ただ、この作者さんは画力や構成力がかなりあると思うので、ちょっとしたひらめきで、もっとイイ作品をたくさん作れるんじゃないか、という可能性を感じました。(とか編集者みたいな事を言ってしまってすみませんが)

 無駄な説明やセリフもほとんどなく、ほとんど「絵だけで恐怖を表現」してくれていて、なかなか楽しかったです。
 「実話体験談」や「都市伝説」風のものを独自にひねれば、もっと面白怖くなったんじゃないかな、と思いました。

 この本。ホラー的に色々と勉強になる所が多いと思いますし、創作をする人にはいいネタ探しができそうな気もします。


 邪神伝説シリーズ ―― 矢野健太郎
 (ノーラコミックス/1988年〜/全5巻/税込み各巻500〜520円)

 ホラー度:★★★★(秀逸な邪神のデザイン。グロ満載の容赦なさ)
 面白さ :★★★★(神話をしっかりと取り入れつつ、独自のSFマンガを展開)

 (一言: クトゥルー神話をベースにした、SFマンガ。短編集。邪神復活を阻止する組織、ケイオスシーカーが活躍する。絵がアニメ調で、明るく軽めな雰囲気で入り込みやすいが、一転しての残酷シーンも多く、容赦のない描写も多々みられる。邪神達も圧倒的な存在として、しっかりと描かれています)

●いきさつ

 ――「クトゥルー神話」(クトゥルフ神話、などとも言う)。
 H.P.(ハワード・フィリップス)ラヴクラフトが書いた、幻想小説群。他次元や宇宙的な規模での「邪神」などを描き、「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」と呼ばれています。

 そこでは、「クトゥルー」をはじめとする数々の邪神達が圧倒的な存在として描かれており、人間達がかなう相手ではない。人はただ、その邪神達を前にして発狂し、破滅していく……。
 ラヴクラフトの死後、その神話の世界観を用いて、数々の作家がクトゥルー神話を膨らませ、育てていきました。

 日本でもクトゥルー神話を用いた小説は数多く書かれているようですが、「マンガ」となると、意外と見つからない。
 でも幸いにして、僕は以前にそういったものを読んだ事がありました。

 それがこの「邪神伝説シリーズ」。
 今一度、入手できないかとアマゾンで探してみたら、案外簡単に見つかりました。
 幸い、プレミアもついておらず、安く購入。全5巻、改めて、ありがたく読んでみる事にします。

●レビューなど

 全5巻、それぞれ短編がいくつか収録された、読みきりの形になっています。
 関連性をもって、続くような形をとっている作品もいくつかあります。

 ●邪神伝説シリーズ@ ラミア

 ●「ラミア」

 バイク事故で重傷を負った、順(じゅん)。しかし数日も経たないうちに、全快してしまう。
 そんな順だが、学校では不良グループのカツアゲには逆らえない。そしてなぐったり、蹴られたり。
 ――意気地というものが無いのか。見てはおれん。
 そんな謎の声と共に、異変が起きた。不良どもがふっ飛んだ。そしてコンクリートの壁をぶち壊して、順は逃げる。

 謎の力、謎の声。順は「姿を見せろ」とせまる。
 謎の声は、「鏡をのぞいてみるがいい」と言う。そこには、謎の美女がいた……。

 >感想
 謎の女、ラミア。ラミアがスケスケの服で登場するから、順は胸元をのぞこうとしたりと、軽めのギャグも多い。
 でも本筋はおおむね真面目。
 どうやらラミアは、この世界をのっとろうとしているらしい。そしてそれだけの力と知識を、持ち合わせているようだ。
 だが実体のないラミアは、順の身体を使うしかない。だが順はそれを拒む。ラミアも万能ではないようで、順を思い通りにコントロールできないでいる。
 ラミアは当面の間、順の助けとなり、機嫌とりを続ける。


「ラミア」より
 後半はあれよあれよと大変な事態に突入。邪神達が暴れ回り、戦いを繰り広げる。
 そして思いもよらぬどんでん返し……。まぁクトゥルー神話をちょっとでもかじっていないと、ワケがわからない事必至でしょう。(誰それ?という感じになる)

 絵柄はアニメみたいで見やすいし、何といっても邪神達の暴れ回る姿が圧倒的。
 クトゥルーをはじめとした邪神達のデザインも、目を見張るほど素晴らしい。やたらホレました。
 他、死体なども容赦なくグロかったり、ホラーとしての見どころも満載です。

 ●「ケイオスシーカー」

 女子高生、星間 渚(ほしま なぎさ)はバトン部の競技会のさなか、地震によって天井から落ちてきた照明器具が直撃するところを、何者かに助けられた。
 家に帰れば、渚の家だけ揺れているという不可思議な地震が起きたりする。
 渚の家の周囲をはいかいする、謎の半魚人……。その半魚人と対する男。
 今、渚の周囲では何が起きているというのか……?

 感想>
 ちょっとしたヌードがあったり、化け物達がグログロの戦いをしたり。
 邪神ハストゥール(ハスター)が起こす魔風で、人間が骨をさらして死に絶える姿などもスゴイ。

 後半もまた盛り上がりまくります。邪神ハストゥールの復活を願う者達、それを阻止する者達。
 渚は何故、そんなものに巻き込まれなくてはならなかったのか?
 絵的にもストーリー的にも、見どころ満載ですね。ホラー度もかなり良好。

 ●邪神伝説シリーズA ダークマーメイド

 ●「ダーク・マーメイド」

 深見 礁(ふかみ しょう)は幼い頃、海でおぼれたところを、美しい女性に助けられた。
 10年ぶりにその地、祖父の家へとやって来る。祖父が死に、その家をゆずり受ける事になったのだ。
 夜中、目を覚ます。すると、家の近くに謎の女性がいた……。彼女は「帰って」と言い残し、去る。

 礁は、彼女が10年前に自分の命を助けてくれた女だと直感した。しかし10年経ったのだから、同じ姿でいるハズもない……。
 やがて家の蔵(くら)から古文書が見つかる。そこには、かつてこの村が飢饉(ききん)に見舞われた時、魚人が村を救った事などが書かれていた。

 感想>
 ストーリー的によくできている話だと思いました。
 過去、その村で起きた飢饉。それを救ったのが人ならざるもの。しかしそれを怒らせてしまい、村は毎年、いけにえを強要されるようになる。 
 そして謎の人魚の正体。主人公との関わり。
 行われる怪しい儀式。……どれをとっても、素晴らしい。

 まるで映画を観ているようでした。


「ダーク・マーメイド」より
美しい人魚……。
 ●「渚クライシス」「シンプル・ケース」「ポイント・オブ・カース」

 1巻登場の星間渚が活躍する3作。
 ケイオスシーカー(邪神復活を阻止するのが主な役割)の一員として、渚はチベットにて修行を受けている。ケイオスシーカーのケインに命を救われ、渚は今やケインにべったり、となっている。
 彼女は、風の邪神ハストゥールの精を受け、風使いの能力を手にしていた。

 >感想
 渚のヌードが出まくり。
 (動物の)ヤクの皮を突き破って出てくる「異界(ミ・ゴウ)のもの」のグロ登場シーンに感動。

 渚がバイアキー(またはバイアクヘー)を使い魔にしちゃったり、「銀の鍵」を主においた話が出てきたりと、神話ファンにとってなかなか楽しく読めるのではないか、と思います。

 そしてかの映画「スイートホーム」を思わせる「ポイント・オブ・〜」。TVスタッフ達が、怪異の起こる館にて次々と謎の死をとげていきます。
 容赦ないグロさ。そしてエンドのちょっとした心地良さ。

 でも渚がやりすぎなほど(空飛んだりやなんや)、超人化しちゃってますけどねー……。完全にサイキックマンガになっちゃいました。

 ●邪神伝説シリーズB ラスト・クリエイター

 ●「ラスト・クリエイター」

 宇宙から飛来した謎の物体……。それはとある田舎町に落ち、次々と人を殺していく。
 フリーライターの松井は、単独でその現場周囲の調査を行う。そして「本部」への連絡が必要だと判断を下した。
 松井はケイオスシーカーの駐在員としての顔も持つのだ。

 やって来たのは、ケインと渚。松井を含めて、現地の調査などを始める。

 感想>
 渚の髪型がコロコロ変わって楽しい。
 渚、銃で撃たれまくっても翌日にはケロリと回復……。そりゃないよと思いつつも、まぁ邪神たるハストゥールの精を受けたからには、そのぐらいになっちゃうのかなぁなどと思ったり。う〜む。

 最初は凶悪だった化け物が、実はネタバレぎみ: そうでもなかった……というのはちょっと不自然に感じました。何故か渚にはべったりでしたし。妙だなぁ、と。

 でも「古えのもの」を主においたマンガは、この世にこれ一作、ぐらいなものなんじゃないでしょうか。
 そう思えば、貴重かつ価値のあるマンガです。


1巻「ケイオスシーカー」より
容赦ないグロさ。それがこの作品の
魅力の一つ。
●総評

 残りの4、5巻の感想は控えておきます。どうしても書きたくなったら、追加書きするかもしれませんが。

 1〜3巻、クトゥルー神話の邪神達やら、色々なアイテムやらがわんさかと出て来て、楽しかったです。クトゥルー神話を知らなくても、ばくぜんと楽しめる出来にはなっていると思います。神話の入門書としても、いい感じかもしれません。

 主人公達が超人じみているのは、少々リアリティに欠けたように思えてしまいましたが、そういうSFモノなんだと思えば、面白く読める気がします。(そもそもの神話自体が、「太古」や「宇宙」を舞台にした壮大なものになっていますからね……)

 神話本来の「圧倒的な存在の邪神達を畏(おそ)れる」、という雰囲気があまり感じられないのは残念なんですが、そういう暗さやどろどろ感がない分、色々と派手なマンガになっていると思います。
 要は、「モダン(現代)ホラー」ではなく、「SFホラーマンガ」という感じになっているワケなんですね。
 でもこれはこれで独自性がありますし、しかもとっつきやすい(マニア向けではなく、一般向けな)気もします。

 このマンガでのホラー描写は、化け物のグロテスクさと、残酷に人が死ぬ描写、でしょうか。
 でも4巻では、精神的にめまぐるしい攻撃を受けたりもしますし、色々とホラー的に楽しませてくれるのは間違いないです。

 で。このマンガで一番言いたいのは、邪神達のデザインの凄さ。天才的だと思います。

 クトゥルー、ダゴン、シュブ・ニグラト、ヨグ・ソトホート、バイアキー、古えのもの……どれもこれも素晴らしすぎるほど、良く出来ています。
 これらの邪神群をしっかりとイメージ化してくれただけでも、このマンガは相当な価値があると思います。
 (3巻の巻末に「邪神名鑑」として、それらのデザイン画が解説と共にズラリと並んでいます)

 で。失礼ながら、個人的に、若干まだデザイン修復の余地があると思われるのが……、ツァトゥグァ(ちょっと迫力がない)とクトゥグァ(ロボットみたいに見えてしまう)。それ以外はほぼ文句ナシ、です。

 クトゥルー神話が今後なお、マンガ化やイラスト化されたとしても、この作品の邪神群をそうそう凌駕(りょうが)するデザインのものは出て来ないんじゃないか、と思います。それだけ、完璧で優れたデザインでした。


 魔王ダンテ ―― 永井 豪とダイナミックプロ

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★★

 (あらすじ: ヒマラヤ山脈の奥深くに、氷漬けにされた悪魔がいた。その名は「魔王ダンテ」。宇津木 涼はダンテに呼ばれ、超能力ではるかかなたのヒマラヤまで飛び、その封印を解いてしまう。2000年の時を経て、ダンテが今、蘇る。街を破壊し、人間どもを皆殺しにするダンテ。その行く先には何があるのか…)

 (一言: オリジナル版マンガ、リニューアル版マンガ、アニメ版と3通りの楽しみ方ができる「魔王ダンテ」。人間の顔を額に乗せた、ダンテの容貌がとにかく恐ろしい。街を破壊する怪獣モノという見方もできる。中盤から、神対悪魔の戦争物語と化す)

●いきさつ

 昔、永井豪さんのマンガを読み漁った時期があって、「魔王ダンテ」は知っていました。

 で。最近、アマゾンでアニメの検索などをしている内に、「魔王ダンテ」のアニメがある事を知り、興味が湧きました。
 さらに、「魔王ダンテ」のリニューアル版のマンガもあるようで。読んでみる事に。
 じゃあどうせならという事で、オリジナル版のマンガも。

●マンガ・オリジナル版

 オリジナルのマンガは、1971年に「週刊ぼくらマガジン」で連載を開始。しかし雑誌休刊のため、マンガは未完で終わったとされています。
 2002年発行の「オリジナル版」は、多少の追加描きのあるバージョン。全3巻。

 ●あらすじ

 宇津木 涼(うつぎ りょう)はヒマラヤ山脈の氷の中から現れる巨大な悪魔の夢を見続けていた。
 ある日。山岳部の仲間と山を登り、山小屋で休んでいた所、涼は誰かに強く呼ばれた。涼は己を見失い、悪天候の中、暴れ出すように外へ出る。
 そして仲間が見守る中、涼はガケから飛び降り…、そして消え去った。

 涼ははるかかなたのヒマラヤに飛んでいた。
 そこで氷漬けにされた悪魔、ダンテと出会う。命じられるままにその封を解くと、ダンテに食い殺されてしまった。
 しかし、宇津木 涼はダンテの脳を支配し、魔王ダンテそのものとなったのだ……。

 ●感想など

 約40年ほど前に描かれたマンガ(すげえ)……なので、絵はそれなりに古いです。
 その点は、個人的にはあまり問題ではないんですけど。むしろ見やすくていい。それに「迫力」も、今時のマンガに全く負けていません。背景もそれなりに細かく描かれていますし。

 で。こういうマンガを読むと、マンガはやはり絵ばかりではなく、「ストーリーが大事」だな、と改めて感じさせられます。
 逆に言えば、いくら絵が最高級に上手くても、ストーリーがダメなら面白く感じるハズもないので。

 魔王ダンテがこの世に復活し、2巻で街を派手に破壊、自衛隊と衝突したりします。怪獣映画のノリですね。
 そしてダンテを葬ろうとする巨大な悪魔「ゼノン」が現れる。(マンガ「デビルマン」のゼノンとは別物ですが、昔のアニメ版の「デビルマン」では魔将軍「ザンニン」として登場)

 3巻に入ると、かなり「デビルマン」色が出てきて楽しいです。このマンガが「デビルマン」の元になった、という話もあるみたいなので。
 (個人的に、「デビルマン」のマンガはかなり好きです。シレーヌ、ジンメンの辺りは最高に好きですね。敵も活き活きとしてますし。
 中盤以降、普通の人が悪魔に乗り移られていく様は、ホラーのショートストーリーのようで面白怖い)

 神対悪魔。「未完」と言われている通り、最後はぶつぎり状態で終わってしまっていますが、これはこれで。そんなに悪くない終わり方だと思います。


神々しい美しさ。
●マンガ・リニューアル版

 2002年「マガジンZ」誌にて連載。全4巻。アニメ版とほぼ同時期に描かれた模様。

 ●感想など

 1巻「神略編」を読んだ時「何じゃこりゃあ?」と思ってしまいました。
 オリジナル版とは似てもにつかぬ、未来?のSF話。

 主人公の名前がいきなりダンテ。19歳の天才科学者…って。え〜と。
 美人の助手の名はメドゥサ。オリジナル版でのメドッサは、涼に過去を見せる重要な役目でしたが、彼女は果たして?

 で。地上にいきなり「神」が降り立ち、人間を大虐殺。ビルが吹っ飛び、人間も砕け飛ぶ。さすがの迫力で迫ります。
 そこでダンテらは、ハイテク戦闘機で応戦。……ロボットもののノリです。メドゥサ号、サタン号などと続々とメカがご登場。……あわわ、こりゃ悪ノリしたマンガを見ているかのよう。もはや「何じゃこりゃあ?」としか言い様がない。
 絵は最高級にスゴイんですが、ストーリーがどうにも受け付けない……。
 ハイテク戦闘機で神と戦う……。悪くはないんですが……どうにも「ジャンルが違う」ような。

 で、神の攻撃を受けたダンテ。「きさまら神を滅ぼすまで死なん!」と、「気合い」で魔王としての姿に変貌。……人間死ぬ時、気合いでこうまで変身できるのなら、いいんですけどね……。(そういや、オリジナル版でもこんなシーンはありましたけど)

 絵的にもシナリオ的にも、色々とスゴイ事をやっているんですが……、メカだけはどうにも拒絶反応が……。
 この巻、「ダンテの誕生秘話」みたいな形で一応、完結していますね。

 2巻「現魔編」。1巻とはまた違った話。
 現代。ここでかの宇津木 涼が登場しますね。良かった。

 オリジナルにもアニメにも登場する名脇役、大柴壮介もご登場。活き活きしてます。彼は悪魔狩りの部隊、ガーディアン・ジャスティスの一員。

 人間の中に悪魔が潜んでいる「デビルマン」風味が楽しい。
 メドゥサのキャラデザもなかなか。人よりかなりでかい、というのも味があっていいです。

 この「現魔編」、面白いです。オリジナル版ほどのダイタンさはないのですが、リアリティをかなり追求している感じで、ノレますね。

 3巻以降はまだ読んでいないのですが、期待できそうな予感。

●アニメ版

 2002年製作のアニメ版。DVD全7巻。各巻2話収録。
 初回限定版には、各話シナリオのブックレットとTシャツが付属。各巻、定価8800円程度。(無論、僕は「アマゾン」にて中古バカ安値段(50円とか)で入手したんですが…)

 ●感想など

 はじめ見た時は、「清々しいヒーロー的なオープニング曲」に面食らいました。あまりにも「魔王ダンテ」のイメージに合わないなぁと。
 自分としては、もっと暗くて怖くて重苦しい曲にしてもらいたかった……。

 で。物語の出だしは、かなりオリジナル版マンガに忠実に進んでいきます。……と思いきや、リニューアル版も上手く取り入れているようで。こりゃあいい感じです。
 それにしても、主人公の父親がすげえ悪者のツラ、というのがめずらしい。

 そして主人公がひきこもり。その親が「外の空気を吸え、とバイク買ってやる」という甘えさせ方もスゴイ。
 このアニメ、「おっぱい」とか出てきます。まぁチョイチョイなんで、そんなに期待するレベルではないんですが。

 主人公が甘やかされすぎで(まぁ、まだ社会人でもないようなのでいいのか)へなへな感はありますが、物語はテンポよく進むし、なかなか面白いです。
 大筋は、オリジナル版とリニューアル版のマンガを足したような感じになっていますが……、先は読めませんね。アニメ版独特の展開もあったりしますし。

 ●

 それにしても「魔王ダンテ」という作品そのものがマニアックだと思うので、見る人をかなり選びそうなアニメだな、とは思います。
 さらに、アニメ版の主人公がどうも煮え切らない。感情移入がなかなかできません。マンガ版の方がまだ理解できたし、共感も得られた。
 元々「魔王ダンテ」がよほど好きでないと、見続けられないのではないか、と余計な心配までしてしまいます。

 で。エンディング曲は思わぬいい曲。ですが、心霊音のような妙な雑音(明らかに異音)が何箇所か入っているのは……何??

 2話目での、さおりをさらうサタニストの男のセリフ。オリジナル版からの引用。これは素晴らしいセンスです。
 何だかんだで、オリジナル版のマンガにやや忠実に沿ってくれているのが嬉しい。さじ加減も良好です。脚本はベテランの人(上原正三氏)みたいですので。

 全7巻もあるんですが、1巻に2話づつしか入っていない。1巻に4話くらいは入れて欲しかったですねー。
 でも「魔王ダンテ」というマニアックなマンガをアニメ化してくれたのは素直に嬉しいです。作画の方もなかなか良好かと。

 あ、そうそう。アニメの初回限定版には、1巻ごとに「Tシャツ」(Lサイズ・薄生地)が付いてきます。
 マンガの1シーンをプリントしたものなんですが、なかなかカッコイイです。でも着るのがもったいない……。
 そういやアニメの「デビルマンBOX」(原作とは別モノの古いアニメ)にも、Tシャツが付属してました。ダイナミックプロは、Tシャツが好きなんでしょうか……?


 ヒキ ―― 南国ばなな
 (全1巻/560円/新書館ウイングスコミックス/初版発行2008年)

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★★

 (あらすじ: 凛は荒地に置かれたタンスを引いた後、何を引いても化け物が出て来るようになってしまった。所構わず、容赦なくそれは出て来てしまう。次第に凛は精神的にまいってしまい、自室に引きこもる。もう、何も引きたくない……)

 (一言: 絵が最高級。色気あふれる男の絵にはやや抵抗ぎみ(個人的に)。でも化け物はしっかりとおぞましい。タイトル通りの恐怖話で、話がその1点に絞られて描かれてあるのがいい。後半はどんどん崩壊へと向かっていき、凄みある描写に圧倒されました)


左) 右)矢田
美少年すぎて、しかも唇の辺りが
色っぽい…

●あらすじ

 (りん:男)は自分の部屋内をあさっている。友人の矢田から借りたCDを返すためだ。
 しかしなかなか見つからない。矢田も手伝う。すると机の引き出しの奥から、古びた一枚の地図が出て来た。
 それは、凛の部屋の窓から見える光景が描かれていた。なおその一角に、意味ありげな「X」印が付けられてあったのだった。

 2人は早速、その場所に出かけてみる。
 途中、ジゾーという暗いクラスメイトと、姫子という女友達に出くわしながらも、目的地に着く。
 鉄柵を越えた先の、雑草が生い茂る荒地。……そこに、古びたタンスが置かれてあった。

 引き出しが5段ついた、大きなタンス。
 凛は中を一つひとつ調べていくが、中には何も入っていない。しかし、引き出しの奥に手を伸ばしたら、指に長い髪の毛がからまってきた。

 次第に雨が降り出してくる。凛はもう一度、タンスの引き出しを引いていく。きっと、奥に何かある。そうして一番下の引き出しを引き出してみようとしたが、今度はなかなか開かない。
 やっと開いた……。と思った途端、何かが頭の中に湧いて出た。
 それは幼い少女の記憶だった……。この子は誰だ……?

 「凛ってば!」
 そう姫子に言われて気づいてみると、開けたと思った引き出しは閉まったまま。
 何が起きたんだろう……。そこで雨は本降りになってきて、皆はそこから退散した。

 家に帰ってみると、部屋のタンスの一番下の引き出しの中が、何故かびしょ濡れになっていた。
 そうこうしている内に、ケータイに姫子からのメールが届く。返信を打ち込んでいると、画面に出てくる「お兄ちゃん」の文字。それは溢れんばかりに繰り返される……。
 すると、タンスの引き出しから細長い腕が伸びてきた!

 足を掴まれるが、凛は必死で抵抗する。すると今度は、別の引き出しからまた腕が伸びてきた! それが凛の下あごを掴む。歯を折られそうだ! 噛みちぎって、何とか引き剥がす。
 そして凛は見た。開け放たれたタンスの引き出しいっぱいに広がる、巨大な化け物女の顔を……。

 それ以来、凛は何かを「引く」度に、小さな少女――化け物が出てくるようになってしまったのだ!

●感想など

 マンガの主人公がイケメン、というのはよくあります。でもこのマンガはさらに「色っぽさ」が追加されてます。その辺、男の僕から見れば拒絶に近い反応を示してしまいました。……まぁ慣れればどうって事はなくなったんですが。
 (掲示板にて、とろろさんからいただいた情報によれば、「ウイングス」という雑誌は「女性誌」との事)。

 人物、背景ともに最高級の絵。見やすくてなお美しい。幼い少女は愛らしく、そして化け物はしっかりとおぞましい。

 早い段階からホラー的な描写が出てきて、それ以降ラストまで、ホラー描写はどんどんエスカレートしていきます。
 日常の光景を汚す、化け物の描き方が非常に上手いです。凛の抵抗の仕方もなかなかリアル。化け物が出てくるタンスの引き出しを、足で押し返したり。歯を折られそうになるところなども、見ていて痛々しい。
 逃げてもムダ。学校に行っても、悪夢は容赦なく続く。凛が何かを引く度に、それは所構わず出て来てしまう……。

 そして凛は、自分の両手を粘着テープで封じた状態で、自宅の自室に引きこもる。もう、何も引きたくない……。凛の父親も、凛を救ってはやれない。
 友人の矢田や姫子らが、凛を何とか助けようとする。だが果たして、彼らに凛は救えるのか……?

 後半の壊れっぷりもなかなか見事。人物どころか、物語そのものも壊れていってしまう。しっかりとしたホラー描写で、実に気持ちよく、魅せてくれます。
 「ヒキ」という簡潔なタイトルも実にいいです。
 ネタバレ:不思議と人があまり死ななかったですねそれでも充分に、ホラー度は高かったと思います。


 チキタ★GUGU ―― TONO
 (全8巻/朝日ソノラマ/平成12年 第1巻初版発行(全巻、新版もあり))
 (情報提供:モカさん)

 ホラー度:★★★☆☆(人食いとか惨殺とか結構グロいんですが、絵柄がかわい過ぎるので怖くはない)
 面白さ :★★★★(ホラー的ではなく、物語としての評価)

 (一言: チキタは人食いの妖怪ラーに飼育されている。100年かければ、チキタは美味になるのだという。ラーがどうして生まれたのかなどの謎を引きずりつつ、話は様々なキャラを交えて膨らんでいく。人食いや惨殺などを可愛い絵柄で軽く流している。キャラ同士の心の触れ合いがメインか。結構、胸に来ます。でも見た目のホラー度は低め。絵はかなりラフ画っぽいところがある)

●いきさつ

 ウチの掲示板にて、モカさんより情報をいただきました。

 初めまして  投稿者:モカ  投稿日:2010年01月23日

 初めまして。モカと申します。いつもホラー漫画・小説レビューを参考にさせて頂き、楽しく読ませて頂いております。
 そこで、私からもお薦めの漫画を紹介させて頂いてもよろしいでしょうか。

 TONO「チキタ★GuGu」
 不味い人間は百年飼育すると美味になるという噂を聞いて、人食い妖怪が不味い人間である主人公を百年飼育するというストーリーの漫画です。
 ネムキというホラーマンガ雑誌で連載されていたのですが、作者の死生観や幽霊観が独特で凄いです。おそらくこの作者にしか描けない内容だと思います。
 内容が内容なので多少グロめな描写やスプラッターなシーンもあり、さっきまで会話していた人があっさり死んだりします。
 シンプルでフワフワした絵柄からは想像できないような、あまりにも業の深いストーリー展開で人間の怖さや醜さ、美しさ、悲しさを表現している作品です。唯一無二の独特な漫画だと思います。
 ただ掲載誌がマイナーなため、本屋ではあまり見かけないと思われます。私も少々アマゾンに頼りました。
 本当に素晴らしい作品なので、ぜひ一度手に取って見て頂きたいです。
 
 ……との事。ご紹介、どうもありがとうございました。(情報をいただいてから5ヶ月ほど経ってのレビュー…、で申し訳ないんですが)

●あらすじ&レビュー


チキタ・グーグー
両親を殺したラーとの奇妙な同居
生活をする。


ラー・ラム・デラル
何にでも変身できる妖怪。
くそまずいチキタを100年飼育して、
美味になったら食うつもりでいる。
 ●あらすじ

 チキタは、村でも名高いグーグー家の生き残り。村に化け物が現れると、「何とかしてくれないか」と村人が相談に来る。でもチキタはまだ子供なので、何もできない。
 チキタはラー・ラム・デラルという妖怪と暮らしている。ラーは何にでも変身できる。そして人食いの妖怪だ。
 なお、ラーはチキタにとっては親の仇(かたき)だった。自分が赤子の頃、親家族を食われたのだ。
 しかし、チキタはラーを「仇」などとは思っていない。憎んですらいない。それは物心つかない時に起きた事件だったから、ピンと来ないのか?
 チキタは言う。「だって毎日牛や豚食ったって、牛や豚から仇討ちなんてされたことないし…」

 妖怪であるラーは、チキタもいずれ食うつもりでいる。しかし今のチキタは物凄くまずい。涙一滴なめっただけで、相当苦しむほどのまずさなのだ。
 しかしそんなまずい人間こそ、100年かけて飼育すれば、美味になるのだという。だからラーはチキタを、100年飼育してみる事にしたのだった。

 以後、チキタとラーはいいコンビ?となり、村で起きている様々な妖怪騒ぎを解決していきます。
 ラーが殺してしまった女にはニッケルという子供がいて、その子に付け狙われるようになったり、オルグという大妖怪を杖としてたずさえたクリッという少年なども、メインキャラとして物語に深く関わっていきますね。
 物語の舞台は、昔の中国っぽい感じ。でも妖怪とかたくさん出て来ます。

 2巻ではクリップの正体や過去などが描かれる。クリップって、いらないキャラかなぁ?と最初は思ったんですが(チキタとラーのコンビを壊してしまいそうで)、いえいえ、とんでもない事になってますね。この物語そのもののラストを、幾分か暗示させるほどの重要なキャラとして、描かれている模様。

 3巻でもまた新たなキャラが増えたりで、色んなキャラ同士の関わり合いになっていきますね。ラーに母親を殺された子供、ニッケル。彼(彼女)もいつの間にかチキタ達の仲間になっていたりで。ムゴイ目にあったりした彼女なんですが……、3巻の終わり頃にはそのムゴさもいくらかは和らいでいきますね。
 (この作者さん。始めに大まかな形を描いて見せて、後で細かな話として見せる、という方式を何度かとっているような気がします。話の広げ方、深め方が上手いですね)

 ●物語の柱はどうなっていくのか?

 柱である(ハズの)チキタとラーの100年飼育話はどうなっていくのか? 2〜3巻では別の事件などが起こり過ぎて、その色合いがやや消えかけていますが、その後の盛り返しなどに注目してみたいと思います。
 ラストを色々と想像してみるのも面白いですね。やっぱりハートフル(幸せいっぱい)な話になっちゃうんでしょうか……?

 ラーの1巻でのトゲトゲしさはもう、2〜3巻の時点ですっかりと消え去ってしまっていますし……。分かり合うのが少し早すぎる気もしますが、その分、未知の展開などに期待できそうです。(つまり、お互いに分かり合ってエンド、ではないという事。さらにその向こう、が期待できる)

 面白いです。大体にして、このような物語を他で見た事はありませんし。ほんと、オリジナリティに溢れていると思います。
 価値のある、マンガでした。
 ホラーとしては、ちょっと弱めですけどね。絵が可愛すぎるものですから。せっかくのバケモノなども可愛い姿だし、せっかくのムザンな流血シーンもラフ画みたいにササッと描かれたのでは、ホラー的には高い評価はできかねるので。
 でも、怖いハズのシーンをアッサリと流す、というのは、なかなか変わった持ち味だと思います。怖い話が好きだけど、グロいのはイヤだという人でも、このマンガなら楽しく読めそうです。

 もし、気合いの入ったアニメ化などがされたりしたら、結構グロ怖くなりそうですけどね。色々と可能性を感じるマンガでした。


 エコエコアザラク ―― 古賀新一
 (単行本:全19巻/秋田書店/1976年初版発行)

 ホラー度:★★★★(一般ウケする程度に抑えた、絶妙なさじ加減。★5ばかりが最高点じゃない)
 面白さ :★★★★

 (一言: 黒井ミサは悪魔に魂を売り、黒魔術を操る。時に誰かに報復し、時に誰かの助けとなる。学園ものオカルトホラーの金字塔。続きものではなく、1話ごとの読みきり)

●概要など

 悪魔と契約し、黒魔術を使う謎の少女、黒井ミサ。
 TVドラマ化に加え、何度も映画化された、人気作。オカルトマンガの金字塔、と言えるでしょうね。

 単行本は(実に30年以上前の)昭和51年に初版が発行され、平成9年には39版を迎えるという長寿ぶり(現在はもっと版を重ねているでしょう)。他にも文庫版など、色々な種類が出ていますね。
 「エコエコアザラクU」も出ていますね。

 余談ですが、僕は古賀さんが描いた、ミサの色紙を持っています(雑誌の懸賞で当たったという)。宝物ですね。
 日付は2000年3月29日。絵入りのサイン色紙なので、かなり貴重なんじゃないかなぁ〜と。

●レビュー

 改めて、3巻まで読んでみました。

 原作での黒井ミサは中学生なんですね。
 基本的に、ミサは悪魔めいた恐ろしい女なんですが、日常ではかなりの茶目っぷりを披露しています。恐ろしい顔と優しい顔の、完全な二面性をもっていますね。

 1つの巻に10編ほどの短編が収められてあり、だいたいどの話も、ミサが黒魔術を使って悪人をこらしめる、という感じの話になっています。
 誰かにひどい目にあわされ、ミサは黒魔術を使って報復に出る。はたまた、誰かの頼みを聞いてやり黒魔術で解決する。などなど。

 でも魔太郎(藤子不二雄A作)みたいに、ジメジメとはしていないんですね。恐ろしい復讐をした後、ミサは快活に笑う。話自体は恐ろしいんですが、結構ドライな印象を受けます。

 そして復讐の後、ミサは「エコエコアザラク、エコエコザメラク」とつぶやきながら去っていく。
 マンガの最後のコマの9割方が、それで統一されているのが面白いです。

●いくつかの話を紹介

 ●「恐怖の黒魔術」(1巻)
 
 第1話。単行本でのルビは「こくまじゅつ」。(後出の別版では「くろまじゅつ」となっていたり)

 町外れのひと気のない暗いトンネルの中、占い師がいた。彼女は黒井ミサ。呼び止められた少年には、悩みがあった。
 一度は気味悪がって逃げてしまうが、少年は決意を新たに、その占い師の元へ。
 少年は成績が悪くて親にしかられてばかりだった。なお、出来のいい兄と比べられて、それがコンプレックスになっていたのだった。
 ミサは少年にワラ人形を渡す。少年は言われた通りに、そのワラ人形の頭にクギを打ちつけ、叫ぶのだった。「エコエコアザラク、エコエコザメラク」と……。
 すると少年は途端に成績が上がり、クラスでも人気者になっていく。
 しかし、代わりに少年の兄が重病におかされてしまうのだった……。

 >第1話から、見事な完成度。「人を呪えば穴2つ」「約束を破った時の崩壊」などを描き、納得させられる話になっています。
 そして魔術への畏怖(いふ)、というものを感じさせてくれるものでした。

 ●「踊る変身術」(1巻)
 
 ミサは、スケバングループに狙われていた。ミサが魔女である、という話を飲み屋で知ったからだった。
 ミサをハダカにひんむき、勢いでハダカ踊りをさせる。ミサは従うが、それが異様な踊りに変わっていき……。

 >ちょっとエロが入るのがいい。しかもラストへ向けての異様さは圧巻。うならせてくれます。

 なお、ミサは全編に渡り、転校を繰り返しています。
 人を殺しまくっているので、1つの場に留まれないんでしょうね。

 ●「ミサのいけにえ術」(2巻)

 矢森は自分の可愛さが自慢だった。しかし転校してきた黒井ミサの可愛さに、嫉妬(しっと)する。
 そんなある日、矢森は顔にケガをしてしまう。そしてミサに向けられる嫉妬の炎……。

 ミサは学校に持って来た自前の化粧水で肌の手入れをした途端、顔が焼けただれてしまう。
 化粧水の中に、劇薬が入っていたのだ。
 そしてミサは報復に出る。顔は女の命なのだ……。傷つけた者は、決して許さない。

 >古賀先生自身が気に入っている、という1作。これもまた、見事な出来ですね。
 出だしが「矢森の母が娘を捜しに学校に来て、話をミサに聞かされる」という感じになっているのですが、ラストでちょっとした衝撃があるのが上手いです。過去話かと思いきや、実は、それは今まさに行われようとしていたのだ……。

●総評

 各話、様々な趣向(しゅこう)をこらしてあり、どの話も面白いです。たまに軽く流したりする話があったりしますが、それはそれで。重苦しく、恐ろしくて、ガチガチに練りこまれた名作ぞろい…というのも何だか読んでいて疲れそうですし。バランスはいいと思います。名作はたまに来るからこそ、光るんですね。
 そして肝心の恐怖度も、「見事」としか言い様がない。尊敬に値する、というばかり。

 黒井ミサの可愛さ。恐ろしい黒魔術。
 黒魔術を使って恐ろしい報復をするばかりではなく、時にミサ自らが悪魔そのものとなり、驚かせてくれたりもします。
 なお、ミサは黒魔術のおそろしさを知らしめるために、必要でない殺しも平然と行ったりします。その辺の鬼畜さもまた、ミサの魅力の1つなのかもしれません。
 ほんと、底の知れない少女です。

 魅力あふれる、マンガですね。


 少女椿 ―― 丸尾末広
 (全1巻/改訂版 2003年初版:1300円/青林工藝社)
 (情報提供:ノアさん)

 ホラー度:★★★☆☆
 面白さ :★★★★
 独創性 :★★★★★(完全なる独創性に感服)


 (一言: 昔、奇怪な人間達に芸をさせ、見世物とする小屋があった。そんな見世物小屋を舞台に、少女みどりは見世物である「ばけもの」達の世話におわれる。そんなある時、ガラス瓶に入り込むという秀でた芸を持つ、ワンダー正光という小男が現れる。みどりは彼に惹かれ、また正光もみどりを愛した)

●いきさつ

 ウチの掲示板にて、ノアさんよりご紹介いただきました。

 児童ポルノと表現  投稿者:ノア  投稿日:2009年06月29日

 主にネットで話題ですが、与野党で児童ポルノの規制強化に関して審議がなされていますね。
 実在する児童を守るという基本理念に立脚した法案らしいですが、実在しない架空の子供(に見える女性キャラ)を描く二次元や映画等に規制がかかるとなると、自分としては面白くないです。
 何か利権とフェミの香がします。
 (中略)
 エロとグロと耽美さが素晴らしいホラーで言えば、「少女椿」なんて漫画本(映画も)もありますが、与党案が通れば普通に発禁になるでしょうね。少女のレイプ描写もありますし。
 もしご存知ありませんでしたら一度手に取って見て頂きたい一品です。
 (後略)

 ……との事。youtubeにて、少女椿のアニメを少し見てみたんですが、なかなかな異界、という感じがしました。落ち着いた雰囲気。表情なども恐ろしい。残念ながら僕のPCではマシンパワーが足りず、まともには見れなかったんですが。(いつのPCなんだか…すいません)
 アニメDVDを探してみたのですが入手は難しいようなので、原作のマンガ本を読んでみました。


主人公、みどり
不幸まみれだが、したたかな強さ
を持つ
●あらすじ、感想など

 表紙からもう、かなり魅力的。
 ページをめくれば、そこはもう昭和か大正か。繊細に描かれた異様な世界がそこにあります。

 天涯孤独となった少女、みどり。みどりは見世物小屋のおじさんに拾われて、小屋の一員に。
 そこでは蛇を操る蛇女や、刀を飲み込む大男、両腕がなく全身を包帯に包まれた男などがいた。
 みどりは血を嫌い、見世物の演技もロクにできず、皆の世話係をやっていた。

 そんな時、その小屋にワンダー正光と名乗る中年の小男がやってくる。彼は、口が手首ほどしかない大きなガラスびんの中に入り込む、という奇怪な芸をやってみせた。
 その芸はたちまち話題となり、その見世物小屋には連日、客が詰めかけるようになった。
 だがある日、正光は客の罵声(ばせい)で冷静さを失い、客を巻き込んでの大騒動を起こしてしまう。正光はビンに入り込めるだけではなく、間達を奇怪にねじまげていったのだった……。


ワンダー正光


繊細な絵柄ゆえ、恐怖度も鋭い。
みどりの表情がたまりません
 ●

 コマの一つひとつが丁寧に描かれ、かなりの好印象。しかも絵柄が今時のものとは大きくかけ離れていて、一見、古くささを感じるものの、そのレトロ感覚が味わい深い。
 独創性(オリジナリティ)に優れています。かなり。

 で。たった2ページですが、悪夢の最中に絵柄をすっかり変えて(昔の楳図かずお風に)描いてしまっている、というおチャメさなどもご披露。

 「見世物小屋」という異常な場を描いているのに、その日常にかなり焦点をあてているせいか、不思議と怖く暗くはならない。ほんと「日常的」という感じなんですね。うどんを長シャリと言ったり。楽しいですね。
 時折見せる鋭い怖さはありますが、あまり引きずりません。
 怖いというよりは「怪奇」。そして「異様」という感じでしょうか。ノアさんが言うように、「耽美」という表現もいいですね。

 みどりが、見世物小屋の腕のない男に夜這いをかけられるシーンなどもありますが、描き方に軽い笑いを含めてあり(男がみどりをガキだと馬鹿にしたような歌を歌う)、暗くならなかったり。現代人の感覚とは、大きくかけ離れた描き方をされているような気がします。(レイプなどを描けば、普通はエロか暗くなるところが、そのどちらにも転ばない
 ほんと、独創的な天才、という感じがします。絵柄だけではなく、中身そのものも丸尾氏独特。惚れましたね。

 ラストも、ネタバレ: 何だかめちゃくちゃになってしまうところも非凡だな、と。
 オチがどうのこうのじゃなく、一つの作品として、心ゆくまで古き良き時代を堪能できました。

 見世物小屋って、もっと暗い雰囲気でしか描けないものだと思っていましたが、そうでもないんですね。彼らは一見バケモノでありながらも、やはり人間。したたかなユーモアさをたたえていて、彼らの強さというものも感じられました。時代のせいもあるでしょうけど。
 (そういうものを舞台にしているせいで、色々と規制がかかる作品である気はします)

 面白く、価値ある作品だな、と思いました。こういう作品に出会えると胸がスッとしますね。完全なる、異世界でした。でも理解できる範囲内の異世界だからこそ、心地よい。
 ノアさん、ご紹介どうもありがとうございました。いい世界を見せていただきました。


 赤い蛇 ―― 日野日出志(ひのひでし)
 (全1巻/1100円/青林堂/再刊版2000年8月発刊/1983年作)

 ホラー度:★★★★★
 面白さ :★★★★

  (一言あらすじ: 広大な旧家。ぼくはものごころついた時から逃げ出そうとしてきたのに、絶対に敷地の外には出られなかった。家の中には狂った家族達がいる。祖父が恐れる「あかずの間」を夢で見た時、不吉の前兆とされる「赤い蛇」が現れた。それから家族はさらに狂っていき、やがて…)

●いきさつ

 とある古本屋で何か怖い本はないかと探していたところ、日野日出志さんの作品がいくつかまとまって置いてあったので、手にとってみました。
 「赤い蛇」。なかなか面白そう。で、価格を見て驚きました。何と! 4700円じゃあないですか。
 ……で、本の実際の定価は1100円。あぁ、プレミアがついていたとは……。

 さすがに4700円では買う気になれず、もう少し安い本はないかと探してみたところ、「地獄変」「赤い蛇」「地獄の子守唄」など……なかなかそろってはいたんですが、そのほとんどすべてが、そろいもそろって4700円ほどで売られていたという……。単行本までもが。

 で。全国的にそんなにプレミアがついているのか?と思い、やや焦って通販サイトの「アマゾン」で探ってみたところ……実はそうでもなく、「赤い蛇」をあっさり500円程度で入手する事ができました(送料は別ですが)。

 でも、日野日出志作品は今後ますます入手しにくくなると思いますので、興味のある方はお早めに。



●あらすじ

 まだ子供である「ぼく」。ぼくは、広い旧家に住んでいる。
 しかし、ただ広いと言ってもそれは想像を絶するものだ。太い木々の森に覆われた屋敷は、そこから抜け出す事ができないくらいに、広いのだ。
 ぼくはその自分の家が、一種の迷宮なのではないか、と思っている。

 ぼくはその家から抜け出したい。
 それと言うのも……家族がみんな、どこかおかしいからだ。

 屋敷内にある鏡の向こう。そこにあるという「あかずの間」を恐れ、ぼくをおどかしてくる、ほほに大きなコブのある祖父。
 気味の悪い虫を大量に飼って、それをニワトリ達のエサとし、卵を産めなくなったニワトリをむざんに殺す、父。
 自分をニワトリだと信じている、狂った祖母。
 美しいが、祖父のコブのウミを毎朝楽しそうにひねり出す、母。
 父の飼っている気味悪い虫どもと好んでたわむれる、姉。

 ぼくは家も怖いし、家族も怖い。でも、どうあがいても逃げ出せない……。
 そんなある晩、ぼくが「あかずの間」の夢を見た時、不吉の前兆とされる「赤い蛇」が現れた。
 その赤い蛇が現れてから、家族みんながより一層、狂い出していくのだった……。


ただひたすらに恐ろしい…
●感想

 日野日出志さん独特の絵が、まず圧倒的。
 デフォルメタッチで見やすい絵柄。怖い顔や化け物などもデフォルメで描かれているのに……でも、怖い。
 スクリーントーンをほとんど使わず(わずかに姉の着物に貼っているだけ)、ベタ(黒)や細線で仕上げた絵は、凄みを帯びており芸術的ですらあります。

 全編クライマックス、とでもいうようないさぎよい恐怖っぷり。余計なものはほとんどありません。
 一難去ってまた一難。続けざまに惨事が繰り広げられていき、読み終えるまで悪夢は終わりません。

 そして日野日出志作品は日常を描いてあるとしても、どこか異世界的。
 例えば、母親が顔にひどい怪我を負って、病院にでも行くハズのところが……、全くそんなそぶりを見せず、家から出ません。まして妊娠(にんしん)までしているというのに。「ぼく」どころか実は、家族の誰もが家の外に出られないのか……?

 通常の感覚では描かれない(病院警察その他の存在を無視)からこそ、日野日出志作品はどんどん異様にひん曲がっていき、救いようのない悪夢を見せてくれるのかなぁ、と思ったり。

 一言で言えば、「恐ろしい夢」をそのまま描いたような作品、でしょうか。

 この作品で2点、おおいに感心したところがあるんですが、
 生まれ出たバケモノ赤ちゃんの容姿と、姉のなれの果て。おぉ、ここでこれが出てくるとは!とホラー的に感激してしまいました。ほんと盛り上がりますね。

 恐怖描写は一級品。素晴らしい。プレミアが付くのも理解できます。
 「これこそ、本当の恐怖マンガ!」とでも言うべき作品、だと思います。


 ライチ光クラブ ―― 作画 古屋兎丸(ふるや うさまる)/原作 東京グランギニョル
 (全1巻/1280円/太田出版/2006年第1刷)
 (情報提供:DDさん)

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★★

 (あらすじ: 広大な廃工場の一室で、中学生の少年達9人は「光クラブ」という独自の秘密機関を結成していた。そうして造り上げた「ライチ」という長身のロボット。彼に美しい少女を捕獲させ、女神として祭り上げる。しかしリーダー格である「ゼラ」は仲間に対し、じょじょに疑心を抱いていく。裏切り者を処罰していく中、彼らは破滅へと向かっていく…)

 (一言: 繊細美麗な絵が特徴。原作は舞台劇。このマンガも(舞台劇のように)限られた場で進んでいき、その閉塞的な雰囲気がいい。捕らわれた少女と機械であるライチの純粋な恋物語に癒される。後半はいきすぎたグロのオンパレードながらも、美しい描写が散りばめてあるのが救い。全体的に綺麗にまとまっています)

●いきさつ

 ウチの掲示板にて、DDさんよりご紹介いただきました。

 ホラー検証の依頼  投稿者:DD  投稿日:2009年10月20日

 どうもどうも。
 以前からお勧めだったものの、どこへ行っても手に入らなかったとある漫画をようやく見つけ、一通り目を通したので改めてお知らせしたいと思います。
 小生の自宅のすぐ近くの古本屋にてようやく見つけた大判漫画(定価千二百円だそうです。漫画喫茶にあるかな?)古屋兎丸画「ライチ☆光クラブ」。原作はかつてカルト的作品の最高峰とされた劇団「東京グランギニョル」の同名劇で、要約すれば「少年が大人に変わる瞬間に芽生える性の意識や願望、そして破壊衝動を耽美に閉じ込めた、一つの芸術品のような作品」といったところですかね。なにぶん文章纏めるのが苦手なもので、読んでから「お前大して凄くなかったぞ」といわれてしまうかもですが・・・・・
 実際手に取ると、なかなかの分厚さに驚きますがほとんど勢いに飲まれて読みきってしまうと思います。ただ、もうエログロドンと来いで息つくまもなくあっさりと人が死ぬ描写が続き、少年どうしのあれやこれやも少なからずあるのと、いかんせん今の少年誌などではまず見ることの無い耽美的タッチな絵が満載なので少々胸焼けするかもしれません。(本当に個人的な観想を言うならば、終盤に唐突な流れがありそこからのオチが弱い。漫画オリジナルのエピソードが入っているので、そのためか?)
 自分としては凄く好きな本なので、ぜひ一度と言わずじっくり読んでから検証に入って欲しいと思います。ホラー度も、話を理解してから改めてじわじわ来る感じなので、余韻を味わいつつ何度か読むのがお勧めかと思います。(タミヤはかっこいいぞー!)
 表紙もまさに劇場で配られるパンフレットのような非常に凝ったつくりになっており、イラスト集としても楽しめるかと思います。(アマゾンで中古の在庫がいくつかあるのは確認しました。古本屋で探すなら、たぶん棚の上のほうに追いやられているかと・・・・)
 出来るだけ予備知識は無いほうが入り込めるので、極力話の内容を省いて紹介させていただきましたが・・・なんかとんでもなく長文になってしまいました。大体分かっていただけましたでしょうか?
 それでは、何卒よろしくお願いいたします。 

 との事。紹介じゃなく依頼、というのが何だか楽しい。使命感?みたいなものに燃えます。
 早速アマゾンで取り寄せ、読んでみました。


光クラブの面々


ゼラ
裏切り者は決して許さない
●あらすじ

 夜。広い廃工場の敷地内。学生服姿の少年達が、異様な言葉を掛け合いながら、何者かを追っている。
 そしてとうとう1人の少年を捕らえた。少年の四肢をロープで縛りあげ、頭には袋を被せ、7人の少年がそれを囲む。
 廃工場内の一室。そこは彼らの秘密基地となっていた。
 その中、王座とおぼしき壇上にもう1人、チェス盤を前にして、眼鏡の少年が座っている。
 ――ゼラ。彼は統率者であり、その場では絶対の権力を有しているのだった。

 彼らの秘密基地を覗き見た少年は、制裁を加えられる。目を潰され、捨てられる。
 そんな中、今度は大人の女が捕らえてきた。それは学校での彼らをよく知る、女教師だった。
 彼女にも制裁が加えられる。裸にひんむかれ、その腹にナイフを突き立てられ、そして内臓を……

 ●

 光クラブ。彼ら9人は、その廃工場でロボットを造り上げていた。
 ロボットの名は――「ライチ」。ライチの実を燃料とするその長身のロボットは、見事に目覚め、動き出した。
 彼らはライチに、美しい少女の捕獲を命じた。

 街へ出て、捕獲を実行するライチ。しかし「美しい少女」というものが、生まれたばかりの稚拙(ちせつ)な脳ではなかなか理解できず、まるで別のものばかりを捕獲してくる。
 皆があきらめかけていたその時。ついにライチは、美しい少女を捕獲して戻って来た。

 その少女を玉座にすえ、彼ら光クラブは次なる目的へ向けて、躍進(やくしん)しようとする。
 だが、その少女を性的な対象として、汚した仲間を処刑し始めてから、光クラブの結束は狂い出していく……。


光クラブに捕らえられた少女カノン
●感想など

 繊細で美しい絵。コマの隅々まで、細線で丁寧に描かれた絵は、迫力とリアリティに満ちています。
 極力、スクリーントーンを使わない手法も、絵の芸術性を高めるのに一役買っていると思われます。(細線の集合体で明暗の境を現しているため、古き良き時代の絵を彷彿(ほうふつ)とさせる)

 原作が舞台劇、という変り種である事からも、このマンガはかなり独創的。
 物語はほとんど、廃工場内の一室で進んでいき、見える世界は閉塞(へいそく)的。なのに飽きずに読ませる手腕は、見事なものだと思います。

 物語の中心となるのが、光クラブのリーダーである「ゼラ」。そして彼らが造り上げたロボット「ライチ」。そして捕獲された少女「カノン」。
 光クラブのメンバーは9人もいるんですが、3〜4人は要らなかったんじゃないかと思ったり。何人かキャラが被ったりもしてますし。

 で。光クラブに裏切り者が出た事から、ゼラはどんどん仲間への疑心暗鬼にとらわれていきます。それが物語の大きな柱にもなっている模様。
 男同士のエロ描写もあるんですが、それが異様さに華をそえています。男同士の恋愛感情は……まぁ好みの問題もあるんでしょうけど、個人的にはリアリティを感じないんですけどね。いかにも物語的だなぁ、と。でもそれはそれで。

 あと、光クラブの女神となった少女カノンを、最後まで少しも汚さずに描いたのが印象的でした。
 狂気と崩壊の世界の中で、こういう丁寧な扱いをしきった事で、彼女がより美しい存在として、胸に残った気がします。
 今時の、活発さなどがウリ?のヒロインなどとは、一味も二味も違う。ライチを怖がらない時点で、何となく頭が弱そうな感じもしますが、時折いい動きを見せ、後半でのライチの実をうんぬん、のひとコマは際立っていいシーンだったんじゃないか、と思われます。

 ●

 後半の動と静の描写は、どちらも圧巻。直接的なホラー描写(グロ)も多いです。
 基本的に、ライチの顔を見ているだけでも充分に怖いんですが……、かなりやりすぎな殺し方が多く、「そこまでしなくても……」と思ってしまったり。


ロボット、ライチ
劇中、表情はほとんど変わらない
 物語のリアリティを考えれば、こんなロボットを少年達が造れるハズがない、という時点で崩れてしまいます。
 それに、ライチに対する少女カノンの異様な反応(順応しすぎる)にも、無理があるような気がします。……ですがそれが逆に、(まるで演劇のような)異様な世界を描くのに一役買っているような気もします。

 基本的には、廃工場の一室を舞台としたかなり閉塞的な世界なのに、何度読んでも飽きないし、また何度でも楽しませてくれるマンガだと思います。
 ホラー度もなかなか良好でした。描写の力による面が、大きいような気もしますけど。

 個人的には、ゼラが崩壊に向かって行く所や、彼をおとしいれた犯人が誰なのかとか、その辺はあまり胸にきませんでした。犯行の理由がちょっと、いかにも物語的、という感じもしましたし。

 ライチのロボットらしさは、見ていて楽しかったです。ロボット視点でのドット絵とか、それが進化していくところとか、なかなか凝った描写にも感心しました。
 何と言っても、全体的に独創的なマンガだったと思います。

 DDさん。貴重な情報、どうもありがとうございました。楽しませていただきました。


 エルフェンリート ―― 岡本倫
 (全12巻/ヤンジャンコミックス/本体505円)

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★★

 (冒頭あらすじ: 大学生のコウタとユカは、浜辺で少女を拾った。年は15歳くらいなのに「にゅう」としかしゃべれず、一人でトイレにも行けないほどの知恵遅れだった。しかもツノがある。そのにゅうを殺そうとする謎の軍人達。コウタ達は危険なものに巻き込まれていきながらも、その少女をかくまい、家族のように暮らそうとする。しかし彼女の正体は「ディクロニウス」という危険極まりない、人間の突然変異体だったのだ…)

 (一言: ご都合的ハーレム状態ながらも、キャラ達の関わりあいが楽しい。一瞬で血しぶき、という派手な殺し方がホラー的なメイン。ホラーとエロ(+萌え)が全編にうまく散りばめられている。だがヒロインの顔が皆同じで、ルーシー(にゅうの元人格)の顔はずっと不安定ぎみ。脇役ナナの活躍は素晴らしい。物語後半、軍や研究施設などがからみすぎて、変に小難しくなる。死んだハズの者がまさか生きていた、というのがややパターン化。ユカとコウタのエロ(4巻)が、中途半端で投げ出されたのは無念すぎ…。ノゾミの存在意味なし)

 ※かなりハマッたので、書きたい事ありすぎでした。


研究所から脱走の際、化け物である
ルーシーは警備員らを皆殺しにする。
●いきさつ

 「トラウマアニメ」として、「呪怨サイコ画像」というコンビニ本で紹介されていた、「エルフェンリート」。
 単なるグロアニメだとしても、観てみたい。そう思っていたら、古本屋でマンガを見つけ、読んでみました。

●感想など (ややネタバレぎみ)

 出だしが最高にいい。物々しい研究施設から逃げ出す、謎の怪物。それは奇怪な仮面を被った裸の女。しかしその殺傷能力は凄まじい。
 「ベクター」と呼ばれる無数の「手」で、周囲の人間達をアッという間に殺してしまう。その「手」の描写が魅力的すぎ。これだけで、かなりヤラレてしまいました。
 ……欲を言えば、もっとあの仮面を被っていて欲しかった。そうじゃないと怖さが出ない。だから、かなり巻を重ねた後に、またあの仮面が出てきた時は何か嬉しかったです。

 1巻目の絵が、いかにも「新人マンガ家」という感じで、どうかなぁと思いつつも続きを読んでいきましたが、気づけば全12巻、勢いで読んでしまっていました。続きが常に気になる、素晴らしいマンガでした。絵的にも、かなり成長しましたね。


左)ユカ、右)コウタ
ユカは幼い頃からコウタが好き。
しかしコウタは幼い頃の記憶を失っ
ている。

にゅう。
ディクロニウスと呼ばれる新人類で
あり、本来の人格であるルーシーは
冒頭で人を殺しまくる。
 ●萌えヒロイン達とのハーレム生活が中心…

 主人公コウタは、今は使われていない「楓(かえで)荘」という料亭をユカの親から借り受けます。
 幼なじみのユカをはじめとし、にゅう、ナナ、マユ、ノゾミ……と若い女の子達をそこにどんどん囲って(失礼)いきます。
 どう考えても、エロゲーのような設定……。そんな感じのイベントもちらほら出てきます。

 で。それぞれ、コウタとの同居に至る理由はあるんですが、ノゾミ以外はみんな可哀相な女の子達ばかり。幸せというものに飢えている。とにかく居場所がない。でもコウタ、拾いすぎかと……。一人にしとけ、と説教したくなります。

 あと、コウタには男友達いなそう。もしいたら、彼のハーレムはぶち壊されていた事必至……。

 ●3×3EYESっぽい絵と設定

 殺人鬼「ルーシー」のもう一人の人格、「にゅう」。それが物語序盤で生まれた、というのが衝撃的だし、面白い。
 何かが起きる衝撃的な瞬間、というものを描くのもいいなぁと思ったりしました。(つまり、にゅうが元々のルーシーの別人格だったのなら、衝撃的ではない)

 ところで物語中盤までの絵は、かの「3×3EYES」に似てるかな、という感じでした。ヒロインが二重人格というのもそうだし、重なる部分はちょっと多そう。エロさなども。

 あと凄いのは、「ディクロニウス」が一人じゃない、というところ。
 これが物語を決定的に膨らませているし、「ナナ」という深いキャラを生み出す要因にもつながったワケですね。個人的にはルーシーやにゅうより、ナナが好きなので。すぐ嫉妬して乱暴するユカも好きですが。
 他、マユはまだいいとして、ノゾミだけはどう考えても、不要キャラだと思いました。

 ●ナナについて

 全編に渡り、ナナの活躍が素晴らしかった。
 ネタバレ: 序盤でかなりひどい目にあったのに(つーか、並のマンガなら死んでます)、あの復活劇はびっくりでしたね。しかもそこで笑いをとったり、その後でのまさかのロケットパンチとか……、凄い良かった。最高でしたね、ナナは

 ついでに言えば坂東も。まさかまさか、あんなに活躍するキャラになっちゃうとは……。
 何と言いますか、キャラを大事にするマンガ家だなぁという感じがします。すぐにバンバン殺すのも衝撃的でいいんですが、殺さないのも衝撃的になるもんなんですねぇ……。

 でも中盤以降は、やや小難しい(複雑な)展開になってしまったのが個人的に残念。細かいセリフが多いと、読み飛ばしてしまいますね〜…。
 壮大な物語なので、そういう描写も避けられなかったのかな、とは思いますが。
 ちょっとエヴァも入ってるかな、という感じも。でもこれはこれで、オリジナリティあふれる物語になっていると思います。

 ●エロ度について

 エロ度はなかなか高い(しかし4巻辺りまで)。物語が深刻になってくると、エロは静まってしまいますね。以降も裸は出てきますが、エロさはほとんどないので。

 エロ的には、4巻が一番の見どころでした。主人公コウタとユカのエロシーン。……いやぁ、かなり燃えました。
 こりゃどうなっちまうんだぁ?と期待して、5巻以降はごっそりまとめ買いなんかしてみたりしたものの!(かなりエロに弱い…)、なんと最後まで、ユカとのエロシーンはぶん投げられていた!(4巻で終了)というムザンなお話でした……。あぐあぐ。
 ……いやもちろん、物語としては充分に楽しめたんですけど。

 でも、4巻のあの先を超・期待してしまうのは、男として仕方のない事だと思います。その先を描かなかった作者さんには、文句の一つも言ってやりたいです。フツーは描くでしょ……あの先を。

 ●この先、どんどんネタバレぎみなので注意

 ●マリコ竜頭蛇尾

 ディクロニウス35番、マリコ。
 最強のディクロニウスという触れ出しでしたが、怖いのは出て来る前まで。姿を見せると、途端にフツーすぎる少女に……。
 個人的に、ディクロニウスのデザインが、もっと化け物的なら良かったのになぁ、と思いました。皆、あまりにもフツーの少女すぎるので、怖さが感じられないんですよ……。まぁそれは僕が、この作品に「ホラー」をもっと求めているからなのかもしれませんが。

 ●読者、騙しっぱなし

 このマンガ、読者を騙す「フェイク」がかなり多い。大きなものから小さなものまで色々と。
 「こりゃ絶対に死んだな」と思えばまさか生きていたり。……そういうのがやたら多すぎ。まぁ悪くはないんですが。
 でも何か、全然素直に死んでくれない展開ばっかりで……。


ディクロニウスが武器として使う
「ベクター」。
その無数の手が圧倒的な力で人間
を破壊する。

不満に感じたのは、一息に殺せるハ
ズのシーンでも「殴る」程度にとどめ
てある事が多く、冒頭での冷酷非道
さが劇中でかなり失われてしまって
いるという事。
●総評など

 総じて、かなり面白いマンガでした。
 新しい人類、ディクロニウス。その残忍さ危険さが直接ホラーに結びついて、楽しく(いえ怖く)読む事ができました。

 で。やっぱり一番衝撃的なのは、4巻かなぁと。この物語の核となるものが描かれているのですが、ホラー的にも物語的にもほぼ満点、という感じでした。これだけ凄い過去話、というのは見た事がないような気がします。

 これだけ笑って泣けて怖がれて(+萌えて)、しかも面白いマンガはそうそうないんじゃないか、と思います。
 でもある程度、萌えキャラとかが好きじゃないと(平たく言えば、オタク入ってないと)、ハナからノレないんじゃないかとも思います。

 なお、評価として、面白さが★5じゃないのは、「ディクロニウスのデザインがあまりにもフツーの女の子すぎた」(+ルーシーにも魅力が今一つ足りなかった)のと、「後半の小難しさ」が物語を変に邪魔したんじゃないかと思ったからです。

●アニメ版「エルフェンリート」

 まずはDVD1〜2巻を観てみましたが、スプラッター描写はマンガ以上かもしれません。肉の切断面とかも、やたらクッキリ描いてますし。
 キャラの顔も、マンガ以上に洗練されている感じで好印象。ヒロインの描き分けなどにも期待したいところ。
 背景画もやたらと美しい。気合いがこもってます。ファンとしては(ファンです)嬉しいかぎりです。

 オープニングも美しい。ほとんど静止画で表現されていますが、フンイキはバツグン。曲も素晴らしく、聴き惚れてしまいます。

 マンガといちいち違う展開も心地よい。マンガそのままを写し取ったかのようなアニメは、個人的に嫌いなので。色々と工夫してくれてこそ、価値のあるアニメ化、というものだと思いますので。
 何やら、ラストもマンガとは違うらしいので、この先も楽しみですね。裸もフツーに出てきますので、エロシーンも期待しときます。


 ミスミソウ ―― 押切蓮介
 (「ホラーM」連載/全3巻/本体571円)
 (情報提供:ん さん)

 ホラー度:★★★★★
 面白さ :★★★★

 (あらすじ: 春花は田舎の中学に転入した。そこでクラスメイトらにひどいイジメを受ける。そのイジメは日々エスカレートしていき、やがては凶悪なものとなり……むごい事件へとつながる)

 (一言: 凄惨な復讐劇。全編シリアスでギャグは皆無。押切氏独特の絵がいい。大ゴマを多用してのフンイキ作りも見事。セリフも極力削っているので、読んでて疲れない。恐ろしさ、残酷さについては文句ナシ)

●いきさつ

 掲示板にて、ん さんからご紹介をいただきました。

 ホラーと言えば  投稿者:ん  投稿日:2009年05月17日

 ホラーじみた漫画と言えば、以前夢鳥さんが紹介されていた「でろでろ」の押切先生が、面白い作品をいくつも出してますよ。(わたし押切信者なのですが(爆))
 ホラー度で言えば「ミスミソウ」、「ゆうやみ特攻隊」がオススメです。
 「ミスミソウ」は、幽霊の類は一切出てきませんが、大きな閉鎖空間である田舎町の廃校寸前の中学校で繰り広げられる、異常な人間劇。
あまり喋りすぎてネタバレになるといけないのですが、とても美しくて、痛くて、狂っている、救いのない展開にぐんぐん引き込まれていきます。

 失礼ながら、以降の文は省略させていただきます。
 んさん、ご紹介ありがとうございます。


主人公、春花(はるか)


ムゴいシーンは容赦なし。
ばんばん出てきます。
●感想など

 最初読んだ時は「こりゃありえないだろう」「やりすぎだ」と思いました。イジメのシーンがエスカレートしてあんな事になるなんて、現実的ではない、と。

 でも何度か読み直している内に、これはそういう見方をするマンガじゃないのかな、と思い直しました。
 「この物語の世界そのものが狂っている」。その狂った歪んだ世界こそを、押切氏は描きたかったんじゃないかなぁと思ったんですね。
 遠慮せずにぶん殴り続けるかのような物語。凄まじい破壊力。圧倒の連続でした。

 ●むごたらしくも美しい殺戮劇

 1〜2巻、ずっと雪が降りっぱなし。むごたらしい殺戮シーンも、この雪のお蔭で、ひどく美しいものに見えてしまう。美しくなるばかりでなく、白と黒のコントラスト――血の凄惨さがよくくっきりと浮き彫りにされているように感じました。
 セリフのない大ゴマもかなり多用していますね。お蔭でフンイキが凄くイイ。

 ちょっとヘンだな、と思ったのは1話の最後。あれは妹が泣きながら、姉に火事を知らせに来たように見えてしまうので。(よく読めば、違うのがわかるんですが)

 1〜2巻の中で一番好きなシーンは6話目のニラむところですね。あの絵は最高です。「静」の恐怖というのもまた、魅力的です。
 全3巻、というのも手頃。どんな結末が待っているのか、非常に気になります。

 ●蛇足など

 ところで、押切氏の絵柄って独特のまま、固まってしまったようですね。でろでろの1巻目から変化しそうでしないのが、なんだかスゴイ。(でもやはり、絵柄的には洗練されてきているとは思いますが)
 こういう独特の絵を描けるマンガ家は、尊敬してしまいます。独特だからこそ、貴重なので。
 そしてなお、ホラーマンガ家である事が、個人的には嬉しいです。

 で。ホラーマンガ家がいきなりギャグに転身すると多分サムくなるんじゃないか、と思うんですが、押切氏は全くの逆。
 「でろでろ」などで強烈なギャグを描いてきた押切氏が、ここで「ミスミソウ」という凄惨でシリアスなホラーを描いてくれましたが、この変化は素晴らしかったです。

 なお、シリアスなだけのマンガって、読むのに疲れるという印象があるんですが、押切氏独特の絵柄が全く疲れを感じさせない。やはりマンガというのは、絵とストーリーのバランスも大事なんだな、と思いました。

 ネタバレになりますが、殺しまくる者が、ありえなさそうなのがいい。普段おとなしいからこそ、凄みが出て来る。絵柄的にもノリにノッてる、という感じでした


 誘怪犯 ―― うえやま洋介犬(ようすけ)
 (2007年8月初版発行/株式会社G.B./本体952円)
 (情報提供:弐唐奈さん)

 ホラー度:★★★☆☆(一部:★4
 面白さ :★★★★

 (一言: ほとんどが1ページ完結のホラーマンガ集。1冊に100話以上詰め込まれている。ホラーというよりギャグめいているものが多いが、これだけの数のホラーを描いた、というだけで尊敬に値する。絵はそんなに上手いという感じではないが、見やすい。100話の中には、目を見張る名作も数多くある)

 ●「誘怪犯」ブログ: http://ameblo.jp/yohsuken/

●いきさつ

 ウチの掲示板で、弐唐奈さんに紹介してもらいました。(……すみませんが都合により、書き込みしていただいた文章を処々カットさせていただきます)

 初めまして。  投稿者:弐唐奈  投稿日:2009年05月23日

 夢鳥さん、初めましてとこんばんは。弐唐奈(にからな)と申します。
 私もホラーと名のつく物が大好きなので、貴サイト様にはとてもお世話になっております。
 (でろでろ、スカイハイ、誰かがカッコウと啼く等、貴サイト様がきっかけで夢中になりました。どれもいい作品ばかりですよね。)
 そこで私からもオススメのホラーをいくつか紹介させていただきたいと思います。

 ・うえやま洋介犬
 元はブログで公開してた漫画が一冊の本になったそれが「誘拐犯」
 ブックオフでたまたま見つけ、一目見て衝動買いしてしまったのがそれなんですが。
 正直言って当たりだと思いました。元々ブログに公開してた漫画なので大体が一ページで終わるんですが・・それがいい。画もさることながらお話もどこかで聞いた都市伝説か何かを元にした感じなのですが、この方が上手くアレンジを施したカンジで聞いた事があるのになんか新しい・・。こんなホラーもあるのか・・と素直に感心させられた作品でした。

 他、弐唐奈さんには「大橋薫」さんと「千之ナイフ」さんをご紹介していただきました。ご紹介、どうもありがとうございました。




●感想など

 うえやま氏がブログで公開したマンガを書籍化したものが、この「誘怪犯」。
 1日に、8万5000ヒットを記録した事もあるという超人気ぶり。世の中の人って、結構怖いもの好きなんですね〜?

 それにしても、アイディアがいい。この本の中の座談会などでも書かれていますが、このマンガの一番の特徴は「ほとんどの作品が1ページで完結する」というもの。4コママンガも多数ありますね。でもギャグじゃなく、描かれているのはやはりホラー。
 見やすい絵が災いして、一見どの作品もギャグに見えない事もない。でもよく読めば、やはりホラーなんだなと思いました。

 ●

 100話ものホラー短編を描いた、というのは心底、賞賛に値します。さらにこの本には続編も出てるようなので、その尽きないアイディアに感心してしまいます。
 作品がどれも短いため、ムダがほとんどない。オチの切れ味もいい。もしつまらない作品があっても、軽く読み飛ばせる。超・短編集だから。

 で、100話もあれば、ある程度のパターンに話を分類できます。どんな感じのホラーが詰まっているのか紹介もかねて、そのパターンを挙げてみます。(あくまでも、個人的な見解によるものです)
 「起承転結のある怪談話」「ワケのわからない化け物を描いただけの話」「ブラックジョーク」「ストーカーもの、変人もの」「よくある話、駄作(失礼ながら)しか言えないようなもの」……という感じでしょうか。

 1話1話は、かなり弱いと思うんです。あと、大半のものはホラーというよりギャグに近い。絵柄がそんな感じなので。
 でも次から次へと押し寄せる作品群には圧倒されてしまいます。
 そんな中、僕が気に入った作品をいくつか紹介します。

 ●「彼の手」:盲目の彼女は、彼の手の優しい感触を信じ続ける。しかし……、
 ●「ともだち」:ミヤちゃんは貧乏なので、私はいらなくなったぬいぐるみをあげたりした。ミヤちゃんが急に引っ越す事になり、私はミヤちゃんから小さな箱を受け取った。その中には……。
 ●「うぴるん」:部屋に出て来た妙な化け物。霊感体質の私はそんなのは慣れっこだ。しかし……。
 ●「効かない目薬」:病院からもらった目薬が効かず、文句を言いに言ったら、医者からとある事実を教わる……。
 ●「感触」:マヤは寝ようと自室へ入った。部屋の電気を点けた時、そこにいたのは……。
 ●「不交な視線」:篠原は会社の同僚が話す時に視線を合わせない事に腹を立てたが、会う人会う人がみな、同じように視線を大きくそらすのだった。そんな事が半月も続くと篠原は精神的におかしくなってしまい……。
 ●「出口」:その廃墟の入口には、なぜか「出口」と書かれてあった……。
 ●「没頭」:ケータイでメールしながら歩いていた女子学生。その子は交通事故に合い、そして……。
 ●deep1:ニュースで流れるバラバラ殺人事件。しかし、それが「殺人」事件ではない事を、とある少年は知っていた。
 ●deep15:彼女と別れる事にした。2人だけの最後の食事。ふと、彼女は謝った。

 ……これらはどれも好きですね。ホラー的に優れていると思いました。
 100話もあるので、自分好みの作品を見つける、という楽しみ方もあるんじゃないかと思います。なかなかに濃い一冊でした。


 弐唐奈さん、ご紹介どうもありがとうございました。
 ただ、作者の名前が「うえやま洋介」だったら、スルーしていたかもしれません。「うえやま洋介犬」だったからこそ、妙に惹かれてしまったんですよねぇ……。笑

 あと残念だったのが、マンガのコメント。その筋では有名な方々がせっかく細かにコメントしているのに、8割方がウケねらいだったので。
 巻末の「座談会」は面白かったです。


 学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD(ハイスクール オブ ザ デッド)
 ―― 原作:佐藤大輔/作画:佐藤ショウジ
 (角川コミックスドラゴンJr/月刊ドラゴンエイジ連載)

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★★

 (あらすじ: ある時、突然それは起こった。学校での異変に一早く気づいた孝(たかし)は、仲間と共に行動を起こす。しかし時はすでに遅く、校舎内にもゾンビ化した生徒らであふれ返っていた。果たして孝達は生き残る事ができるのか?)

 (一言: アニメ顔美形キャラ多数で、女の子はパンチラしまくり。ゾンビとの凄惨な死闘や逃走が大筋。ストーリーはあってなきがごとしか。キャラは皆個性的。サービス精神ありすぎ)


ゾンビに襲われるシーンはかなり多め


左)、右)
この二人が中心となって話は進んで
いく。恋愛要素などもあり。
●ゾンビ映画をマンガ化

 「(何とか)〜OF THE DEAD」という映画がいくつかありますが、とりあえず皆、ゾンビ映画。

 ゾンビ映画と言えば、ジョージ・A・ロメロのゾンビ三部作が有名(「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ゾンビ」「死霊のえじき(デイ・オブ・ザ・デッド)」)。
 加えて、「ランド・オブ・ザ・デッド」「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」など、新しいゾンビ映画も続々と産み出されています。ロメロ氏は、よほどゾンビが好きなんでしょうか……?

 ここでご紹介するのは、「HIGHSCHOOL OF THE DEAD(ハイスクール・オブ・ザ・デッド)」。高校を舞台とした、ゾンビ映画ならぬゾンビマンガ、なワケですね。途中から、舞台は学校外に移り変わっては行きますが。
 ゾンビのマンガ。過去にもあったかもしれませんが、この作品はまず、何といっても「絵」が素晴らしい。
 トゲトゲしい?アニメっぽい絵なんですが、非常に美しく、迫力に満ちています。銃器や装甲車などもバンバン登場しますね。
 キャラクターも、アニメを意識したような個性豊かなキャラばかり。

 なおこのマンガのゾンビは、脳みそを食いません。ただひたすらに人を襲い、噛み付いて仲間(感染者)を増やそうとしていきます。

 ●何かあればすぐパンチラ

 このマンガ、何かあればすぐパンチラしたり、胸を押しつけたりもんだり、裸同然の格好で出てきてみたり……。サービス過剰というか、この女達は何なんだ?と思ったりもしましたが……まぁそれはそれで。
 ちなみに2巻の中ほどに、しっかりした?サービスシーンがありますね。数ページですが。逆に、こういうサービスがないと、燃焼?しませんね。「見せるのか見せないのか、ハッキリしろ!」と言いたくなります。そういうマンガや映画は嫌いです。

 何にせよ、全体的にエロゲーのフンイキがかなり漂っています(偏見か)。絵とか、女キャラの性格とか。主人公ばっかりモテる設定とか。まぁ、楽しければ何でもいいんでしょうけど……。


右)毒島と書いて、ぶすじま。
いくらなんでもそりゃないっしょ、という
ネーミング。美人なのにぶすじま。
4巻まで読んでも慣れません…。
 ●ゾンビ主体ではなく、主役キャラ達が主体

 ゾンビより、主役キャラ達に主眼を置いた話づくりになってますね。ゾンビどもは、低脳で脇役扱い。恐怖度もそんなに強調されていない。……でもこの作者達なら、やろうと思えばできた気がします。ただ、そうしなかった、というだけで。

 恐怖シーンをやり過ぎれば、ホラー度が高まって(僕みたいな)ホラーマニアは喜んだんでしょうけど、代わりに娯楽(ごらく)性が低くなってしまう。……だから今のバランスでいいのかもしれません。

 何にせよ、「ゾンビ映画をマンガにすればこうなるんだ」というお手本みたいなものですね。
 キャラ造形もしっかりしていて、個性的な彼らを見ているだけでも面白い。こういう、キャラの立ったホラーマンガ、というのも面白いですね。

 なお「ゾンビに襲われて怖い」というマンガではなく、「ゾンビをなぎ倒していく爽快感を描いた」マンガ、という感じがします。


 マンホール ―― 筒井 哲也
 (2008年刊のコンビニ本は上下巻、単行本は全3巻:ヤングガンガンコミックス)

 ホラー度:★★★☆☆
 面白さ :★★★★★

 (あらすじ: とある白昼の商店街の最中、裸の男がよろよろと歩いていた。男は通行人に血を吐きかけて、突き飛ばされて後頭部を激しく打ち、死んだ。血を吹きかけられた男もその後、体調を急に崩し、よろよろしている所を車にはねられて死んだ。検死結果、彼ら二人の体内から、大型の寄生虫が発見された。だが裸の男の頭部に電極痕のようなものがあり、事件性の強いものだと警察は判断する。オヤジ刑事溝口と、若き女助手井上が事件の真相を追う)

 (一言: 絵が非常にいい。そして登場人物もやたら個性的で、味がある。ホラー度は普通なんですが、意外なストーリー展開に個性的なキャラが上手くからまって、非常に面白い。後半のドラマティックな展開もいい)

●あらすじ

 とある昼間の商店街。人がにぎわうその最中、素っ裸の男がよろよろとした足取りで歩いていた。
 その男は通行人に血を吐きかけ、突き飛ばされて後頭部を激しく打ち、死んだ。
 検死していると、裸の男の目から、寄生虫のようなものがずるりと抜け出てきた。

 その後、血を吹きかけられた男は顔に大きなハレ物ができていた。
 男は被害者のようなものだが、事件の重要参考人として警察に出頭し、警察にあるという自分のケータイを取りに来たのだ。
 取調べの最中、男は急に気分が悪くなる。
 急激に来た、恐ろしいまでの意識の混濁(こんだく)。
 そして警察署前で、車にはねられて死んだ。
 その男の体内から、また寄生虫が発見された。

 伝染する寄生虫の病気が流行りだしたのか?
 これは保健所が調査する仕事じゃないか、とする声の中、加害者であり被害者でもある裸で死んだ男の頭部に、電極痕(こん)のようなものが残っていたため、これは事件性が極めて高いと判断する。

 オヤジ刑事の溝口と若い女刑事井上のコンビが事件の真相を追う。

●感想など

 まず、絵がいい。サラッとした絵で見やすいながらも、恐怖絵の迫力などはかなりのもの。テンポよく笑える場面などもあり、あきさせないし、読んでいても疲れない。
 そして事件を追う、溝口、井上のコンビも面白い。
 カタブツで生真面目で体格のいいオヤジ、溝口。若くて多少お茶らけているが、溝口には逆らえない井上。
 ストーリーも中盤で意外な展開をむかえ、面白くなっていきます。

 他にも出て来る登場人物の一人ひとりが、味のある人物ばかり。それらに脇をガッチリと固められて、物語も非常に盛り上がっていきます。

 ●この辺から多少ネタバレあり

 そして物語の柱となる寄生虫。これがただ人間を狂わせたり死なせたりする、というだけではないのがいい。ここにも味があります。
 物語の核心に触れるので詳しくは書きませんが、この寄生虫を人為的に用いたとある男が、自らの行為を「善行だ」とするのにも、なかなかな説得力があります。クレイジーな考えではありますが。

 中盤からも加速度は増していき、そして迎えるクライマックスも非常にドラマティック。
 これ以上の描き方はないんじゃないか、と思えるほどの完璧なまでのラストシーン。読後感もネタバレぎみ:非常にいいものとなっています。
 読み終える頃にはきっと、溝口と井上のコンビが好きになっているんじゃないか、と思います。


 ブラッドハーレーの馬車 ―― 沙村広明
 (太田出版)
 (情報提供:おりん さん)

 ホラー度  :★★★★
 ストーリー性:★★★★★

 (あらすじ: 各地の孤児院から養女を引き取るブラッドハーレー家。その養女達からなる華々しい「ブラッドハーレー歌劇団」はその名を世にとどろかせており、孤児達の憧れであった。しかし、その裏には恐ろしく、むごたらしいもう一つの面が隠されていた…)

 (一言: 8つの短編集。冒頭はひたすらむごく、その後は様々な視点で描かれていて、かなりドラマティック。想像で怖がらせてくれるので、ホラーとしても上質で上品。読後はかなり物悲しい。はかなげな絵もいい)

●いきさつ

 掲示板にて、おりんさんから紹介の書き込みをいただきました。

 初めまして  投稿者:おりん  投稿日:2008年05月26日

 初めまして、いつも参考にさせていただいてます。
 ものすごく怖いコミックを(と言ってもホラーの恐怖ではないですが)紹介させていただいてもいいですか?

 「ブラッドハーレーの馬車」沙村広明
 本当に凄惨で救いがないです。抜け出せなくなる恐怖にひきずりこまれます。
 馬車がやってくる牧歌的な孤児院に、孤児院の少女たちの夢と想いを買いに、という一見あしながおじさんのような話に見えますが、実は・・・・

 こんなのをお裾分けしていいのだろうかと罪の意識を持ちながら、8篇のオムニバスで語られる八方塞りの世界にお誘いします。夢鳥さんなら何とコメントなさるか読みたいだけなんですが(汗) では、失礼します。
 
 との事。紹介、ありがとうございました。今まで読んだ事のないタイプの作品かなぁ、と思い、早速ネットで入手しました。
 作者の沙村広明さんとはあの「無限の住人」の方なんですね。以前ちょっとだけ読んだ事があります。


ブラッドハーレーに養女としてもらわ
れていく少女は、孤児院の仲間達か
らうらやましがられつつも、祝福を受
ける。




時に、思わぬドラマに遭遇する。
息吹のようなものを感じます。




ルビー(左)の目がいい。
どこを見てるの?という違和感が
たまりません。
イッちゃってるんですね、完全に。

並の人ならこんな描き方は思いもし
ない気がします。
●概要及び感想など

 とある孤児院から、ブラッドハーレーという貴族の元に、養女にもらわれていく少女。選ばれたその少女は、孤児院仲間からうらやましがられてもらわれていく。その少女はこの先の幸せを信じて疑わない。お屋敷にもらわれていくだけではなく、ブラッドハーレーが主催する、華々しい歌劇に入れるのだ……!
 だが、そんな夢のような話とは裏腹に、その少女には、想像するはずもない凄惨で残酷な運命が待っているのだった……。

 ●

 8つの短編が収まっています。
 1、2話目の「見返り峠の小唄坂」「友達」は、この物語全体の紹介編、という感じですね。そこでこの物語の真の姿である、凄惨と残酷さがストレートに描かれています。ちょっと幼少向けではないですね。
 そして、後の話では想像させて怖がらせる、という感じになってます。いちいち凄惨なシーンを何度も描かない所に作者の優しさ?と、さじ加減の上手さを感じます。

 絵は個人的にかなり好きですね。全体的に上品で、目の描き方が特に印象的です。
 あと、少女達のけなげさ、も胸にきます。ひどい目にあっているのに、一筋の希望を失わない。それが真実ではないにしても……。

 ●

 3話目「ある追憶」で雰囲気がガラリと変わり、凄惨なシーンは皆無。せっかく手が届きそうだった「ブラッドハーレーの光の面」に触れた少女。しかし、ちょっとした不幸から少女の運命は狂ってしまう……。手が届きかけた幸せを逃してしまう、というのが非常に悲しいですね。

 4話目「家族写真」はかなり気に入りました。今度は何と、少女達の視点ではなく、逆側からのものになるんですね。驚きます。
 そして迎えた祭りの日。運命のいたずらが、激しいドラマを生む……。

 あの清々しい一瞬がいいですね。他の者達も思わず加勢してしまう。この作品の今までの暗さを払拭(ふっしょく)するような、清々しいシーンです。そしてシメまで上手くまとまってますね。
 この短編集のほぼ全話に言える事なんですが、ラストの物悲しさが非常にいいです。

 ●

 5話目の「絆」もまたいい。ブラッドハーレーの養女になるべく、したたかに待ち続けていた少女ルビー。せっかく少女のいる孤児院にブラッドハーレーの使いが来たが、養女に選ばれたのは別の少女だった。そこでルビーがとった行動は……。
 これもまた完成された一作品になってますね。冒頭の1、2話辺りで凄惨さをしっかりと描いていたからこそ、この辺りでの想像させて怖がらせる、というのが生きてくる。
 自分的にも、「ただ想像させて怖がらせる」というのじゃなく、「(あらかじめ)怖いシーンもしっかりと描いておかないとダメだな」と思いました。うしないと、想像がきっと弱くなる。

 6話目「澱(よどみ)覆う銀」もまたいい。今度の視点もまた意表を突いてます。まさかこう来るとは、という感じです。
 この短編集、様々な視点や角度から描かれているのがいいです。色んな人間達の色んなドラマを楽しめる、という感じですね。この6話では、率直に「人の優しさ」というものに触れる事が出来て、救われる思いがしました。

 7話目でブラッドハーレーの思惑のほころびを感じさせ、8話目で終幕……。
 短編集とはいえ、一冊を通して物語が完結されています。見事です。

 蛇足ですが、あとがきも面白かったですね。始めはエロいマンガにしよう、と思っていたとか。資料もほとんど使わなかったようで。それでもこれだけのものが描けるものなんですかね…?
 でもほんと、エロいだけのマンガにならなくて良かったですね。これだけ上質なホラーマンガが出来上がったワケで、僕(みたいな何かのマニア)なんかは大喜びですよ。
 このマンガ。エロ雑誌?に掲載されたみたいですが、読者はかなり不満だった気がします…。エロ雑誌を読む時に、上質なホラーは期待しないでしょうから…。

●総評など

 読み応えのある、なかなか素晴らしいマンガでした。内容も濃く、何度読み直しても飽きがきませんね。何度か読んでやっと、冒頭と最終話のちょっとしたつながりなどに気づいたりしました。
 8編のどれもがほとんどハズレなし、という感じで。ホラーのみならず、物語的にも感心しまくりでした。そして、ここぞという時に見せる人物の表情なども、かなり素晴らしかったです。
 紹介していただいた、おりんさんに感謝します。僕一人では多分、この作品に辿り着けなかったと思いますので。

 凄惨な物語の中でも、こんなにも様々な「ドラマ」が描けるんだなぁ、と感心してしまいました。「罪と罰」があり、「救い」があり、思わぬ再会があり、そして消えてしまいそうなはかなさがある……。
 話ごとの視点の切り替えも見事でした。文句ナシに面白怖かったです。


 闇金ウシジマくん ―― 真鍋昌平
 (小学館ビッグコミック)

 ホラー度:★★★★
 面白さ :★★★★★

 (あらすじ: 丑嶋は23歳ながら闇金融会社の社長。体格の良さと目の鋭さ、そしてケンカの強さで他者にはヒケをとらない。そんな丑嶋の元に金を借りに来る客が今日もいる。10日で5割もの暴利をとるのに、借りれずにはいられない、という者が世の中には多くいるのだ。そして金を返せなくなるものも多く出て来る。それでも丑嶋は金を取り立てる。ムリヤリにでも…)

 (一言: 金を貸す側と借りる側の人間性を描いたドラマ。短編風なので読みやすい。人間一人ひとりの描き方、そして彼らの生活に、非常にリアリティを感じます。読んでてかなり夢中になりました。リアリティがあるものだから、人が殺されようとしている場面や拉致場面などが非常に怖い。人間が壊れて行く様などもかなりヒサンに描かれています。他、知らなかった闇の世界を知る、という面でも非常に面白いです。内容がキツイので幼少向けではありません)


丑嶋。
闇金融会社の社長。暴利で金を貸
す。取立ては無論、厳しい。


ムゴイ目にあい、人相が変わって
しまった主婦。だが、自業自得なの
だ…。
●1巻あらすじ:「奴隷くん」「若い女くん」他

 パチンコ依存症の主婦達が、朝、その金融会社につめかける。社長は丑嶋(うしじま)。年は23。体格がよく、目つきの鋭い男だ。
 その店は10日で5割の金利で金を貸している。5万借りれば、10日で金利が2万5千円つく(+手数料)。しかし、パチンコ依存の主婦達には、一日に3割の金利で金を貸す。1日5万借りれば、その日の内に1万5千円の金利がつく。それを承知で、主婦達はそこから金を借りて行くのだ。
 ……それは何故か? もうその主婦達は他社から金を借りまくり、他に借りる所がないから、闇金に来て、暴利を承知で借りるのだ。中にはダンナに内緒で800万の借金をしている主婦もいるという。
 案の定、パチンコに負けてまた金を借りにくる主婦もいるが、丑嶋も返せるアテのない者には貸さなくなる。そして金を返すために売春行為を強要される主婦もいる……。
 むごい目にあい、泣いて反省するが、その主婦の依存は直らず、またもパチンコ店に足を向ける……。丑嶋社長は言う。「客の中には、同情に値する人間なんて一人もいねェ」と。

 感想など>
 短編風になっているので読みやすいし、非常に中身が濃いです。まぁ売春話とかあるので女性にはかなり不快なマンガでしょうけど、教訓にはなると思います。
 丑嶋の人間性も徐々に描かれていくのですが、ほんと男らしい、という感じ。ただのチンピラヤクザとは違う。確たる人間性、というものを感じます。もちろん甘いだけじゃないんですけどね。金への執着心は人一倍で、債務者への取立ては厳しく、過剰な暴力もいとわない。
 やはり、闇金は恐ろしい、という感じです。

 「若い女くん」では普通のOLが壊れていくさまが描かれています。無謀な買い物をして借金をし続ける。金が返せなくなり、風俗店を紹介される……。そこで性病をうつされ、彼氏をもヒサンの渦の中に巻き込むハメになる……。
 「バイトくん」もやけにリアルな感じです。自分を天才だと思い込み、他人を馬鹿にして生きてきたが、いつしかギャンブルにはまり、借金にまみれる。親に相談して借金を半分減らしてもらったものの、彼はもう生きる希望を失い、自殺に追い込まれる……。
 「闇金狩りくん」は闇金を騙して金を奪うというサギ集団の話。騙す手口も事細かに描かれてあり、リアリティがありますね。しかし丑嶋は情報のツテをたぐり、消えた債務者を追い詰めて行く。

●2〜3巻あらすじ:「ヤンキーくん」

 マサルはいつもコンビニなどでたむろしている友人達と、はずみでバイクを盗んでしまった。それが友人の知り合いの暴走族のものだとしり、青ざめる彼ら。だが、バイクは派手に乗り回したあと、大破してしまったのだ。
 バイクの持ち主は愛沢という男。族のリーダーらしい。マサル達は族に囲まれて脅されるが、マサルは逆にキレて、愛沢を隠し持っていたナイフで刺した。
 だがそれが間違いの始まりだった。マサルは半殺しにされ、盗んだバイクと腹を刺した慰謝料で、200万用意するように言われる。
 そこでマサル達が連れてこられたのが、丑嶋の闇金融。愛沢は、マサルが金を払えないのを承知で、ハナから借金を押し付ける気なのだ。

 しかし、丑嶋はその申し出を断る。丑嶋とて、金を貸す時は慎重になる。回収できなければ意味がないからだ。
 丑嶋は、族に囲まれた中でマサルが愛沢を刺した、という話に感銘を受け、マサルに金を貸す事にした。しかし、愛沢の200万という金額ではなく、千円。マサルがバイクを盗んだという証拠もない上、慰謝料も多すぎると判断した。
 愛沢は激怒するが、丑嶋に逆らえず、撤退する。そしてその日から、マサルは丑嶋の下で働く事になった。

 丑嶋の部下、高田という人のいい上司もでき、マサルは嬉々として闇金融業界で働いて、金も得ていく。仲間におごりまくる日々。だが、無理をしすぎて金に困るようにもなってきた。副業として、丑嶋を裏切るようなマネもしてくる。
 そんなある日、マサルの情報を愛沢に売ったヤツがいた。マサルが愛沢のバイクを盗んだ件だ。マサルは即金で200万よこすように言われるが、払えない。
 マサルは拉致された中、丑嶋に助けの電話を入れるが、金は出せないと断られた。
 マサルは両手両足を縛られた上、頭にビニール袋を被せられ、息が出来ないようにテープを巻かれる。そしてマサルは放置される……。

 感想>
 その、殺されようとするところが非常に怖い。リアルです。その後の展開も胸にグッときます。そして、話はまだまだ続いていくんですが、決着がつくところまで、ほんと夢中になって読みました。すごいマンガです。
 3巻の後半からはゲイの世界の話になるんですが、個人的にはノレなかったですね。面白くないとは言いませんけど、興味のない世界なので。

 そんな感じで、闇金融会社社長の丑嶋を軸に、金を借りる人間達とのドラマが描かれていくワケですね。
 闇金融、というとただ「暴利」だとか「怖い」というイメージしかなかったのですが、こんなにも人間らしい人間が必死でやっていく世界なんだなぁとわかったような気がします。もちろん、現実はまた違っているのかもしれませんが。
 それに、闇金融に手を出す人間、というのがどうしているんだろう?と思ってきましたが、マンガを読めば納得いきますね。気軽に借りてしまう人もいれば、広告に騙されて来てしまう人もいて、他社から金を借りまくって更に金に困っているような人もいる。様々な事情があるんですね。

 闇金融という、なかなか知りえない裏の世界をえぐり出して見せてくれるこのマンガ。知らなかった事も盛りだくさんで、続きも実に興味深いです。


 口裂け女あらわる! ―― 呪みちる
 (ぶんか社)

 ホラー度:★★★★★
 面白さ :★★★★★

 (一言: ホラーマンガ家、呪みちるさんの短編集。表題作をはじめ、「スケスケメガネ伝説」「タイヤ」「地獄をのぞく鏡」「3本足の人形」など、11本のホラー短編を楽しめる。直接的な恐怖描写が多く、グロ度は高め。グロいだけではなく、非常に面白怖いし、キャラもいい)

●いきさつ

 個人的に大好きなホラーマンガ家、呪みちるさん。何がいいかと言われれば、まず絵がいい。
 キャラの顔立ちがいいし、恐ろしいものはしっかりと恐ろしい。グロい描写をためらわずに描いてしまう、その度胸?と画力にホレました。
 もちろん、ストーリーもいいんですけどね。「恐怖」をしっかりと見据え、見事に描ききる。素晴らしい、ホラーマンガ家です。尊敬しています。

 で、この「口裂け女あらわる!」の短編集。2008年3月に初版発行なので、新しいですね(レビューは2008年5月)。通販サイトの「amazon」で以前、呪みちるさんの本を買ったからでしょうか、メールで通知が来たので、ありがたく買ったワケです。
 ところで、ネットで調べてみると、呪みちる氏は男性みたいですね。年齢も若そうでした。ちょっと調べると、顔写真とかも見れますので。

●あらすじ&レビュー

 11本の短編(1つはおまけ程度)が収められているのですが、その中でも好きな作品をいくつか挙げてみます。

 ●スケスケメガネ伝説

 面識のない男二人が、電車の中で席を共にしている。酒を飲んでいた男が週刊誌のヘアヌードを見ていて、ふと「スケスケメガネ」というものを思い出す。子供の頃。いつも遊び場にしていた空き地に、妙な木作りの看板が立っていた。「――スゴイ本物!! 何デモ見エル!! スケスケメガネ 今ダケ本當(当)ニ!! 手ニハイルヨ!!」
 男(よしお)は子供心にスケベ心を起こす。そのメガネさえあれば、好きな女の子の裸が見られるのだ! しかし、肝心の入手方法が書かれていないので、困ってしまう。
 しかし、そんなある日、よしおに封筒が届いた。中を見ると、「スケスケメガネ」の入手方法が書かれていた。

 感想>
 いかにもギャグのようなタイトルなのに、そうでもない。男(子供)のスケベ心をたくみに描写し、その上、予想もしないホラーな展開。隠された正体を見てしまう、というのがいいですね。オチもいいし、かなり気にいった一作。レトロな雰囲気が出ているのもいいです。

 ●口裂け女あらわる!

 小学生のよし子。クラスでは「口裂け女」の話題がのぼっていた。実際に見た子もいるらしく、みんな怯えている。
 そんなある日。よし子は塾の帰り道、とうとう口裂け女と出会ってしまう。

 感想>
 口裂け女は整形手術に失敗して頭がおかしくなった女だ、とかポマードと叫べば口裂け女は逃げて行く、とか、そういうツボを押さえて物語を盛り上げていくんですが、果たしてその正体は……。
 で、ラスト。蛇足のように意外な人が意外な行為に及んだりもしますが、口裂け女からは離れすぎ。でもバケモノを出さないで口裂け女の話を描ききったのはスゴイかな、と。
 個人的には本物の?口裂け女を描いてほしかった気もします。

 ●黒い清涼飲料水

 「Z(ゼブラ)コーラ」というのが、日本じゅうであまりにも売れている。品薄で騒ぎを起こすほどに。
 そのZコーラを開発した女、黒川が、本社の部長に会いに来た。黒川は部長に辞表を突きつける。実は、数年前、彼女はリストラみえみえの異動でジュース工場に飛ばされたのだ。そこで黒川が奇跡的に生み出したのがZコーラだったのだ。
 成功したハズの彼女が何故? 黒川は部長にZコーラの秘密を語り始めた。

 感想>
 コーラにまつわる都市伝説を、角度を変えて(ひねって)マンガ化。非常に面白い一作になっています。
 彼女が語る、幼少の頃に飲んだ「おじさんコーラ」。それが非常に魅力的に描かれています。呪みちるさんは「過去」の表現が上手いですね。引き込まれてしまいます。
 オチもいいし、まさに完成されたホラー作品、という感じがしました。

 ●タイヤ

 グジ男はクラスの嫌われ者だった。転校生のハルミは、早くみんなに溶け込むべく、そのグジ男をイジメる側に回った。それで他の女子との会話も得る事ができ、ハルミはクラスに溶け込む事ができた。
 その小学校では、タイヤ遊びが流行っていた。グラウンドに三つ四つほどの大きなタイヤを重ねて筒状にし、その上に数人が輪になって乗っかり、跳ねたりして遊ぶのだ。

 ある時、重ねたタイヤの中にグジ男が入っていたのに驚くハルミ達。グジ男はどうやら、女子のスカートの中を覗こうとして、中に入っていたらしい。仕返しとばかりに、またタイヤの中にグジ男を入れる。しかし今度はタイヤの上に更に小さなタイヤを乗せて、密閉すべく、サッカーボールですっかりと栓をしてしまった。
 その上で跳ねるハルミ達。跳ねる度、密閉したタイヤの中から、空気が外へ排出されていく。やがて、重ねたタイヤがすっかりと変形してしまった。

 先生達が来て、カチカチに固まって縮こまってタイヤをどうにか外そうとする。そして、タイヤが吸い付いた土をスコップで掘ってみたところ、タイヤの中に一挙に空気が入り込んだのか、数本のタイヤは爆発するように派手に跳ね上がった。
 中にいたグジ男はどうなってしまったのか……?
 
 感想>
 以前、ホラー誌で掲載されたものを見た事があったのですが、この作品もまた完成度が非常に高いと思います。これもまた、「過去」と「現在」の二つの時間軸で描かれていますね。
 グロさに加えて、思いがけない復讐劇。むごたらしく、恐ろしく描かれています。
 筒状に積んだタイヤに栓をして、数人で踏んづけている内に中が真空状態になった、というのは「物語」だと思いますが、復讐が見事に成就されたというのが胸にきます。
 この短編集の中で、一番好きな作品。素晴らしいグロさとホラーっぷりです。

 ●地獄をのぞく鏡

 受験生のふみ子は、世界史の教科書に載っていた、人のむごたらしい死体写真に妙に惹かれた。ナチスによるユダヤ人虐殺の凄惨な記録であるようだが、ふみ子はそこに甘美な「地獄」を見たのだ。
 ふみ子の家は厳しく、図書券以外にふみ子の自由に使えるお金は無かった。もっと地獄を見たいとし、本屋で虐殺などの写真が載っている本を買おうとするが、人目が気になって買えないでいた。ひと気のない古本屋に行ってみるものの、今度は図書券では売れない、と断られる。
 そんな時、怪しげな男が近づいて来た。男の持っている鏡には、まさに「地獄」が映し出されていた。
 ふみ子はその鏡を借り受け、夢中になってのぞき続ける。そんなある時、地獄に落ちていた、自分の父親が語りかけてきた……。

 感想>
 地獄に惹かれる少女の物語、という題材がいいです。ストーリーうんぬん以前に、ハナから面白さが決まっている、という感じです。
 ストーリー的に色々な方向性が考えられる中、呪みちるさんは、ホントに完成度の高い物語を見せてくれました。
 絵とストーリーと題材。呪みちるさんの作品の多くは(この短編集以外も)、この3つ、どれもが素晴らしい。


 ホムンクルス ―― 山本英夫
 (小学館:ビッグコミックス)

 ホラー度:★★★★☆ (ストーリーではなく、絵が怖い)
 面白さ  :★★★☆☆ (理解不能なところが多い)

 (あらすじ: 名越はスーツを着たホームレス。ある日、伊藤というパンク姿の男が現れ、「トレパネーション」という手術を70万の金で受けてくれないか、と言ってくる。金に困った名越は引き受ける。その手術後、名越は右目を閉じると、人間が異様なバケモノに見えてしまうようになってしまった。伊藤に言わせると、それは「ホムンクルス」なのだという…)

 (一言: 現実を舞台にした、未知の物語。背景や人物の絵が最高級。ホラー的な描写もかなり多く、圧倒されます。ですが、ワケわからないシーンが長々と続いたりもしますね。面白いのかどうなのか、よくわかりません。でも未知の物語と迫力の絵に感服)

●いきさつなど

 「のぞき屋」「殺し屋1」の山本英夫さんが描く、不可思議なマンガ。
 以前、読んだ時は2巻でのヤクザを泣かせるシーンがどうもウソくさく感じて、以後ノレなかった記憶があります。
 ですが、目新しい事を描き続けるマンガだったので、妙に惹かれるものがあり、ちょくちょくながらも続きを読んできました。でも5、6巻辺りで読むのをストップしていました。

 そして最近、コンビニで9巻を見つけ、チラッと見てみたんですが、そこでかなりの衝撃を受けました。
 冒頭から、長々と影絵だけで描かれていく異様な世界。何だかわかりませんが、スゴイ事になっている模様。ホラー描写としても、ただ事ではありません。改めて、また最初から読み直してみる事にしました。

 で、このマンガの目新しさ、というのは、主人公が「トレパネーション」という、頭蓋骨(ずがいこつ)に小さな穴を開ける、という危険な手術を行った事により、見えるハズのない何かが見えてしまう、というところ。
 その後の展開なども非常に大胆だと思います。ヘタすると大失敗しそうな展開(以前に読んだ時、2巻では失敗したんじゃないか、と思った)。ところがところが、巻を重ねていくごとに、その異様さを見事に表現し続け、全く未知の物語を描く事に成功し続けている、と思います。3巻後半からの、砂の女子高生の辺りがなかなかに盛り上がりました。
 「未知の物語を描く事に成功し続けている」というのはまだ物語が完結していないから。いつ破綻(はたん)してしまってもおかしくないほど、意外で大胆すぎる事を描いている、と思います。今後も気になりますが……9巻のラストではちょっとギャグすぎる展開なんじゃないかなぁと、心配になったり……。
 でもワケわからなさすぎるシーンも長々とあったりして、なかなか疲れる気もします。エンターテイメント(娯楽)とはちょっと違う感じを受けました。


名越。
公園でスーツホームレスをしていた
ところ、謎の男に「トレパネーション」
手術の話をもちかけられる。




伊藤。
名越に「トレパネーション」手術をほど
こした。




名越が右目を閉じてみると、かわい
い女子高生もごらんの通りのバケモ
ノに見えてしまう…。
●あらすじ

 名越 進(なこし すすむ)はスーツ姿でホームレスをしていた。
 公園を寝床とする他のホームレスの老人たちとも仲良くやっていた。だが名越は心の中で彼らを侮蔑(ぶべつ)していた。自分は彼らとは違うのだ、と。
 そして彼らとの決定的な違いは、名越は自分の車を寝床にしている事だった。他のホームレスのように、テントを作ったりはしない。なお名越に虚言癖があった。自分の過去の仕事についてなど、平気でウソをつくのだ。

 そんなある日、名越の元に怪しげな男が来る。髪を金髪に染め、目立つ大きな鼻にピアスなどをしている男だ。彼は、名越に「トレパネーション」という外科手術を70万円で引き受けてくれないか、と持ちかけてくる。それは頭蓋骨に穴を開けるという手術で、医療的な手術ではなく、「第六感が芽生える」といったいかがわしい手術であった。男はその手術を行い、どうなるのかを観察したいらしい。

 一度は断ったものの、名越には金がなかった。
 とうとう手持ちの金が尽き、車のガソリンすら入れられなくなった。そして極め付けに、道路の路肩に停めていた車をレッカー移動されてしまったのだ。レッカー移動から車を取り戻すには、最低でも2〜3万の金がいる。なお名越は車を心のより所とし、車がないと異常な不安にのまれてしまうのだった。
 窮地(きゅうち)に追い込まれた名越は、男の手術を受ける事にした。金のために。

 ピアスの男は伊藤 学といった。22歳。医大生との事だ。
 金持ちのボンボンの彼には、マンションの一室を改造した手術用の部屋もあり、そこで手術は無事に終了した。

 手術を行った事により、第六感が芽生えたかどうかは、この先10日ほどかけて伊藤と共に調査する事になる。手始めに幽霊トンネルや霊感スポットなどを見て回るが、名越が特に何かを感じる事はなかった。

 しかし。名越が右目を隠して見てみると……その辺を歩いている人間が、まるで化け物のように見えたのだった。
 伊藤にその事を話すと、返ってきた答えは「ホムンクルス」というものだった。
 「ホムンクルス」とは何なのか。そして名越は、それらに直面していく事になる……。

●感想など

 今読み直してみると、2巻のヤクザの組長のシーンも丁寧に段階を踏んで描かれている、という気がしてきました。
 3巻で「ホムンクルス」についての、伊藤の仮説が描かれ、一応の決着がついたかに見えます。

 その後も名越の調査は続く。とある風俗店。そこでは女子高生が自分の下着を売るという、ブルセラショップだった。
 そこで見つけたホムンクルスの姿を持つ少女。彼女は全身がで出来ているように、名越には見えるのだった。伊藤は少女に興味を持ち、彼女を落とす、という。名越にその真意はわかりかねたが、一応は協力する。
 見事、少女を落としかけた伊藤だったが、逆に自分の弱さを見透かされてしまい、伊藤は退散する。

 5巻辺りから名越の変態性が表に出てくる。そして砂の女子高生とのやりとり。もう常人の理解をはるかに越えている、という感じで。はたから見ると、ただアブない、というだけで。でも名越は真剣……。

 6巻でひと段落。砂の女子高校生も人間らしさを取り戻したようだ。しかし、名越はホムンクルスを退治していくたびに、その病を自らの体に宿していってしまうのだった。

 ●

 7巻で久しぶりの伊藤との再会。4巻からたった2日しかたっていないとは…。で、そこで衝撃の事実を言われるが、名越は納得しない。
 8巻はずっと伊藤とのやりとりが続く。何がなんだかわからない。
 そして迎える9巻。前半はもうノマレっぱなし。半分以上、ワケがわかりません。で、後半は驚きの展開で。どうしてこうなっちゃうのかなぁ、と。半分以上、ギャグみたいです。でも絵が最高級なので、ノマレてしまいますね……。

 ホラー度は、絵があまりにもうまいので、怖い部分が多い。絵の迫力だけで、4つ。
 山本英夫さんのマンガは、背景のコマを見ているだけで圧倒されますね。その緻密さ、美しさ。有無を言わせぬリアリティがそこにあります。

 あと、今作はエロ度が結構低めですね。エンターテイメントとしてのサービス精神には欠けるものの、マンガの主題である「ホムンクルス」そのものへの強い情熱を感じます。
 そして「未知」。今まで、どこにもない物語。名越は、異様なホムンクルスを前にして、どう攻めていいのかわからない。一人ひとりが手探りの状態。見ているコッチもどうなるのか、まるでわからない。
 実際、ワケがわからなすぎて、面白いのかどうなのかすらわからないシーンなども多くあった気がします。


 怪談と踊ろう そしてあなたは階段で踊る
 ―― 原作・監修 竜騎士07/漫画 野沢ビーム
 (講談社 シリウスKC)

 ホラー度:★★☆☆☆
 面白さ  :★★★☆☆

 (あらすじ: 友宏達は退屈しのぎに新しい「祟り」を作り、学校で広めた。それはまたたく間に広がって、皆に忌み嫌われるものとなった。しかしその祟りによってか、一人の女生徒が重傷を負ってしまう)

 (一言: 最初読んだ時は「青春小説」の域を出ていないと思いましたが、何度か読んでやっと真相がわかった時、面白さがじわりと湧いてきました。でもホラー度は低いし、全体的に見て面白いかどうかは微妙。絵は見やすくていいんですが、大ゴマが多すぎ)

●あらすじ

 主人公、友宏(ともひろ)は中学3年生。仲のいい悪友、(とおる)と博之(ひろゆき)と、学校の帰り道、今日も「狸神社」に寄って、ヒマを潰すのだった。
 ひと気のないその神社の賽銭箱(さいせんばこ)のカギを開けて、賽銭泥棒などしたりする。だが無論、大金など入っているハズもない。せっかくひと目を忍んで、時間をかけてダイヤルロック式のカギを開けたのに、たかだか120円ほどをくすねるだけに終わった。
 毎日が退屈だ。友宏達はその退屈へのちょっとした反抗として、大げさなイタズラを思いつく。
 ――祟りを作るのだ。新しい、祟りを。

 「お骨サマの呪い」。それが友宏達の考えた祟りだった。
 まず、学校の複数の黒板に、「骨」という字をびっしりと描く。これがいきなり全校生徒に知れ渡る事になる。校長先生が皆の前で、怒りをあらわに叱責(しっせき)したからだ。
 次に、肉屋からくすねてきた「骨」をあちこちにばらまいた。下駄箱の中、誰かの机の中、時には誰かのカバンの中に……。

 このイタズラは大成功だった。またたく間に、呪いのおヒレをつけて「お骨サマの呪い」は全校生徒に広まったように思えた。
 だが、呪いを広めるだけが狙いではなかった。呪いを解く方法もそれとなく広めておいた。あの「狸神社」の賽銭箱に、お賽銭を入れるのだ。それで呪いは解ける――。
 そうして、狸神社の賽銭箱のカギを自由に開けられる友宏達は、見事に大量の賽銭を得る事ができたのだった。3人は目を輝かせて喜んだ。

 そんなある日、賽銭箱に封筒が入っていた。
 中にはなんと、1万円札が5枚……。そして「田無美代子ヲ呪ッテクダサイ」と書かれた手紙が入っていたのだった……。

●感想など

 言わずと知れた「ひぐらしのなく頃に」の竜騎士07氏原作のマンガ、という事で手にとってみました。

 友宏達が新しい呪いを作り、それが皆に広まっていく……、というのはなかなか良かったんですが、全体的に見て、どうも衝撃度に欠けました。人も死なないし(よく読むと、死んでそうなのが一人)、物語はおとなしいまま終わってしまう。……個人的すぎる意見ですが、もっと人がバンバン死んでいけば、主人公達も精神的に追い詰められていって、もっと違った、重苦しい話になったんじゃないかなぁと思いました。
 もちろん、今のおとなしめの雰囲気が好みだ、という人も多いかと思います。この辺は物語との相性の問題、でしょうか。

 あと、キャラがずいぶん弱かったですね。ひぐらしとは大分感じが違います。この「怪談と踊ろう」はひぐらしより、リアリティに凝っている感じ。マンガを見た限りでは。
 ひぐらしといえばコレ、というあの衝撃のシーンもあるにはあるんですが……、まぁこっちのマンガではちょっと胸にはこなかった(またコレか、みたいな感じ)。
 物語の柱となる事故のカギを握る、佐藤理恵とのかけひきで、物語が急激に探偵モノみたいになったりしましたけどね。何度か読んでやっと理解できた気がしますけど、この辺で話が二転三転するもんだから、最初は頭がこんがらがりました。

 ●ラストシーンについて (読んだ人にしかわからない程度にネタバレ)

 ラストもどうも煮え切らない。「別に大した呪いも下していないのに、何を大げさにいばってるんだ、ヤツは?」という感じでした。ちょっと自分に酔いすぎのような気もします。
 でも、何度か読んでやっと理解できた部分もあります。彼女はやはり……。この辺の絵があまりにも普通なので、読み取れませんでした。ヤツは何言ってんだ、とばかり思ってましたから。

 そのリアリティさを描きたかったがために、物語そのものをリアリティ重視にしたのでしょうか? 隠されたもの(僕が理解できなかっただけ)に気付いた時はちょっと嬉しかったんですが、見た目がほんと大人しすぎますからね〜……。この辺の表現は難しいところですね。
 でも、マンガやアニメとかでよくありそうな感じですけどね。それをリアリティを追求して描いた、というところが目玉なんでしょうか。

 ●他

 絵は見やすくて良かったんですけどね。でもムダに大きなコマをたくさん使ってる気がしました。雰囲気は出てるんですが、物語のテンポがその分のろい。

 友宏が呪いに捕らわれる夢。あのシーンのゆがみっぷりは良かったんですが、夢では……ホラーとしての評価にはつながらない。あぁいうのがラストにあれば、怖くシメられたのになぁ、と思いました。
 何故、ヤツはラストで笑顔を振りまいているのか……? ヤツの顔を一瞬でも大きくゆがめてしまえば良かったのに。そうすれば見た目にも、わかりやすかったかなぁと思いました。
 でも怖いものを見せないで怖い想像をさせる、という点では、ラストも上手いかな、という見方はあります。


 魔人探偵 脳噛ネウロ ―― 松井 優征
 (集英社 ジャンプコミックス)

 ホラー度:★★★☆☆
 魅力  :★★★★

 (あらすじ: 女子高生、桂木弥子は何者かに父親を殺された。そこに現れた魔人、ネウロ。彼は謎を食らって生きている。見事、父親の死の真相を解き明かしてくれたネウロ。その後も彼に言われ(脅され)るまま、弥子は探偵として、事件の謎を解き明かしていく)

 (一言: アニメ版とは内容が違う、原作コミック版。恐ろしいが茶目っ気のあるネウロ、ネウロにいじめられまくる弥子…。とにかくキャラが面白い。謎もいいし、犯人も意外。ダイタンな遠近法で描くコマなども、見ていて楽しい)

●いきさつ

 アニメ版の「魔人探偵 脳噛ネウロ」を紹介した際、掲示板にて、んさんすけあくろうさんから原作コミックについてのお話をいただきました。
 原作とアニメでは大分内容が異なるみたいですね〜? そしてアニメ版は巷では酷評されている様子……。まぁ僕は、そんなにアニメ版がムゴイとは思いませんでしたけどね。
 アニメ版を酷評したくなるほど、原作のコミック版は面白いのか? だとしたら、原作も読んでみたい。そういう事でとりあえず、1、2巻を読んでみました。


こういったホラー表現が随所に盛り
込まれているのがいい
●コミック版の感想など

 原作を読んでまず驚いたのは、たかだか最初の2〜3話で、弥子の父親の死の真相が解かれてしまう事ですね。アニメでは、最後の究極の謎にでもなりそうな扱いでしたが。
 んさんとすけあくろうさんが書いて下さったように、アニメ版と原作コミック版とでは、内容がだいぶ違いましたね〜……。アニメ版の1話目「食」は、コミックとほとんど同じ内容でしたけど。でもコミックでは4〜6話になってるんですね。

 それと、アニメより原作版の方が、ネウロが「何を食ったのか」がわかりやすく説明されている気がしました。アニメだと、犯人の「悪意」を食ったのかな?と思ったりもしましたが、コミックでは「謎が犯人の悪意によって、高密度に凝縮、隠蔽(いんぺい)、または構成されていて、それを解き放つ(謎を解く)事によって放出されたエネルギーを食す」……というような説明になっているんですね。妙に納得してしまいました。

 ●原作とアニメで、ストーリーがまるで違う

 こんなに原作を変えてアニメ化した作品もめずらしいのではないか、と思ったりしました。……まぁ昔はめずらしくもなかったと思うんですが。「マジンガーZ」や「デビルマン」、「仮面ライダー」などを挙げれば、TV放映されたものとコミック版がまるで別物なので。(マンガの連載とTV放映が同時進行、という形式だったりしたせいもあるかも)

 僕個人としては、原作コミックとアニメ版の内容が違うのは、問題ないんですよ。……むしろ、その方が楽しい。
 原作を忠実になぞったアニメもいいんですが、全く同じものを2度観ても、(僕は)そんなには楽しめない。だったら、どちらか一方を見るだけで事が足りてしまう。
 おそらく、ネウロのアニメ版の監督さんは、「原作と全く同じものを作ってもしょうがない」という感覚の持ち主だったんじゃないか、と思われます。僕の勝手すぎる推測ですみませんけどね……。

 で、ネウロのアニメ版はある意味、かなり大きな冒険をしたと思います。原作ファンにケンカ売ってるようなものですからね、あの大幅なストーリーの変更は。
 1話完結モノにして、構成もまるで「水戸黄門」のようにすっかりと「型」を作ってしまっている。……製作サイドの都合により、いつでも打ち切れる形として、そうしたんじゃないかなぁ……などと思ったり。(続きもののストーリーだと、急には終われませんから)

 ●アニメ版の「謎」はさほど美味ではない…?

 アニメの絵はかなり良かった。ギャグも効いていた。一応は原作のツボ(キャラ設定など)を押さえた作りにはなっていたと思います。……なので、ストーリー的にもう少し感心する「謎」があれば、もっと楽しめたんじゃないかなぁと思ったりします。
 その点コミック版は、犯人が結構意外だったりしますからね。アニメのように「やっぱりコイツか」というような事がない(コミックの1〜2巻を読んだ限りでは)。
 アニメはその「意外さ」をうまく描けていなかった、という気がします(DVD1巻を観た限りでは)。でもはじめが勝負だと思いますので。アニメ版の2〜3話に、もっと緊迫するような話をもってきてほしかった。姫と満腹太郎では、キャラが弱すぎて気が抜けてしまいます……。謎もイマイチでしたし。
 で、コミック版とアニメ版の比較はこの辺でやめにします。個人的には、別物として楽しめるので、問題はないと思うんですけどね……。元々のキャラがいいんで、さほど謎が弱くても、アニメ版は続きを観てしまいそうです。

 ●コミック版の感想

 かなりダイタンな遠近法?で描かれているコマが多いですね。頭がでかく足が小さい、という見下ろした感じだったり、手だけでかく描いたり。見てて面白いです。このマンガの大きな特徴になっていると思います。魅力の付加、ですね。
 1〜2巻を見た限りでは、まだ絵の安定感に欠けているみたいですが、内容が面白いのでさほど気にはなりませんでした。……逆に言えば、いくら絵の完成度が高くても、内容がつまらなければ面白いマンガにはならない、という気がします。
 アニメではいきなりいた探偵事務所、そして吾代。それらとのいきさつも、原作では順序よく描かれてますね。逆に言えば、アニメが変則的だったのか。

 キレたキャラの「顔の変貌ぶり」もスゴかった。アニメではやりすぎたのか、すっかりバケモノ化しちゃってましたけどね。……ってまだアニメとの比較してますけどね。

 それにしても魔人?が探偵、という設定は面白いです。しかもほとんど不死身みたいですし、何かあってもスマートに切り抜けてくれる。見ててスカッとするんですね。
 重苦しかったり、セリフを長々と読まされる(苦手)ような事もほとんどない。新感覚の探偵モノ、という感じでしょうか。
 ネウロが不死身?だからこそ、なしえた衝撃。第9話のラストなど、実にいいです。明るいコマの次にいきなりの暗転。こういう衝撃を与えてくれるからこそ、ホラー描写っていうものはやはり重要なんだなぁ〜…と改めて感じたりもしました。

 ●面白い!!

 はっきり言って、ハマりました。ホラー度は普通ですが、面白さはバツグンですね。コミックはもう十数巻出ているようなので、当分の間、楽しめそうです。
 んさんすけあくろうさんに感謝です。お二方の書き込みがなければ、たぶんコミックを手にとる事もなかったと思いますので。書き込み、ありがとうございました。









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